【旅行記】大井川鐵道のんびり乗り鉄紀行〜大井川本線と町営バスを乗り継ぎ千頭へ~
藤枝駅で迎えた旅の2日目。この日はいよいよ大井川鐵道に乗車しにいく。大井川鐵道が発着する金谷駅は、藤枝駅から西へ数駅進んだ場所にある。まずは東海道本線の普通列車で、金谷を目指した。
サッカーの街として知られる藤枝から金谷へ移動する

前日も日没後の到着となった藤枝駅。この日も早朝の旅立ちとなる。この駅がある藤枝市は、人口14万人を擁する都市である。江戸時代には東海道の宿場町の一つとして賑わい、古くから交通の要衝として発展してきた街だが、最近は静岡市のベッドタウンとして発展している。東海道本線では静岡から焼津を経て藤枝へ至るが、藤枝市は山側で静岡市葵区と隣接している。沿岸部に焼津市が位置する形となっていて、藤枝市は海に面していない。
藤枝と聞いて思い浮かぶのは、やはり「サッカーの街」というイメージである。現在J2に所属する藤枝MYFCの本拠地であり、駅構内にもサッカーの街をアピールする広告が多数掲げられているのが目に留まる。
駅前にはホテルや複合施設が立ち並び、都会的な雰囲気を感じさせた。東横インやルートインといったホテルチェーンも出店しており、掛川-静岡間では比較的ホテルの多いエリアである。駅前には新静岡・静岡空港方面への路線バスが乗り入れているほか、東京への直行高速バスも朝夕を中心に運行されている。

朝6時半を回った藤枝駅。この時期はまだ日の出前だが、すでに朝ラッシュが始まっていた。特に静岡方面への上り列車を待つ乗客が多く、直後にやってきた興津行きの普通列車に吸い込まれていく。
筆者は下り列車の普通列車豊橋行きに乗車。下りも上りほどではないが、列車を待つ人の姿があった。おそらく掛川や浜松へ通勤・通学する人たちだろう。ここから掛川へはおよそ25分、浜松へは50分と十分通勤圏内である(写真は上り列車の普通列車興津行き)。
乗車記録 No.10
東海道本線 普通 豊橋行
藤枝→金谷 313系
大井川鐡道大井川本線の起点、金谷に降り立つ

藤枝から3駅進み、金谷で列車を下車した。列車は直前に大井川を渡り、その後、上り坂を進んで、少し標高の高い場所にある金谷へと到着する。これから乗車する大井川鐵道大井川本線の線路も駅の手前で近づいてくる。この鉄路の先にどんな景色が広がるのか期待が高まる。
相対式だが、中線があり少し広々とした金谷駅。この駅を発車した列車はすぐにトンネルへ入る。上下線別に設けられた牧之原トンネルと呼ばれるトンネルで、その名の通り牧之原台地を貫いている。中線の線路はトンネル直後に分岐しており、静岡側のホームの先端から500m以上先まで続いている。静岡側はカーブしており、中線の終端部は見えない。この中線は主に貨物列車が使う。かつては大井川鐵道とも線路がつながっており、もう少し複雑な配線だったそうだが、現在は撤去され、両線は接続されていない。

狭い地下通路を抜けて、駅舎側のホームへ上がり、改札を抜ける。朝の金谷駅は山影に隠れ、まだ日が当たらない。冬の朝は陽が差すのも遅く、空気が冷たい。駅前には次々と送迎の車が入ってきて、通学する学生を下ろしていく。地方の朝ラッシュらしい光景である。
この時間帯は金谷駅を発着する列車の本数も比較的多い。東海道本線は隣の島田で静岡方面へ折り返す列車があり、反対の浜松方面も掛川で一部列車が折り返す。そのため、金谷と菊川の2駅は、周辺に比べるとやや列車本数が少ない。朝の時間帯の東海道本線では、「ホームライナー」も運転されているが、両隣の菊川・島田には停車する一方、この駅は通過となっている。ただ、駅は街の玄関口としての役割を果たしており、駅は有人駅でJR全線きっぷうりばも設置されている。

JR金谷駅の改札を抜け、右手へ歩くと、これから乗車する大井川鐵道の金谷駅がある。改札内には乗り換え改札もあり、東海道本線から直接大井川本線へ乗り換えることも可能である。早速、昭和の雰囲気を色濃く残す同社の金谷駅へ入り、まずは券売機で、これから向かう家山までの乗車券を購入した。ここから翌日、静岡空港に到着するまでは、列車、バス、そして宿泊施設まで、すべて大井川鐵道を利用して旅を続けていくことになる。
SLやELが観光客に人気の大井川鐡道と大井川本線

今回の旅の主役となった大井川鐵道。筆者の乗りつぶしも残り1%ほどとなる中での乗車となったが、鉄道ファンには昔からよく知られた存在であり、筆者も3・4歳の頃にはすでにその名を知っていたと思う。
大井川鐵道には、SLやEL(電気機関車)、旧型客車、そして昔懐かしい電車が多数在籍している。昭和の雰囲気を色濃く残すノスタルジーあふれる鉄道は、鉄道ファンだけでなく一般の観光客からも高い人気を誇り、静岡県内でも有数の観光資源となっている。
近年では家族連れを意識したトーマス列車も運行され、新たな客層への展開も進んでいる。単に古い車両が走る路線というだけではなく、それ自体を一つの商業的価値として確立し、観光客を取り込む。同時に、同社が展開する観光バス事業や宿泊事業もあわせて利用してもらうというビジネスモデルを構築している。いわば大手私鉄の沿線開発モデルを観光地型に特化させたような戦略を取っている点が、この会社の大きな特徴である。
大井川鐵道には、大井川本線と井川線の2つの路線がある。井川線については次章で触れることにして、ここではまず、これから乗車する大井川本線の概要をまとめておきたい。
大井川本線は、ここ金谷を起点に、井川線と接続する千頭までを結ぶ鉄道路線である。路線はほぼ大井川に沿って敷かれ、途中で何度か川を渡る。
しかし現在は、2022年夏の台風被害の影響により、川根温泉笹間渡〜千頭間で運転を見合わせている。復旧方針については被災後に議論が重ねられてきたが、昨年(2025年)夏に鉄道として復旧させることが決定。現在は2029年の再開を目標に、復旧へ向けた動きが進められている。
鉄道路線の乗り潰しが趣味の筆者。将来的に千頭まで再開した暁には、改めて乗りに訪れるつもりである。しかし、このままいけば全線復旧となる2029年よりも前に、筆者の現在営業中の路線の乗りつぶしは完了する見込みであること、さらにその先の井川線も自然災害の影響を受けやすい路線であることから、まずは復旧前の今、動いている区間だけでも乗車しておこうと考えた。観光地としてのこの路線の姿を見ることは全線復旧後の楽しみにとっておくこととして、今回は一部区間が不通となっている現在の実情と、公共交通としての役割を見ることを目的に旅していく。
大井川本線の下りの始発、普通列車家山行に乗車

やがてホームには2両編成の列車が到着した。15人ほどの乗客が下車し、それと入れ替わるように折り返しの普通家山行きに乗り込む。
大井川本線では現在、下り10本、上り9本の計9.5往復の普通列車が運転されている。しかし、このうち4往復は隣の新金谷までの運転となっている。山間部へ向かう列車はわずか5.5往復に限られる。乗車したのは、金谷を7時24分に発車するこの日の下り始発列車だった。
乗車した列車は7200系の2両編成。大井川鐵道の普通列車に使用される車両は、近鉄や南海など関西出身の車両が多い。一方、この車両は東急電鉄の出身である。ただし、東急から直接大井川鐡道へ来たわけではなく、一度青森県の十和田観光電鉄へ移籍し、この路線の廃止に伴い大井川鐵道へ再移籍した。いまはここで“第三の人生”を送っている。2両編成で走ることが多いが、1両ごとに両運転台を備え、単行運転も可能である。片側の運転台は改造されたもので、両端で顔の形状が異なっている。
乗車記録 No.11
大井川鐡道大井川本線 普通 家山行
金谷→家山 7200系

忙しなく列車が行き交う東海道本線とは対照的に、列車はしばらくホームへ停車し、じっと乗車客を待つ。車内にはちらほらと乗客が現れて席に着く。2両に10名ほどの乗客を乗せた列車は、発車時刻になると、ドアを閉めて静かに走り出す。客層を見たところ、乗客の半数以上は観光客で、残りは地元利用と思われる。おそらく観光客の多くは井川線の奥大井湖上を目指しているはずで、しばらくは同じ行程をたどることになるだろう。
金谷を発車すると、列車は東海道本線と並走しながら坂を下っていく。やがて車窓左側に金谷の街並みが広がり、カーブを描きながら市街地へと入り、まもなく新金谷に到着した。新金谷は大井川鐵道の本社と車両基地を擁する拠点駅。ここでさらに数人の乗車があった。この駅は明日の最後に立ち寄る予定なので、詳細はそのときに書くことにする。

新金谷を出ると、列車は代官町、日切、合格と停車していく。金谷の市街地を抜けると、車窓には郊外の風景が広がる。朝日を浴びながら、ジョイント音を響かせて、列車は走る。
一昨年は三岐鉄道、昨年は上信電鉄と、ここ数年の冬の旅は各地の地方私鉄を巡ってきた。そして今年もまた大井川鐵道を訪ねている。冬の晴れた朝に大手私鉄のお下がり車両に揺られるというのは、いつしか冬の恒例行事になりつつある。窓の庇に朝日が差し込んで、金色に輝く光景を見ると、「ああ、旅をしているな」と実感すると共に、それら昨年、一昨年の旅を思い出す。

日切を出ると、次は合格に停車する。もともとは五和(ごか)と読んでいた駅名を、隣に門出駅が開業したのに合わせて改称し合格と名乗るこの駅。門出駅と並んで、縁起の良い駅名として知られている。受験シーズンということもあり、翌日の帰路ではこの駅から乗車し、金谷駅で記念にきっぷを持ち帰りたいと申し出る乗客の姿もあった。
合格を出ると列車は新東名の高架橋をくぐる。近くには島田金谷ICがあり、2019年に開業した門出駅は観光施設「KADODE OOIGAWA」に直結している。

門出を出てしばらくすると、いよいよ車窓には大井川が広がり始める。金谷郊外の風景はここで終わり、ここから終点千頭までは、多くの区間で大井川を眺めながら走る。現在運行されている区間では、川は進行方向右側に広がる。対岸には住宅地が点在する一方、こちらは山の斜面を縫うように走っていく。
途中の神尾は列車交換可能な駅だが、利用は少なく実質的には信号場に近い役割を果たしている。駅周辺には狸の置物が多数置かれているのが特徴で、ここもまた縁起のいい駅としてアピールされている。大井川鐵道では金谷から神尾までをフリー区間とする「開運たぬきっぷ」を発売しており、縁起を担ぎに訪れる人もいるらしい。

神尾を出ると列車はトンネルを抜け、再び大井川と並走して福用に停車する。ここで数人が下車し、車内はいよいよ観光客中心となった。福用も交換可能駅だが、この時間帯は他に列車がなく、乗車している列車はそのまま発車する。この辺りの大井川本線はやや蛇行する大井川をショートカットするように進む。沿線には茶畑が広がり、列車はトンネルを走り抜けていく。

大和田に停車すると、次はもう終点・家山。川幅の広い大井川だが、多くは土砂に覆われ、実際に水が流れている部分はわずかである。川沿いではダンプカーの姿をよく見かけ、川ではショベルカーが土砂を集めている様子もしばしば目に入る。最後に家山川を渡る鉄橋を越えると、列車は街中へと入り、まもなく終点家山に到着した。
家山駅で列車からバスへ乗り換える

金谷から30分ほどで終点の家山へ到着した。その後列車はすぐに折り返し金谷行きとなり、来た道を戻っていく。折り返しの列車にも何人かの乗客が乗り込んでいた。乗客は少ないながらも、地域の移動を支えている様子が垣間見える。現在も朝夕の2本がここで折り返すが、千頭まで列車が繋がっていた頃も、ここで折り返す列車が設定されていた。金谷近郊区間の輸送の一端を担っているのが、ここ家山である。

現在、大井川本線はここから2駅先にある川根温泉笹間渡まで運転されている。しかし、千頭方面との乗り換え拠点はここ家山駅が担っている。川根温泉笹間渡で千頭方面へ向かうバスへ乗り継ぐことができれば効率がよいのだが、この日の川根温泉笹間渡方面の始発列車は金谷10時発の急行ELすまた1号であり、普通列車に至っては金谷11時5分発まで列車がない。急行に乗ったとしても、井川線の終点まで行く列車には間に合わない。そのため、この先のわずかな区間は明日乗車することにして、一旦ここで大井川本線の旅を終える。家山では15分ほどの乗り換え時間で、大井川本線の本来の終点である千頭へ向かうバスへと乗り換えた。

駅員にきっぷを手渡して駅の外へ出る。大井川本線の列車で訪ねた家山駅。ここは島田市北部に位置する、同市川根地区の玄関口である。駅前には小さいながらも市街地が広がっており、家山はこの川根地区の中心的な役割を果たしている。昔ながらの面影を残す木造駅舎が特徴的で、駅前に立つ旧型の郵便ポストがいい味を出している。
今回は大井川本線の列車でここを訪ねているが、実は東海道本線沿線から家山へアクセスする方法は、大井川鐵道を利用する以外にももう一つある。金谷駅の隣にある島田駅と、この先の川根温泉を結ぶ島田市のコミュニティバスが、ここ家山を経由している。
これまで乗車してきたように、大井川本線は金谷から家山まで大井川の右岸を走ってくるが、こちら側は住宅が少ない。一方、川沿いの集落は左岸側に多く、コミュニティバスはそちら側を通っている。近接したエリアであっても、両岸で別々の公共交通を用意しなければならないというのが、大きな川沿いの交通の難しいところである。
この日の夜はそのバスの終点にある川根温泉に宿泊する予定だったこともあり、このコミュニティバスへの乗車も考えていたが、大井川鐵道の列車との接続がうまく合わず、今回は断念することになった。
川根本町コミュニティバス家山-千頭線に乗車

やがて駅前には路線バス車両が入ってきた。これは島田市のコミュニティバスではなく、お隣の川根本町が運行するコミュニティバスである。今度はこの路線に乗車して、本来の大井川本線の終点、そして井川線の起点である千頭駅へと向かっていく。
家山から千頭へのバスは、大井川本線の被災後、しばらくは大井川鐵道が代行バスという形で運行していたが、2023年10月からは川根本町の町営バスがこれを代替する形となり、運行主体が大井川鐵道から川根本町へと変わった。現在は大井川本線の不通区間で大井川鐵道による代行バスは運行されておらず、川根本町が鉄道代行バスをさらに代行する形で町営バスとして走らせている。
もっとも、町営バスの運行は大井川鐵道の路線バス部門である大鉄アドバンスへ委託されており、やってくる車両は従来と変わらず大鉄のバスである。こうした形態をとる背景には、さまざまな事情があるのだろう。
大井川鐵道のホームページにも、運行主体ではない旨の但し書きを付したうえで、町営バス千頭・家山線の時刻表が掲載されている。バスは基本的に家山から先の大井川本線の列車に接続する形で、1日6往復が運行されている。列車本数が5.5往復のため、下りの始発1便のみ接続列車がない。筆者が乗車したのは家山駅8時15分発の下り2便目。家山でも千頭でも15分ほどで列車に接続しており、このバスを利用することでとんとん拍子に先へ進むことができた。
乗車記録 No.12
川根本町町営バス家山-千頭線 千頭駅行
家山駅→千頭駅 ※運行:大鉄アドバンス

家山駅では、大井川本線の列車から乗り継いだ筆者を含む数人に加え、地元の乗客が数人乗り込んだ。発車時刻となり、バスはドアを閉めて走り出す。駅前通りから国道473号へ入り、商店が立ち並ぶ通りを進む。川根交番前交差点で右折すると県道63号へと入り、この先しばらくはこの道を進んでいく。
やがてバスは大井川に架かる駿遠橋を渡る。かつて大井川は駿河と遠江の国境であった。橋の名はそこに由来するのだろう。水面は朝日を受け、周囲の山々を静かに映し込んでいる。

バスは川の対岸に位置する身成地区を抜け、車窓左手に大井川を眺めながら進む。やがて川根温泉ホテル前に到着し、2人の乗客を乗せた。ここにはホテルと道の駅、温泉施設があり、この地域の観光拠点となっている。
実はこの日の宿はここ川根温泉ホテル。井川線に乗車した後、ここまで戻り、今夜はここで一夜を明かす。家山を含めたこのあたりは、地名としては川根だが、行政区分上はまだ島田市に属している。島田市にも川根町があり、その奥に単独自治体として川根本町があるという、やや複雑な地域構造になっている。島田駅から運行される島田市のコミュニティバスはここが終点。家山~川根温泉ホテル間は島田市区間となるため、川根本町のコミュニティバスはこの間のみの利用はできない。
川根温泉ホテルを発車すると、バスは現在の大井川本線の終点である川根温泉笹間渡駅の横を通過する。その後は笹間川を渡り、笹間川ダムのダム湖を右手に見たのち、トンネルを抜けて地名地区へ入る。ここが島田市と川根本町の境である。
地名のバス停では1人が乗車した。まだ山陰にある茶畑には朝の光が届かず、葉の先には夜の名残の露がきらりと光っている。静まり返った冬の山あいに、ひんやりとした空気が漂っていた。

その先、県道と大井川本線は大井川に沿う形で北上していく。しばらく列車が走っていない大井川本線の線路には雑草が生い茂っている。県道では災害対策工事だろうか、道路工事が行われていた。
やがてバスは大井川本線が通常運行しているときは、SLが真下を通ることで有名な塩郷の吊り橋をくぐる。その先で下泉へ差しかかると、県道は大井川を渡り、しばらく大井川本線とは川の対岸を進んでいく。バスはここで国道362号線へと入った。

バスはやがて上長尾という地区に差しかかった。ここ上長尾は川根本町の中心地で、町役場が置かれているほか、コンビニやホームセンターなどもある。バスは街の入口で国道を逸れ、一本内側を走る中央の通りへ入る。沿道には昔ながらの街並みが広がっている。ここでは地元住民の乗り降りがともにあった。
大井川本線は川の対岸を走るため、このあたりでは駅がやや離れている。大井川本線が運行されていた頃には別のコミュニティバス路線が運行されていたそうだが、現在は千頭と家山を結ぶこの路線が設定されたことで、ここに住む住民にとってはむしろ利便性が向上した。
先ほどの家山以南でもそうだったが、大きな川に沿って走る路線では、橋が少ないため対岸の集落を素通りせざるを得ないことが多い。ここでは、比較的大きな地区を鉄道が素通りしている形になっており、少しもったいなくも感じられる。

バスはやがて徳山へと差しかかった。ここも上長尾に続く大きな地区のようで、街中には高校があり、バス停では数人が下車していった。停留所の近くにはコンビニがある。ここが大井川沿いで最も上流に位置するコンビニらしい。
上長尾から先の大井川は大きく蛇行している。国道も両岸の地区を経由するため、何度も川を渡る。このバスが家山-千頭間で大井川を渡る回数は計8回。そのうち上長尾以北で6回を占め、頻繁に川を行き来する。一方、大井川本線は青部駅の先まで左岸を進み、川根温泉笹間渡付近以来、久しぶりに大井川を渡る。その後は千頭までの間にさらに2回鉄橋を渡るのみである。

崎平を通過し、大井川を渡ると、バスはまもなく国道を逸れて県道77号線へ入る。車窓の反対側では、大井川本線も同じく川を渡っている。バスにとって8回目となる大井川を越えると、やがて千頭駅の構内が見え始めた。遠くにはこれから乗車する井川線の車両、その手前には被災後に留置されたままの大井川本線の車両が見える。ほどなくして、バスは終点の千頭に到着した。

バスは家山から45分で千頭駅に到着。運賃500円を支払って下車した。大井川と大井川本線に沿って走る町営バス。雑草が延びる線路を見るのは少し寂しいが、またここに列車がかえって来ることは確定している。全線復旧後に再びこの区間を通る時は、列車の車窓から、バスで通った道を眺めて懐かしく思うことだろう。
さて、初めて降り立った千頭駅。せっかくならここまでの余韻に浸りながら、ゆっくり駅前を見て回りたいところだが、家山と同様、ここでも乗り換え時間は15分しかない。駅周辺の散策は井川線を往復した後に回すことにして、引き続き井川線の旅へ出た。