【PICK UP】松浦鉄道 西九州線(長崎県・佐賀県)

 
松浦鉄道西九州線 普通 佐々行
MR-600形 佐世保にて
 

北松浦半島をぐるっとまわり、起点と終点で同じ路線に接続する長大路線

 有田から伊万里、松浦、たびら平戸口、佐々などを経由し佐世保へ至る松浦鉄道西九州線。国鉄、JR九州が運行していた松浦線を第三セクターである松浦鉄道が引き継ぎ運行しており、一般には会社名である松浦鉄道と呼ばれることが多いが、路線名は正式には西九州線という。
 この路線は起点も終点もJR九州の佐世保線と接続している。起点と終点で同じ路線と接続すること自体は珍しくはないものの、佐世保線の佐世保~有田間が20.6kmなのに対し、西九州線は同じ区間を4.5倍の長さである93.8kmで結んでいる。路線は佐世保市の北側に広がる北松浦半島を周回する形になっており、佐世保から伊万里へ行くには当然ながら有田経由の方が早い。所要時間的には松浦付近でようやく佐々経由も有田経由も同じ程度となる。面白いことに、以前は松浦鉄道と佐世保線との間で片乗り入れが行われており、松浦鉄道の列車が早岐・ハウステンボスまで入線していた。早岐駅から有田駅間はわずか11.7kmだが、松浦鉄道の車両はこの区間を大回りして走っていた時期もあった。
 有田~佐世保間で一つの路線だが、伊万里駅で進行方向が変わることや誤乗を防ぐ目的もあって、運行系統は伊万里で分かれており、この駅を介して松浦・有田相互方面を直通する列車はなく、実質的には2路線に分断されたような形になっている。佐世保~伊万里間は、特に佐世保近郊の区間で列車本数が多く、佐世保~佐々間では日中でも毎時2本、朝夕には3~4本の列車が運行されている。基本的には佐世保~伊万里間で毎時1本が運転され、これに佐世保~佐々間の区間列車が加わる形となる。朝夕にはさらにたびら平戸口発着や江迎鹿町始発の列車も運転されているほか、朝には佐世保~佐々間で快速列車も数往復運転されているのも、この路線の一つの特徴となっている。一方、伊万里~有田間は日中は毎時1本、朝夕は2本のピストン輸送となっている。中間区間では利用者が少ない区間もありローカル線の雰囲気が漂うが、特に佐世保近郊では利用者も多く、通勤通学路線としての顔も持っている。
 西九州線は松浦鉄道が引き継ぐにあたって、新駅の設置がかなり積極的に行われた。現在の駅数は57駅あるが、このうち25駅が移管後に開業した駅で、駅数はほぼ倍近くに増加した。これは筆者の乗車した感想だが、路線距離に対して駅数が多く、また半島を周回し佐世保近郊では山を避けて走ることから、思うように前に進まない印象を受ける。伊万里~佐世保間の所要時間はおよそ2時間30分で、乗り通すと少々果てしなさを感じる路線である。57の駅のうち、たびら平戸口は九州地方において最も西に位置する駅であり、普通鉄道の駅としては日本最西端の駅となっている。また佐世保中央~中佐世保間の駅間距離は200mしかないことでも有名で、こちらは路面電車の電停間を除けば、国内で最も駅間距離が短い区間となっている。