【旅行記】珍鉄道の宝庫あいち乗り鉄旅~武豊線と名古屋駅~

 2022年も12月に入り、今年の乗り鉄もいよいよ大詰め。今年の最後にどこに行こうか検討した結果、名古屋に行くことにした。九州からは航空機が充実している東京の方が、名古屋に行くより利便性が高い。そうした事情もあって、東海地方はまだ未乗路線が数多く残っている。名古屋近辺の路線は、数年前に名鉄路線の乗り鉄をしたとき以来、しばらくご無沙汰となっていた。
 愛知県は珍しい特徴的な鉄道路線が多い。某自動車メーカーの本社があるため、自動車産業のイメージが強いところだが、工業県ならではの珍しい鉄道路線がたくさんある。自動車の普及に伴った鉄道輸送の減少に直面し、モータリゼーションという時代の流れを体現するような路線がある一方で、万博の開催に合わせて開業した、新しい鉄道の方向性を示すような路線もある。2022年最後の旅は、そうした珍鉄道を巡る愛知県の旅に出かけた。
 

知多バスで知多半島を横断

 最近の旅は前日のうちに航空機で前乗りするのがもはや普通になってしまった。今回も前日のうちに愛知県入り。九州から飛行機で中部国際空港に降り立ち、中部国際空港から2駅先の常滑駅近くのホテルに宿泊した。
 1日目は早朝の常滑駅をスタートし、愛知県内をぐるっと一周しながら、特徴ある鉄道路線に乗車していく。
 乗り鉄旅と言いながら、最初に乗車するのはバス路線。宿泊地の常滑駅から、最初に乗り鉄する武豊線の武豊駅を目指して移動していく。常滑と武豊は知多半島の東西反対側にある。鉄道路線で行こうとすると、名鉄常滑線で太田川へと移動した後、河和線に乗り換えて向かう必要がある。ここをショートカットするのがバス路線。常滑駅からは知多半田行のバスや名鉄知多武豊行きのコミュニティバスが発着している。今回は知多半田行のバスを選択した。
 
 常滑から知多半田へと向かう路線バス。日中の便は中部国際空港発着のバスもあり、知多半島の東側のエリアから中部国際空港をダイレクトに結ぶ路線にもなっている。乗車したバスは知多半田駅行きではなく、日本福祉大学行となっている。朝の1便は知多半田駅から先も引き続き運行され、半田・常滑線と半田北部線のという2路線が通しで運行されている。武豊駅へ向かうには、このバスに乗車して、名鉄青山駅で下車するのが早い。しかし、半田・常滑線という名前の路線で、青山で降りたのでは中途半端なので、路線の終点となる知多半田駅まで向かう。
 
乗車記録1
知多バス 半田・常滑線
知多半田駅経由 日本福祉大学行
常滑駅→知多半田駅
 
 バスは常滑の市街地を出たあと東へと進み、半田市の南側の青山地区を通って、名鉄河和線の東側を北上して知多半田駅に向かう。現在、半田市では路線バスの無料乗車キャンペーンが行われていて、常滑からの乗車でも半田市に入った最初のバス停までの運賃を払えば、半田市内は無料で移動することができる。2022年11月から2023年2月末まで実施されて、常滑駅から知多半田駅まで通常だと550円のところ350円で移動できた。
 
 半田市は知多エリアの中でも大きな街で、名鉄では知多半島駅、JRでは半田駅がターミナル駅となっている。特急や急行などの優等種別が発着する名鉄の方が本数が圧倒的に多く、朝夕は折り返して金山、名古屋方面に向かう列車も多数設定されている。
 
乗車記録2
名鉄河和線 急行 内海行
知多半田→知多武豊
 
 知多半田駅からは内海行の急行で来た道を少し戻り知多武豊駅で下車した。半田~武豊間は名鉄とJRが数百メートルの間を開けてほぼ並走している。そのため名鉄とJRの駅が同じ駅名になる場合は名鉄側の駅名に知多がつけられている。知多武豊駅と武豊駅は徒歩10分ほどの場所にある。知多武豊駅の名古屋側を通る大きな道を道なりに進んでいくと武豊駅にたどり着く。
 

東海地方最古の鉄道ながらJR線の最新電化事例となった武豊線

 知多武豊駅から歩くこと10分ほどのところにあるJRの武豊駅。名鉄知多武豊駅も相対式の駅で大きくはないが、こちらは終点の駅なのにホームは1面しかなく、さらにこじんまりとしている。武豊と書くとたぶん多くの人が競馬の騎手を思い浮かべるはず。ネットで調べると、武豊町の一日町長を務めたことがあるそうで、駅前で撮影した写真が掲載されている。武豊から使う乗車券は前回の東北地方の旅の途中で、青森県内の駅で購入(乗車変更)したが、武豊(たけとよ)という地名がなかなか駅員に伝わらず、「競馬の武豊騎手と同じ字です」と言ったらすぐに通じた。
 
 武豊線は2015年に電化される以前は非電化路線だった。現時点で非電化路線が電化路線になった最新の事例となっている。そもそもここ数年で蓄電池車やハイブリッド車の技術が実用化されたので、電化という大幅な設備投資を行わなくても、車両を変えるだけで対応できる例が多くなったほか、中には逆に非電化化される区間も出てきているので、これから先路線自体を電化する例は少なくなると思われる。最新の電化路線という意味で、この路線は珍しい存在である。
 
 乗車したのは311系で運転される区間快速名古屋行。武豊線では区間快速と普通の2種別が運転され。現在は全列車が武豊線内の各駅に停車する。区間快速と普通の違いは東海道本線内で快速運転するかどうか。区間快速は朝夕のみの運転で日中は普通列車のみしか走っていない。311系が登場したのは民営化直後の1989年。武豊線の電化が決定したのが2010年なので、デビュー当時は武豊線を走る事なんて誰も想像してなかっただろう。時を経てJR東海の車両でも重鎮レベルになった311系が電化された武豊駅にやってくる光景がとても面白い。
 
乗車記録3
武豊線・東海道本線 区間快速 名古屋行
武豊→名古屋 311系
 
 電化される以前はキハ75系とキハ25系が活躍していた武豊線。現在は311系と313系での運行となっている。名鉄が知多半島の東側から西側に渡って北上するのに対し、武豊線は一貫して東側を進み、大府で東海道本線に接続する。武豊線の歴史は古く、愛知県、東海地方で一番最初に開業した路線になっている。武豊~半田間は名鉄と並走するために乗降は多くはないが、その後は武豊線のみが走るエリアとなるので、小さな駅からも多くの乗車があった。大府駅では停車中に特別快速に追い抜かれるダイヤになっている。大府を出ると快速運転となり、共和、金山のみに停車して終点の名古屋へ到着した。
 
 およそ4年ぶりの名古屋駅。通過したことは何度かあったものの、降り立ったのは久しぶりだった。乗車した311系は留置線に引き上げていった。今回は長距離移動するわけでもなく、時間もたっぷりあるので、名古屋駅でしばし列車を眺めていくことにした。
 

個性あふれるJR東海の近郊・通勤型電車たち

 中央本線に今年3月から導入されたJR東海の最新形式315系。JR東海初の通勤型電車で、8両固定編成を導入したのもこれが初めて。中央本線名古屋~中津川間で活躍する211系や313系の置き換えを目的に導入され、2023年度中にこの区間は全て315系に統一される予定。その後も東海道本線や関西本線などでの導入が予定されている。写真ではよく見ていたが、近くで見ると思った以上にかっこいい車両だった。
 
 名古屋駅は7・8・10番線が中央本線用のホームとなっていて、日中でもおよそ7分~10分に1本の本数があるため、ひっきりなしに列車が入ってきては折り返していく。315系の発車直前に隣のホームに入線してきたのは、211系3両+211系3両+313系2両の普通高蔵寺行き。2022年のダイヤ改正で中央本線名古屋~中津川間は全普通・快速列車が8両編成に統一された。211系は3両編成と4両編成が活躍し、4両編成は当然2本つなげれば8両になるが、3両編成は後ろに2両つなげる必要がある。211系には2両編成はないので、2両の313系が付属編成のように連結されている。なるべくロングシート車両になるように313系の中央本線名古屋口での運用は少なくなっているが、211系にプラスされる313系はこの区間ではあと1年ほどで見れなくなるクロスシートの普通列車となっている。
 
 そして、東海道本線ホームに停車する313系新快速大垣行き。東海道本線では特別快速と新快速が2本交互に運転されていて、特別快速の方が上位の種別。大きな違いは大府に停車するか否か。また、新快速の一部列車は三河三谷や幸田に停車する列車もあるのでその点も異なっている。特別快速・新快速、普通列車はそれぞれが15分間隔の運転でとても分かりやすいダイヤになっている。
 
乗車記録4
東海道本線 普通 岐阜行
名古屋→枇杷島 313系
 
 さて、名古屋駅からは313系4両編成の普通列車岐阜行に乗車して再び移動を開始。名古屋駅から北に進み、庄内川を渡った先にある枇杷島駅で下車した。名古屋駅から一駅しか進んでいないが、金山方面と違って、随分と郊外に来たようなそんな印象の駅。それもそのはず、ここはもう名古屋市ではなく、お隣の清須市の駅。名鉄名古屋本線では二ツ杁駅の北側に位置している。
次回はこの駅から大都会のローカル線として知られる東海交通事業城北線に乗車する。