【旅行記】夏の関西を巡る旅~草津線・伊賀鉄道を旅する~
夏と言えば、海かプールか何かと問われれば、個人的には関西だと思うくらいに昔から夏に関西を旅する機会が多かった。数年間、別のエリアを巡るうちに、久しぶりに夏の関西を旅してみたくなり、春頃から関西のどこへ行こうかと計画を立て、久しぶりに滋賀県と奈良県に行こうと思い立った。そして1日目は滋賀県の近江鉄道と信楽高原鐵道、2日目は奈良県で桜井線と近鉄の支線をメインに旅しようと計画を立ていた。早朝の便に搭乗予定だったので、前日のうちに空港近くのホテルに宿泊して、ゆったりと朝を迎えるつもりだった。
雷雨に見舞われて計画破綻(泣)
旅行当日。空港近くのホテルに宿泊していたが、朝起きると土砂降りの雨と雷。雨雲レーダーを見ると、空港周辺に積乱雲が発達して激しい雨が降っていて、数時間は止まない見込み。一応空港へと向かったが、落雷の影響で地上作業が全て中止され、搭乗予定の飛行機も出発の遅れが決定していた。大阪駅に9時半には着く予定だったが、到底間に合わない。その後、2度に渡る地上作業の中断を経て、何とか空港周辺の天候は回復。遅れること2時間あまりで空港を出発し、伊丹空港へと飛び立ったのだった。飛んだだけでも一安心。悪天候の中でも作業を行い、飛行機を飛ばしてくれた全ての人に感謝したい。天気ばかりはどうしようもないし、天気を憎むしかないのだ。積乱雲のバカヤローのせいで計画していたプランは実行不可となり、空港での待ち時間の2時間は旅程の再構築作業に追われた。特に2日目の行程を大幅に変更して、何とかいい感じのプランが出来上がった。夏の飛行機はこういうことはよくあるし、夏の旅行では台風や大雨の影響を毎年受けてきたのである程度慣れているが、できることなら落ち着いて旅行がしたい。

さて、航路上の飛行は多少揺れたものの安定していて、定刻から2時間遅れの11時ごろに伊丹空港へ着陸。伊丹空港着陸直前の大阪の景色は曇っていたが、いつ見ても迫力がある。伊丹空港からなんだかんだ初めての大阪モノレールで蛍池駅へ移動し、昔関西を来るたびに乗っていた阪急宝塚線に久しぶりに乗車して大阪梅田駅へ。すっかり昼になった大阪駅に無事到着することができた。
急遽別の旅程を作成
遅れること2時間あまりで到着した大阪駅。本来であれば、1日目は大阪から近江八幡へ向かったあと、近江鉄道と信楽高原鉄道に乗車して米原から大阪へと戻り一泊。翌日は大阪からおおさか東線経由で奈良へと向かい、桜井線、近鉄天理線、田原本線、生駒線、生駒ケーブル、けいはんな線などを経て、Osaka Metro中央線、ポートラム、四つ橋線と巡る予定だった。雷雨の影響でそれを大幅に変更。1日目は滋賀県の草津へと向かい、草津線と伊賀鉄道、近鉄天理線、田原本線、さらにはOsaka Metro千日前線に乗車。2日目は桜井線までは計画通り進めて、そこから近江八幡へ移動。1日目に予定していたプランを1日ずらし、近江鉄道と信楽高原鉄道に乗車して、米原から新幹線で帰るプランに変更した。生駒周辺の近鉄線には乗れないが、その分草津線や伊賀鉄道に乗車してカバーする。本来は新快速Aシートに乗車して野洲まで向かう予定だったが、そんな列車はもう2時間前に発車しているので、野洲行きの快速列車に乗り込んでのんびりと草津へと向かうことにした。
快速列車で草津駅へ向かい、草津線に乗車
乗車記録1
JR京都線・琵琶湖線 快速 野洲行
大阪→草津 225系100番台

大阪駅から乗車したのは225系の快速野洲行。日中の大阪~京都間の列車は新快速と快速の2種別のみとなり、普通列車は高槻駅で折り返す。新快速は15分ヘッドの運転で、草津行き、野洲行き、米原経由近江塩津行き、湖西線経由敦賀行という構成。1本が湖西線へと進む関係上、琵琶湖線では15分、15分、30分の変則的なパターンダイヤになっている。高槻以東で普通となる快速も日中15分ヘッドで運転され、こちらは野洲行きと米原行きがそれぞれ2本ずつ運転。大津駅では1時間あたり7本が発着するのに対して、野洲以東の新快速非停車駅では運転本数が1時間2本まで減る。快速は大阪~京都間で新快速に抜かれるため、特に茨木~長岡京あたりでは車内はガラガラに。京都市街が近づくと乗客が増え、京都で乗客が入れ替わる。乗車している電車は野洲止まりなので、京都からの先の乗車はあまり多くないが、米原行の場合は滋賀県内に入っても割と乗車が多い。草津の一つ手前の南草津はベッドタウンの開発が進んでいて、新快速の停車駅にも仲間入り。駅前の東横インには一度宿泊したことがある。大阪発車から1時間10分。草津駅で快速列車を下車した。

滋賀県の草津駅。よく群馬県の草津温泉と間違える人がいるとかいないとかいう駅だが、そもそも草津温泉にJRの路線は走っていない。駅前に止まる近江鉄道バスも西武カラーで、関東屈指の温泉地箱根を走る伊豆箱根バスとほぼ同じデザインなので、なんとなく関東の温泉地感は出ているので、温泉はなくても温泉地感は味わえるかもしれない(?)。草津駅からは南へ走る草津線に乗車する。草津線は朝夕には琵琶湖線と直通運転をしているが、日中は線内運転のみ。貴生川までは1時間2本、その先は1時間に1本の運転となっている。朝夕の直通列車には223系や225系も使用されるが、線内列車は115系が基本となっている。
乗車記録2
草津線 普通 柘植行
草津→柘植 115系

草津駅ではJR琵琶湖線からの乗客が大半で、車内は座席の8割程度が埋まった。草津駅を出ると、右にカーブしてJR琵琶湖線の線路と離れ、琵琶湖線の上り線から続き、同線の下り線をオーバーパスする線路と合流する。琵琶湖線京都方面から草津線方面へと運行される列車がおそらくこの線路を使うのだろう。その後しばらくは草津の市街地を走り、次第に景色は野洲川とその流域ののどかな風景へと変わる。各駅で乗客を降ろして、南東方向へ約20分で貴生川に到着。ここは信楽高原鉄道と近江鉄道が接続するターミナル駅で甲賀市の玄関口となっている。本来は草津線には乗る予定ではなく、近江鉄道に2日目に乗ることにしたので、2日連続でこの駅に訪れることになった。貴生川で乗客は半分以上減り、再びのどかな田園の景気の中を走っていく。草津線に概ね沿う形で新名神高速が建設されていて、時々その高架橋が見える。以前、東海道昼特急に乗車した際には、バスの車窓に草津線を見たが、今度はその逆の景色を楽しむ。草津線の終点は柘植駅。三重県伊賀市にある駅で、油日駅を出た列車は最後に峠とまではいかないくらいの山を越える。右手から関西本線の線路が近づくと、柘植駅に到着。ここでは関西本線の亀山方面、加茂方面の列車が接続待ちをしている。

山間のターミナル駅である柘植駅。この日は夏休み期間中で、草津線から関西本線へ、関西本線から草津線へ乗り換える乗客でにぎわっていた。青春18きっぷさらには夏の関西1dayパスなどの利用者が多かったのかもしれない。柘植駅についたとき、そもそも三重県に来る予定ではなく、この駅の関西感が強すぎてまったく三重県感がないので、三重県であることをすっかり忘れていた。関西本線の接続列車の接続時間は2分ほど。あわただしく跨線橋を渡り、普通加茂行に乗車する。
乗車記録3
関西本線 普通 加茂行
柘植→伊賀上野 キハ120形

関西本線の名のごとく、関西本線が関西、特に奈良方面へのアクセスのメインルートだったのは昔の話。JR東海からの急行列車の運転がなくなり、今は普通列車のみが行き来するローカル線となっている。近鉄特急や高速バスの台頭によって、関西本線は窮地に立たされている。今年何度目か忘れたキハ120形。去年から美祢線や芸備線や因美線、姫新線など結構な頻度でお世話になっている。中国地方と異なるのはICカードの読み取り車載器が設置され、ICカードが使用可能というところ。ただし、会社が変わる亀山ではそのままの乗り通しはできず、一旦処理する必要がある。列車は新堂、佐那具を経由して軽快に走り、JRにおける伊賀市の玄関口の伊賀上野駅へと到着した。

伊賀上野駅。伊賀市の中心部は上野という場所で、ここは伊賀上野を名乗るが、地名に上野はつかない。市街地はここから南に数キロ行った服部川の対岸にある。そのため駅の周辺は住宅が広がるのみで交通量も少ない。駅にはみどりの窓口が設置されていて、車でやってきてきっぷを買い求める人の姿が多く見られた。
近鉄から分離された伊賀鉄道に乗車

伊賀上野駅からは伊賀鉄道に乗車する。伊賀鉄道はもともとの近鉄伊賀線を引き継いだ鉄道会社で、伊賀上野から近鉄大阪線と接続する伊賀神戸(かんべ)駅までを上野市経由で結ぶ。伊賀市の中心部上野は関西本線と近鉄大阪線が走るその間にあり、それをつなぐ役割をしているのが、この伊賀鉄道である。伊賀上野駅では、改札や発券業務はJR西日本に委託されていて、JR西日本の券売機で伊賀鉄道のきっぷが買える。関西本線がICカードに対応したおかげで、駅の券売機もICカードが利用できるようになり、きっぷでしか乗れない伊賀鉄道のきっぷもICカードで買えるようになった。これは便利。改札を入って左手に進んだところに伊賀鉄道ののりばがある。さっきの草津線といい、関西"本線"は非電化なのにその脇に接続する路線は電化されているのが面白い。
乗車記録4
伊賀鉄道伊賀線 普通 伊賀神戸行
伊賀上野→伊賀神戸 200系

近鉄路線を引き継いだ伊賀鉄道。近鉄大阪線は標準軌路線だが、近鉄伊賀線は狭軌路線で、近鉄の路線になる以前は名張までつながっていた。それゆえ、伊賀神戸駅では近鉄大阪線との接続線はなく、直通運転はできない。もともと近鉄の路線だが、走っているのはもともと東急電鉄の車両。忍者の街なので、忍者の顔のイラストが描かれた車両が有名だが、乗った電車はマスコットキャラクター「ふくにん」が描かれたかわいい電車だった。車内は車両の1/4がクロスシートになっている変則的な造りになっていて、1両目は伊賀神戸側、2両目は伊賀上野側を向いている。風鈴電車と銘打った車内には風鈴のチリンチリンという音が響いていて、蒸し暑いなかでも涼しさを感じることができる。発車までのしばらくの時間、風鈴の音色を聞きながらゆっくりした。

伊賀上野駅を出発し、列車は左にカーブして関西本線の線路と別れる。架線柱がもともと近鉄線だったことを教えてくれる。服部川を渡ると、上野の市街地へと近づいていく。忍者博物館がある伊賀上野城の天守を見ながら市街地がある台地の上へと上がると、車窓が一気に田園風景から市街地の景色に変わり、伊賀鉄道の中心駅である上野市駅に到着した。ここで乗客が入れ替わる。

上野市を出るとすぐに進行方向を南に見えて広小路、茅町、桑町と停車。名阪国道の下を通ると市街地を抜けて徐々に景色は田園風景に変わる。猪田道で対向列車と行き違い、さらに木津川に沿って南下する。終点の伊賀神戸が近づくと、係員がきっぷの回収を行う。最後に近鉄大阪線が見えると、木津川を渡って伊賀神戸に到着した。

近鉄大阪線と伊賀鉄道が乗り入れる伊賀神戸駅。周辺に人家は多くはないが、近鉄における伊賀市の玄関口となっていて、特急列車も多数停車する。伊賀鉄道と近鉄の改札は分離されていて、伊賀鉄道の方は券売機が置かれているが、きっぷの回収は車内で行うため、改札がない。近鉄の窓口が設置されていて、伊賀鉄道から乗り換える人を中心に特急券を買い求めていた。自分もここで特急券と天理までの乗車券を購入し、次の特急列車を待った。

近鉄大阪線の名張から伊勢中川の区間はローカル輸送はもちろん都市圏ほどではなく、普通列車も2両編成となるが、京都・大阪と名古屋・伊勢を結ぶ特急街道で、名阪特急、阪伊特急、京伊特急がここを通過していく。特急ひのとり、アーバンライナー、伊勢志摩ライナー、しまかぜ、ビスタカーなど、30分しかいなかったのに、あらゆる特急車両を見れてとても面白かった。
伊賀神戸駅からは特急列車で大和八木駅へ向かい、天理線、田原本線などに乗りに行く。