〔今日の交通〕JR西日本 芸備線(岡山支社)キハ120形快速

・平均輸送人員わずか9人/日の区間を含む岡山支社管内の芸備線
 日本屈指のローカル線として君臨する芸備線。陰陽連絡の動脈の一つとして機能する伯備線の備中神代駅から、東城、備後庄原、三次などを経由して、広島駅までを結ぶ。広島近郊区間は広島都市圏の通勤通学路線として多くの列車が運転される一方、その他の区間、特に備中神代~三次間は輸送密度が低く存廃議論の対象路線の筆頭となっている。芸備線のうち備中神代~備後落合間は岡山支社、備後落合~広島間は広島支社が管轄するエリアだが、今回はこのうち岡山エリアについて紹介する。
 岡山支社エリアの備中神代~備後落合は広島県と岡山県の県境があり、備中神代~野馳間は岡山県、東城~備後落合間は広島県となっている。備中神代側ではすべての列車が伯備線を経由して新見駅まで運転されており、備中神代~新見間の伯備線の駅である布原駅は、芸備線の列車しか止まらない伯備線の駅として有名である。新見~備後落合間の列車が3往復、それに加えて新見~東城間の区間列車が3往復運転され、備中神代~東城間は6往復、東城~備後落合間は3往復の運転となっている。全線が広島県庄原市に含まれる東城~備後落合間は、平均通過人員9人/日(2020年度)、営業係数(※)26,906円(2018年~2020年度平均)となっていて、鉄道の維持がもはや困難な区間。JR北海道の廃線予定区間をも上回る数字で、JR西日本は全ての前提をなくした議論を行うとコメントし、鉄道存続には厳しい姿勢を示している。
 当区間は基本的に普通列車のみの運転だが、早朝に一本だけ新見発備後落合行の快速列車が運転されている。実質的には東城~備後落合間の始発列車と、その折り返しとなる新見方面の始発列車に対する送り込み列車を旅客営業しているもの。新見駅5時17分発と早く、旅行者以外に利用する人はほとんどいない。旅行者目線で言えば、新見から三次方面へ当日中に乗り継ぐには、この早朝の快速列車か、昼過ぎの普通列車かしか選択肢がないため、芸備線を取り通すのには便利な列車だが、この列車に新見駅で接続する列車はなく、新見駅前で宿泊が必須になる。また、備後落合に行く列車のうち、終電となる夕方の1本は備後落合で接続する列車がなく、折り返さないとその駅に取り残されることになる(実際に取り残されに行く猛者もYouTube界隈にはいるようだ)。快速列車は新見~東城間で快速運転を行い、この間の停車駅は矢神のみ。起点駅の備中神代も通過となる。中国地方のほぼ中央に位置するこの区間。東城~備後落合間はもはや鉄道という輸送手段の選択が論外な局面まで来ている感が否めない。また、備中神代~東城間も本新見方面への通学に一定の需要があるが、それでも平均輸送人員は80人/日と少なく、鉄道路線の存続は厳しい状況に置かれている。
 
※営業係数:鉄道路線の収支状況を表す指標の一つ。100円の営業収入を得るのにいくらの費用が掛かるかで表す。