【旅行記】珍鉄道の宝庫あいち乗り鉄旅~浮上式鉄道と日本最短地下鉄~
名鉄唯一の独立路線「瀬戸線」にして瀬戸市へ
あいち乗り鉄旅も終盤へ。栄からは残り2路線となった名鉄未乗路線のうちの一つ瀬戸線へと乗車する。名鉄瀬戸線は名鉄が運行する路線の中で唯一、ほかの路線と線路がつながっていない路線。現在の名鉄が運行する路線は、戦前に様々な鉄道会社が開業させたもの。瀬戸線は瀬戸自動鉄道が1905年に開業させた路線で、その後瀬戸電気鉄道となったあと、1935年に名古屋鉄道の路線となった。愛知県内に路線を張り巡らせる名鉄路線で唯一、栄に乗り入れる路線でもある。

朝夕には急行、準急列車も運行されているが、日中は普通列車のみで10分間隔の運転になっている。乗車するのは4000系。瀬戸線には1編成だけ名鉄の本線系統でも運行されている3300系が活躍しているが、それ以外の車両は全て4000系という瀬戸線独自の車両が運用されている。
乗車記録17
名鉄瀬戸線 普通 尾張瀬戸行
栄町→尾張瀬戸 4000系

栄町を出た列車は、次の東大手の先までは地下区間。その後は一気に高架へと駆け上がって、大曽根へと向かう。大曽根までは地下鉄名城線が北側を走り、名鉄の場合はその南側をショートカットするように走っていく。昨日訪れた大曽根駅を出ると、中央本線の上を通って、矢田川を渡る。その先でゆとりーとラインが頭上を通り過ぎていく。そこから先は小幡、喜多山などを経て、名古屋のベッドタウンが広がる尾張旭へ。午前中の列車なので、まだ下り列車の乗客は少なく、尾張旭を出たあたりで4両編成のうちの後ろ2両は乗客がいなくなった。その後も郊外の戸建て住宅が多く立ち並ぶ景色を車窓に見ながら進み、愛知環状鉄道と接続する瀬戸市駅を通る。最後に瀬戸川が近づいてくると、終点の尾張瀬戸駅に着く。

尾張瀬戸駅。名古屋の中心部からかなり東の方に来て、山が目の前に迫っている。瀬戸市は隣の長久手市と並んで名古屋のベッドタウンとして発展してきた街。尾張瀬戸駅、瀬戸市駅、瀬戸口駅で囲まれる三角形の中には、丘陵地に開発されたニュータウンが広がる。一方で、古くから焼物の街として知られ、陶器を「セトモノ」と表現するのは、ここ瀬戸に由来している。さらに、瀬戸市は藤井聡太竜王の出身地。駅に隣接した施設には、藤井竜王を応援するメッセージが並んでいた。地元も盛り上がっている。

ふと頭上を見上げると、「となりのセトシ」の文字が。長久手市にある万博公園にオープンしたジブリパーク開業に合わせ、某ジブリアニメにちなんで、焼き物の街を全力でアピールしている。平日は運行されていないが、休日には尾張瀬戸駅から万博公園行の路線バスもある。

名鉄瀬戸線の次に乗車するのは八草駅から出るリニモ。鉄道で向かうには、尾張瀬戸から一旦瀬戸市駅まで戻り、そこから愛知環状鉄道に乗り換える必要がある。今回は偶然にも、瀬戸市が運行する八草行のコミュニティバスと時間が合い、こちらに乗車して八草駅に向かうことにした。ハイエースで運転されるコミュニティバスで、八草駅へと向かうバスは上之山線という路線。この路線には、尾張瀬戸駅から愛知環状鉄道の山口駅までの区間で住宅街を経由していく系統と、国道でショートカットする2系統があり、乗車したのは後者。1回の乗車は100円で、15分ほどで八草駅に到着することができた。ちなみに八草駅は住所上は豊田市となっていて、この路線は八草駅の部分だけ豊田市を走る。
乗車記録18
瀬戸市コミュニティバス 上之山線 八草駅行
尾張瀬戸駅→八草駅

駅周辺は思ったほど栄えていない八草駅。ここは愛知環状鉄道とリニモが接続する駅で、リニモの側には愛知工業大学前という副駅名がついているとおり、駅から北東方向に進んだ場所に大学がある。ちなみに万博開催時は、万博八草駅という駅名となっていて、名古屋駅からこの駅まで、高蔵寺経由の臨時列車「エキスポシャトル」が運行されていた。
日本唯一の浮上式鉄道「リニモ」に乗車

リニモの愛称で親しまれているこの浮上式鉄道の正式な路線名は、愛知高速交通東部丘陵線という。現在日本で運行されている鉄道路線で唯一、浮上式鉄道に分類されており、八草駅と藤が丘駅の間の9kmほどを結んでいる。日中は8分間隔の運転で、八草駅では東側に設置されている折り返し線に入って折り返してくる。
乗車記録19
愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)
八草→藤が丘 100形

運よく後方展望の席を取ることができた。八草駅を発車する時には、フワッと浮く感覚があり、そこから静かに走り始める。浮いた状態で走るため、揺れも少なく乗り心地もいい。東部丘陵線という名前のとおり、八草駅を出た列車は、丘陵をゆるやかなアップダウンで進んでいく。大きなジェットコースターに乗っているのうなそんな気分。車窓には遠くに白く雪を積もらせている山が見えた。後々調べてみると、その山は御嶽山だったらしい。このリニモは万博開業に合わせて整備された路線で、万博開催時は多くの人で大混雑した。自宅にも当時万博に行った人からもらった記念切手ケースがある。あれから20年が経とうとしている万博記念公園駅に到着。ここではジブリパークの開業もあってか子供連れや女性客の姿が多かった。その後は国道沿いに広がる大型店やトヨタ博物館の建物を横目に進み、地下区間へと突入して藤が丘駅へと向かう。

八草駅を出て17分で終点の藤が丘駅に到着。リニモの各駅はそれぞれ色とロゴが決められている。藤が丘駅は藤の花の色と同じ紫色。ここで地下鉄に乗り換える。地下鉄と言っても藤が丘駅では地上を走っているので、地下深くにあるリニモのホームから高架駅の地下鉄のりばまでかなりの距離を移動する必要がある。
名古屋の東西を結ぶ地下鉄「東山線」に乗車

藤が丘駅から乗車するのは、名古屋市営地下鉄の東山線。終点の高畑まで乗車していく。東山線は名古屋市の東西を結ぶ地下鉄路線。名古屋の市街地から出る放射状路線の一つとなっていて、地下鉄が開業した時にはまだ更地だった沿線は、開業後に急速に発展し、現在はベッドタウンが広がる。また、栄と名古屋駅を結ぶ地下鉄路線であるために、昼夜問わず混雑する路線としても知られている。藤が丘~一社の手前までは地上区間。そこからは地下鉄となり、本山、千種、栄、名古屋、八田を経由して高畑へ。当然ながら最混雑区間は栄~名古屋間だった。
乗車記録20
名古屋市営地下鉄 東山線
普通 高畑行
藤が丘→高畑 N1000形

列車は終点の高畑に到着。地下鉄乗りつぶしあるあるで特段終点の駅に用事はない。位置的にはあおなみ線荒子駅の西側。中川区の区役所が近くにある。地上に一瞬出て、すぐに折り返し、来た道を戻って栄駅へと向かった。
乗車記録21
名古屋市営地下鉄 東山線 普通 藤が丘行
高畑→栄 N1000形
乗車記録22
名古屋市営地下鉄 名城線 普通 環状運転(右回り)
栄→平安通 2000形
日本最短地下鉄「上飯田線」と名鉄小牧線に乗車して犬山へ

さて、旅もいよいよラストスパート。栄駅からは本日2回目の名城線で平安通駅で下車。ここの駅から、名古屋市営地下鉄最後の未乗路線の上飯田線と、名鉄の最後の未乗路線小牧線に乗車する。

この旅の締めくくりとなる列車にも珍要素がある。上飯田線はここ平安通から隣の上飯田駅までを結ぶわずか0.8kmの路線。日本で一番短い地下鉄となっている。上飯田から先は名鉄小牧線と直通しており、一応名古屋市営地下鉄自前の7000形も走っているが、車両もほとんどが名鉄の車両。地下鉄区間も名鉄の乗務員が乗務している。前回の記事でも書いた通り、名古屋市営地下鉄の路線名は基本的に愛称で、正式な路線名ではないが、この路線だけは上飯田線が正式な路線名となっている。路線は上飯田連絡線株式会社という第三セクターの所有、路線の運行は名古屋市営地下鉄、実際の乗務員は名鉄という運行形態を取っている。
ここから乗車するのは、名古屋市営地下鉄上飯田線と名鉄小牧線を相互直通運転する名鉄300系の普通犬山行。上飯田線の先にある小牧線は上飯田駅から犬山駅までを結ぶ路線で、県営名古屋空港の東側のエリアを走っている。乗車する300形の車内はロングシートと転換クロスシートが混在する名鉄独自の座席配置が採用されていて、一区間のみの地下鉄区間もクロスシートで移動することができる。
乗車記録23
名古屋市営地下鉄上飯田線 名鉄小牧線
普通 犬山行
平安通→上飯田 300形

平安通駅を出ると、2分で上飯田線の終点上飯田駅に到着。別に乗務員が変わるわけでもないので、まったく終点感はない。名鉄小牧線に入ったあとも、次の味腕駅の手前までは地下区間となり、矢田川と庄内川は地下で交わす。その後は城北線の線路と交差し、春日井市の西側のエリアを進む。名古屋飛行場の東側は自衛隊の小牧基地が広がっているが、牛山駅がその最寄り。その後小牧市へと入ると、小牧市街で再び地下へと入る。

小牧市街の地下区間を通って再び地上へと戻る。小牧線は小牧までは複線だが、その先は単線。次の小牧原では廃線となった新交通システム桃花台ライナーの高架橋が駅の上を越えていく。その後、景色はのどかな雰囲気となり犬山市へ。羽黒駅と犬山駅の間は少し距離があるため、信号場が設けられていて、平安通行きの列車とすれ違った。左側から犬山線、右側から広見線の線路が近づいてくると、終点の犬山に到着。現在営業している名鉄路線もこれにて完乗となった。

久しぶりに犬山駅にやってきた。決して駅構内は広くはないが、この駅には犬山線、広見線、小牧線の3路線が乗り入れ、さらに新鵜沼から先へと続く各務原線の列車もこの駅を初終点とする。小牧線はこの駅で他の名鉄路線と接続しているが、イベント時を除いて、他線に直通する列車はない。なお、この駅には地下鉄鶴舞線からの直通列車も走るため、それぞれの地下鉄車両を見ることができる。高畑から24時間券で入場したため、この駅で上飯田~犬山間の運賃を精算した。

名鉄路線の完乗という一つの目標を達成して、帰路につく。帰りは名古屋空港からのフジドリームエアラインズで九州へと戻るので、西春駅経由で名古屋空港へ。広見線新可児始発の準急中部国際空港行に乗車して、西春駅で下車した。前回名鉄旅をした際には、わざわざ可児で一泊して、新可児始発中部国際空港行のミュースカイに乗ったのが懐かしい。準急は岩倉まで各駅に停車する。布袋駅付近が高架化されて初めて犬山線を走る。布袋駅と言えば、電車でGoで軽トラが線路内に進入しているのを回避しないといけないというミッションの先にある駅。今では見違えるほどにきれいな駅になっていて、舞台(?)となった踏切も今はもうない。
乗車記録24
名鉄犬山線
準急 中部国際空港行
犬山→西春 3300系

準急を西春で下車。ここ西春駅は名古屋駅側行くと、上小田井駅を出て一旦地上に降りたあと、県道と交差するために再び高架へと上がり、下った先にこの駅がある。電車でGoでは、パノラマカーの急行でこの駅に停車することになるが、上小田井駅あたりで調子に乗ってると、高架橋の下り勾配でブレーキをかけるタイミングを間違えて、この駅を行き過ぎる。そんな駅である。ゲームの中でも、「名古屋空港行きのバスはお乗り換えです」と放送がかかるとおり、ここは名古屋空港へと玄関口でもあり、ここから名鉄バスで20~30分ほど行ったところに名古屋空港がある。
乗車記録25
名鉄バス
エアポートウォーク経由 名古屋空港行
西春駅→名古屋空港

西春駅から名鉄バスに乗車して、終点の名古屋空港で下車。中部国際空港ができる以前の主要空港で、以前は北米やヨーロッパへの国際線を運行されていた空港である。しかし、中部国際空港ができると、名古屋空港は名古屋飛行場へと名を変え、県営の空港になった。その後は静岡に本社を置くフジドリームエアラインズの拠点空港として使用され、現在は青森、花巻、山形、新潟、出雲、高知、福岡、熊本の各都市との間に飛行機が飛んでいる。ターミナルは1階で完結するが、3階には展望デッキが用意されている。保安検査場を通過すると、その先は各路線共通の待合室となっていて、搭乗時間になると、長い通路を通って、搭乗口まで行き、そこで搭乗券見せるという名古屋空港独自の方式になっている。夕暮れの名古屋空港から離陸して、今回のあいち乗り鉄旅、そして2022年の旅が終了した。
おわりに
2022年の旅行の締めくくりとなった愛知県の鉄道旅。国鉄岡多線・瀬戸線の歴史を引き継ぎ、それぞれの運命をたどっている城北線、愛知環状鉄道、バスが鉄道になる名古屋ガイドウェイバスゆとりーとライン、名古屋版和田岬線の名鉄築港線、日本唯一の環状地下鉄名城線、同じく日本唯一の浮上式鉄道リニモ、そして日本最短の地下鉄である上飯田線など、特徴的な鉄道路線に乗車することができた。それぞれの路線が個性を持っていて、愛知県ならではの鉄道旅を満喫することができた。これでこれまで乗車してきた路線を含めて、愛知県の未乗路線は豊橋鉄道渥美線の一路線となった。同路線には2023年中には訪れる予定にしている。2022年の旅はこれにて終了。鉄道路線では59路線に新たに乗車した2022年。そのフィナーレにふさわしい鉄道旅だった。
★今回の初乗車路線
【鉄道路線】
JR東海 武豊線 武豊-大府間
東海交通事業 城北線 枇杷島-勝川間
名古屋ガイドウェイバス ガイドウェイバス志段味線 大曽根-小幡緑地間
愛知環状鉄道 愛知環状鉄道線 高蔵寺-岡崎間
名鉄三河線 碧南-知立間
名古屋市営地下鉄 桜通線 徳重-中村区役所間
名鉄築港線 大江-東名古屋港間
名古屋市営地下鉄 名港線・名城線(2号線)名古屋港-(栄)-大曽根間
名古屋市営地下鉄 名城線(4号線) 大曽根-八事-金山
名鉄瀬戸線 栄町-尾張瀬戸間
愛知高速交通 東部丘陵線 八草-藤が丘
名古屋市営地下鉄 東山線 藤が丘-高畑
名古屋市営地下鉄 上飯田線 平安通-上飯田
名鉄小牧線 上飯田-犬山
【バス路線】
名古屋市営バス ゆとりーとライン 小幡緑地-高蔵寺
名古屋市営バス [徳重14]名鉄有松-地下鉄徳重
瀬戸市コミュニティバス 上之山線 尾張瀬戸駅-八草駅
名鉄バス 西春駅-名古屋空港線 西春駅-名古屋空港