【旅行記】東北地方太平洋側を北上する旅~特急ひたちで仙台へ~

 3年前に福島県に初上陸し、去年北海道からの帰り道に新幹線で通過しただけで、ほとんど行ったことのなかった東北地方。今年こそは東北地方への旅行に行きたいと思っていたので、勝手に東北地方強化年間として2回東北地方を訪れる予定にしている。最初の一回は東北地方の太平洋側を3日間かけて北上する旅行に行ってきた。
 この旅行は6月から企画していたのだが、旅程はちょうど鉄道開業150周年記念JR東日本パスの利用期間と重なった。ただ東京から八戸まで新幹線を使わずに移動したのでは全く元が取れないので、JR東日本パスは利用しなかった。乗る予定だった三陸鉄道やBRTは中には積み残しなども発生しているときもあったようだったが、3日中の2日が平日だったこともあり、ほとんど混雑もなく旅程を進めることができた。
 

常磐線を走破する特急ひたちで仙台へ

 今回の旅の起点は品川駅。前日のうちに羽田空港に到着して京急蒲田駅近くのホテルに一泊。数日前から東京都でも全国旅行支援がスタートしていたので、かなりお得に宿泊できた。ホテルで受け取ったクーポンを駅弁の購入で活用。ホームに降りるとまだ一本前の特急ときわ51号が停車していた。この特急ときわ51号が発車後すぐに折り返し特急ひたち3号となるE657系が入線。到着後車内清掃が行われ、折り返しの準備が進められた。
 
 今回乗車するひたち3号仙台行は今年3月のダイヤ改正まで上野始発として運転されていた。3月の改正で品川始発に改められたことで、ひたちの全列車が品川発着になっている。ひたちは1時間に1本の運転で、そのうち仙台発着となるのは3往復。朝、昼、夜の3本が常磐線を走破して東京と仙台を結んでいる。
 
 ひたち3号仙台行の行先表示。7時43分を出ると終点仙台に着くのは12時29分。運行時間約5時間の長旅。今回は東日本パスの混雑も考慮して、グリーン車を利用。さっそく列車に乗り込んで品川をあとにした。
 
乗車記録1
特急ひたち3号 仙台行
品川→仙台 E657系
 
 品川を出てすぐ、車窓に見える車両基地には、先ほど東京に着いた後、回送されたばかりのサンライズ瀬戸・出雲の姿が見えた。出雲市から2列車を乗り継いで仙台に行く猛者はいるのだろうか。列車は、東京、上野と停車して、各方面からやってきた乗客を拾い朝日に包まれる東京の街を走っていく。
 
 今回はえきねっとから事前に仕入れておいた株主優待券を使用して乗車券・特急券を購入した。JR東日本の株主優待は乗車券と特急券(1列車に限る)が4割引となる。複数列車が割引にならないのは欠点だが、他社と違いネット予約でも利用できるので遠方にいても使い勝手がいい。
 列車は日暮里から常磐線へと入り、ここからは再び東北本線と出会う宮城県の岩沼まで常磐線を走破する。常磐線は本線を名乗らないJR路線としては最長の路線で343.7km。西の人間には距離間がいまいちわからないので山陽新幹線で例えると新大阪から新岩国くらいの距離がある。北千住付近では日比谷線、東武線、つくばエクスプレス線とすれ違い、綾瀬から複々線となって千代田線や小田急線の車両とすれ違う多彩な車両ラインナップを楽しめる。
 
 利根川を渡ると複々線の終点の取手を通過し、景色も郊外の住宅街から田園風景へと移り変わる。取手は複々線の終点であるとともに常磐線の直流電化の終点。取手~藤代の間にデッドセクションが設置されているが、E657系では電気も消えないので通過したこと自体意識しないと気付かない。このあたりに来るのは、関東鉄道やつくばエクスプレスの乗りつぶしで訪れたとき以来なので約3年ぶり。当時佐貫駅だった駅は龍ヶ崎市駅へと名を変えている。
 
 土浦に停車してなおも関東平野を北東に進み、列車は水戸に到着。ここで車内の乗客の半分以上が入れ替わった。水戸から仙台方面に向けて乗り込む乗客も多く、グリーン車は引き続き混雑していた。水戸は何度か通過しているものの、未だに降り立ったことのない駅。そろそろ水戸観光や鹿島臨海鉄道、水郡線に乗りに行きたいと思っている。水戸の市街地を出て、写真の那珂川を渡るとすぐに勝田に到着。ここでも多くの乗客が降りて行った。勝田は車両基地が併設されており、都心方面に進む多くの列車がここを起終点としている。
 
 この先、特急列車は日立、泉、湯本には全列車が停車する一方、東海、大甕(おおみか)、常陸多賀、高萩、磯原、勿来(なこそ)の各駅は千鳥停車的に停車していく。ひたち3号は常陸多賀、日立、磯原、泉、湯本と停車する。日立駅が近づくと車窓にはようやく太平洋が見えてくる。日立駅は駅が高台に位置しており、駅舎に併設されたカフェは海を望むビュースポットとして知られている。今回の旅はここから青森県の八戸までほとんどの行程で太平洋に沿って進んでいく。
 
 品川を出て約2時間40分で列車はいわきに到着。ここで乗客の半分程度が下車していった。いわき市は東北地方3番目の人口を有する市で乗り降りする乗客も多い。ここから先が未乗区間となるので、その前に駅弁を食べることにした。品川駅で購入した「品川貝づくし」。まさに貝づくしな駅弁でしっかり味付けされている貝がごはんとの相性抜群でおいしかった。
 
 いわきを発車した列車は、福島県の浜通りを進んでいく。磐越東線から常磐線へと乗りいつだ以前の旅でいわきを訪れた際には、まだ常磐線は富岡駅までの運転となっていて、651系の普通列車が走っていたのを思いだす。案外内陸を進む区間が多い常磐線。いわき駅から広野駅までの間は、日立近辺と並び貴重な海岸線を行く区間となっている。次の広野駅を出ると巨大な発電所が見えてくる。プロ野球セ・リーグのスポンサーになっているJERAの広野火力発電所のようだ。この福島県の浜通りは発電所が多く立地し、原発だけでなく、火力発電所なども多い。
 
 富岡駅に到着。以前は駅から太平洋が望める駅だったが、津波により被災。駅舎が流出する被害を受けている。その後、駅は海岸には高い防潮堤が整備され、太平洋は望めなくなった。津波の被害を受け、原発事故の影響も大きかったが、駅舎は新しく建て直され、街では新しいまちづくりが進められている様子が車窓に見えた。
 
 富岡駅から先が原発事故の影響を大きく受けたエリア。福島第一原発はわずかにしか見えないが、今も帰還困難区域に設定されている場所も多くあり、田畑は長い間耕作されていないため雑草が生えている。街も11年前から動いていない様子が伺える。今も原発事故の影響は大きく残っていることを再認識させられる区間である。
 
 列車は大野、双葉、浪江と停車して福島県の浜通りをひたすらに北上する。浪江駅の次の桃内駅では運転停車して仙台発の特急ひたち14号品川行とすれ違う、10両編成の列車同士がすれ違うが、行楽期なので対向列車も乗客が多かった。その後、いわきを出ておよそ1時間で列車は原ノ町駅に到着した。
 
 関東と東北の列車が入り混じる原ノ町駅。南相馬市の中心駅で、運輸区も設置されていて拠点駅となっている。水戸支社と仙台支社の境界は福島と宮城の県境の新地駅付近にあるが、仙台方面、いわき方面からの列車は、それぞれここで折り返す。常磐線ではこの駅が関東と東北の境界線。車窓に東北の電車が見えると、東北に来たことを実感できる。
 
 福島県と宮城県の県境にまたがるエリアは、常磐線の中でも特に津波の被害が大ききかった区間。新地駅では721系が津波に押し流され、原型をとどめないほどに変形し、浜吉田~山下間では貨物列車が津波に押し流された。新地駅の手前から浜吉田駅までの区間は海岸に近い低地を走ることから、高架橋とトンネルで新しい線路が敷設されている。街の中心部も駅とともに移転していて、現在の新しい駅の周りに新しい街ができていた。この新線区間は10km以上に渡っていて、2016年に運転を再開している。
 
 日暮里駅からひたすらに進んできた常磐線の旅もいよいよ佳境に。岩沼駅の到着直前で渡るのは阿武隈川。郡山市、福島市、そして宮城県南部を流れて亘理から太平洋へと流れ出る東北地方の大河の一つである。この橋を渡ると、日暮里で別れた東北本線と再び出会い岩沼駅へと入っていく。岩沼から先は東北本線を仙台へと走る。この列車は相馬から仙台までノンストップなので走りも軽快。名取駅を通過すると徐々に街の景色へと変わっていき、品川を出て5時間あまりで終点仙台へと到着した。
 
 仙台駅のホームに降りる。これが初めて宮城県に降り立った瞬間だった。仙台駅には初めてきたが、10年以上前、運転シミュレーターのBVEというソフトで仙台空港アクセス線をダウンロードして遊んでいたので、少し懐かしい気もした。
 

初めての仙台駅

 次の列車までは1時間ほど時間を取っていたので駅の外へ。東北地方の中心都市である仙台駅は新幹線、東北本線、仙石線、仙山線と地下鉄の乗り入れるターミナル駅で、常磐線、仙台空港アクセス線、阿武隈急行など、東北本線から分かれる路線もこの駅まで直通している。さすがは東北最大都市の駅。休日ともあって多くの人が行きかっていた。
 
 再び改札内へと入って、東北地方を走る列車を観察。東北地方の電車も初顔合わせというわけではないものの、あまり見慣れない車両ばかりでとても新鮮。これからもうこの車両が飽きたと思うほどにお世話になるだろうか。写真は東北本線白石行の721系。朝夕には福島や郡山まで直通する列車もあるが、日中の東北本線は福島方面への直通列車はなく、基本的に白石駅で乗り換える必要がある。
 
 こちらは仙台空港アクセス線のSAT721系。ほぼ721系と同じだが、仙台空港アクセス線を運行する仙台空港鉄道が所有する車両になっている。この721系シリーズは東北地方の第三セクターなどでも導入され、阿武隈急行、青い森鉄道などで同系列の車両が走っている。
 
 はじめて降り立った仙台駅でしばらく列車を眺めて楽しんだ後、ここからは1日目の目的地女川駅へと進んでいく。最初は東北本線の普通列車に乗車して小牛田駅へと向かった。
 
石巻線で女川へ~へ続く