【旅行記】大井川鐵道のんびり乗り鉄紀行〜井川線を折り返し、千頭に立ち寄る~
千頭から井川線の列車に乗車し、終点の井川に降り立った後、近くの井川ダム周辺を散策した。再び井川駅へ戻り、ここからは井川線で千頭へ引き返す。その後は千頭の町をしばらく歩き、この日の宿泊先のホテルへ向かった。
井川駅から日本一遅い始発列車で千頭へ

発車時刻の15分ほど前に駅へ戻り、改札開始を待つ。列車を待っていたのは、往路でこの駅に降り立った筆者と、もう一人の乗客の計2人だけ。ほかに乗客は現れず、発車10分前になると改札が始まった。
千頭から乗ってきたのと同じ車両に乗り込み、発車を待つ。往路では機関車が最後尾に連結されていたが、復路は機関車が先頭に立ち走っていく。帰りは往路よりもやや所要時間が長く、千頭までは2時間の道のりとなる。
井川ダムから駅へ戻ってくる間に時刻は正午を回った。これから乗車する12時20分発千頭行きは、この日の井川駅における始発列車である。正午を過ぎてから始発列車が発車する駅は国内でもここだけ。接岨峡温泉〜千頭間ではすでに区間列車が運転されているため、路線全体としてはこの列車が最初ではないが、井川・閑蔵・尾盛の3駅における上り列車は、この列車が始発となる。
ちなみに、日本で最も早く始発列車が発車する駅は、JR東日本根岸線の桜木町駅である。京浜東北線へ直通する大宮行き各駅停車が4時18分に発車する。その差は実に8時間。これが井川線の現状を如実に示しており、観光需要に支えられた路線であることを物語っている。
乗車記録 No.14
大井川鐡道井川線 普通 井川行
千頭→井川 DD20形+スロフ300形+クハ600形

列車はわずか二人の乗客を乗せ、この日の井川駅の始発列車として千頭へ向けて走り出した。当然ながら、車掌も往路と同じ人である。車窓には先ほど間近に眺めた井川ダムが映り、その後は樹木が林立する森の中を進んでいく。
往路では少し寒さを感じた暖房のない車内も、井川停車中に差し込んだ日差しのおかげでいくぶん暖まっている。再び車内にはキーキーという軋み音が響き、警笛が山間にこだまする。列車は幾つものトンネルをくぐり抜けながら走っていく。

今度はあえて車両の最後尾に座ってみた。振り返ると連結部がよく見える。客車は前を走る機関車に牽かれ、引っ張られるようにして進んでいく。この感覚を言葉にするのは難しいが、実に心地よい。とりわけカーブに差しかかる瞬間が楽しい。山間をくねくねと進むトロッコ列車ならではの醍醐味である。

閑蔵を出ると、列車は関の沢橋梁へ差しかかる。改めてその高さに身がすくむ。往路では気づかなかったが、車窓の奥には太い導水管が見えていた。井川ダムのすぐ下流にある奥泉ダムで取水された水は、この導水管を通ってアプトいちしろ駅の少し下流にある奥泉発電所へ送られ、水力発電に利用される。
井川ダムが堤体直下に発電所を備える形式であるのに対し、こちらは水を下流へ送り、高低差を活用するダム水路式の発電所である。大井川水系では奥泉ダムが最大規模の出力を誇るという。車掌の説明によれば、この導水管は列車がそのまま入るほどの大きさがあるらしい。

尾盛を経由し、列車はやがて接岨峡温泉に到着した。井川からここまで38分。記事でこの距離感を伝えるのは難しいが、30を超えるトンネルを抜け、山肌を縫うように列車は走ってくる。転げ落ちれば谷底へ真っ逆さまになりそうな場所を進む井川線。そのスリルもまた、この路線の魅力の一つである。
本数は少ないながらも、沿線には保線作業員の姿が見えた。そうした人々の尽力によって、この路線に命が吹き込まれているのだと思うと、静かな感動を覚える。
接岨峡温泉では数人が列車を待っており、後方の車両に乗り込んできた。この時間帯、接岨峡温泉からは約40分前にも千頭行きが発車している。奥大井湖上での散策時間を考慮したダイヤで、12時台と15時台には接岨峡温泉始発と井川始発の列車が続行する設定となっている。

接岨峡温泉を出ると、再び山間を進み、いくつかのトンネルを抜けてレインボーブリッジを渡る。鉄橋脇の歩道には多くの人が並び、列車へカメラを向けていた。車窓にはエメラルドグリーンの接岨湖が広がり、湖と山の境目にはこの路線の旧線が延びている。
奥大井湖上に到着すると、さすがの人気で、10人前後がこの列車に乗り込んできた。一方でホームに残る人の姿も多く、2時間以上後の列車で千頭へ戻る人も少なくないらしい。往路でこの駅に降りた乗客の多くは、1本前の接岨峡温泉始発列車で既に戻っていると思われ、顔ぶれは往路とは異なっていた。後方の車両はやや混み始めたが、この車両は暖房がなく、車掌も積極的に誘導しないため、1人が乗車した以外に乗車はなく、たった2人の乗客を乗せ進むこととなった。

奥大井湖上を発車すると、長島ダムへと続く接岨湖を左に眺めながら走る。直射日光が強く撮影には苦労したが、エメラルドグリーンの湖面を何とか写真に収めることができた。眼下には旧線の線路も見える。この後訪ねた千頭駅のSL資料館には、旧線を走る列車と新線の試運転列車を同時に写した写真が展示されていた。新線への切り替えは1990年と比較的最近であり、旧線時代の写真や映像も今なお多く残されている。

ひらんだを経て、列車は長島ダムへ到着。対向ホームには井川行きの列車が停車しており、ここで行き違う。こちらは井川発の始発列車、向こうは井川行きの最終列車。井川発着の列車は1日2往復しかないため、この光景も一日一度きりである。時刻は13時過ぎだが、ここで降りて対向列車に乗らなければ、この日もう井川へ戻ることはできない。。
ここから列車は再びアプト式区間へ入っていく。往路では、上り列車が続く関係で、アプト式機関車は列車を押し上げた後、単機回送でアプトいちしろへ戻っていった。しかし、今回は、対向の井川行きを押し上げた機関車が構内で入換を行い、この列車の先頭へ連結される。奥大井湖上での観光時間を考慮したダイヤだけでなく、アプト式機関車の運用効率もまた、この路線のダイヤ構成を支える重要な要素であることが分かる。

数分の停車後、電気機関車を先頭に連結した列車は静かに発車する。やがてアプト式区間が始まる。後方を振り返ると、線路中央にラックレールが続いているのが見えた。先頭機関車は、車軸に取り付けられたピニオンをこのラックレールに噛み合わせながら進む。ラックレールは位相をずらした三条の歯から構成され、ピニオン側も同様にずらされている。これにより耐久性と安全性を高めているという。ラックとピニオンで急勾配を克服する方式をラック式鉄道と呼び、アプト式はその一方式である。

急勾配区間に差しかかると、長島ダムを車窓に眺めながら坂を下っていく。体が前のめりになる感覚からも、その傾斜の大きさが伝わる。奥には大井川に架かるコンクリート橋が見え、その光景は昨年乗車した野岩鉄道を思い起こさせた。トンネルと橋梁で山を貫く姿は、まるで高速鉄道のようであり、とてもトロッコ列車の設備とは思えない。このギャップもまた、アプト式区間の大きな魅力である。

アプトいちしろでは再び数分停車し、ここで電気機関車を切り離す。機関車はやがて奥泉方の引上線へ回送されていった。車窓には大井川鐵道の市代検車区が広がる。留置線には、先ほど牽引していた機関車とは別の車両も並んでいる。通常は単機牽引だが、客車が長い場合は重連となることもあるという。公共交通での旅ではなかなか難しいが、いつかこのアプト式区間を走る列車を間近で撮影してみたいと思った。

アプト式の電気機関車を切り離し、再びディーゼル機関車が先頭となった列車は、アプトいちしろを発車。すぐにトンネルへと吸い込まれた後、大井川の鉄橋を渡る。以後は車窓左手に川を眺めながら進んでいく。関の沢鉄橋で見えた導水管を通る奥泉ダムで取水された水は、この鉄橋のすぐ上流にある大井川ダム脇の発電所へ導かれている。アプトいちしろ発車後、進行方向右側にその発電所の姿をちらりと見ることができる。この奥泉発電所が、大井川水系では最も出力の大きい発電所となっている。

列車はやがて奥泉に到着し、ここで数分停車。その後到着した川根小山でもまた数分停車して、ここでは反対列車の接岨峡温泉行きと行き違いわ行った。先ほど長島ダムですれ違った列車は井川行の最終列車だったが、接岨峡温泉まではその後も2本の列車が設定されている。もう一本後の最終列車は、乗車している列車が千頭駅で折り返えす。

その後も列車は大井川に沿って山間を走る。各駅に停車するものの、乗り降りする乗客の姿はなく、淡々と千頭へ向けて進んで行った。徐々に日が傾き、右岸側を走るこの区間は日陰が増えてきた。接岨峡温泉付近で川を見下ろしていた車窓は、いつしか川と寄り添う眺めへと変わり、千頭が近いことを感じさせた。
やがて川根両国の吊り橋が見えると、両国検車区を横目に川根両国へ到着。井川線の旅も残りわずかとなる。列車は千頭の街へ入り、駅前の二つの踏切を通過して、終点千頭に到着した。

井川からちょうど2時間で千頭に到着した。千頭駅に留置されたトーマス機関車の出迎えを受け、ホームに降り立つ。時刻は14時20分。朝この駅を発ったときは穏やかな陽気に包まれていたが、冬の日差しはすでに傾き始めている。
国内唯一のアプト式区間を有する井川線を往復する旅。ほぼ全線にわたり大井川と並走し、上流へ進むにつれて変化していく川の表情が印象的な路線だった。とりわけ接岨峡温泉以北では、山の斜面を縫い、谷底をはるか下に望みながら進むスリルも味わえる。そして何より、途中の一部区間に設けられた国内唯一のアプト式区間の存在は、この路線の大きな個性である。その区間のみを行き来するアプト式電気機関車の動きを間近に見ることができたのも、今回の旅の大きな収穫だった。
国内には設備上さまざまな形態・方式の鉄道路線が存在する。アプト式は、筆者が最後まで未乗のまま残していた方式だった。これで国内にある主な方式はひととおり乗車したことになる。達成感を覚える一方で、もう新たな方式に出会うことはないのかと思うと、どこか寂しさを感じた。
千頭にのんびり滞在し、小さな街を歩いてみる

改札を出て、駅前へと戻る。往路は家山、千頭とそれぞれ15分ほどで乗り換えができ、とんとん拍子で井川線へと乗り継ぐことができた。実はこの時間、帰りの町営バスも約15分接続で運行されており、さらに家山で大井川本線の普通列車に接続している。
旅の計画を立てた際、この先の行程には二つの案があった。一つは、すぐに町営バスに乗車し、川根温泉ホテルで下車。川根温泉笹間渡まで歩き、普通列車あるいはEL急行で金谷へ戻る案。もう一つは一本後の町営バスに乗り、川根温泉笹間渡-家山間の乗車を翌日に回す案だった。
前者は乗り継ぎが非常にスムーズで、この日のうちに大井川本線を乗りつぶすことができる。その分、翌日は別の場所を旅する余裕も生まれる。一方で、接続が良すぎるがゆえに、千頭の街を歩く時間はほとんどない。せっかく大井川沿いを訪れたのに、街の空気に触れずに帰るのは少々もったいない。今回の旅の主役は大井川鐵道である。一日で沿線を離れてしまうのも、どこか物足りなさを感じた。
迷った末、今回のテーマを「のんびり」と定め、後者を選ぶことにした。目の前で発車するバスを見送り、一本後に乗車することにする。同時に大井川本線の川根温泉笹間渡-家山間は翌日に持ち越すことにした。
理想を言えば1、2時間後にバスがあればよかったのだが、次の便は3時間10分後までない。千頭で3時間30分あまりの空き時間が生まれた。以前の自分なら、迷わず効率優先で動いていただろう。しかし近年は、鉄道路線を縁として訪ねた街の雰囲気や空気感も味わいたいという思いが強くなっている。

まずは、乗ってきた列車の折り返しとなる接岨峡温泉行きを駅前の踏切から見送ることにした。千頭駅は大井川本線に対して頭端式だが、その脇を弧を描くように井川線が通っている。やがて川沿いへ抜けるため、駅前は井川線に囲まれたような構造となっており、なかなか珍しい。
やがて踏切が鳴り始め、列車がゆっくりと駅を去る。井川線には警報機・遮断機付きの踏切はほとんどなく、道路を跨ぐのは千頭駅前の二か所のみである。背の低い井川線の車両が踏切を横切る光景もまた、貴重なものに思えた。

列車を見送った後は、大井川を渡る川根大橋へ向かった。千頭の街は駅周辺の川の両岸へ広がっている。特に駅北側と対岸側に住宅が多く、対岸側が中心部になっているらしい。
井川線の踏切を渡り、坂道を登って、川根大橋を歩いて渡る。車道はトラス橋で、その隣を少し離れて歩道橋が架かっている。この時間、川沿いには強風が吹きつけ、足を止めたくなるほどだった。川幅は広く、河岸には土砂が堆積しているため、川沿いからは流れがほとんど見えない。しかし橋の上に立つと、小さいながらも確かな流れが見えてくる。風音の合間から、川のせせらぎがかすかに聞こえてきた。

川の対岸へ渡り、南北に延びる道を歩いてみる。交差点の角にはガソリンスタンドがあった。このあたりでは数少ない給油所なのだろう、ひっきりなしに車が入ってくる。店員さんも忙しそうだった。ここのあたりが千頭の中心部なのだろう。いまは住宅が軒を連ねているが、かつて商店だったと思しき民家もちらほら見かける。川根本町は静岡県内でも有数の茶どころ。駅前にも、こちらにも茶店があった。この時間、人通りは少ないが、ダンプカーとはよくすれ違う。大井川に堆積した土砂を運ぶ車だろうか。

いったん北へ歩き、小長井吊り橋という小さな吊り橋を渡る。そこから河川敷の小道へ下りると、やがて先ほど渡った川根大橋の下へたどり着いた。対岸の河川敷には井川線の線路が延びている。右手が川根両国方面。背後には標高1,827メートルの朝日岳がそびえる。その山麓にあるのが寸又峡温泉である。川根大橋を渡る県道77号は千頭で国道362号から分かれ、寸又峡温泉へと続いている。決して風光明媚というわけではないが、この街らしい景色を切り取ってみる。しばらくここから川を眺めたあと、駅の方へ引き返した。

駅へ戻り、今度は駅横の川沿いへ進んだ。駅と川の間には町営バスも通る道路があり、ここから千頭駅全体を見渡すことができた。ホームには元南海の21000系電車が「急行」のヘッドマークを掲げて留置されている。2022年の被災で取り残されて以来、ずっとこの場所で静かに眠り続けている。屋外留置のためか、車体の傷みも目立つ。背後では井川線の列車が行き交う一方で、大井川本線のホームは三年半前から時が止まったかのような静けさに包まれていた。
駅舎の横には「SL資料館」がある。入館料100円を支払い、かつての大井川鐵道の姿や記念品が並ぶ展示を見て回った。昔の千頭駅の様子や、浜松・静岡から千頭への直通列車運転開始時の写真など、興味深い資料が多い。
大井川鐵道は、もともと貨物輸送が盛んな路線だった。現在もSLやELが多く在籍しているのはその名残である。ダム建設資材や木材の輸送を担っていたが、次第に貨物は減少していった。沿線交通の維持が課題となる中、往年の名車やSLによる観光誘致へと舵を切り、その流れは今も続いている。単なる交通機関ではなく、地域の産業や観光を支える存在でもあることが、資料館の展示から伝わってきた。

その後、駅近くの河川敷の公園に腰を下ろし、日が傾いていく千頭の川沿いをぼんやりと眺めていた。近くに学校があるのだろう、背後では帰宅する子どもたちの声が山あいに響いている。夕方が深まるにつれ、駅前を行き交う車もわずかに増え、それまでひっそりとしていた街に、ゆるやかな生活の気配が戻ってきた。観光地を巡る旅も嫌いではない。けれど筆者は、こうしてその土地の日常の中に身を置く時間のほうが、どうやら性に合っているらしい。
二十代でこんなことを言うのは早いのかもしれないが、最近「静かであること」は豊かさなのではないかと思うようになった。いや、思うというより、もはや確信に近い。
スマホを開けば、絶え間なく情報が流れ込んでくる。日々目にする情報量は膨大である。それらを大量に受け取りながら、なお満たされないかのように次を探してしまう自分がいる。気づけば、頭の中は常に何かの音で満ちている。
旅の時間とは、そうした日常からの小さな離脱なのだと思う。迫り来る情報の波から、ひととき身を引くための逃避でもある。先ほどの井川でも、そしてここ千頭でも、あえてスマホをポケットにしまい、目の前の景色と耳に届く音に身を委ねてみる。
自然も、ありのままの街の姿も、こちらに何かを訴えかけてはこない。感動を演出することもない。それをどう受け取り、どう解釈するかは、訪れた者に委ねられている。その余白を味わうことは、情報があふれる今の社会では、かえって難しくなっているように感じる。
こうして街の片隅に腰掛け、景色を眺め、音に耳を澄ます。そのとき感じるのは、世の中の喧騒をひとまず棚に上げ、今ここにあるものと向き合える時間の小さな幸せである。この、言葉にしきれない余白を楽しむこと。それもまた、筆者にとっての旅の醍醐味である。

やがて太陽は山の端に沈み、大井川沿いもゆっくりと闇に包まれていった。街灯や車のライトが次第に輪郭を帯び、川沿いには相変わらず、ときおり強い風が吹き抜ける。何気ない千頭の一日は、こうして静かに暮れていく。
名残を惜しみつつ駅へ戻り、窓口前の自販機でコーヒーを買い、それを片手に駅前へ出る。16時台の千頭駅には、接岨峡温泉発と井川発の列車が相次いで到着する。到着後、客車は駅構内の留置線へと入れ換えられ、機関車は単機となって川根両国の車両基地へと戻っていく。
薄暗くなった駅前を、機関車が一両だけで走り去っていく。その後ろ姿を見送っていると、駅前に設置されたイルミネーションが、闇の深まりとともにほのかに輝き始める。日が沈むと、途端に冷え込みが増した。コーヒーの温もりが、じんわりと身体に沁みわたった。
町営バスで宿泊する川根温泉ホテルへ

さて、バスを待っているうちにすっかり日も暮れ、時刻は17時30分を回った。駅前のバス停にも、ぽつりぽつりと乗客が姿を見せ始める。筆者を除けば、直前に到着した井川線の列車からの乗り換え客のようだった。
やがて踏切の先から家山駅行きのバスが姿を現す。3時間余りを過ごした千頭を後にする。次に訪れるのは、2029年以降に大井川本線が全線復旧してからになるだろう。そのときは金谷から列車でやって来るはずだ。きっとこの日、河原でのんびりと過ごした数時間を思い出すに違いない。次もまた、あの河原で静かな時間を味わえたらとそう思いながら、千頭を発った。
乗車記録 No.15
川根本町町営バス家山-千頭線 家山駅行
千頭駅→川根温泉ホテル ※運行:大鉄アドバンス
復路は終点の家山駅までは乗車せず、この日宿を取っている川根温泉ホテルまでの利用である。夜間走行とはいえ、時刻は18時前後。ちょうど帰宅時間帯にあたり、バスは徳山や上長尾で乗客を乗せながら家山方面へと進んだ。
闇に沈んだ大井川の流れはほとんど見えない。それでも対岸には集落の明かりが点々と灯り、川沿いの道を走る車のライトが列をなして続いているのがわかる。千頭駅前からおよそ35分、バスは川根温泉ホテル前に到着。ここで下車し、そのまま大井川鐵道が運営する川根温泉ホテルに宿泊した。
今回は温泉宿ということで、ホテルへの宿泊も旅の楽しみとなった。月曜日ということで、宿泊する人も多くはなく、大浴場も貸切状態だった。温泉に身を沈めると、2日間の旅の疲れがゆっくりとほどけていく。入浴後はサービスのアイスキャンディーを食べてしばしくつろぐ。いつも基本的にはビジネスホテルにしか泊まらないが、たまにはこういう宿に泊まるのもいいなと思いつつ、ホテルでの静かな時間を過ごして、2日目の旅を終えた。
続く