【管理人室】小さな旅から多様性を学ぶ

今回は小さな旅から多様性を学んでいこうと言う話です。
たまに旅行をどこまで遠くに行ったかという競争だと思っている人がいます。東京よりも北海道にいった方が勝ち(九州の話)とか、韓国よりもアメリカに行った方が勝ちとか、そんな感覚の人です。確かに東京よりも北海道、韓国よりもアメリカに行く方が、難易度は高いのは事実ですが、遠くに行ったらすごいのであれば、ブラジルに行った人が優勝なのでしょうか。そもそも旅行をそうした競争だと思っている時点で、旅行が趣味というより、人と競うのが趣味なんだろうなと思います。
私は九州に住んでいますが、時に九州内を放浪してみたり、北海道に行ったみたり、関西を旅してみたり、自由気ままに旅に出ています。しかし、特にコロナ禍で遠くに行けないときは、近場を何回も旅しました。近場でも、行ったことのない街や乗ったことのない交通機関がたくさんありました。今思うと、自分が住む九州を再発見するいい機会だったなと思います。九州内の鉄道路線は完乗済みでしたので、バス路線に乗車する機会が多かったのですが、結構知ってるはずだった九州にも、知らない街がたくさんあるんだということに気づかされましたし、バス旅の楽しさを知るきっかけにもなりました。
どこに旅に行こうが、自分の生活圏から出たなら、それは旅ではないでしょうか。自分の普段生活している街、仕事している街、そして通勤に使う路線や道から離れて、隣町に行ってみる。これも十分旅になると思います。隣町とは言え、侮りなかったりします。隣り合っていても、自分が住んでいる街とは、文化圏が違ったり、方言が違ったりすることもあります。そうした違いを学んで帰って来るのも、小さな多様性の学習だと思います。
世界の多様性について考えようと昨今叫ばれていますが、私は国内でも多様性を学べる材料はたくさんあると思います。確かに人種や基本的な文化は同じかもしれません。でもよく見てみると、小さな違いがたくさんあることに気づきます。アイヌや琉球など、歴史的な歩みが異なる地域があったり、関西のようなお笑いの文化が芽生えるくらいに明るい地域性の土地があったり、地方それぞれに雑煮の味付けが異なっていたりしますよね。また、交通機関では、場所によりバスの乗り方が違ったり、九州と北海道では駅や電車の造り自体が違います。また、同じ地方の中でも、私鉄各社にはそれぞれ個性があります。その私鉄各社が造る街は、その私鉄のブランドイメージが投影されています。そのため、同じ地域内でも、沿線となる路線が違うだけで、街や文化が違う場合もあるのです。日本の中にも多種多様な文化があって、それぞれ似ているけれど、小さな違いがあります。そうした小さな違いを肌で感じるのも、多様性を理解するにあたっては、大事なことではないでしょうか。
確かに何もかもが違う場所へ行けば、学ぶことはたくさんあります。しかし、必ずしも遠くに行かなければ、学ぶものがないわけではありません。小さな違いに気づく感度を上げると、たとえ小さな旅であっても、驚きや発見があります。遠くに行ったら勝ちという競争意識ではなく、小さな旅も世界の多様性を理解する一歩だと思って、旅行に出かけたいものです。