【旅行記】北海道の廃線予定路線を巡る旅~はじまりは帯広空港編~

北海道の鉄道路線が岐路に立たされている。2022年1月には根室本線のうち2016年の台風で被災し、運休が続く東鹿越~新得間を含む富良野~新得間の廃線が正式に決まり、3月には北海道新幹線開業で並行在来線となる函館本線の小樽~長万部間の廃止が決定している。それにとどまらず留萌本線の石狩沼田~留萌間も沿線自治体が廃線を容認しており、残る深川~石狩沼田間については存続が議論されているものの、存続されるかは不透明な状況となっている。今回はこれら廃線予定路線のうち、根室本線と留萌本線に乗車することを一つの目的として北海道へと向かった。
具体的な日程は次のとおり。2泊3日の行程で、1日目は羽田空港から帯広空港へと飛び、帯広駅から根室本線を通って滝川へと抜け、留萌本線の起点である深川で一泊する。2日目は早朝の留萌本線に乗車して留萌へと向かい、2016年に鉄道が廃止された増毛町に路線バスで訪れる。その後留萌から路線バスで旭川へと向かい、旭川から富良野線で富良野へ、富良野から高速バスで札幌へと向かう。最終日は札幌から函館本線を少しだけ下り、岩見沢から室蘭本線で苫小牧へ、苫小牧から路線バスで新千歳空港へ移動し、新千歳空港から中部へのフライトで北海道を後にする。1日目は朝7時の羽田空港からスタートした。
快晴のフライトでとかち帯広空港へ

羽田空港から搭乗したのは帯広行き日本航空573便。予約した時点では国内線用のB738が使用される予定だったが、途中で国際線用機材に機材変更となり、クラスJを予約していたので、スカイラックスシートと呼ばれるビジネスクラス相当の座席に座ることができた。国際線ではあまり評判の良くないスカイラックスシートも国内線での1時間30分ほどのフライトではとても快適に移動できる。この便に搭乗したのは15人ほどで機内はほぼ空席だった。個人的に羽田空港からは西日本方面路線を利用することが多く、D滑走路から離陸することばかりで34Rからの離陸は初めて。離陸するとすぐに東京の湾岸エリアの機窓が目に飛び込んでくる。新木場のあたりから内陸へと入ると、東京スカイツリーを見ながら高度を上げていく。

埼玉県上空は雲が立ち込めていて眼下の景色は見えなかったが、宇都宮あたりになると、雪化粧した美しい日光や磐梯の山々が見えた。写真は福島県の二本松市の上空からみた磐梯山。左手に少しだけ猪苗代湖が見え、その向こうには会津盆地が広がる。この日は東北地方の天気がとてもよく美しい景色が続く。

岩手県上空に差し掛かると、帯広空港へと向かうため、三陸海岸を眺めながら太平洋へと出ていく。写真は岩手県普代村あたりの上空から見た三陸海岸。半島の付け根に野田村、その奥に久慈市が見える。震災では大きな被害を受けた三陸海岸は恥ずかしながらこの目で見たのは初めてで、上空からも被害の大きかった沿岸部の新しく整備された堤防などを見ることができた。近いうちに必ず訪れたい場所の一つでもある。

太平洋に出てしばらく進むと、いよいよ降下を開始して徐々に高度を下げていく。15分ほど飛行するといよいよ北海道の襟裳岬が見えてくる。ここから日高山脈の険しい山々を見ながら高度を下げ、広尾町のあたりから帯広平野へと入っていく。森進一の襟裳岬で襟裳の春は何もない春ですというフレーズが有名だが、まさにその春の襟裳岬を機内が見る。

高度を下げて北海道らしい田園風景を見ながら帯広空港へと着陸した。この北海道特有の田園風景の美しさにはいつも心奪われる。北海道に着いたことを実感する瞬間でもある。羽田空港を離陸しておよそ1時間15分。帯広空港に定刻より少し早く着陸した。
空港連絡バスで帯広駅へ

帯広市街地から南側に20km進んだところにあるとかち帯広空港。ボーディングブリッジが2本ある空港で大きくはないが、航空大学校の帯広分校が設置されている。日本航空のほかANAとコードシェアを行うAIRDOが就航し、基本的に羽田線のみだが、夏季を中心に中部線も運航されることがある。ここから帯広市街までは十勝バスの空港連絡バスで約40分かかる。かなり遠いが列車までは十分時間があるので何も急ぐことはない。8人ほどが乗車してバスは帯広空港をあとにする。

帯広空港を出るとと西へ進んで旧国鉄広尾線の幸福駅の前を通り、国道236号線へと入って札内川に沿って北上する。この幸福駅と隣の愛国駅は、広尾線廃止後も観光スポットとして人気で、私も北海道旅行から帰ってきた親戚からキーホルダーのようなものをもらったことがある。幸福がつく駅名は遠く九州の熊本県のくま川鉄道におかどめ幸福駅があり、現在はこの駅のみが幸福のつく駅となっている。ただし北海道の幸福駅は地名が幸福(福井県からの入植者が多い地域だったことに由来するらしい)なので正真正銘の幸福駅と言えるだろう。十勝平野に広がる田園風景をしばらく眺めて走ると札内川を渡り、バスは帯広の市街地へと入っていく。
札幌-帯広を結ぶ特急とかちに乗車

帯広駅に到着し、いよいよ根室本線の旅が始まる。帯広は特急おおぞらで通過したことがあるものの、降り立ったのは今回が初めて。明日の留萌まで使う乗車券と特急券を購入し、帯広名物の豚丼の駅弁を買って、改札へと入った。帯広では30分ほどの乗り換え時間で、当駅始発の札幌行特急とかちに乗車する。キハ283系が撤退した石勝線特急はキハ261系に統一されたが、札幌と帯広を結ぶ特急とかちはすでにキハ261系に統一されてしばらく経つ。特急とかちはおおぞらと比べて停車駅が若干多く、芽室、十勝清水、占冠に停車する。ただし、おおぞらでも停車する列車もある。

帯広駅を出ると高架橋をしばらく走り、北側に貨物ターミナルを見て速度を上げていく。前回特急おおぞらで訪れた際は霧が立ち込めていて、十勝平野の広さを感じることができなかったが、今回は天気もよく、日高山脈をはじめとした山々まできれいに見通せた。下車する新得駅までの所要時間は45分ほどである。

新得駅で下車して特急とかちを見送る。新得から先、列車は石勝線に入り札幌へと向かう。駅としては新得が根室本線から石勝線が分岐する駅だが、実際の分岐点はここから列車版九十九折を上った先の新狩勝トンネルの中にある。根室本線が運休している現在はこの区間も石勝線の列車しか通らず、根室本線の列車が通ることはこの先ない。現時点でも石勝線側が本線のような形だが、近いうちにここが根室本線の一旦の始終点となる。
新得駅では約2時間の待合わせで根室本線を富良野へと向かう。
~根室本線をゆく編~へ続く