【管理人室】趣味と経済性

YouTubeが台頭して以降、趣味を活用して収益を上げることも可能になりました。また、インスタグラムなどをはじめとするSNS、そしてそれ以前からあるブログという形式を使って、情報発信することはもはや当たり前の時代です。そうしたなかで、以前のように趣味を純粋な気持ちで楽しめなくなったような気がしています。というのも、心のどこかで、"何らかの形で旅費の元を取らなくてはならないのではないか"とか、"ただただ出費するだけの旅行は合理的なのだろうか"という思いがちらつく場面が以前より増えたように思うからです。
趣味で収益を得ることができ、それでまた趣味をできればいいといえば確かにいいのかもしれません。自分の満足のために趣味にお金を使うわけで、そこに流したお金というものが直接的に返ってくるわけではありませんからね。また、人から"そんなことにお金を使って何の意味があるのかわからないない"と言われればそんな気もしてきます。自分のためにしかならない趣味というものは無駄なものなのでしょうか。
私は、趣味とは、人生の豊かさを定義し、独自の価値の判断基準を磨いていく活動だと思っています。
確かに経済的・合理的であるという観点から見ると、旅行に行くという行為は無駄のように見えます。しかし、その認識は大事なことを見落としていると思うのです。それは、"経済的・合理的であること"と"価値があること"は必ずしもイコールではないということ。私たちはこの資本主義社会の中で、このことをすっかり忘れてしまっていると思います。私自身、以前は確かにあらゆる場面で、経済性を最優先で判断してしまうことが多かったように思います。
価値というのは、どの観点からそのものを見たかによって決まり、一方で価値がないと判断されても、別の観点から見れば価値があると判断されることはよくあることです。美術や芸術がその最たる例でしょう。経済性や合理性が価値判断の全てではありません。
しかしながら、現代社会は価値の判断基準が経済性という部分に固定されてしまい、ついつい損か得か、合理的か無駄かという観点で物事の価値の有無を判断してしまいがちです。お金にならなくても「いいね」というリアクションがその代わりになっているのが現在のSNS。いいねの数を追いかける余り、いつの間にかネタの追いかけまわしになっていたというのはよくある話です。
何をもって人生が豊かだと定義するのか、その中の一つの指標として経済的・合理的という尺度を用いるのは構いませんし、そういう側面はいくらか持ち合わせておきたいところいではあります。しかし、その尺度をあらゆる場面に適用しようとして、すべてのことを経済的な尺度で判断していないかについては、よく考えなくてはならないように思います。
そもそも趣味にそうした経済性を持ち込むこと自体が間違いなのではないでしょうか。確かに、経済性を大きく損ない、趣味で生活が立ち行かなくなるということは避けなくてはなりません。趣味というのは他人からすれば、とても無駄で非合理的なものに見えます。しかし、そもそも趣味は経済性の観点から見れば非合理的なのは当然の話。なぜなら趣味を楽しむ本人は経済性とは、違うところから趣味について見ていますからね。例えば旅行なら、いろんな土地の風土や文化を知れる、人との出会いがある、おいしいものが食べれるなどなど、人それぞれに旅行を有意義だと思う価値の判断基準が存在しています。
このように趣味に対して、様々な価値判断基準をもち、経済性とは別の基準を磨くことは、自分の人生を豊かにすることに繋がっている気がします。自分で自分がやることに対して満足していく、一見すれば自分本位すぎるように思われるかもしれませんが、結局人生が豊かどうかは自分が決めるものです。どれだけお金を稼いでも、モノに溢れた生活をしても、もしくは人から認められても、自分が自分の人生を豊かだと思わなければ、豊かな人生などやって来るはずありません。経済性の高さと人生の豊かさをイコールで結んでしまうとあまりに不安定です。実際歳を取ってから、それに気づいて精神的に思い悩んでしまう人も多いと聞きます。趣味は人生の豊かさを自分自身で定義し、他人から左右されない独自の価値基準を磨いていく活動ではないでしょうか。
経済性という観点は確かに現代社会では大切なものです。しかし、その中で私たちは経済性以外にもたくさんある価値を判断する観点を忘れてしまっています。経済性で考えれば、よく働き、出費は最小限にして貯蓄したり投資するのが一番いいでしょう。現代社会の中で、経済性で考えるクセがついた私たちですが、経済的でないものは=無価値という判断をしていないか、自分にとって価値があるモノとは何かを考えて生きていかなくてはならないと思っています。
裏を返せば、趣味を持つということは、そうした価値の判断基準を経済性以外にもたくさん持つことができる素晴らしいことです。そういうマインドセットで趣味を楽しみたいものですね。