【旅行記】東北地方太平洋側を北上する旅~八戸線をゆく~

八戸線で青森県に初上陸

 三陸鉄道を走破して久慈駅に到着。久慈市は人口3.2万人ほどの都市で、岩手県北部に位置する。盛岡方面から来る鉄道路線はないため、盛岡方面から来るには高速バスが主流となっていて、最寄りの新幹線駅である二戸駅からのバスも運行されている。また、最近では久慈から八戸へ八戸線と並んで走る高速バスの実証実験も行われている。今回は乗り換え時間が短く、久慈では駅前を写真撮影するに留めてすぐに八戸線に乗り換えた。
 
 八戸線で活躍するキハE130系500番台(八戸駅で撮影)。以前活躍していたキハ40系列を全て置き換え、現在は八戸線の普通列車については全てこの車両で運転されている。八戸線は岩手県と青森県の県境を跨ぐこともあって、久慈~鮫間では8往復程度と本数が少ない。八戸市の近郊となる鮫~八戸ではこれに区間列車が加わる。
 
乗車記録17
JR東日本 八戸線 普通八戸行
久慈→八戸 キハE130系500番台
 
 久慈駅を出た列車は久慈川を渡り、一瞬だけ海岸を見たあと一旦内陸に進んで山間部を走っていく。鮫駅までの間のほとんどの区間で海から近い場所を走る八戸線だが、陸中夏井~陸中中野間だけは山間部の景色になる。
 
 陸中中野からしばらくは車窓に太平洋が見える。この区間では線路が海岸線に沿って敷かれているため、車窓の全面に海が広がる。遠くには北海道方面に向かう大型のフェリーが航行している姿を見ることができた。昨日見た陸前高田の広田湾とは違い、外海に面するこのエリアではとても海が荒々しい。なお、海岸線に近い八戸線でも有家駅周辺などで津波の被害が発生。長期運休を余儀なくされた。海を見るのが目的なら、三陸鉄道より八戸線の方がいい。
 
 宿戸駅からしばらくは海岸線から少し内陸を走っていく。角の浜~階上間で列車は岩手県と青森県の県境を越えて青森県に入る。このあたりでは夕立のような土砂降りで、この先の太平洋の景色も見えないかと思われたが、北上するにしたがって天気が急速に回復。そして八戸市の市街地に入る直前に、この旅のハイライトとなるような太平洋の絶景が車窓に広がる。陸前高田でもそうだったが、今回の旅は大事な場面でしっかり晴れた。陸奥白浜~鮫間の車窓には青く輝く太平洋と葦毛崎の荒々しい海岸線が楽しめた。
 
 列車は太平洋に突き出た葦毛崎をくるっとまわり、八戸市街地へと入っていく。その入り口にあるのは観光名所として知られる蕪島神社。鮫駅から先は八戸市の市街地を進んでいく。八戸駅は八戸市の中心部から少しだけ離れていて、JRで一番市街地に近いのは本八戸駅。この周辺では乗客も増えて都市の鉄道へと様変わり。馬淵川を渡り、最後の長苗代駅を出ると、左にカーブして東北新幹線、青い森鉄道の線路と合流。久慈を出て1時間45分。列車は終点の八戸へと到着した。
 
 2日前の特急ひたちで福島県へと入ってから常磐線、東北本線、仙石線、石巻線、気仙沼線、気仙沼線BRT、大船渡線BRT、三陸鉄道リアス線、八戸線と乗り継ぎ、太平洋側を進んできたこの旅のゴール八戸駅に到着。新幹線で通過したことがあったものの、宮城、岩手と並んで、青森県も初めて降り立った。
 
 八戸駅は東北本線が青い森鉄道に移管されたことで、在来線としてこの駅に乗り入れるのは八戸線だけとなっている。駅舎は在来線と新幹線を跨ぐ形の橋上駅舎で、西日本で言うなら川内駅を少し大きくしたような駅という印象。さすがに青森まで来ると、10月なのに外はひんやりしている。東京のまだ夏の名残を感じる暖かさと違って、八戸はもう冬のにおいがした。街を歩く人たちの格好も全く違う。
 
 すべての行程終えて、帰宅。八戸駅からは八戸線で数駅戻り本八戸駅へ。本八戸駅を起点とする十鉄バスの三沢空港連絡バスで三沢空港へと移動した。三沢空港はアメリカ軍が駐留する三沢飛行場にあり、ここは東アジアの防衛の最前線となっている場所でもある。三沢空港はこの飛行場の東端の一角に設けられた小さな空港で、東京、伊丹、丘珠の3路線が就航している。今回は夕方に1便だけ設定されているJ-AIRの伊丹便を利用した。使用機材はE190。伊丹便は1往復設定されているが、往路・復路とも折り返しは羽田便で、この便は羽田から到着した機材が伊丹行として運行されている。三沢空港を離陸する頃には夕闇に包まれ、そこから盛岡、新潟、長野の上空を飛行して伊丹空港へ着陸。そして伊丹からは福岡行に乗り継いで、三沢空港からおよそ4時間で九州へと帰り、今回の旅が終了した。
 
乗車記録18
JR東日本 八戸線 普通鮫行
八戸→本八戸 キハE130系500番台
 
乗車記録19
十鉄バス 三沢空港連絡バス
本八戸駅前→三沢空港
 
乗車記録20
JAL2164便(J-AIR運航)
三沢空港→伊丹空港 E190
 
乗車記録21
JAL2061便(J-AIR運航)
伊丹空港→福岡空港 E170
 
・おわりに
 3年前に日帰りで都内から福島県南部を旅したことはあったものの、東北地方を数日かけて巡る旅はこれが初めてだった。ほぼ太平洋側を北上する旅だったが、車窓からの太平洋の景色は、時に穏やかで、時に荒々しく、いろんな表情を見ることができた。そして、仙台の牛タンや三陸の海の幸をはじめ、東北の食をたくさん味わうこともできた。ただ、久慈駅のうに弁当は当日お休みだったので食べることができなかった。これは近いうちの宿題にしたい。また、三陸鉄道をはじめとする鉄道路線のほか、BRTという形のバスにも初めて乗車した。乗り心地、利便性など、BRTのもつ長短を目で見て確かめることができた。
 今回の旅は東日本大震災の被災地に訪れる旅でもあった。旅行前には震災直後に出版された鉄道の被災状況についてまとめた書籍や、当時の映像などを見て、各地にどんな被害があったのかを地図と照らし合わせながら事前学習しておいた。西日本でも震災当時、いろんな街の被害状況が報じられたので、大船渡や気仙沼、釜石と言った大きな都市だけでなく、田老や大槌、浪江などの比較的小さな街も知っている・聞いたことがある人が多い。しかし、震災当時は位置関係が分かっていないうえに、西日本に届く情報は断片的で、どのくらい広範囲にどんな被害があったのか、その全体像をつかむことはなかなか難しかった。事前に当時の状況を把握して旅に出たので、鉄道の被災状況を含め、被災地の状況も比較しながら見ることができた。街の復興はまだまだ道半ば。易く復興とはいうものの、その難しさを感じた。今回は太平洋側をひたすらに縦断する旅で、各地域をじっくり見たというわけではないので、今後東西をつなぐ路線に乗りに行った時には、今回通過した街も観光してみたいと思っている。

★今回の初乗車路線

【鉄道路線】
JR東日本 常磐線 いわき~岩沼間
JR東日本 東北本線 岩沼~小牛田間
JR東日本 石巻線 小牛田~女川間
JR東日本 東北本線支線 高城町~塩釜間
JR東日本 仙石線 あおば通-石巻
JR東日本 気仙沼線 前谷地~柳津
三陸鉄道 リアス線 盛~久慈間
JR東日本 八戸線 久慈~八戸間
【バス路線】
JR東日本 気仙沼線BRT 柳津-気仙沼間
JR東日本 大船渡線BRT 気仙沼-盛間
十和田観光電鉄バス 三沢空港連絡バス 本八戸駅前-三沢空港
【航空路線】
JAL(J-AIR)三沢-大阪(伊丹)
JAL(J-AIR)大阪(伊丹)-福岡
 
バス路線は一部迂回区間あり