【過去旅回想】2017年5月 牟岐線・阿佐海岸鉄道の旅

一般気動車で運行されていた頃の阿佐海岸鉄道の旅
2024年の年末に出かけた「室戸まわりで阿佐海岸鉄道を再訪する旅」では、約7年半ぶりに阿佐海岸鉄道を訪問し、2021年末に運行を開始したDMVに乗車した。ここでは初めて阿佐海岸鉄道に乗車した7年半前(2017年5月)の旅を振り返ろうと思う。
まずは徳島県の乗りつぶしを振り返る。徳島県の鉄道路線に初めて乗車したのは2015年の夏だった。この時は高松から高徳線の特急うずしおに乗車して、徳島を初訪問。徳島から徳島線の特急剣山で阿波池田抜けた後、特急南風に乗り換えて高知へ向かっている。初めて阿佐海岸鉄道に乗車した2017年5月の旅は、2度目の徳島県への旅で、未乗としていた牟岐線、鳴門線、阿佐海岸鉄道阿佐東線の3路線に乗車することを目的に企画した。
この旅行、本当は実際の旅行日の1週間前に出かける予定にしていたのだが、大雨の影響で一度旅行を延期するというアクシデントに見舞われて、旅行日を1週間延期している。夜行バスに乗車するため天神へ向かっていたのだが、その日九州は大雨が降っていて、翌日は四国が大雨という予報が出ていた。この雨では電車が止まる恐れがあると判断し、途中で引き返して家に帰っている。その後、夜行バスを手配して、当初の旅行日から2週間後の週末に改めて旅へ出た。急遽の変更で、帰りの夜行バスの予約が取れず、帰りだけは少し旅程を変更。高松から夜行バスで帰る旅程を、松山から夜行バスに乗車する形に変えている。大雨で泣く泣く延期した旅だったが、結果的に旅行日は快晴に恵まれて、美しい太平洋の車窓を楽しむことができた。
さぬきエクスプレスと高徳エクスプレスを乗り継ぎ徳島へ

四国への往路は、西鉄高速バス運行のさぬきエクスプレス福岡号に乗車した。さぬきエクスプレス福岡号は、2018年3月末まで四国高速バスと西鉄高速バスの共同運行便だった。四国高速バス便に乗ってみたいと思って旅行日を決めたのだが、大雨で1週間延期となったので、結局乗車したのは西鉄高速バス運行便だった。旅行日から1年経たないうちに西鉄高速バスは運行から外れたので、今考えれば、逆に西鉄高速バス便に乗っておいてよかったと思っている。
この時期からさぬきエクスプレス福岡号は、高徳エクスプレスとの乗り継ぎ割引が設定された。この旅はこの割引を使って徳島へ行ってみようと企画したものだった。高松行の便は、高松中央ICBTで徳島行きの高徳エクスプレスに乗り換えることで割引が受けられる。夜行バス下車時に乗車証明を貰い、窓口で割引乗車券と引き換える仕組み。高松中央ICBTから乗車した高徳エクスプレスは大川バス担当便で、徳島駅には9時ごろには到着した。
まだ日中も走っていた牟岐線の特急むろとで牟岐へ



徳島からは牟岐線の特急むろとに乗車して、阿佐海岸鉄道の走る徳島県南部を目指した。現在、牟岐線を走る特急むろとは朝夕の1往復のみの運転だが、旅行当時はまだ日中の運転も行われていた。この時は往復とも特急むろとを利用している。現在は「四国みぎした55フリーきっぷ」だけが唯一、JRと阿佐海岸鉄道を跨って使えるきっぷだが、2017年当時は両社を跨る乗車券類がふつうに発売されており、特急むろとを利用して徳島-甲浦間を往復できる「阿佐海岸きっぷ」という企画券も発売されていた。このきっぷは徳島-甲浦間の乗車券と徳島-牟岐間の自由席特急券がセットとなった往復きっぷで、甲浦まで往復するこの時の旅程にはぴったりのきっぷだった。
乗車した特急むろと1号は南小松島や阿南を経由して、徳島県の南部へと進んでいく。この地域へ訪問するのはこの時が初めてだった。牟岐線は車窓に海が見える区間が少ないが、田井ノ浜付近からの太平洋の車窓がとても美しかったのを思い出す。日中の牟岐線の特急列車は今はもう廃止されていて、乗車することはできない。さらには2025年3月のダイヤ改正で残る朝夕1往復も廃止されることが発表されている。これで牟岐線からは定期特急列車が姿を消すことになり、日中はおろか牟岐線の特急自体に乗ることもできなくなる。ただし、年末年始には臨時列車の特急やくおうじが運転されている。2026年以降の運行があるかは定かではないが、存続されれば、これが唯一の特急列車ということになる。
海部駅で阿佐海岸鉄道に乗り換え

海部からは阿佐海岸鉄道阿佐東線の普通列車に乗車した。DMVを導入したことで、最近はよく話題にあがる阿佐海岸鉄道だが、旅行当時はまだDMV導入は検討の段階で、路線自体は目立たぬ存在だった。当時の阿佐東線は海部駅と甲浦駅を結んでいた。途中駅は宍喰の1駅のみで、全区間乗車しても15分もかからなかった。この当時はまだ阿佐海岸鉄道目当てに旅行に来る人もそう多くなく、土曜日だったのもあって、とてものんびりした雰囲気が漂っていたのを思い出す。乗車したASA-100形気動車は、DMVの運行開始前に運用を終了している。廃車後は写真ほぼと同じ場所に留置されていて、後輩のDMV93形が行き交うのをいつも見守っている。
終点甲浦駅で小休憩後折り返して徳島へ






阿佐海岸鉄道の終点甲浦がこの旅の最遠の地だった。到着して駅名標かなにかでここが高知県であることを知った。阿佐東線は宍喰と甲浦の間で県境を跨いでいる。まさかこの旅で高知県の地を踏めるとは思っていなかったので、これにはちょっと驚いたのを思い出す。甲浦に着いたのはちょうどお昼ごろだったと思う。乗ってきた列車も一旦エンジンを切ってお昼休憩。エンジン音が響いていた駅周辺は、一気に静寂に包まれた。室戸周りで奈半利、そして高知へと繋がるはずだった阿佐線のうち、工事が進んでいた区間を開業させた阿佐東線。唐突な形で線路が途切れる甲浦駅は、別に街の中に駅があるわけでもなく、長閑な場所にある。
折り返しの列車までは少し時間があった。駅の周辺を適当に歩き、田植え直後の水田を泳ぐアイガモと、その上を飛ぶとんぼをただぼーっと眺めていたのを思い出す。甲浦から先の鉄道路線は実現しなかったものの、路線バスで奈半利へ行けることはこの時既に知っていた。ここから先の景色も気になってはいたものの、鉄道路線の乗りつぶしを優先して、この時はパス。甲浦からは往路と完全に逆の行程で、徳島へと戻った。
吉野川エクスプレスと道後エクスプレスふくおか号で九州へ


当初の旅程では、徳島から高徳線か高徳エクスプレスで高松へ戻り、高松から往路で利用したさぬきエクスプレス福岡号で九州へ戻る予定だった。しかし、大雨で1週間延期した影響で、高松からの夜行バスがもう既に埋まっていたので、ここから先は当初の予定から旅程を変更。まずは伊予鉄バスの「吉野川エクスプレス」で松山へ。その後、松山からは伊予鉄南予バスの「道後エクスプレスふくおか号」に乗車して九州へ戻り、夜行バス2泊の弾丸で旅した牟岐線、阿佐海岸鉄道、鳴門線の旅は終了となった。
大雨で1週間延期したことで、若干の追加出費が生じ、学生時代の自分にとっては少々痛かった思い出があるこの牟岐線・阿佐海岸鉄道の旅。しかし、当日は天気に恵まれて、風光明媚な徳島県南部・高知県東部の風景と牟岐線、阿佐海岸鉄道、鳴門線への乗車を満喫することのできた旅だった。この旅では日中の特急むろと、そして一般気動車で運行される阿佐海岸鉄道という2つの今では乗れないモノに乗車している。牟岐線も阿佐海岸鉄道もここ数年でいろいろと変化があった。今思えば、この旅はこの地域の鉄道の一時代の終わりを旅していたのだなと思う。
2024年の年末に出かけた「室戸まわりで阿佐海岸鉄道を再訪する旅」では、DMV化された阿佐海岸鉄道を再訪したが、一般気動車で運行されていた頃に一度乗車しているからこそ、その頃との違いを対比的に楽しむことができたように思う。時代と共に鉄道も沿線の街も少しずつ変化していく。今後はいろんな鉄道路線を再訪する機会も増えてくると思われるが、過去の旅を思い返しながら、その時との変化も旅の楽しみとしていきたい。