【旅行記】ミニ新幹線と津軽地方ローカル線の旅~新幹線こまちで秋田へ~

 
 

東北地方太平洋側北上する旅から一か月、再び東北へ

 ほぼ旅したことがなかった東北地方を強化ポイントにしていた2022年。東北地方の太平洋側を北上する旅から一か月あまりしか経っていないが、またしても東北地方へ行くことを決めていた。前回は太平洋側だったので、今回は日本海側をメインに旅する計画を立てた。まず注目したのが、秋田と山形で走る独特な乗り物であるミニ新幹線。西日本では全く馴染みがない乗り物なので、実際に乗ってみたいと以前から思っていた。この旅行を企画したのは夏頃だったので、もう一つの注目ポイントとして、リゾートしらかみで五能線を走破したいなと思っていた。しかし、8月の豪雨被害で五能線が被災してこの計画は断念せざるを得なくなった。その代わりに青森県津軽地方の2つの鉄道会社にスポットを当てて、乗りに行くことにした。一つはストーブ列車でもおなじみの津軽鉄道。そしてもう一つが弘前を拠点に2路線をする弘南鉄道の2路線。五能線は来年以降の楽しみにして、今回は青森県の津軽エリアで1日乗り鉄することになった。全く行ったことがない東北地方の日本海側。どんな景色が待っているのか楽しみにながら、東京に前日入りした。
 おおまかな旅程は次のとおり。旅の起点は東京駅で、ここからミニ新幹線の一つである秋田新幹線のこまちに乗車して、終点の秋田へと向かう。秋田からは数少ない東北地方の特急列車となっている特急つがるで青森へ。この日は青森に一泊する。2日目は津軽エリアで先述の津軽鉄道・弘南鉄道に乗車しながら、大鰐温泉を目指し、大鰐温泉から再び特急つがるに乗車して秋田駅を目指す。3日目は秋田駅から奥羽本線を上り山形県の新庄駅へ。ここからもう一つのミニ新幹線である山形新幹線つばさに乗車して、東京まで乗り通す。東京駅に到着してもまだコールではなく、ここからは東北地方を一旦離脱して、上越新幹線ときに乗車して新潟まで移動し新潟に宿泊。最終日の4日目は新潟から日本海側を進む特急いなほに乗車して秋田に戻り、秋田空港から飛行機で帰る流れになった。
 
 

旅のスタートは東京駅 秋田新幹線こまちで秋田へ

 旅のスタート地点の東京駅。東北新幹線のホームは昨年新函館北斗から鹿児島中央までの日本列島新幹線大縦断をやって以来約1年ぶりだった。今回も前日の宿泊でもらった地域共通クーポンを使って駅弁等を購入した。
 
 旅の第一走者は新幹線こまち5号秋田行き。はやぶさ5号新青森行きと途中の盛岡まで併結し、東京~青森間は17両編成で運転される。盛岡駅で切り離しを行うと、そこからは在来線に転じて田沢湖線、奥羽本線を経由して秋田へと向かう。東京~秋田間の所要時間は約4時間50分で、東海道山陽新幹線で例えると東京~広島間の所要時間とほぼ同じとなっている。今回は所要時間も結構かかるのでグリーン車に乗車することにした。
 
 開業以来E3系が使用されてきた秋田新幹線。2013年に今回乗車するE6系が投入され、置き換えまでの期間中は一時的に「スーパーこまち」というE6系専属の列車が誕生したが、1年のうちに置き換えが進行し、2014年からは全列車が「こまち」の愛称に戻っている。7両編成でグランクラスの設定はなく、グリーン車と指定席が設置。併結の有無にかかわらず、東京寄りから11号車、12号車の順番で号数が振られている。なお、秋田新幹線は田沢湖線から奥羽本線に入る大曲駅で、進行方向が変わるので、東京寄りの11号車が秋田駅では先頭車となって到着する。
 
 グリーン車の車内。先頭車は鼻が長い形状をしているので、実質的な半室構造みたいになっている。黄色い座席が特徴的な指定席座席と比べて、グリーン車はシックな印象。電動のリクライニングとフットレストで快適に移動ができる。
 
 ミニ新幹線の名物と言えば、乗車口にあるこのステップ。通常の新幹線幅より一回り車体の小さな秋田・山形の両新幹線車両は新幹線区間の停車駅で使う隙間を解消するためのステップを備えている。E3系や400系新幹線からの伝統であるこのステップは、新幹線区間を走る際に停車駅で跳ね上がる仕組みになっていて、ミニ新幹線車両だけが備える独特な装置である。
 
乗車記録1
秋田新幹線 こまち5号 秋田行
東京→秋田 E6系 グリーン車
 

はやぶさと併結した17両編成で東北新幹線を下る

 東京駅を発車した列車はすぐに地下に潜って上野駅に停車。再び地上に上がると、京浜東北線に沿って赤羽へと進み、赤羽から先は埼京線と並走して大宮へと向かう。沿線は終始東京・埼玉の街が広がり、この区間では最高速度が130km/hに制限される。東京駅を基準に東京駅から離れていくことを下りと呼ぶが、西日本に住んでいるので、どうしても北上=上りと考えてしまう。しかし、東北新幹線は新青森に向かう方が言うまでもなく下り。多分何回乗っても慣れないと思う。
 
 大宮で上越新幹線と別れると、高速走行を開始。宇都宮~盛岡間は320km/hに対応しており、那須塩原、新白河、郡山、福島とあっという間に通過していく。GPSアプリで速度を計測してみると、310km/h前後で走行していた。写真は福島駅手前の荒川。当然東京と埼玉の県境の荒川とは無関係の川で、こちらの荒川は安達太良山のあたりから流れてくる阿武隈川の支流だそう。
 
 北上するにしたがって天気が回復してきた。東京からおよそ1時間30分で仙台に到着。前回の旅ではこの東京~仙台間を常磐線経由で走る特急ひたちに乗車し、5時間かけて仙台へとたどり着いたので、1時間30分で着くとその早さに驚く。仙台駅に着く直前には仙台市内を流れる広瀬川を渡る。
 
 仙台を出ると次の停車駅は盛岡。古川、くりこま高原と通過し、岩手県へと入っていく。岩手県に入ると最初の通過駅である一ノ関を通過。その先には北上川の流域に広大な水田が広がる区間がある。東北本線で言えば一ノ関~平泉間にあたり、写真の奥にわずかに見える街が中尊寺金色堂で有名な平泉町。新幹線はこの稲作地帯を縦断するように走っていく。その後も北上川に沿って北上すると、車窓に岩手山が見えはじめ、列車は盛岡駅へと到着した。
 

320km/hの大動脈走行から一転山岳路線に様変わり

 東京から盛岡間を共に駆け抜けてきたはやぶさとこまちは盛岡で別れる。こまちは先に発車するので、解結を見学することはできない。盛岡駅を出て、左にカーブしながら地上へと下りると、ここから先は在来線路線の田沢湖線へと入る。新幹線こまちは盛岡からは在来線区間を走り、正式な扱いとしては在来線の特急列車へと変わる。これまで300km/hで走ってきた列車は一転、100km/h未満ののんびりとした走りに変わる。そのギャップがとても面白い。田沢湖線は盛岡駅と大曲駅間を結ぶ在来線。ほぼこまちのためによるような路線となっていて、普通列車も走行しているが本数は少ない。県境を越える区間では、普通列車は6往復となり、こまちが走行していなければ、おそらく路線維持すら厳しいと思う。
 
 雫石駅を通過すると、列車は峠越えをして秋田県へと向かっていく。さきほどまで東北の大動脈を高速で駆け抜けていたのは幻かと思えるほど、山深い景色の中をゆっくりと走っていく。すっかり冬の準備が完了している北東北の山々。一か月ほど前に訪れれば、おそらく紅葉がきれいに見られるはずなので、タイミングが合えばその季節に乗ってみたい。
 
 秋田県へ入って最初の停車駅の田沢湖駅では、観光客を中心に多くの人が下車していた。田沢湖駅を出てしばらくは、再び山間部の景色を進み、角館の手前から横手盆地へと入って、視界が一気に開ける。次の角館駅は鷹ノ巣駅との間を結ぶ秋田内陸縦貫鉄道線の乗り換え駅。現在は一部区間が豪雨被害の影響で不通となっていて、バス代行輸送が行われている(2022年12月再開予定)。角館からはやや南下しながら横手盆地の中を進み、田沢湖線の終点であり、花火大会が行われることでも有名な大曲へ到着。大曲駅で列車は田沢湖線から奥羽本線へと入る。秋田新幹線はここ大曲で進行方向が変わり、通称秋田新幹線の駅としての最後の一駅間は進行方向が逆になる。所要時間は30分ほどのため、座席の回転は行わないのが基本で、ここから終点の秋田までは座席が逆向きのまま走っていく。田沢湖線は標準軌に改軌されているので、普通列車も標準軌の車両が活躍するが、奥羽本線区間は横手や湯沢へと向かう普通列車も行き来するので、こまちと普通列車で線路が分かれ、標準軌と狭軌の単線並列という国内でも珍しい形態の線路が続いている。
 
 秋田駅に着く前に東京駅で買ったお昼ご飯をたべることにした。今回は神奈川県のブランド牛であるやまゆり牛を使用したやまゆり牛しぐれ煮弁当。ごはんとしぐれ煮の相性が抜群でとてもおいしかった。
 

初めて秋田県に降り立つ

人生初の秋田駅。約5時間ぶりのに外の空気を吸ったが外の空気は東京と違ってひんやりしている。秋田駅は奥羽本線と羽越本線の分岐駅だが、系統上は秋田新幹線と男鹿線の列車も乗り入れている。秋田新幹線だけが標準軌のため、新幹線改札とホームが独立しており、駅名標も秋田新幹線としての次の停車駅である大曲が表示してある。
 
 乗ってきたE6系は秋田名物のなまはげを感じさせる少し不気味な赤い顔が特徴的な新幹線。この長い鼻の車両が田沢湖線の山間部の景色を走ってると考えただけで面白い。今回は見る時間をつくらなかったが、今度秋田へ赴いたときには、この新幹線が踏切を通過する様子も見てみたい。
 
 秋田駅では1時間程度乗り換え時間があるので、一旦改札の外に出てみた。これから4日間毎日秋田駅には来ることになり、最終日は乗り鉄旅としてはこの駅がゴールとなる。改札に出ると、巨大な秋田犬バルーンが出迎えてくれる。すごく愛嬌があってとても可愛い顔をしていた。
 
 秋田駅は西口と東口がある橋上駅舎となっていて、市街地側が西口となっている。東口には駅と直結する形で東横イン秋田駅前とNHK秋田放送局の建物が建つ。市街地側の西口は短いアーケードの先に西武秋田店などの百貨店・商業施設などが並んでいる。秋田市の人口は30万人で、九州で言えば久留米市とほぼ同じ。県庁所在地なので、佐賀市や宮崎市と街の規模は似ている。
 秋田駅周辺を一通り散策して、ここからは奥羽本線を北上し、奥羽本線の終点である青森駅を目指した。