【旅行記】大井川鐵道のんびり乗り鉄紀行〜JR東海バス新宿-静岡線で静岡を目指す~

 
 大井川鐵道をのんびり訪ねる旅の1日目は、新大阪から東海道新幹線「こだま」に乗車し、目的地の静岡を一旦通り過ぎて東京へやってきた。東京駅からは中央線快速に乗り込んで新宿へ。その後、バスタ新宿から高速バスに乗車し、あらためて静岡を目指した。

バスタ新宿と静岡駅を結ぶ高速バス「新宿-静岡線」に乗車 

 前回の旅でバスタ新宿を訪ねた際には、ここから新潟行きの高速バスに乗車し、新潟・北陸の旅をスタートさせた。今回は静岡行きのバスに乗車してみる。東京から静岡方面への高速バスは様々な路線が運行されている。バスタ新宿発着だけでも、静岡や浜松のほか、三島、沼津、御殿場、藤枝など、さまざまな路線があるが、今回は静岡方面の高速バスを初めて利用するということもあり、最も王道と言える静岡線を選ぶことにした。
 東京-静岡市街間の高速バスには、バスタ新宿発着の路線のほか、東京駅発着の東名ハイウェイバスもある。どちらを利用してもよかったのだが、今回は静岡への到着時間を考慮し、バスタ新宿と静岡駅前を結ぶ新宿-静岡線を選択した。
 
 新宿-静岡線は、JRバス関東、JR東海バス、京王バス、しずてつジャストラインの4社共同で運行されている高速バス路線である。以前は、JR東海バスと京王バス、JRバス関東と静鉄の2社ずつが、それぞれ経路の異なる別路線として同一区間を結んでいたが、2017年に統合され、現在は一つの路線の中に複数の系統が存在する形となっている。
 経由地が異なる複数の系統があるのは、路線が分かれていた頃の名残。北街道経由、南幹線経由、日本平久能山SIC経由など、複数の系統があり、静岡市内で進む経路が異なるほか、東京側でも渋谷マークシティを経由しない系統があるなど、細かな違いが残っている。
 その中で今回利用したのは、高速バスとして最速で東京-静岡間を結ぶ直行便である。この直行便は昨年(2025年)12月に新設された新しい系統で、東京側ではバスタ新宿、渋谷マークシティ、東名江田、静岡では静岡駅前、新静岡と、限られた停留所のみに停車する。
 この路線は平日には12往復、土休日には1日13往復が運転されているが、そのうち直行便は3往復のみの設定である。今回はバスタ新宿を14時25分に発車するJR東海バス運行の直行7号に乗車した。新宿-静岡線とともに、JR東海バスへの乗車もこれが初めてだった。
 
 この路線の乗車券は、基本的にJR系の高速バス予約サイト「高速バスネット」で発売されている。一方、京王バスも共同運行していることから、各便数席ずつ「ハイウェイバスドットコム」でも取り扱いがある。高速バスネットでは席割の設定もあるが、今回は眺めのよい席に座りたかったため、通常価格の乗車券を購入。それでも運賃は3,230円と、かなりリーズナブルである。
 使用車両は各社ともトイレ付きの4列シート車。乗車した便にはUSBコンセントと無料Wi-Fiも装備されていた。今回の便のバスのりばは、前回新潟行きのバスに乗車した際と同じB4番のりばだった。ここから5人ほどが乗り込み、バスタ新宿を発車。多くの人が行き交う甲州街道へ飛び出して、静岡への3時間20分あまりの旅が始まった。
 
乗車記録 No.8
JR東海バス 新宿・渋谷-静岡線 直行7号 静岡駅前行
バスタ新宿→静岡駅前
 
 新宿駅西口や新宿副都心の高層ビル群を車窓に眺めながら進むと、バスは初台の交差点を左折し、山手通りへと入った。高層ビル群を眺めながらの旅立ち。冬の東京は14時台でも西日となり、夕暮れを予感させる。その日差しを強く受けたビル群はきらきらと輝いていた。
 この先、バスは渋谷マークシティを経由して静岡へと向かっていく。都心でバスタ新宿のみに停車する便は、初台南から首都高中央環状線・山手トンネルへと吸い込まれていくが、このバスは引き続き山手通りを地上で進む。代々木公園の西側を南北に貫く山手通り。代々木、富ヶ谷、松濤といった渋谷区の名だたる住宅地が周囲に広がる中を、バスは淡々と走っていく。
 
 神泉に差し掛かると、バスは山手通りを離れ、玉川通りを経由して道玄坂へ進んだ。再び車窓の人通りが増え、渋谷の街が近づいてきたことを実感させる。道玄坂交番前の交差点が、渋谷マークシティへのスロープの入口である。バスはゆっくりとした速度でマークシティの通路を進み、バス停に到着した。
 渋谷マークシティでも5人ほどの乗客が乗り込んできた。ここ発着のバスに乗車するのはこれが初めてである。バスタ新宿とはかなり対照的に、簡素で手狭なバス停という印象を受ける。左右に並ぶ2棟の建物の間にバス停があり、バスは警備員の誘導を受けながら、狭いロータリーで転回する。下の階には東京メトロ銀座線の車庫がある。地面は見えないながら、なんとなく丘の斜面にビルが立ち並ぶのが分かる渋谷の街。山手線の他の駅周辺とは違った街の雰囲気がある。
 新宿-渋谷間の一般道の混雑と、マークシティでの乗客対応の影響で、バスは約18分遅れてマークシティを発車した。再びゆっくりとスロープを下ると、やがて玉川通りへ戻った。
 
 バスはその先、池尻大橋から首都高3号渋谷線へと入っていく。渋谷線も、この先に続く東名道も、2019年に大阪―東京間の高速バス「東海道昼特急」を利用して以来、久しぶりの通過だった。初めてこの区間を通ったのは、その少し前に乗車した「はかた号」だったと記憶している。
 車窓には三軒茶屋のキャロットタワーなどが見えるものの、防音壁が続き、しばらくはあまり景色を楽しめない区間が続く。やがて上り線側のみに設置された料金所と用賀パーキングエリアが見えてきた。手狭な用賀PAだが、上り便の高速バスはここで下車することができ、東急田園都市線の用賀駅まで歩くことで、渋滞の影響を最小限に抑えて渋谷などの都心へ向かうことができる仕組みになっている。高速バス利用者にはよく知られた存在である。
 その用賀料金所の先にある東京インターチェンジが、神奈川、静岡、愛知を経由し、小牧ICまで続く東名高速道路の起点だ。ここからバスは東名道をひた走り、静岡を目指して進んでいく。
 
 多摩川を渡って神奈川県内に入ると、ほどなくして東京料金所を通過した。その後は東急田園都市線のやや北側を並走し、東名川崎ICの先で再び田園都市線と交差する。バスはやがて東名江田バス停に到着した。ここでも乗車扱いを行うが、この便に乗り込む人はいなかった。
 東名江田バス停は、東急田園都市線のあざみ野駅と江田駅のほぼ中間に位置している。あざみ野駅へは路線バスの利用も可能で、徒歩でのアクセスも難しくない。横浜方面からの利用者のためだけでなく、特に首都高の渋滞に巻き込まれやすい上り便では、用賀PAと同様にここで下車して田園都市線に乗り換え、都心を目指す人のためにも停車する。この周辺の高速道路上のバス停としては駅が近く、大阪や名古屋など各地を発着する便も停車する拠点となっている。
 
 乗車しているのは直行便。東名江田を出ると、次に停車するバス停は終点の静岡駅前となる。横浜青葉、横浜町田を通過し、横浜市北部に広がる住宅街の間をスイスイと駆け抜けていく。
 下り線は順調に流れているが、上り線の方は横浜町田ICの先で事故が発生しており、そこから厚木IC付近まで長い渋滞が続いていた。複数台が絡む事故だったようで、2車線が塞がれているように見えた。日曜日の夕方、ただでさえ交通量が多い時間帯での事故は、後続車にとっては痛手だろう。このあたりは平常時でも東名の渋滞の名所とも言える場所である。
 バスは米軍厚木基地の滑走路北端付近にあり、渋滞情報でもおなじみの大和トンネルを抜け、やがて海老名SAを通過する。反対車線は本線もSAへ入る道路も大混雑で、見ているだけでも大変そうだった。その先の海老名JCTでは圏央道と接続する。渋滞を迂回する車だろうか、東名から圏央道へ入る車も多く、こちらでも渋滞が発生していた。海老名JCTの真下を、前回の旅で再訪した相模線が走っている。バスはまもなく相模川を渡り、厚木ICへ差し掛かる。ここでようやく反対車線の渋滞も途切れた。
 
 厚木を通過すると、東名道は大山へと近づいていく。直後の伊勢原JCTでは新東名と交差する。このあたりの新東名は、まだ両方向とも先がつながっておらず、新東名へ向かう車はまだ多くない。この周辺は、昨年秋の旅で大山ケーブルカーに乗車するため訪れている。東名伊勢原付近で交差する一般道を路線バスで通ったこともあるが、防音壁に遮られ、周囲の景色を望むことはできなかった。
 
 その後、秦野を通過し、大井松田へと到達した。大井松田から先の東名道は、御殿場線ルートで箱根を迂回し、静岡方面へと進んでいく。ここから先の下り線は、右ルートと左ルートに分かれて峠を越える構造となっている。
 左ルートが従来からある下り線で、右ルートは現在の上り線が完成する前、かつて上り線として使われていた道路である。両ルートは並走しつつも、別々の経路を取っている。この日は左ルートで工事が行われており、通行止めとなっていたため、バスは必然的に右ルートへと進んだ。
 先ほどまでの住宅街を駆け抜ける車窓とは一変し、ここからしばらくは山間部を走る。眼下には御殿場線沿線の風景が広がり、さらに奥には建設中の新東名道が見えた。あと数年もすれば新東名も全通し、このあたりの交通の流れも大きく変わることになるだろう。
 
 やがて車窓に富士山が姿を現し、上り線が下り線を跨ぐ東名足柄橋をくぐると、バスはまもなく休憩地の足柄サービスエリアに到着した。ここでおよそ20分の休憩停車となる。
 新宿・渋谷-静岡線は、他の経由便を含め、上下便すべてがこの足柄SAで休憩を取る。もちろん最大の目的は乗務員の休憩だが、乗客にとっても、立ち寄るサービスエリアにその土地らしさを感じられるのは、高速バス旅の楽しみの一つである。筆者もトイレを利用し、SAをひと回りするためバスを降りた。
 
 東名道を経由するバスの休憩地として定番の足柄SA。筆者が2019年に乗車した大阪―東京間の高速バスも、上り線のこのサービスエリアで休憩したことを覚えている。一方、下り線側の足柄SAを利用するのは今回が初めてだった。
 EXPASAとして整備された足柄SAは、もはや単なるサービスエリアというよりも、ひとつの商業施設のような存在である。フードコートにはおなじみのチェーン店が並ぶ。東京からも、東京へ向かうにも程よい距離感にあり、何より駐車場の先に望む富士山の姿が美しい。少し糖分が欲しくなり、コンビニでチョコレートを購入して車内へと戻った。
 
 バスへ戻ると、隣にはしずてつジャストラインが運行する、東京駅発・清水(折戸車庫)行きの「しみずライナー」が停車していた。乗車しているこの路線のうち、北街道経由と南幹線経由の便は清水を経由するが、東京駅-清水間には別の路線も運行されている。
 この時間帯、足柄SAにはこの2台以外にバスの姿はなかった。あと1、2時間もすれば、このバス駐車場ももう少し賑わってくるはずだが、この時間はそもそも東京を出発してきた便自体が少ない。休憩を終えたバスは人数確認を行ったのち発車し、再び東名高速の本線へと戻っていった。
 
 足柄SAを出ると、バスはまもなく御殿場ICに差し掛かる。夕焼け空に聳え立つ富士山はまさに圧巻の光景。東海道新幹線から眺めた青空の下の富士山も美しかったが、夕暮れの富士山もまた格別である。やはり静岡の旅に富士山の車窓は欠かせない。沈みゆく夕日とともに、バスは走り続ける。
 
 バスはやがて御殿場JCTを通過する。伊勢原JCT以来、東名よりも新東名が北側を走る。その関係はこの先も続くが、ここでは両者が接近し、東名から新東名へ、また新東名から東名へと行き来できる構造になっている。現在、新東名の東京方面は新御殿場までしか開通していないため、ここが実質的な東名と新東名の分岐点といえる。バスは引き続き東名を進む。頭上を新東名の高架橋が横切り、やがて車窓の奥へと消えていった。その先、裾野IC付近にはトヨタの研究施設が広がる。新東名と東名はこの研究所の周回コースを間に挟む形で別れていく。一時期話題となったWoven Cityもこの周辺に建設されている。
 
 沼津を通過して、富士へ差し掛かる頃には日も暮れ、車内は夜間走行の雰囲気に包まれた。バスはやがて暗くなった富士川を渡る。街灯が点在するなか、車窓には富士川SA上り線側に設置された観覧車の灯りが通り過ぎていく。富士川SAも足柄SAと並び、東名道を代表する大規模なサービスエリアのひとつである。
 その後バスは由比の海岸線を通る。東海道の象徴ともいえるこの区間。昼間であれば駿河湾を望む絶景が広がるが、この時間帯は淡々と闇の中を進み、国道1号や東海道本線を越えて薩埵トンネルへと吸い込まれていく。遠くに見えるのは伊豆半島の街の灯りだろうか。海岸線にぽつりぽつりと光が瞬いていた。
 
 この路線の多くの便は清水ICで高速を降り、その後は一般道経由で静岡駅へ向かう。しかし、この直行便は静岡ICまで東名を走り続ける。やがて静岡ICに到着し、ここで高速道路を降りた。静岡駅に最も近いインターチェンジが、この静岡ICである。ここから先は、以前静岡空港へ向かうバスを利用した際と同じ経路で静岡駅を目指す。このように直行便は静岡駅の最寄りまで東名を走る。一般道経由の便は所要時間が3時間40分前後に設定されているが、直行便は3時間20分。停車地の少なさが、そのまま所要時間に表れている。
 
 南安倍の交差点を右折し、バスは国道1号へ入る。あとはこの道をまっすぐ進めば終点の静岡駅前となる。一度下をくぐった東海道本線と東海道新幹線の高架が再び合流すると、バスは静岡駅前に到着。駅舎寄りのバスプールにある降車バス停に到着した。
 渋谷では20分ほど遅れていたが、最終的には10分程度まで回復していた。順調ならば、場合によっては10分ほど早着することもあるのかもしれない。上り便は新静岡始発だが、下り便は新静岡へは向かわず、静岡駅前が終点となる。バスは車内点検後、回送されていった。
 
 およそ6時間前、新幹線で通りすぎた街、静岡に到着した。到着したというより、「帰ってきた」というのほうが正しいかもしれない。東海道新幹線「こだま」と、東京-静岡を結ぶ高速バス。気になっていた2つの乗りものを楽しみながら、ようやく今回の旅の舞台・静岡へ降り立った。
 久しぶりに乗車した東名経由の高速バス。大阪発着、静岡発着と経験した今、次は新東名経由の名古屋発着便にも乗ってみたい。鉄道でいえば、東急田園都市線、小田急小田原線、御殿場線、そして東海道本線に近い場所を走るルート。沿線には最近訪れた場所も多く、富士山を眺めながら各地での思い出に浸ることができた。そして何より、夕焼け空に聳える富士山。あの車窓こそが、1日目の旅のハイライトとなった。

静岡地区の315系に初めて乗車し、宿泊地・藤枝へ

 さて、1日目の旅もここで終わりと言いたいところだが、明日の大井川鐵道の旅に備えて、もう少しだけ移動を続けることにする。静岡駅前に宿泊しても問題はないのだが、ここには過去に2度泊まったことがある。せっかくなら初めて訪ねる街に泊まってみたいと思い、今回は藤枝駅前に宿を取っていた。
 静岡では、前話の「こだま」で利用した「ぷらっとこだま」の飲み物引換券で飲み物を受け取り、在来線ホームへと向かった。ホームへ上がると、まもなく313系8000番台を後ろに連結した先発列車が入線してきたが、今回はあえて見送る。この車両には過去の静岡旅で狙って乗車したことがあり、その快適性はすでに味わっている。
 
 この時間帯の東海道本線は10〜15分に1本ほど列車が運転されており、次々と列車がやってくる。目当ての列車は何本目だろうかと待っていたが、案外早く姿を現した。乗りたかったのは、2024年6月に静岡地区へ投入された新型車両・315系である。前回静岡を訪れたのはその直前の3月で、まだ211系が活躍していたが、現在は315系へと置き換わり、静岡地区の在来線を支える主力の一つとなっている。
 315系には中央本線で乗車したことがあるため、形式としては初乗車ではない。しかし、静岡地区における世代交代を体感するという意味でも、また4両編成の315系に乗るという点でも、静岡を訪れた際にはぜひ乗ってみたいと考えていた。
 
乗車記録 No.9
東海道本線 普通 浜松行
静岡→藤枝 313系+315系
 
 静岡から藤枝まではおよそ20分。315系が組み込まれた編成は自動放送にも対応しており、それもまた新鮮に感じられた。日曜日の夜ということもあり、列車は帰宅客を多く乗せながら、安倍川、用宗、焼津と停車していく。
 
 徐々に車内の乗客は減り、列車はやがて藤枝に到着。大勢の乗客とともに筆者もホームへ降り立った。1日目の旅はここ藤枝がゴール。浜松へ向けて走り去っていく列車を見送りながら、静岡地区の315系に乗るというこの旅の副次的な小さな目標も無事に叶えることができた。
 
 改札を抜け、南口側のロータリーへ。先ほどは新幹線の車内からこの市街地の背後を高速で通過したが、その車窓からも感じた通り、駅前、特に南口側はかなり都会的な雰囲気が漂っている。駅前ではイルミネーションが美しく輝いている。
 ホテルへ向かう前に駅近くのスーパーへ立ち寄り、夕食を買い込む。翌日は山間部へ向かい、昼も夜も近くにコンビニやスーパーのない場所に滞在する予定。この日の夕食に加え、翌日の昼食と夕食もあわせて購入した。その後、駅からほど近いホテルへチェックイン。こうして1日目の旅を終えた。