【管理人室】旅行記と情報発信のジレンマについて

私は旅行から帰ってきたら、基本的に旅行記を書くようにしています。旅行記を書き終えるまでが旅。そんな気持ちで書いています。旅行記にはいくつか書き方がありますが、私は自分の旅のスタートからゴールまでの一連の流れを書き、その中でエピソードや昔の旅行の話、また路線についての概要や旅行中の出来事を書くスタイルをとっています。私にとって旅行記を書く最大の目的は、自分の旅を記録しておくためです。「旅忘録」というサイトタイトルにしているのは、その目的を忘れないようにするためです。もちろん自分の旅が誰かの旅の参考になったり、旅行の面白さを共感してくれる人がいればいいなと思って書いている側面もあります。どれくらいの方が読んでくださっているかは分かりませんが、どこの誰かもわからない人の文章もめちゃくちゃな旅行記を読んでいただいていることには感謝しかありません。本当にありがとうございます。
さて、旅行記を書くということは、自分が旅したことや旅行前まで知らなかったことを自分の言葉で書ける幸せな経験です。旅行に行ってないのに旅行記を書くことはできません。旅行記を書いていると、旅行中の幸福感、満足感がよみがえってくるようなそんな感覚にしばしば陥るものです。しかし、書くにあたっては、それが誰に向けたものなのか、何を書きたいのかをはっきりさせておかなければなりません。そこが曖昧なままで旅行記を書き始めると、だんだん旅行記を書く目的や、そもそも旅する目的というのが行方不明になって悩むことになります。今回は、旅行記の書き方について取り上げながら、旅行記を書く人が陥るジレンマについて書きたいと思います。
・旅行記の書き方と長短
旅行記には大きく分けて2つの書き方があります。一つはこのサイトで公開しているような自分の旅の詳細を書いていくもの。もう一つは、訪れた観光地や飲食店、ホテル、または乗車した列車などについてレビューするものです。
自分の旅の詳細を書いていく記事は、あくまで自分の企画した旅の報告を行うものであり、自分らしさを表現できる場ともいえるでしょう。乗車した列車や、訪れた土地について、自分なりの切り口で語ることができ、自分なりの価値観・世界観を表現できることがメリットです。
しかし、アクセスは決して多くありません。当たり前ですが、ネットで旅先の情報を調べようとして誰かの旅行記が出てきても、見ている側は基本興味がありません。誰かに見てもらうことをモチベーションにして、こうした旅行記を書こうとすると、閲覧数が伸びずに大体続きません。自分のためをモチベーションにして書くことが大前提です。また作成するには、結構時間がかかります。多くの人に見てもらうことをモチベーションにしていると、おそらくコスパの悪さで挫けることになります。旅について記録しておきたいとか、自分を表現したいという人にはこちらがおすすめです。しかし、活発な情報発信をしたいとか、多くの人に見てもらいたい人にはおすすめできません。多くの人に見てもらうためには、見る側のニーズに合う役立つ記事を書く必要があるため、レビュー的な記事がおすすめです。
私自身は、その人の切り口で、旅について書かれた旅行記も大好きです。同じ場所を旅した人が、そこで何を思い、何を感じたのかを知れるものって意外と貴重ですからね。もしかすると見ている人の大半は、そんな情報は求めていないとか、あなたの旅には興味がないと思っているかもしれません。しかし、自分の旅に共感してくれる人が、千人に1人でも1万人に1人でもいれば、それだけでありがたいことです。アクセス数は伸びなくても、記事を読んでくれる人は必ずいますし、共感してくれる人もいます。基本は自分のために書き、そして共感してくれる誰かへのお裾分けとして旅行記を書く、そのくらいをモチベーションに据えるといいと思っています。
さて、対するレビュー的な旅行記の書き方ですが、こちらにも長短があると思います。長所は、やはり多くの人に見てもらえることであり、役に立てることでしょう。多くの人に見てもらえることは、書くモチベーションにもなります。もちろんですが、もしも旅行記ブログで稼ぎたいと思っているのなら、基本こちらを選ぶことになると思います。一方でデメリットは、旅行が一種の取材のようになってしまうことです。私も以前は別のブログをやっていました。ブログをやっていると、やっぱりアクセス数というものが気になります。それを伸ばそうとすれば、自分のやりたいことより、注目を集められるものを選びがちになってしまうのです。
・趣味の情報発信のジレンマ
このように、閲覧数を伸ばしたいのであれば、見る側の需要に応えるような記事でなければなりませんし、自分の旅がしたいのであれば、閲覧数を伸ばすことをモチベーションしてはいけません。私はこれを”旅行記のジレンマ”と呼んでいます。もちろん自分の旅を多くの人に見てもらえれば、このジレンマに悩まされることはありませんが、そんなことは有名人でもない限り不可能です。このジレンマは、趣味に関する情報発信全般にも当てはまることだと思います。
どちらの書き方を選ぶかは、人それぞれ。見てる側の需要の高さはレビュー記事が上回るかもしれませんが、旅行の面白さや自分らしさを伝える旅行記の方が、書く人それぞれの味が出て面白いものです。有益さや便利さで情報の善し悪しが判断される時代ではあるものの、私はどちらがいい悪いということはないと思っています。自分が旅行記を書きたい目的は何かを考えて決めること。そして書き始めたら、その目的に沿って記事を書き続けることが大事です。また、どちらの書き方をするかによって、自分の旅行のスタイルが変わってくる可能性があります。そこも念頭に置く必要があります。目的を考えるとき、ついつい人の目を気にしてしまいがちになります。多くの人に見られたいからということを理由にレビュー的な記事を書こうと決心しても、本心では自分らしい旅がしたいと思っていれば、旅先でジレンマに悩むことになります。人に見られるか見られないかではなく、自分のやりたいことはどちらかで判断すべきです
私も一時期、どちらの書き方をするかで右往左往していた時期がありました。昔やっていたブログは旅行記ではなく、列車撮影メインのブログでしたが、閲覧数を伸ばすことばかりに注力してしまったため、取材のように列車の撮影に出かけることになり、自分の趣味に自分が疲れるという結果を招いてしまいました。その時、何のため、誰のために趣味をしているのかということを一度立ち止まって考えてみることにしました。趣味は自分のために行う、良くも悪くも自己満足なものというのが、私の考えです。人から見られることや評価されることで自分の趣味の善し悪しを判断するのではなく、まずは自分が自分のやっていることに満足することを目指そうと思いました。そう決めてからは、ジレンマを抱えることなく、情報発信ができるようになったと気がします。私の場合は、自分の旅を書く方が性に合っていたということです。もちろん人によって趣味観は異なります。レビュー記事を書いて多くの人の役に立つことを目指している人もいるでしょう。その場合は、人の役に立つことをしっかり目的に据えることが大切だと思います。
ここまで見て来たように、レビュー的な記事も自分の旅を書き記した記事にも長短があります。大事なことは、旅行記を書くこと、ひいては旅行することの目的を明確にしておくことです。目的が明確でないと、旅行記もどっちつかずになってしまい、ジレンマに悩むことになります。旅行記を書くモチベーションを高め、楽しく書くためにも、目的をしっかりもっておきたいものです。
このジレンマは、おそらく旅行記を書いている多くの人が抱えているのではないかと思います。私はネット上にあるレビュー的な旅行記も自分の旅を書いた旅行記も、旅行の前後で参考にさせてもらっています。どんな形であれ、旅行の楽しさを伝えたいという思いは変わらないはず。そんな人たちを応援したいという気持ちで今回の記事を書いてみました。自分に合った方法で情報発信できると、それが旅行後の楽しみになります。私も自分の目的に沿って、これからも変わらず、自分の旅をして、自分の旅について書き続けたいと思っています。