【旅行記】東北地方太平洋側を北上する旅~石巻線で女川へ~
東北本線を小牛田まで北上

仙台駅からは東北本線を北上して小牛田へと向かう。朝夕は1時間に5本前後が運行され、一ノ関へと直通する列車、松島行きの区間列車、利府支線へと進む列車など一日を通してみると様々な行先を見れる東北本線の普通列車。しかし、昼下がりの時間は、仙石東北ラインの列車を除けば、仙台-小牛田間の普通列車1時間に1本のみで本数は少なめに設定されている。

乗車したのは701系4両編成。701系自体は以前、新白河~郡山間で乗車したのでこれで2度目の乗車だった。仙台を出ると仙台車両センターの横を通って塩釜、松島方面へと進んでいく。塩釜を出ると仙石線の線路が近づいてきて、何度か仙石線の線路と交差する。仙石線はもともと別の鉄道会社の鉄道として作られた路線。戦時中に国鉄へと吸収され、現在に至るまで東北地方で唯一のJR直流電化路線となっている。このあたりでは、夕立のような雨が降っていて、残念ながら美しい松島の景色は見れなかった。また翌日仙石線で通るのでその時に期待することにした。
乗車記録2
東北本線 普通 小牛田行
仙台→小牛田 701系

松島を出た列車は海から離れて内陸へと入っていく。乗客も松島までの間には大半が降りてしまい、車内の乗客はわずかになった。仙台から約40分、小牛田運輸区の車両基地が見えると列車は終点の小牛田駅へと到着した。
この旅を企画する前までこうしだ駅だと思っていた小牛田(こごた)駅。石巻方面へと進む石巻線、鳴子温泉、新庄方面へと進む陸羽東線がこの駅で東北本線から分岐している。今日はここから石巻線へと進んでいく。
2列車を乗り継いで石巻線の終点女川へ

次に乗車するのは石巻線の普通石巻行。これから東北地方のローカル線にたくさん乗車したいと思っているので、今後乗る機会が増えそうな車両。これまでも小海線や磐越東線で乗車したが、西日本のキハ120形以上に東日本各地で活躍している。石巻線は小牛田駅から女川駅までを結んでおり、途中の石巻駅までは貨物列車も走行する路線となっている。多くの列車は小牛田-女川間の運行。小牛田から陸羽東線に進んだ古川駅まで直通する列車もある。乗車したのは石巻行で、女川へは石巻で乗り換える必要があった。
乗車記録3
石巻線 普通 石巻行
小牛田→石巻 キハ110系

車内からは東北訛りの方言が聞こえてくる。小牛田駅を出た列車は東に進み、涌谷駅では多くの乗客が降りていった。その後車内は閑散としたまま石巻へ。江合川と旧北上川に沿って、のどかな田園風景を走る。小牛田駅から30分で終点の石巻駅へと到着した。

石巻市は、宮城県では仙台市に次ぐ人口規模をもつ街で人口はおよそ13万人。漁業がさかんな街として知られる。東日本大震災では市街地をに流れる旧北上川を津波が遡上し、甚大な被害が発生。沿岸部から比較的離れている石巻駅も浸水する被害が発生している。

仙石線の終点である当駅は、当然石巻線より仙石線の方が利用者が多い。2015年には仙石線と東北本線をつなぐ接続線が開業し、仙石東北ラインと呼ばれる新しい系統が仲間入りした。この路線の開業で仙台までの所要時間の短縮に成功している。仙石東北ラインには後ほど乗車するとして、とりあえず石巻線の終点である女川駅を目指した。

乗車する女川行の普通列車。折り返し前の石巻止まりの列車は、東京の満員電車並みに混雑していた。何事かと思ったが、どうやらこの日は女川町でイベントが実施されていたようだった。サンマの無料配布が人気のイベントで、このイベントから帰る人たちでごった返していた。一方、逆方向の女川行の列車は、ガラガラの状態で発車。計画時点では、仙石線経由で少し早く女川へ向かうルートも計画していたが、混雑回避できたので、小牛田経由で来て正解だった。
乗車記録4
石巻線 普通 女川行
石巻→女川 キハ110系

石巻駅を出た列車は旧北上川を渡り、渡波駅へと向かう。その先は万石浦の景色を眺めながら進み、所要時間25分ほど終点の女川へと到着した。日の入りの時間が迫る中、なんとか明るい時間に到着することができたのでよかった。女川で行われていたイベントがちょうど終わった時間だったので、折り返しの石巻方面行の列車は混雑していた。
新しくなった女川の街
すぐ折り返すのでは勿体ないので、一本後の普通列車で戻ることにして、津波被害後新しくなった女川の中心部を歩いてまわることにした。

立派な造りの女川駅。この街のシンボルになっていて、温泉施設が併設されている。女川町は津波の被害で旧市街地が壊滅的な被害を受けた。女川駅も例外なく被災し、停車していた列車は津波に押し流された。現在は嵩上げ工事が行われ、今はモダンな造りの新しい街が出来上がっている。

駅の正面に続く道をまっすぐ進んでいくと海岸線に出る。ちょうどイベントの撤収作業が行われていた。ここでは震災遺構である旧女川交番を見学。女川町の中心部にあった鉄筋コンクリート2階建ての交番は津波で基礎ごと横転し、横倒しになった。

世界的に見ても鉄筋コンクリート造の建物が津波で横倒しになる事例は珍しく、震災後、街の中学生たちの活動もあって震災遺構として残すことが決定。現在は周辺がかさ上げされた中で、当時のまま保存されている。津波の威力のすさまじさを感じることのできる遺構である。南に少し行ったところに女川町地域医療センターがあるが、津波はこの病院のある高さ付近まで到達。実際に来てみると、いかに津波が高いところまで押し上げられていたかがよく分かる。

駅前に広がる新しい商店街「シーパルピア女川」は飲食店だけでなく様々なお店が軒を連ね、町の交流館も設置されている。駅前の通りは歩行者専用の道になっているので、車を気にせずにお店を見て回ることができる。町役場や郵便局、銀行なども駅周辺に集約されていた。
しばらく女川の街を歩いて女川駅で小休憩。この後は女川からは再び石巻線で石巻駅まで戻り、仙石東北ラインに乗車して仙台へと帰った。