【旅行記】尾道・しまなみ海道を旅する -尾道昼編-
2020年が幕を開けた。今年は何といっても五輪の年。今やテレビをつければ、"頑張れアスリート"、"やればできる"的なノリのCMで埋め尽くされている。一方個人的には2019年は苦しい年だった。いっそその"やればできる"的なノリについて行きたいがなかなかそれに心がついていかない。そんな昨年の12月のある時、何を見たでもなく尾道に行ってみたいと思いつき、年明け早々に尾道・しまなみ海道へ旅立った。なぜ尾道なのか自分でもよくわからないが、以前からしまなみ海道は通ってみたかったのと、久しぶりに観光旅行をしてみたいと思ったからだ。乗りつぶし的な旅行はするが、そこに一日中滞在して観光することはめったにないので、たまには"女子旅"気取りも楽しそうだと思ったのだと思う。気晴らしには風景をぼーっと眺めるよりもいろいろ散策する方がいい。

この日はこれまた何を血迷ったか徳山に宿泊し、227系で運転される徳山始発の呉線広行に乗車、広で三原行に乗り換えて尾道へ向かった。呉線から眺める瀬戸内海もとても美しかった。呉線も227系に統一され、ロングシートから転換クロスシートになったので景色を眺めやすくなった。尾道に到着したのは正午ごろ。尾道自体は何度も通過したことはあるが下車するのは初めてで、新しい駅舎と目の前の尾道水道が出迎えてくれた。

尾道水道とは尾道駅がある本州とその数百メートル先に浮かぶ向島との間を流れる海のことで、この水道を介して両側に市街地が広がっている。泳げそうなほど目と鼻の先にあるので、小さな渡船が頻繁に行き来していて、向島とを結ぶ重要な交通手段になっている。すぐついてしまうので、自転車の人は乗ったまま移動している。市街地の東側には尾道大橋があるが、そこまで行くなら船で渡った方が早く、多くの人や車が行きかう尾道らしい情景になっている。

尾道で多くの人を魅了するのが、そのノスタルジー的情景である。どこか懐かしい路地や商店街が並び、昭和を知らずともタイムスリップした気分になる。一方でおそらく尾道のこの情景に魅せられた人たちがモダンなカフェやお店を開き、それがうまい具合に共存・融合して新たな尾道の価値観を生み出しているように感じる。懐かしいけどレトロとはまたちょっと違った味わいなのだ。

尾道初心者なのでやはり定番スポットは外せない。千光寺のロープウェイ乗り場からロープウェイに乗って千光寺公園へと向かう。展望台から見渡す尾道の街と瀬戸内海の島々は、やはり晴れている日に限る。文学のこみちをゆっくりと進み千光寺の境内に入って、千光寺にお参りをする。そしてそこから広がる尾道の景色をベンチに座って眺める。眼下にはその奥から回り込むように山陽本線の線路が続いており、列車が音を立てて通りすぎる。貨物列車の長さがよくわかる。

千光寺の境内を出るとひたすら階段が続いている。その途中で天寧寺の三重塔が見えてくる。ここは山陽本線の撮影地にもなっていて、岡山支社の黄色い電車が駆け抜けていく様子を撮影できる。広島県だが、隣の糸崎駅から岡山支社の領域で走る列車もほとんどが黄色い列車になっている。一体何段あるのか分からないが、この階段と坂の景色、そこから見渡せる尾道水道と尾道市街の景色をゆっくりと階段を下りながら眺めるのは至福の時だった。
尾道と言えばラーメン、広島といえばお好み焼きは外せない。ホテルにチェックインして、グルメを堪能しつつ、日没後、再び階段を上って夜景撮影に出かけた。