【旅行記】仙台近郊路線と陸羽西線を巡る旅~山交バス仙台-新庄線「48ライナー」で新庄へ~
仙台市街を路線バスや地下鉄で巡った2日目の旅。地下鉄2路線への乗車を終え、宮城県の鉄道路線もこれですべて乗り終えることができた。ここからは翌日の旅に備えて仙台を離れる。目指すのは、東北地方最後の未乗路線・陸羽西線が走る山形県新庄市。仙台駅からは新庄行きの特急「48ライナー」に乗車し、一路、新庄を目指した。
山交バスが単独で運行する仙台-新庄線・特急「48ライナー」

仙台と新庄を結ぶバスは山交バスが単独で運行しており、「48(ヨンパチ)ライナー」の愛称が付けられている。この路線は仙台から東根、村山、尾花沢、舟形を経由し、新庄へ至る路線で、山形県内陸北部の村山・最上地域と仙台をダイレクトに結ぶ。仙台~山形間の高速バスと同様、仙台と山形を結ぶ主要な路線として、重要な役割を担う。
鉄道で仙台とこれらの地域を行き来する場合は、途中で乗り換えが必要となる。奥羽本線と仙山線では軌間が異なるため、現在は直通列車を運転することができない。そのため、仙台から山形県北部地域への直通列車は、行楽期などに運転される陸羽東線経由の臨時列車に限られる。山形県内は大半の地域で仙台との移動をバスに頼っている。
「48ライナー」という愛称は、途中で経由する国道48号線に由来する。この路線最大の特徴は、県境を越える都市間バスでありながら、全区間を一般道経由で運行していること。仙台~山形間の高速バスは山形自動車道を経由するが、新庄方面へ向かう場合は高速道路では遠回りとなるため利用しない。また、東根以北では東北中央自動車道が並行しているものの、村山や尾花沢など沿線各地を経由する関係で、こちらも走行しない。そのため、終点・新庄までの所要時間は約2時間20分とやや長めとなっている。しかし、鉄道では乗り換えが必要となり、多くの場合はこちら以上に時間を要するため、非常に利便性の高い路線といえる。
バスは全便がトイレなしの4列シート車で運行される。運行時間が長いため、途中の村山バス停でトイレ休憩が行われ、待合室のお手洗いを利用できるようになっている。山交バスではSuicaの地域連携カード「ヤマコウ チェリカ」を導入しており、決済には現金のほか、全国相互利用ICカードが利用できる。仙台-新庄駅間の運賃は2,200円だった。
仙台駅では、住協パーク仙台駅西口芝生広場前の23番のりばから発車する。発車15分前に向かうと、すでに長い行列ができており、この路線の需要の高さに驚いた。窓側に座れるか気になって前に並ぶ人数を数えてみると12人ほどで、ひとまず安心する。バスは発車5分ほど前に到着。後ろにもさらに列が伸びていたものの、乗車が終わると座席にはまだ余裕があり、6割ほどが埋まった状態で仙台駅前を出発した。
車内を見渡すと学生の姿も多く、通勤・通学で利用している人も少なくないようだった。運行時間は2時間を超えるものの、全区間で定期券も設定されている。ダイヤは朝の上り便と夕方の下り便が充実しており、逆に朝の下り始発や夕方の上り最終は早めの設定となっている。山交バス単独運行ということもあり、全体として仙台への通勤・通学需要を強く意識したダイヤとなっている。
乗車記録 No.16
山交バス 特急48ライナー 新庄駅東口行
仙台駅前→新庄駅東口
通勤・通学利用も多い仙台-東根間、奥羽山脈を越え山形県へ

仙台市内では、仙台駅前、広瀬通一番町、仙台高専広瀬キャンパス入口、作並温泉入口、作並温泉に停車する。このうち仙台発の便では、仙台高専広瀬キャンパス入口までが乗車専用、作並温泉入口以降は乗降ともに可能となっている。山交バスが運行する路線でありながら、仙台~作並温泉間だけの利用もできるのも、この路線の特徴の一つ。同区間には仙台市営バスも運行されているが、この路線の方が所要時間は短い。
バスは仙台駅を発車すると、青葉通、東二番丁通、広瀬通と進み、広瀬通一番町バス停に停車。ここで2人が乗車すると、他の都市間バスと同様に仙台西道路へ入る。広瀬川に架かる二層構造の仲の瀬橋を渡り、そのままトンネルへ。以降は東北自動車道の仙台宮城IC方面へ向かって走っていった。

他都市へ向かう高速バスは仙台宮城ICから高速道路へ入るが、この路線は引き続き国道48号線を西へ進む。バイパスを快調に走ると、やがて陸前落合や愛子の住宅街の背後を抜ける。車窓には、この日の朝に訪れた愛子駅が一瞬だけ姿を見せた。
その後、仙山線を跨ぐと車窓には仙台高専広瀬キャンパスが見え、バスは最後の乗車専用停留所である仙台高専広瀬キャンパス入口へ。この便では乗車はなかったが、山形県側から仙台高専へ通学する学生も一定数いるものと思われる。ちなみに筆者も高専出身なので付け加えておくと、仙台高専は、仙台電波工業高専と宮城高専が統合した高専で、仙台電波工業高専が広瀬キャンパス、宮城高専が名取キャンパスとして統合された。バスの車窓からキャンパス内の鉄塔が見えるのが、いかにも電波高専らしい。

仙台高専広瀬キャンパス入口を過ぎると、景色は次第にのどかになり、住宅地も途切れていく。国道48号も仙山線を跨ぐ手前で片側1車線となり、いよいよ峠越えが近づいてきたことを感じさせる。この先、作並までは国道48号と仙山線が並走しながら山へ向かう。仙山線の車窓からも何度となく見えるこの国道を、今度はバスでたどっていく。列車とのすれ違いを期待したが、この時間帯は残念ながら姿を見ることはできなかった。

作並駅前を通過すると、ここから国道48号と仙山線はそれぞれ別のルートを進み始める。国道は広瀬川沿いをたどる一方、仙山線は周囲に道路もない山中へと分け入り、独自のルートで県境を目指す。作並駅の先でその線路をくぐり、やや北へ進路を変えると、やがて温泉旅館が見え始め、バスは作並温泉郷へ。作並温泉入口、作並温泉の順に停車し、作並温泉では1人が下車した。

作並温泉を過ぎると、本格的な峠越えが始まる。広瀬川の渓谷に沿ってカーブが続き、バスはゆっくりと標高を上げていく。車窓には除雪ステーションの設備も見える。この国道48号は仙台と山形を結ぶ重要な幹線道路であり、積雪が多い冬でも通行止めとなることはほとんどない。冬には一面の銀世界が広がるのだろう。山奥へ進むにつれて洞門も増え、やがてバスは関山トンネルへ吸い込まれていく。このトンネルが県境の頂上で、途中で宮城県から山形県へ入る。トンネルを抜けると今度は一転下り坂となり、バスは一気に山形側へと下っていった。

48ライナーは基本的に仙台~新庄間の主要停留所のみ停車するが、関山峠からさくらんぼ東根駅までの間は、大滝、休石、原宿、東郷といった小さな停留所にも停車していく。坂道を下るにつれて視界が開け、バスは山形盆地へ入っていった。周辺は乱川扇状地と呼ばれる扇状地となっており、この先にはさくらんぼやりんごの果樹園などの広大な農地が広がっている。
国道48号はこのまま山形市方面へ向かうため扇状地の南側を進むが、バスは途中で県道29号へ入り、扇状地の北側を経由して東根市街地へ向かう。果樹園が続く車窓は、まさにフルーツ王国・山形らしい風景だった。

県道をまっすぐ下ると、やがて工場が立ち並ぶエリアを抜け、東根市街地へ。まもなくバスは、さくらんぼ東根駅前に到着。駅前のロータリーに停車すると、車内の乗客が一気に支度を始める。
さくらんぼ東根駅では車内の約7割の乗客が下車し、車内は一気に閑散とした。仙台~新庄を結ぶ路線ではあるものの、実際には仙台~東根間の利用が非常に多く、通勤・通学路線としての一面もうかがえる。仙台駅からの所要時間は約1時間10分で、ここは十分に通勤・通学圏内といえる。
一方キャリーケースを持った乗客の姿も複数あった。山形新幹線が停車するさくらんぼ東根駅。東京方面へは新幹線で乗り換えなしという利点があるが、このバスで仙台へ出て東北新幹線「はやぶさ」に乗り継いでも、所要時間は大きく変わらない。そのため、東京方面への移動でも仙台経由を選ぶ人は少なくないのではないかと思う。もちろん盛岡・青森方面からの利用もあるだろう。
東根から村山・尾花沢を経て新庄へ

さて、東根からは奥羽本線沿いを北上し、新庄を目指していく。さくらんぼ東根駅はこの路線の所要時間の折り返し地点ともいえる場所。奥羽本線沿いまでたどり着いたとはいえ、終点の新庄まではまだ道半ばである。さくらんぼ東根駅前を出ると、バスは県道120号線を進み、村山へ向かう。途中、北村山公立病院近くの公立病院前バス停に停車し、ここでも数人が下車していった。

さくらんぼ東根駅から15分ほどで、バスは村山駅前に到着した。駅前の待合所前に停車し、ここではトイレ休憩のため数分間停車する。この路線の車両にはトイレが設置されていないため、全便がここで休憩を兼ねて停車する。ここでも数人が下車。仙台を出発してから約1時間30分が経過した。この先も全区間で定期券の設定はあるものの、仙台への通勤・通学を考えると、このあたりが現実的な限界となる。
さくらんぼ東根駅も村山駅も、山形新幹線「つばさ」で通過したことはあったが、駅舎や駅前を見るのは今回が初めてだった。さくらんぼ東根駅前は人や車の往来も多く賑わいを感じた一方、村山駅前は、数分後に東京行きの「つばさ」が到着する時間帯にもかかわらず、人影はまばらだった。東根市の人口がおよそ4万7千人であるのに対し、村山市は約2万人。その差も駅前の雰囲気に表れているのかもしれない。おそらく、この時間帯は山形方面から普通列車が到着するときが一番賑わうのだろう。

村山駅前を出ると、バスは市街地を抜けて奥羽本線を跨ぎ、国道13号線へ入る。この先も一部で市街地へ立ち寄る区間はあるものの、基本的にはこの国道を新庄まで北上していく。福島から秋田までを結ぶ国道13号線は、山形市から新庄市にかけてバイパスの整備が進み、尾花沢付近までは片側2車線の快走路が続いている。
この区間には東北中央自動車道も並行しているが、国道だけでも十分に流れは良く、バスは快調なペースで北へ進む。車窓には夕暮れの田園風景が広がり、のどかな里山の景色を眺めながら旅は続いた。

バイパスを15分ほど走ると、やがて尾花沢市街地へ差しかかる。ここでは一度バイパスを離れ、市街地の一角にある尾花沢待合所へ立ち寄る。ここで1人の乗客が下車していった。待合所といっても、現在はタクシー会社の建物の横にプレハブの待合室が設置されているだけとなっている。その隣には広い空き地が広がっているが、少し前までは商業施設とバスターミナルを兼ねた建物が建っていた。
歴史的にも名の知れた尾花沢だが、奥羽本線は市の西側にある大石田駅を経由するため、市内には鉄道駅がない。かつては大石田駅からここまで山形交通の路線が運行されており、待合所がある場所はもともとこの路線の駅が置かれていた場所だった。
待合所でUターンすると、やがて白い路線バス車両とすれ違った。大石田駅と銀山温泉を結ぶ路線バスだった。近年はオーバーツーリズム問題が度々クローズアップされる銀山温泉は、この尾花沢市にある。温泉街へは、この待合所からも路線バスで向かうことができる。

尾花沢待合所を出ると、再び国道13号線へ戻り、新庄を目指して北上を再開する。ここまで片側2車線で続いてきた道路はやがて対面通行となり、並行する東北中央自動車道が徐々に近づいてくる。その先の野黒沢ICは、国道を直進するとそのまま東北中央自動車道へ流入する構造となっている。この区間の東北中央自動車道は無料で利用できるため、実質的には2本のバイパスがここで一本化されるような造りである。バスは高速道路へは入らず、そのまま旧来の国道13号線を進む。やがて車窓左手に最上川が近づき、新庄が近づいてきたことを実感する。

やがてバスは尾花沢市を抜け、最上地域最初の自治体となる舟形町へ入る。町役場近くにある舟形十字路が、このバス最後の途中停留所である。尾花沢以降も筆者以外に3人の乗客が残っていたが、ここで降車する人はおらず、そのまま通過した。
直後に渡る小国川は、現在災害の影響で運休している陸羽東線が途中まで並行する川でもある。やがて車窓の奥から陸羽東線の線路が近づき、国道と交差する。前回新庄を訪れた際には、この路線を利用して小牛田へ向かった。現在は代行バスによる運行となっているが、復旧工事が進められており、近い将来には運転再開が予定されている。2024年夏の豪雨では、陸羽東線に加え、奥羽本線や新幹線にも影響が及び、一時は新庄を発着するすべての鉄道路線が運転を見合わせた(陸羽西線はもともと長期運休中)。山形新幹線「つばさ」が大石田駅折り返しとなっていたことも、まだ記憶に新しい。

その後は奥羽本線と陸羽東線の並走区間を横目に、新庄市街地へ入る。並走区間に位置する南新庄駅前には、陸羽東線代行バスの標柱が立っていた。郊外のロードサイド店舗が並ぶ景色を抜けると、終点の新庄駅東口が近づく。乗車中の路線は、以前は西口発着だったが、2023年からは国道13号線からのアクセスに優れる東口発着へ変更されている。
日没が近づく18時25分、バスは定刻通りに終点の新庄駅東口に到着した。最後まで乗車していた3人の乗客とともにバスを降り、久しぶりの新庄の地へ。48ライナーでの約2時間20分の旅は、ここで幕を閉じた。
新庄駅前に宿泊 客室から市街地を眺める

2023年秋以来、約2年半ぶりの訪問となった新庄駅。前年にも一度訪れているため、今回が3度目の訪問となった。暫定的に山形県で最も多く訪ねている街はここ新庄である。
奥羽本線に陸羽東線・陸羽西線が接続する鉄道の要衝・新庄。筆者も初めて訪れた際は奥羽本線を北から南へ、2度目は陸羽西線から陸羽東線へと抜ける予定だったが、当時は陸羽西線が運休中だったため、代行バスで移動した。その陸羽西線は今年1月、約3年8か月ぶりに運転を再開。今回は、改めてその路線に乗車するために新庄を訪れたというわけである。
この日はすでに日没を迎える時間だったため、陸羽西線への乗車は翌朝に回し、新庄で一泊することにした。駅東口バス停のすぐ近くにあるホテルルートインに宿泊し、2日目の旅を終えた。

ホテルにチェックインして客室へ入ると、鉄道ファンにはうれしいトレインビューの部屋だった。窓からは新庄駅構内と市街地を一望できる。ちょうど日が沈む時間帯で、翌日向かう庄内方面の山々へ夕日が沈んでいった。一方、北の空には鳥海山が雄大な姿を見せていた。
前回の旅では、新千歳行きの飛行機の機窓から眺めた鳥海山。山形・秋田県境にそびえる東北屈指の名峰は、まだ雪をまとっている。昨年、山の向こうを走る由利高原鉄道を訪ねた際にはあいにくの天気でその姿を見ることができなかっただけに、今回はそのリベンジを果たすことができた。

眼下には新庄駅の構内が広がり、奥羽本線秋田方面の列車や陸羽西線の列車が発着する様子を眺めることができる。石造の車庫を備える新庄駅では、庫内にキハ110系が留置されており、夜にかけては頻繁に入換作業が行われていた。車庫を併設する駅では、こうした入換を眺めるのもまた楽しみの一つである。
夜になると、酒田行き快速「最上川」や秋田方面への普通列車が静かに発車していく。時折窓の外へ目を向けながら、その姿を見送った。終電後には保線車両が動き出す様子まで見ることができ、鉄道ファンにとっては何とも贅沢な夜となった。
さて、最終日となる3日目はいよいよ今年運転を再開した陸羽西線に乗車する。代行バスでたどった記憶を重ね合わせながら普通列車に揺られ、東北地方の鉄道路線巡りにも一区切りをつける。その後は鶴岡を訪ね、庄内空港から九州へ戻って、今回の旅を締めくくることにした。
続く