【旅行記】札幌近郊乗り鉄旅~直行バスで旭川空港へ向かうも、飛行機が欠航する~
札幌近郊の鉄道路線を巡った札幌旅の3日目は、九州への帰路に就いている。今回の帰りの便は旭川空港から。特急ライラックで旭川駅を訪ねた後は、空港バスに乗車して旭川空港へ向かった。しかし、ここで思わぬアクシデントが発生し、旅はまさかの延長戦へ突入することになる。ここでは空港バスへの乗車記とともに、そのアクシデントの顛末を書き留める。
道北バスの旭川空港直行便で旭川空港へ

旭川駅前の市街地を歩いて駅へと戻ってきた。この日予約していた飛行機の出発時刻は13時35分。一方、現在の時刻は10時過ぎと、空港へ向かうにはまだ少し早い。しかし、特に予定もなかったため、空港のフードコートで昼食を取りながらのんびり過ごすことにした。
旭川市街地と旭川空港を結ぶバス路線にはいくつかの種類がある。今回はその中から道北バスが運行する直行便というバスを利用した。この路線は2021年8月に運行を開始した比較的新しい路線。現在は1日2往復が設定されている。旭川駅と空港をダイレクトに結び、この区間を走るバスの中では最速の手段となっているが、航空機との接続を前提としたダイヤではない。到着便に対しても、接続待ちは行わず、バスは定刻で発車する。
停車するのは旭川駅と旭川空港のみ。他の空港連絡バスが市街地の停留所を経由するのに対し、この便は途中無停車で運行される。運行本数は少なく、利用できる場面は限られるものの、今回のように早めに空港へ向かいたい場合や、特にインバウンドも押し寄せる繁忙期において、混雑を避けたい場合に便利な路線である。
ちなみに旭川市街地と空港を結ぶ路線はこれ以外にも複数ある。最もメジャーなのは、旭川電気軌道が運行する空港連絡バスで、こちらは航空機の発着に合わせて運行されている。一方、これから乗車する直行便に加え、ふらのバスが運行する旭川-富良野間の特急バス「ラベンダー号」を区間利用できるほか、旭川電気軌道の一般路線バスでは66番旭岳線、75番東神楽・旭川空港線の2路線が利用可能となっている。
直行便を運行する道北バスは、旭川を拠点とするバス事業者の一つ。市内路線のほか、士別・名寄方面への路線バスも運行している。また、沿岸バスとの共同運行による留萌方面への路線や、都市間バス「あさひかわ号」「ノースライナー」などの一部便も担当。旭川・道北の各方面への路線を運行している。
乗車記録 No.14
道北バス [79]旭川空港線(直行便)旭川空港行
旭川駅→旭川空港

バスは旭川駅を10時ちょうどに発車する。空港到着は10時30分頃の予定で、搭乗予定便まではまだ3時間以上ある。加えて、この時期は北海道観光のオフシーズン。旭山動物園も休園期間中であり、国際線も3月末をもって運休していたため、訪日客も少ない。そんな事情もあってか、この日の乗客は筆者ただ一人。バスは貸切状態のまま旭川駅を発車した。
旭川駅を出ると、バスは駅前ロータリーから宮下通へ入り、その後すぐに右折する。駅南口側に架かる北彩都橋を渡り、忠別川の対岸へ進んでいった。他の空港連絡バスは市街地や周辺地区の停留所を経由しながら乗客を集めるが、この便は空港まで無停車である。最短ルートとなる富良野線沿いの経路を通り、空港を目指していく。

忠別川を渡ってしばらくすると、バスは左折して国道237号へ入った。この国道は旭川から富良野、占冠、日高を経て浦河へ至る路線で、富良野まではJR富良野線とほぼ並走している。
やがて車窓には富良野線の線路が姿を現した。周辺には神楽岡の住宅街が広がり、バスは住宅地と線路を眺めながら南へ進んでいく。旭川から3駅目にあたる西御料駅付近を過ぎると、沿道の住宅地も次第にまばらになり、車窓はのどかな田園風景へと変わった。

列車が来ないだろうかと線路を眺めていると、運よく旭川行きの富良野線列車とすれ違う。富良野線ではかつてキハ150形も活躍していたが、現在はH100形への置き換えが進み、この路線の風景も少しずつ変わりつつある。
そんな時だった。スマートフォンに1通のメールが届く。何気なく画面を開いた瞬間、順調だった旅の空気が一変した。これから搭乗する予定だった飛行機が、欠航になったというのである。
しばらく車窓を眺めながら、この先どうするべきか考える。スマートフォンからはうまく手続きができなかったが、幸い今は一足先に空港へ向かっている途中。とりあえず空港で手続きを行うことにした。

その後もバスは富良野線と並走しながら南下していく。西聖和駅付近まで来ると国道を離れ、富良野線の踏切を渡って空港方面へ進路を変えた。旭川空港は富良野線でいえば西聖和駅と千代ヶ岡駅の間に位置している。線路は美瑛川沿いを走る一方、空港はその北東側の丘陵地に設けられている。バスは坂道をゆっくりと登りながら空港へ近づいていった。

バスは坂道をゆっくりと登りながら空港へ近づいていった。空港周辺では、バスは空港の外周道路を大きく回り込むように進む。雨のため写真ではわかりにくいが、車窓には滑走路が見え、その向こうにはターミナルビルの姿も確認できる。
空港の裏側から施設を眺めながら進むのも、この路線ならではの面白さである。この時間、駐機場にはAIRDO機の姿が見えていた。滑走路南端近くの三叉路を左折すると、やがて空港ターミナルが近づいてくる。そして空港へ到着する頃には、雨は再び土砂降りとなっていた。

バスは激しい雨の中、定刻通り旭川空港へ到着。この路線は道北バスの単独運行だが、運賃制度や乗車券は旭川電気軌道の空港連絡バスと共通化されている。そのため、旭川駅の旭川電気軌道側の券売機で購入した乗車券も問題なく利用することができた。運転士へその乗車券を手渡し、バスを降りた。
空港バスの中で知らされた搭乗便の欠航

旭川空港に到着後は、のんびり飛行機で待つつもりだった。この後はJAL便を羽田で乗り継いで、九州へ帰る予定にしていた。しかし、バスの車内で搭乗予定便の欠航を知らせるメールが届き、空港ではその対応に追われることとなった。バスを降りたらすぐに航空会社のカウンターへ向かい、状況の確認と振替手続きを行った。
メールに記載されていた欠航理由は「管制システム不具合のため」。この日は早朝から、国土交通省の航空局が管理する航空管制システムに不具合が発生していた。羽田空港などで一時的に出発便が出発できない状態となり、不具合そのものは数十分で復旧したものの、その後も国内線を中心に大きな影響が広がった。各社で遅延や欠航が相次いだが、特にJALでは運航便を整理することでダイヤの回復を図ったため、多くの便が欠航となっていた。
カウンターで振替を依頼したところ、羽田から約2時間遅れて到着する前便にわずかな空席があるとのことで、その便への変更を提案された。しかし、その時点では羽田からの乗り継ぎ便が運航されるかどうかは未定であり、欠航となる可能性もあるという。チェックインの手続きも午後以降の全便が中止となっており、羽田に到着後、改めて手続きをする必要があるようだった。
一度はその提案を受け入れたものの、スマートフォンで情報を集めてみると、羽田空港もかなり混乱している様子だった。仮に羽田へ到着できたとしても、乗継便が確実に飛ぶ保証はない。さらに、新幹線など他の交通機関への振替も混雑が予想され、空港近辺で宿泊施設の確保も難しくなる可能性があった。
様々なケースを考えた結果、この日は無理に移動せず、旭川でもう1泊して翌日に帰るのが最も合理的だと判断した。幸い仕事の都合も調整可能だったため、関係各所へ連絡を入れ、翌日の同便へ振り替えてもらうことにした。
羽田から福岡へ向かう便の運航状況は、その後もしばらく未定のままだったが、16時頃になって欠航が正式に決定した。結果として、この日搭乗する予定だった旭川-羽田便、羽田-福岡便の両方が欠航となったことになる。
この日、JALでは運航便を絞り込むことでダイヤの立て直しを図っていたが、特に羽田と九州各地を結ぶ路線への影響は大きかった。福岡便についても、夜の一部便を除いてほとんどが欠航となっており、仮に当初の予定どおり羽田へ向かえていたとしても、その日のうちに福岡へたどり着くことは難しかっただろう。
もちろん、「東京から新幹線で変えれば」とか「新千歳空港から帰る予定にしていれば」など、様々な“たられば”は考えられる。しかし、無理に移動を続けて余計な出費や負担を抱えるのも大変で、旭川空港を利用すること自体も目的の一つだった。そこはあまり考えないことにした。管制システム不具合の影響は終日残り、羽田や新千歳はかなり混雑したようだったので、旭川で落ち着いて1泊するという判断は結果的に正しかったと思う。
駅から乗ってきたバスで空港から駅へ戻る

比較的小規模な旭川空港。出発便までかなり時間があったため、手続きもスムーズに終わらせることができた。新千歳から帰る予定にしていたら、手続きだけでかなりの時間がかかっていただろう。手続きを済ませた後は、旭川駅へ戻ることにした。空港については明日、搭乗前に改めて見ていくことにして、先ほど旭川駅から乗車したバスの折り返し便に乗り込む。
行きと同じ客がまた乗ってきたと思われても嫌なので、「欠航になってしまいまして」と事情を話しながらバスに乗り込む。運転士さんの心遣いに、少し気持ちが落ち着いた。帰りのバスの車内では、この日の宿の手配と午後の計画を立てる。バスは来た道を引き返し、約30分後には再び旭川駅へと戻ってきた。往復お世話になった運転士さんにお礼を告げてバスを下車した。
乗車記録 No.15
道北バス [79]旭川空港線(直行便)旭川駅行
旭川空港→旭川駅
思わぬ形で延泊することになった旭川。宿も比較的安い価格で手配することができ、1日分の延泊費用も最低限で済みそうでほっとした。午後は丸々時間がある。旭川近辺でできることとして、バスと列車で往復して名寄を訪ねてみるというプラン、数年前に乗車した富良野線を再訪してみるというプラン、それに深川から幌加内を経由して名寄へ向かう深名線ルートのバスに乗車してみるというプランの3つを思いついた。バスや列車の時刻を調べた結果、深名線ルートは半日では厳しく、名寄訪問も現地での滞在時間がかなり限られることが分かった。そこで、急遽できた旅のアディショナルタイムは、旭川から富良野、滝川と列車を乗り継いで旭川へ戻る周遊旅に充てることにした。
別れを告げたはずの街に戻り、駅のベンチに腰を下ろす。なんだかやるせなく、申し訳ないような気持ちもあり、心はまだ少し動揺していた。しかし、旅にハプニングは付き物である。今回は自分のミスではなく、国土交通省のシステム不具合によるもの。年に一度あるかないかの珍事に巻き込まれてしまってはどうしようもない。気持ちを切り替えて、ここから始まる旅の延長戦を楽しむ。
戻ってきた旭川駅、発着する列車を撮影する
富良野を再訪することに決めたものの、空港からバスで旭川駅へ戻ってきた時点で、富良野行きの列車まではおよそ2時間の待ち時間があった。最初は駅に隣接したイオンのフードコートで食事でもしようかと思ったが、1泊追加になった以上は倹約モードに切り替えねばと自重し、コンビニで簡単な食事を買い込み、ベンチで昼食を済ませた。その後はオペレーター通話型の指定席券売機で旭川から富良野・滝川を経由して旭川へ戻ってくる一周経路のきっぷを購入し、少し早めに改札内へ入る。この時間帯は列車本数こそ少ないものの、石北本線や宗谷本線方面へ向かう列車が発車するため、それらを見ていくことにした。

5番線に停車していたのは、12時32分発の普通列車名寄行き。末端へ向かうにつれて本数が少なくなる宗谷本線だが、名寄までの区間は普通列車と快速列車を合わせると、おおむね1時間に1本の頻度で運転されており、利用客も比較的多い。
前回宗谷本線に乗車した際には、途中駅でキハ40形の快速「なよろ」とすれ違ったのを覚えている。しかし現在は、臨時列車を除いてキハ40形は宗谷本線から撤退し、キハ54形とH100形による運転となっている。北海道各地で活躍するH100形だが、その一部には写真のようなラッピングが施されており、車内設備も他の車両とは少し異なる。これらのラッピング車両は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構と北海道の支援により導入されたもので、JR北海道ではなく北海道高速鉄道開発が所有し、それをJR北海道へ貸し出す形で運行されている。

やがて3番線には、12時38分発の特別快速「大雪」網走行きが入線してきた。特別快速「大雪」は、昨年3月のダイヤ改正で特急「大雪」を格下げする形で誕生した列車である。旭川-網走間にはかつて特急「大雪」が2往復運転されていたが、そのうちの一部が特別快速へ置き換えられ、現在石北本線の特急列車は札幌発着の2往復のみとなっている。停車駅は特急時代と変わらないものの、特別快速化に伴い使用車両はH100形へ変更された。網走までの所要時間は約4時間と長く、旅行者の立場としては、やはり転換クロスシート以上の設備がほしいところである。

特別快速「大雪」が網走へ向けて発車していくと、やがてこの列車が停車していたホームには、13時35分発の特急「サロベツ」1号稚内行きが入線してきた。特急「サロベツ」は通常キハ261系0番台で運転されているが、この日は5000番台の「ラベンダー編成」が使用されていた。この車両も、H100形のラッピング車両と同様に北海道高速鉄道開発が所有する車両である。
この車両は「多目的特急車両」と位置付けられており、「ラベンダー編成」と「はまなす編成」の2編成が存在する。季節運転の「フラノラベンダーエクスプレス」や「ニセコ」に使用されるほか、特急「宗谷」「サロベツ」「オホーツク」などの定期特急にも充当されている。5両編成だが、稚内方の1両は増1号車として組み込まれており、車内にはフリースペースも設置されている。まさか今回の旅でこの車両に出会えるとは思っていなかったので、思わぬ収穫となった。
さて、旭川で列車を撮影した後は、富良野線の普通列車に乗り込んで富良野へ向かう。富良野線、根室本線、函館本線を経由しながら旭川へ戻る、ぐるっと一周の小さな旅へ出発し、思わぬ形で始まった旅のアディショナルタイムを楽しむ。
続く