【管理人室】情報と仲良くなるために

情報は敵ではない。だからこそ、付き合い方を考えたい

 現代人が一日に受ける情報量は、江戸時代の一年分とも言われています。スマートフォンは便利な反面、その膨大な情報を、ときには自分の許容量を超えて受け取る道具にもなります。この情報過多の時代に生きる私たちは、限られた時間や心を守るために、情報とどう向き合うのかという難しい課題を突きつけられています。
 私は、情報そのものが嫌いなわけではありませんし、遮断したいとも思っていません。むしろ、新しいことを知り、自分の世界が広がる瞬間は好きです。だからこそ、情報とは仲良く付き合っていきたいと思っています。
 しかし、現代の情報環境は、その理想とは少し違います。スマートフォンを開けば、ニュース、SNS、おすすめ記事、動画、広告などが次々と流れ込み、自分の意思とは関係なく目に飛び込んできます。情報が多いこと自体は悪いことではありません。しかし、それらを無制限に受け取り続けると、人は確実に疲弊します。
 現在主流となっている情報サービスの多くは、「利用者に長く滞在してもらうこと」を目的に設計されています。関連記事やおすすめ記事が次々と表示され、必要な情報だけを読もうと思っていても、気が付けば関係のない記事まで読み続けてしまうことは珍しくありません。情報を得るためにアプリを開いたはずなのに、いつの間にか情報に振り回されている。この状態では、とても情報と仲良くなれているとは言えないでしょう。
 私が情報との付き合い方を真剣に考えるようになったきっかけは、コロナ禍でした。思い返してみてください。毎日夕方になると、「今日の感染者数」が速報で流れていたあの頃を。今振り返れば、あの状況は少し異常だったように思います。ニュースサイトを開けば、どこもコロナ関連の記事で埋め尽くされ、まるで情報のほうが感染しているのではないかと思うほどでした。
 この頃から私は、「情報とはどう付き合えばいいのだろう」と真剣に考えるようになりました。それは、自分の心を守るためであり、自分の明日を、自分自身の手でつくっていくためでした。
 私は思い切ってニュースアプリをアンインストールし、ニュースと距離を置く生活を始めました。さらにSNSとの付き合い方も見直し、受け取る情報を自分で選ぶようにしました。すると、不思議なくらい心が軽くなりました。世の中で起きている出来事は何も変わっていません。しかし、それとの向き合い方を変えただけで、自分の毎日は確かに変わったのです。

私たちは「情報」ではなく「興奮」を求めている

 そもそも、私たちはなぜこれほどまでに情報を追い求めてしまうのでしょうか。その理由は、私たちが「退屈」を避けようとする生き物だからです。「暇と退屈の倫理学」(新潮社)の中で、國分功一郎は「退屈の反対は快楽ではなく興奮である」と述べています。
 私はこの言葉を知ったとき、現代の情報社会を非常によく表していると感じました。私たちは普段、「楽しいこと」を求めているようでいて、実際には「興奮」を求めています。そして脳は、興奮できるものであれば、その内容を選びません。
 心温まる話題も、芸能ニュースも、炎上も、悲惨な事件も、脳にとってはどれも「刺激」です。だから無意識に情報へ触れていると、良い情報も悪い情報も区別なく追い続けてしまいます。SNSやニュースアプリを開いたつもりが、気が付けば何十分も経っていたという経験は、多くの人にあるでしょう。
 だからこそ、情報との付き合い方には「自分で選ぶ」という意思が必要です。アルゴリズムに興味を決めてもらうのではなく、自分にとって有意義な情報、そして、どうせ時間を使うのであれば、読んでいて前向きになれる情報を選ぶ。その積み重ねが、情報との健全な関係につながるのだと思います。

情報は「重要かどうか」ではなく「自分が関われるか」で考える

 私は、情報を大きく三つに分けて考えています。一つ目は、自分が生きていくために必要な情報。二つ目は、自分一人では変えることが難しい情報。そして三つ目は、自分では変えることのできない情報です。情報そのものに優劣があるわけではありません。私が大切だと思うのは、その情報に対して、自分がどれだけ関われるかです。
 例えば、海外で起きている戦争や紛争は、世界にとって非常に重要な出来事です。日本で暮らす私たちも、物価やエネルギー価格などを通じて影響を受けます。しかし、その戦況を一日中追い続けたところで、私たちが戦争を止めることはできません。
 政治も同じです。私たちには選挙権があり、一票を投じることで社会に参加できます。選挙へ行くことはとても大切です。しかし、普段から政治活動をしているわけではない人が、自分の影響力以上に政治情報を追い続け、批判や対立を毎日見続ける必要があるでしょうか。私たちは一票しか持っていないのに、その何倍もの情報の重さを背負ってしまっていることがあります。
 この考え方は、投資家のウォーレン・バフェットが語る「能力の輪(Circle of Competence)」や、スティーブン・R・コヴィーの「関心の輪」「影響の輪」という考え方にも通じています。
 バフェットは、自分が理解し、自分の力を発揮できる「能力の輪」の中に集中することが長期的な成果につながると述べています。また、コヴィーは、自分では変えられない「関心の輪」ではなく、自分が影響を及ぼせる「影響の輪」に意識を向けることの大切さを説いています。
 私は、この考え方は情報にも当てはまると思っています。世の中で重要な情報と、自分にとって必要な情報は必ずしも一致しません。海外経済の動向によって仕事が大きく左右される人にとっては、それは毎日確認すべき重要な情報でしょう。しかし、そうした分野とほとんど接点がない人にとっては、自分一人では変えられない情報に近い存在になります。
 一方で、自分が生きていくために必要な情報は積極的に受け取るべきです。仕事に必要な知識、趣味を深める情報、家族との生活に役立つ情報、自分の健康を守る情報など、自分の明日をつくるための情報です。そこには時としてネガティブな情報も含まれますが、自分の判断や行動につながるのであれば、受け取る価値があります。
 情報と上手に付き合う第一歩は、「世の中で重要かどうか」を基準にすることではありません。「その情報は、自分の明日をつくることにつながるのか」「その情報に対して、自分は何か行動できるのか」。まずは、そこから考えてみることが大切なのだと思います。

情報は流しそうめんではなく、ポストに届くくらいでいい

 私は、情報とは流しそうめんのように流れてくるものを次々とすくい上げて咀嚼するものではないと思っています。むしろ、家の戸は閉めておき、本当に必要な情報だけがポストに届くくらいの距離感がちょうどいいのではないでしょうか。まずは、世間を絶えず流れ続ける情報との間に一枚の壁を作り、自分に必要な情報だけが自宅のポストへ届くような仕組みをつくることが大切です。
 しかし、そのポストにも、チラシや広告、興味のないポスティング、本当は受け取りたくない情報が次々と入ってきます。時には、誰かが無理やり押し込んでいくような情報もあります。だからこそ、ポストを開ける前にそれらを取り除き、本当に必要な情報だけが届くようにフィルタリングすることが必要です。
 情報を減らすことが目的ではありません。自分にとって必要な情報だけが、静かに届く環境をつくること。私は、それこそが情報と仲良く付き合うための第一歩だと考えています。ここまでが、私が情報との付き合い方について考えてきたことです。
 では実際に、私はどのようにして「自分に必要な情報だけが届く環境」を作っているのでしょうか。次は、その具体的な方法について紹介したいと思います。

実際に私がやっていること

 ここまで、「情報との付き合い方」という考え方について書いてきました。しかし、これは「情報を遮断して生活しましょう」という話ではありません。むしろその逆です。必要な情報はきちんと受け取りながら、不必要な情報だけを減らす。そのために、私はいくつかのルールを決めています。

1. テレビは基本的に見ない

 テレビは、とても便利な情報媒体です。しかし、その一方で、流しっぱなしにしていると、良い情報も悪い情報も、必要な情報も不必要な情報も区別なく受け取ることになります。私は特にニュース番組やワイドショーを見ないようにしています。
 バラエティー番組やスポーツ中継など、見たい番組だけを見るのが理想だとは思います。しかし、長時間のスポーツ中継では途中でニュースが挟まることも多く、意図せず情報を受け取ってしまいます。そのため、現在はテレビ自体をほとんど見ることはありません。

2. ニュースサイトを使わない

 私はニュースサイトも基本的には利用していません。ニュースサイトは様々な媒体の記事を一覧できるため、一見すると非常に便利です。しかし、そのUIは「いかに長く利用者に滞在してもらうか」を前提として設計されています。
 トップページには関連記事やおすすめ記事が並び、一つの記事を読み終えると、また別の記事へ誘導されます。その繰り返しによって、気付けば何十分もニュースを読み続けてしまいます。特にYahoo!ニュースは、多くの人が利用している便利なサービスですが、同時にニュース漬けになりやすい構造でもあります。
 Yahoo! JAPANをブラウザのトップページに設定している方も多いのではないでしょうか。検索をするだけのつもりで開いたのに、その下に並ぶニュースが目に入り、ついクリックしてしまう。そして、そのまま関連記事を読み続けてしまう。さらに、Yahoo!天気のようなニュースアプリではないサービスにも「地域の話題」としてニュースが掲載されており、天気を確認するだけのつもりでも情報へ誘導される仕組みになっています。近年では個人が運営するニュースサイトの記事まで表示されるようになり、以前にも増して情報量は膨大になっています。
 私は、こうした環境に身を置くこと自体が疲労の原因になると感じ、ニュースサイトを見ることをやめました。

3. SNSも基本的には見ない

 SNSについても同じ考えです。私自身、Instagramで情報発信は続けていますが、投稿にはMeta Business Suiteを利用しており、Instagramアプリは基本的に開きません。
 XやInstagramなどのSNSは、いわゆる「アテンションエコノミー」の代表例です。利用者の注意を引き付け、できるだけ長く滞在してもらうため、「おすすめ」や「あなたへのおすすめ投稿」が次々と表示されます。本来見たかった投稿を見終えても、新しい投稿や動画、話題が次々と現れ、終わりがありません。
 もちろん、SNSには価値があります。旅行先の現地情報やイベント情報などは、SNSだからこそ得られるものもあります。しかし近年は、時系列ではなくアルゴリズムによって人気の投稿が優先表示されるようになり、必要な情報を探すツールというよりも、長く見続けさせるためのツールへと変化してきたように感じています。

4. 本という情報源を大切にする

 テレビも見ない。ニュースサイトもSNSも見ない。では、何を見て情報を得るのか。私が一番大切にしているのは、読書です。
 本は、一つのテーマについて時間をかけて編集され、多くの情報が整理された上で世に出ています。そのため、一つの事柄について体系的に学ぶことができ、ニュース記事を何本も読むよりも深い理解につながります。
 もちろん、読める量だけを比べれば、ニュース記事やSNSの投稿の方が圧倒的に多いでしょう。しかし、大切なのは「どれだけ多くの情報に触れたか」ではありません。一つの事柄にどれだけ深く向き合い、自分自身の経験や価値観と照らし合わせながら考え、それを自分の中へ取り込めるかだと思っています。
 情報を大量に消費することと、知識を身に付けることは必ずしも同じではありません。だから私は、情報収集の中心には、できるだけ本を置くようにしています。

最新情報はRSSを活用し、欲しい情報だけを取得する

 さて、ここまで「見ない」という話が続き、本を情報源の中心にすると述べました。しかし、本にも一つ欠点があります。それは、タイムリーな情報には向いていないということです。
 例えば、私は鉄道や飛行機が好きですが、読書だけに情報源を絞れば、新型車両の登場やダイヤ改正といった最新情報は入ってきません。こうした情報は、どうしてもニュースやSNSを通して知ることになります。
 一方で、ニュースサイトやSNSを利用すると、欲しい情報だけではなく、不必要な情報まで一緒に受け取ることになります。鉄道のニュースは欲しい。でも、それ以外のニュースはいらない。SNSでも鉄道の情報は欲しいけれど、炎上や対立の話題までは見たくない。私自身、この答えを見つけるまでに試行錯誤してきましたが、まずその第一段階として、サイトの更新情報を取り込むツールを用いることにしました。
 インターネットにはRSSという仕組みがあります。サイトが更新されると、その更新情報だけを配信してくれる仕組みです。RSSを利用すれば、ニュースサイトを開かなくても、自分が登録したサイトの記事だけを受け取ることができます。
 私はこのRSSを取り込むツールとして、FeedlyというRSSリーダーを利用していました。非常に優れたサービスでしたが、一つだけ気になっていたことがありました。それは、タイムラインの横に「Explore」があり、話題の記事やトレンド情報が並んでいることです。せっかく自分で選んだ情報だけを読もうとしているのに、そこからまた興味のない情報へ引き込まれてしまうことがありました。
 最終的に私がたどり着いた結論は、「だったらニュースフィールドを自分で作ればいい」というものでした。

AI×ノーコードツールでニュースフィードは手軽に自作できる

 以前であれば、このようなアプリを作るには本格的なプログラミングが必要でした。私自身、Google Apps Script(GAS)で簡単なコードを書くことはできますが、さすがに一から開発するくらいなら、Feedlyを使った方が手軽だと考えていました。
 しかし現在は、AIがコーディングを支援してくれるようになり、さらにAppSheetのようなノーコードツールも充実しています。そのおかげで、個人でも短時間で自分専用のアプリを作れる時代になりました。アテンション・エコノミーに翻弄されることのない情報収集環境を、自分自身の手で構築できるようになったのです。
 私はGoogleスプレッドシートをデータベースとして利用し、GASでRSSを定期的に取得して、そのデータをAppSheetで表示することで、自分専用のニュースフィードを作りました。制作時間は半日ほどでした。以前なら専門的な知識が必要だったことも、今ではAIやノーコードツールのおかげで、個人でも短時間で十分実現できるようになっています。
 自作アプリの基本的な機能はFeedlyと似ていますが、独自の機能も盛り込んでいます。その代表的な機能が、NGワード・OKワード機能です。RSSを取得する際、タイトルにNGワードが含まれる記事は自動的に除外します。一方で、「中国」は除外したいけれど、「中国地方」や「JRバス中国」は残したい、といったケースに対応するため、OKワードも設定できるようにしました。これらのワードはアプリ上から自由に追加・削除でき、その時々の関心や状況に応じて柔軟に変更できます。一般的なニュースアプリでは、このような細かなフィルタリング機能はほとんどありません。自作だからこそ、自分にとって本当に心地よい情報環境を作ることができました。
 本でじっくり学ぶ情報と、RSSで素早く追いかける情報。その両方を使い分けることで、私は自分にとってちょうどよい情報環境を整えています。

「見ない」と決めるだけではなく、見られない仕組みを作る

 前の章で書いたように、私たちの脳は刺激を求めています。だから、「今日は見ない」と決めても、気が付けば無意識にXやニュースサイトを開いていることがあります。これは意思が弱いからではありません。そうなるように設計されているからです。
 実践してみると分かりますが、テレビやSNSを見ないようにするのは、想像以上に難しいものです。これまでの依存度が高いほど、やめることは難しくなります。その感覚は、お酒やたばこにも少し似ています。「今日から見ない」と決めただけで、それらを見ない生活へ切り替えることは簡単ではありません。
 だからこそ、私は「見ない」と決めるだけではなく、「見られない仕組み」を作ることも大切だと思っています。ブラウザの拡張機能で特定のサイトをブロックしたり、アプリを削除したり、必要であればアカウントそのものを削除したりする。意思の力だけに頼るのではなく、環境そのものを整えることが重要です。

情報収集について自立・自律する

 さて、ここまで情報過多の時代における情報との向き合い方について、私なりの考え方と実践を紹介してきました。
 最初にも書いたように、私が目指しているのは、情報を嫌うことでも、情報に流されることでもありません。自分で主体的に情報を取捨選択し、必要な情報を能動的に集められる環境を整えることです。言い換えれば、「情報収集について自立・自律する」ということです。
 私たちの時間には限りがあります。そして、私たちの能力にも限りがあります。だからこそ、その限られた時間や能力を、自分ではどうすることもできない情報に使い続けるのではなく、自分の人生をより豊かにする情報へ使いたい。それは、自分の時間を無駄にしないためでもあり、自分の心を守るためでもあります。
 私がここまで紹介してきた方法は、そのための一つの実践例にすぎません。読書を中心にする人もいれば、RSSを活用する人もいるでしょうし、まったく別の方法を選ぶ人もいるでしょう。大切なのは方法ではなく、「自分はどんな情報と付き合いたいのか」を自分自身で考えることです。
 情報と仲良く付き合っていく。そのためには、情報が流れてくるのを待つのではなく、自分から情報を選びに行く姿勢が大切なのだと思います。
 情報があふれる時代だからこそ、情報を受け身で消費するのではなく、自ら選び取る。その積み重ねが、自分の時間と自分の心を守り、ひいては情報と仲良く付き合っていくことにつながるのではないかと私は考えています。