【旅行記】北海道の廃線予定路線を巡る旅~根室本線をゆく編~
~はじまりは帯広空港から編~の続き
根室本線代行バスに乗車

新得駅で駅弁を食べたり駅周辺を歩いたりして時間をつぶして次の代行バスを待つ。新得駅周辺の街自体は大きくはないが、駅舎は立派でみどりの窓口と指定席発売機が設置されている。新得の街は蕎麦が有名で、売店にも蕎麦が並んでいて買おうかとも思ったが、まだ旅は始まったばかりなので、今回は見送った。駅前には北海道の重心地のモニュメントが設置されている。北海道の重心となる場所はこの新得町内にあるのだという。

根室本線の新得~東鹿越間は2016年の台風で被災し、現在に至るまで鉄道が不通となっている。現在は1日に数往復の代行バスが運転されていて、ふらのバスが代行バス運行を受託している。新得~東鹿越間を約50分程度で結び、東鹿越では富良野方面との普通列車と接続している。この日は新得駅で接続する特急列車が遅れたため20分ほど遅れて発車した。

新得を出ると国道38号線を進んでいく。日本三大車窓の一つとして知られる根室本線旧線が国道の脇を走っていて、新得を出て少し行くと、廃線後に国鉄が脱線実験線として使用していた頃のアンテナ用の鉄塔が残っている。現在のルートとなる以前はほぼ国道38号に沿って線路が敷かれており、皮肉なことに新線に付け替えられて以降見ることのできなかった三大車窓の一つ狩勝峠の景色が、代行バスの車窓から望めるようになっている。

狩勝峠を越えて下り坂をしばらく走ると、新得から一駅進んだ落合駅に到着する。この駅の新得方で新線と旧線が分かれているが、新線側も廃線跡のように草がのびきっている。落合駅前のロータリーで一周して次の停車駅である幾寅を目指す。乗り降りする人はおらず、車の交通量も少ないこの地域。確かに鉄道を維持するのは難しいだろうと感じる。この駅以降はバスの車窓に運休中の根室本線の線路を臨みながら進んでいく。

落合の隣の駅の幾寅駅。南富良野町の中心駅で、駅前はそれなりに栄えているが、この駅も列車は来ない。せめてこの駅まで列車が来ればまだ乗る人もいそうな気がするが、富良野方面へはバスと列車を乗り継ぐ必要があるのでそれはそれで面倒である。駅舎の駅名はこの駅でロケが行われた映画「鉄道員」にちなんで幌舞駅となっていて、一見すると別の駅に見えるが、電話ボックスの上に小さく幾寅駅と書いてある。代行バスは幾寅駅の先で踏切を渡り、終点の東鹿越駅を目指す。東鹿越駅の場内信号が赤を点灯されているが、この先新得方面の信号が赤から変わることはもうない。鉄道で乗車することはできなかったがのが悔やまれる。
東鹿越で普通列車に乗り換え滝川へ

東鹿越駅は周辺に人家がなく、駅の裏手に工場があるだけになっている。以前は貨物の取り扱いもあったために駅構内は広い。根室本線が被災しなければすでに廃止されていたはずだったらしいのだが、運転設備上の都合でこの駅が鉄道と代行バスの接続点になり、延命をした駅としても知られている。この駅で乗り換える乗客が増えたため、それまでほぼゼロだった乗降客も急増している。ここからはキハ40形1両の東鹿越発滝川行の普通列車で根室本線の起点である滝川駅へと向かう。ここから富良野駅まではすでに廃線が決定している区間となる。

東鹿越駅を出ると車窓にはかなやま湖が見える。空知川の上流部にある金山ダムのダム湖で、列車はしばらくこのダム湖の湖畔を進む。まだ雪が残っていて、水量も少なく、干上がったところにはエゾシカの姿が。大自然の中を列車は走っていく。

金山、下金山と停車すると列車は富良野市へと入っていく。車窓の左手には芦別岳が見え、富良野らしい田園風景の中を列車は軽快に走っていく。1日5往復のみの根室本線のこの区間。途中駅からの乗客はほとんどおらず、乗っている客はほとんどが鉄道ファンだ。

東鹿越駅から40分で富良野駅に到着。新得からここまでが根室本線の廃止予定区間。ここから滝川までは存続されるが、富良野以降も1両でも十分事足りる程度しか乗客はいない。季節によっては札幌から直通する特急ラベンダーエクスプレスが運転されるが、札幌へ向かうには駅前から発着する高速バスが乗り換えなしで便利である。翌日には富良野線でこの駅を訪れ、その高速バスで札幌へ向かう予定にしている。

富良野を出て以降も列車は引き続き空知川に沿って走っていくが、次の野花南駅との間は2つのトンネルで山を貫いていく。2つのトンネルはスノーシェルターでつながっているため、実際には1つのトンネルのようにも見え、実に10kmにわたってトンネルの区間となる。トンネルを抜けると芦別市に入り、ここから列車は芦別、赤平を経由して滝川へと進んでいく。

炭鉱の街として栄えた赤平を出るといよいよ終点の滝川が近づく。視界が徐々に開けて石狩平野へと入っていく。南富良野から流れ出た空知川は滝川で石狩川へと流れ、南下して日本海へと注ぐ。まだまだ海は遠い。根室へと続く根室本線はここから始まり、石勝線が開業する前の道東方面へのアクセスは乗車中のこのルートが使用されていた。滝川はその昔、道東への玄関口だったのだが、それは遠い昔の話である。

終点の滝川に到着。東鹿越からの所要時間は1間40分ほど。乗車してきた列車は駅の裏手に設けられた車庫へと入っていった。乗車したキハ40 1824は、2022年5月に廃車のため所属先の旭川から釧路へと回送された。車内は1+2列のボックスシートとなっていて、他地域で2+2列を乗り慣れている身としては面白い車両だった。

滝川駅は函館本線の主要駅で、特急列車を含めた全列車が停車する。普通列車はこの駅で札幌方面へと折り返す列車も多い。朝には札幌方面に直通する列車もあるが、ほとんどは岩見沢発着で、札幌へ普通列車で行く場合には乗り換える必要がある。反対にここから旭川方面の普通列車は1日8往復程度と少なく、気動車運用もあるため、電車の普通列車はさらに本数が少ない。ここ滝川駅以北は通常は721系のみが入線し、733系などはこの駅が運用の北限となっている。

滝川からは宿泊地である深川へと移動する。乗車した721系は窓が摺りガラスのように真っ白になっていて、車窓をほとんど見ることができなかった。1日目はこれで終了。明日は深川から留萌本線で留萌を目指す。
~早朝の留萌本線を下る編~へ続く