【旅行記】宮崎交通路線バスの旅~高鍋・西都エリア編~ その1

宮崎交通の「1日乗り放題乗車券」で高鍋・西都エリアを乗りバス
宮崎県全域で路線バスを運行する宮崎交通。同社では全エリアで利用可能な一日乗り放題乗車券を大人2,000円、学生1,800円、こども1,000円で発売している。この乗り放題乗車券は宮崎交通の運行する一般路線バスが乗り放題となり、県外方面の高速バスや宮崎-高千穂線などは適用外だが、宮崎-都城線など一部区間で高速道路を走る路線バス路線でも利用可能となっている。営業所や窓口で購入できるスクラッチ式の乗車券やコンビニのキオスク端末で購入し、運転士に乗車日を記入してもらうコンビニ券もあるが、トヨタファイナンシャルサービス株式会社が提供するアプリ「my route」からも購入が可能で、クレジットカードを登録しておけば、スマホ上で決済から利用まで完結して便利に使える。「my route」では2,000円の一日乗り放題乗車券のほかに、アミュプラザみやざきで使える1,000円分のお買物券が付いた「お買物券付き1日乗り放題乗車券」も2,200円発売しており、宮崎駅周辺でショッピングを楽しむなら、こちらを買った方が断然お得となっている。話が逸れるが、2021年9月にJR九州と宮崎交通は高鍋駅での輸送サービス連携を開始すると発表。その一環として高鍋駅で路線バスとJR日豊本線を乗り継いで使える乗車券「デジタルきっぷ」の販売も開始した。日南エリアでも宮崎交通と日南線が利用可能な「日南1デーフリーパス」が発売されるなど、宮崎交通とJR九州がタッグを組んだMaaSの取り組みが盛んに行われている。
宮崎県のバス路線は小林-宮崎線や日南方面などそれなりに様々な路線に乗っているものの、日豊本線が通る高鍋エリアは西都と高鍋を結ぶ1路線のみ乗車したことがあるだけで、未乗路線が多く存在していた。特に高鍋から都農へ向かう路線は宮崎市側から延びる宮崎交通のバス路線の終点であり、この先に地元のコミュニティバスがあるものの、SUNQパス運営委員会に所属するバス会社の路線としては、反時計回りに九州一周しようとすると都農で路線が途切れる場所でぜひ乗ってみたい路線の一つ。今回はこの「my route」で購入した「1日乗り放題乗車券」を利用して、宮崎市北部や西都・高鍋方面の路線バスに乗車。日豊本線ではよく通過する都農や高鍋と行った街を旅する。
早朝の宮崎駅から日豊本線で高鍋駅へ
乗車記録 No.1
日豊本線 普通 延岡行
宮崎→延岡 713系

今回は前日のうちに宮崎市内に入り、宮崎駅前に一泊。早朝の宮崎駅からスタートする。宮崎交通の乗り放題乗車券を使うと言いながら、いきなりJRに浮気して高鍋駅まで普通列車での旅。日豊本線の延岡方面の列車は5時54分に発車する特急にちりん2号大分行が始発となっていて、その直後の6時1分に延岡行普通列車、さらにその9分後にも延岡行の普通列車が発車し、約15分のうちに3本の列車が発車する。普通列車は日向市・延岡方面の通勤通学輸送に対応する列車で、宮崎駅の時点ではわずか9分差だが、途中で列車の行き違いなどが発生するため、日向市の時点で25分と間隔が空く。前の列車は817系2両編成、後ろは713系2両編成となっていて、713系の方が乗り得なので後続の列車で高鍋駅へと向かった。

早朝の高鍋駅に到着。ここからは宮崎交通の路線バスで西都バスセンターへ向かう。JR高鍋駅は高鍋市街から東にやや離れていて、市街地へ向かうにはここから路線バスに乗り換えて行く必要がある。宮崎方面、日向市方面のどちらの列車からも通学の高校生がゾロゾロと降りてきて自転車で高校まで向かっていた。自転車を漕ぐのが「ダルい(高校生の会話のまま)」ときは路線バスの出番のようで、乗車した路線バスに乗って高校へ向かう学生も数名いた。
高鍋バスセンターから西都バスセンターへ
乗車記録 No.2
宮崎交通
高鍋バスセンター・一丁田経由西都バスセンター行
高鍋駅→西都バスセンター

乗車したのは宮崎交通の高鍋・西都線。高鍋と西都を結ぶ路線は3路線あり、高鍋駅を始終点とする一丁田経由と 茶臼原経由の2路線、高鍋バスセンターを起点に高鍋駅前、日向新富駅、三納代を経由する路線が運行されている。このうち茶臼原経由にはすでに乗車済みなので今回は一丁田経由に乗車する。一丁田は新富町新田(にゅうた)にあるバス停で、そこから南東に1~2キロ行ったところに航空自衛隊の新田原基地がある。
先述のとおり、2021年10月に高鍋駅はJR九州と宮崎交通の輸送サービス連携が開始され、高鍋駅のバス停も駅の正面に移動。宮崎市内方面に向かう路線の構内乗り入れも開始されたが、ここを起点に西都へ向かう2路線は以前から構内発着(それ以外は駅前道路上の高鍋駅前バス停発着)。以前は駅舎から見て左側に停車していた。

高鍋駅で数名の高校生を乗せて出発すると、まず高鍋市街へと立ち寄る。高鍋「市街」とは言うものの、高鍋は市ではなく高鍋町という町。ただこのあたりの中心都市で江戸時代から続く城下町となっている。数分走った高鍋高校前で高校生が下車。早速車内は貸し切りとなった。対向するバスからも多くの高校生が降りる姿が見えた。高鍋のバスターミナルである高鍋バスセンターを経由して以降は県道24号を進んで新富町に入り、新田地区に立ち寄る。自衛隊の新田原地区は「新+田原」ではなく、「新田+原」。このあたりは台地が形成されていて、この台地を「地名+原」と表す。代表例が古墳群で有名な「西都原」である。台地に上がると畑やビニールハウスが多く広がる。このエリアは全国的にもズッキーニの生産がさかんなエリア。このほか畜産も盛んで、台地の上に畑や牛舎・養鶏場などが多く広がっていた。

新田原を降りると一ッ瀬川を渡って西都市へ。終点の西都バスセンターで「my route」の乗車券画面を運転士に提示して下車した。西都バスセンターは宮崎市内方面への路線バスも発着するバスターミナルで、これまで何度か訪れたことがある。ここからは宮崎市内と高鍋方面のほか、西米良方面などにも路線が延びている。昨年まではここから国富へ向かう路線もあったが、残念ながら途中の群境までの区間短縮となり、途中で路線が途切れることとなった。なお、西米良方面の村所行きに乗車すると、村所で西米良村営バス湯前線に乗り継ぐことができ、熊本県南部のくま川鉄道湯前駅へ出ることもできる。これらの路線はもともと国鉄バスとのちのJR九州バスが運行していた人吉と宮崎を結ぶ日肥線と呼ばれるバス路線を引き継いだもので、現在のくま川鉄道は杉安まで延びていた妻線と接続する計画があった。
宮崎交通としての路線存続が決まった西都-佐土原高校前線
乗車記録 No.3
宮崎交通
東春田・佐土原駅経由佐土原高校前行
西都バスセンター→佐土原駅前

西都バスセンターからは佐土原高校行の路線バスに乗車する。この西都-佐土原線は今年に入り、宮崎県のバス対策協議会で一時バス路線の他会社への移管が議論された路線。6月に入り宮崎交通が引き続き運行を行うことになったが、乗車した際には議論の行き先が不透明な状況だった。またしても真新しい車両だが、西都から乗車したのは自分一人。通学ラッシュは終わったにしても誰も乗らないというのは悲しい。

バスは区間の半分を宮崎市内方面へ向かう路線と同じ道を走る。国道219号の旧道を経由して西都ICを通り、バイパスの脇を走ると、一ッ瀬川に流れ込む三財川を渡る。青空が広がる穏やかな朝で車窓の景色もとても美しかった。東春田バス停を過ぎると宮崎市内へ向かう国道が右折して山の方へと入っていく。佐土原線はこのまま直進して佐土原地区へと入る。残念ながら終始乗客は一人だけで誰も乗ってくることはなかった。

宮崎市北部に位置する佐土原駅。特急列車も停車する駅で、JR貨物の佐土原ORS(オフレールステーション)も設置されている。佐土原駅構内へと入る路線は西都-佐土原高校線のみでその他の路線は国道上の佐土原駅前バス停に停車する。以前は宮崎交通・西鉄か運行する福岡方面への夜行バスも停車していた。駅は2面3線で駅舎側に非電化のホームが一線ある。朝夕にはこの駅で宮崎方面へ折り返す列車が複数存在しているが、今年9月のダイヤ改正で日向新富まで区間延長されることになり、おそらくこの設備も使われなくなるものと思われる。さて、佐土原からは再びJRに浮気して南宮崎駅へと向かう。南宮崎駅も宮崎駅と並んだ宮崎市内のターミナルで、駅から徒歩数分のところには宮崎交通の一大ターミナルである宮交シティがある。次はここから佐土原、高鍋を経由して木城町まで走る路線バスに乗り込んだ。
乗車記録 No.4
日豊本線 特急ひゅうが7号 宮崎空港行
佐土原→南宮崎 787系
宮崎市内と木城町を結ぶ路線バスに乗車
乗車記録 No.5
宮崎交通
花ケ島・三納代・高鍋バスセンター経由 木城温泉館湯らら行
宮交シティ→木城温泉館湯らら

宮交シティと高鍋を結ぶ路線バスは高鍋バスセンター発着のほか、高鍋温泉めいりんの湯、道の駅つの(宮崎市内方面行のみ)、木城温泉館湯らら発着便がある。今回乗車するのは木城温泉館湯らら行きの便。高鍋町に隣接する木城町まで向かう路線バスで、終点の木城温泉館湯ららまでの所要時間は1時間45分となっている。バスは国道220号に出ると宮崎市の繁華街である橘通りから国道10号へ。宮崎神宮からはその旧道に入って新名爪から再び国道10号を北上する。さきほどまでいた佐土原駅前を通って写真の一ッ瀬川を渡る。このあたりではバイパスを経由し、片側2車線の道路を颯爽と走っていく。新富町に入り、日向新富駅に立ち寄ってさらに北上すると高鍋町へ。国道10号から逸れて高鍋駅へと向かう。高鍋駅では構内のロータリーに入り停車。誰も乗り降りせず、宮崎市内や佐土原から引き続き乗車している乗客が多かった。まだまだ乗り継ぎをする乗客は少ないのが実情のようだ。

高鍋市街を走ると今度は小丸川に沿って東へ進み、木城町へ。最後に小丸川を渡って役場の前を通り、終点の木城温泉館湯ららに到着する。鉄道路線も高速道路も走っていない木城町。このバス路線を知るまでこの町の存在は知らなかった。終点の木城温泉湯ららまで乗車する乗客は少ないだろうと思いきや終点まで多くの人が乗車。バスに乗車すると温泉館の割引券がもらえるようで、下車時に運転士から割引券が手渡された。
乗車記録 No.6
宮崎交通
高鍋バスセンター・三納代・花ケ島経由宮交シティ行
木城温泉館湯らら→高鍋バスセンター

木城温泉館湯ららでしばし休憩のあと、再びバスで高鍋へと戻る。バスは同じ車両だろうと思っていたが、先ほどのバスは回送で出ていき、別の車両が現れた。高鍋バスセンターからここまでは15分くらいで到着するので、車両を回送してやりくりしているようだった。折り返しのバスも温泉館と木城町の中心部で複数の乗車があり、唯一のバス路線も利用者は割と多いようだ。高鍋バスセンターで下車して次のバスを待った。
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