【旅行記】珍鉄道の宝庫あいち乗り鉄旅~名鉄築港線と環状地下鉄~
あいち乗り鉄旅2日目。ようやく明るくなってきた名古屋駅からスタートする。名古屋駅は在来線側にセントラルタワーなどの高層ビルが立ち並んでいて、新幹線側は高い建物が少ない。そのため、新幹線側から見ると、在来線側に立ち並ぶ高層ビル群がより高く見える。時刻は6時半になるところで、新幹線ホームでは東海道新幹線から山陽新幹線の博多まで運転される唯一のひかり号であるひかり531号が入線してきたところだった。この数週間前に博多に行った際、この列車の到着を博多駅で目撃していたので、なんだか不思議な気分。大動脈東海道新幹線の喧騒を聞きながら、名鉄の駅へと向かう。
乗車記録14
名鉄名古屋本線・河和線
普通 中部国際空港行
名鉄名古屋→大江 3500系

2日目最初は、名鉄名古屋駅から普通中部国際空港行に乗車。名鉄名古屋駅は各方面に向かう路線が集結する駅にも関わらず、上下線1本ずつしかないため、乗車列が非常に難解な駅として知られる。まだ時刻は朝6時半なのに、2分間隔くらいで列車がやってくる光景は、他の路線では見られない名鉄ならではのもの。名鉄名古屋駅では、これくらいの列車間隔が当たり前で、早朝から深夜まで終始列車が出ては入るが繰り返される。金山方面の列車の行先も多彩。豊橋、吉良吉田、東岡崎、内海、河和、中部国際空港、豊川稲荷、知多半田・・・と、平日の金山方面は実に19もの行先の列車が発着。上下線合わせると30(名鉄岐阜は各務原線経由もあるので2カウント)にもなる。今回は中部国際空港行の普通列車に乗車。およそ15分の大江駅で下車した。
名古屋版和田岬線として知られる名鉄築港線に乗車

大江駅から乗車するのは、おそらく愛知県ではガイドウェイバスと並んで珍鉄道ぶりを発揮している鉄道路線。大江駅から東名古屋港を結ぶ名鉄築港線である。わかりやすく言えば、名古屋の和田岬線。和田岬線とは山陽本線の支線で、兵庫駅から和田岬駅までを結ぶ路線。主に和田岬にある三菱重工業の工場の通勤路線として使われている。名鉄築港線も終点にあるのは三菱重工業。三菱重工業の航空・宇宙部門は名古屋空港周辺と大江を拠点としている。和田岬線と同じく、名鉄築港線も朝夕しか列車がない。朝は12分間隔の運転となっていて、4両編成の5000系が行ったり来たりを繰り返している。

兵庫の和田岬線は、起点となる兵庫駅に和田岬線専用の改札が設置されていて、ここできっぷの収受やICカードの運賃精算が行われているが、築港線の場合も同じく大江駅に改札があり、乗り換える時には改札を通って築港線ホームへと向かう。朝夕しか本数がないが、朝の東名古屋港行、夕方の大江行はそれぞれそれなりに乗客が乗っている。大江駅を出ると右にカーブし、あとはまっすぐ走るとすぐ終点。所要時間はわずか3分。車窓に広がる工場群を眺める暇もなく終点東名古屋港に到着する。
乗車記録15
名鉄築港線 普通 東名古屋港行
大江→東名古屋港 5000系

列車はすぐに大江行きとして折り返す。ここから乗る乗客はほぼ皆無で、回送もほぼ同然で帰っていく。5000系はいかにも新型車両のような見た目をしているが、実は見た目だけを新しくした車両で、多くの機器は全車特別車として運転されていた「パノラマSuper」1000系車両のものが流用されている。そのため見た目は新しいのに、床下から聞こえてくるのは平成初頭の列車の走行音。鉄道車両は見た目で判断してはいけない。
名鉄築港線の役割とダイヤモンドクロス

兵庫の和田岬線は、途中に川崎車両への引き込み線があり、全国にの新型車両の輸送にも使用されるが、こちらの名鉄築港線も終点の東名古屋港駅付近に、名古屋臨海鉄道との接続線があり、名鉄・名古屋市営地下鉄の車両は築港線を経由して搬入されている。さらに、築港線の線路は東名古屋港駅から先も続いていて、線路はこの先にある港の埠頭で終わっている。日本車輛が製造した海外向け列車の輸出にこの線路が使用されることもある。旅客輸送だけでなく、実は車両輸送という大事な役割をもっている路線である。

そして、珍光景として有名なのは、東名古屋港駅から少し大江側に進んだところにあるダイヤモンドクロス。国内では他に松山の伊予鉄道のダイヤモンドクロスが有名だが、あちらは厳密には鉄道と軌道のダイヤモンドクロス。一方、こちらは名鉄築港線と名古屋臨海鉄道という鉄道同士のダイヤモンドクロスで、鉄道同士が交わるのはここが唯一となっている。写真の手前から奥に走るのが、名古屋臨海鉄道東築線。そして左右に交わるのが、名鉄築港線。別の会社の線路が直角交差している。この写真の奥の敷地は名古屋臨海鉄道の名電築港駅という貨物駅。新型車両は手前から奥へ進む線路を走った後、この写真の奥でカーブしている名鉄との接続線を通って、画面左手の東名古屋港駅に向かったあと、再度方向転換して、画面の左から右に走って大江駅へと向かう。新型車両の輸送時にしか活躍しないため、普段は線路側に策がかかっていて、踏切にも遮断機は設置されていない。ちなみに画面を左から右に走る名鉄築港線の架線柱が片持ち構造になっているが、これはもともと線路に並行して、現在はリニモとして実用化されているリニアの実験線があった名残り。現在は実験線は撤去されているが、末期にはリニモの車両もここに運ばれて試運転が行われていた。

様々な珍要素が溢れる築港線。名鉄の中でも異彩を放つ路線ながら、工場への通勤者輸送、そして新型車両の輸送の役割を担う。また名鉄から他社へ移籍した車両もここを通って回送されており、名鉄最短の路線ながら、実は重要な路線となっている。ダイヤモンドクロスを見学したあとは、再び移動を再開した。
乗車記録16
名古屋市営バス[名港11]名古屋港行
大江町→名古屋港

東名古屋港駅の近くには名古屋市営バスの大江町バス停が設置されている。ここからは次の乗りつぶし路線の起点となる名古屋港駅へと移動する。枝線や盲腸線が多い臨海部の鉄道を短絡するバス路線の存在は非常に役に立つ。
24時間券で6の字地下鉄を完乗

名古屋港から乗車したのは、名古屋市営地下鉄の名港線・名城線。実は名古屋市営地下鉄の名城線や名港線という路線名は、上飯田線を除いて、正式な路線名ではない。名港線は名古屋港~金山間、名城線は金山~金山の一周の愛称になっているが、正式には名古屋港-金山-栄-大曽根間が2号線、大曽根-八事-金山間が4号線。山手線も正式には一周していないが、それと同じく、名城線も正式な路線上は一周していない。ただ、愛称上では一周していて、2路線を組み合わせれば、都営地下鉄大江戸線と似たような路線形状をしている。ただし、大江戸線は環状しているように見えて環状していないのに対し、こちらはしっかり環状している。

名古屋港始発の列車は、2号線部分を走る名古屋港-大曽根・ナゴヤドーム前矢田間の区間列車と、名古屋港始発で金山から周回する列車の2本系統の運転されている。実は1日目の夜に乗車した桜通線から地下鉄24時間券を利用中なので、現在地下鉄無双中。今回は名古屋港発の名城線右回りの列車で、名城線を一周して栄まで向かう。
乗車記録16
名古屋市営地下鉄
名港線・名城線 右回り
名古屋港→(大曽根)→栄 2000形
地下鉄の乗りつぶしは外の景色を見れるわけでもないので、はっきり言って面白くはない。ただ、車内の混雑や車内の客層で、地上がどんな街なのかを想像するのは楽しい。繁華街の栄が近づくと乗客が増えていき、栄で乗客は一気に減る。その後は大曽根にかけて増えて、再び車内の乗客が入れ替わる。その後は名古屋大学、中京大学の沿線となるので、車内は大学生の利用が多かった。そして再び金山へと戻ってくると、そこからは同じことの繰り返し。名古屋港から1時間20分。2回目となる栄で下車した。

名古屋自体はそれなりに来たことがあるものの、栄の地上にでるのはなんだかんだこれが初めてだった。名古屋のシンボルと言えば、名古屋テレビ塔として長年親しまれてきたタワー。現在は中部電力 MIRAI TOWERという名前になっており、テレビ塔としての役割は終えている。名古屋近辺のテレビ塔は、瀬戸市の瀬戸デジタルタワーに引き継がれている。
栄からは唯一独立した名鉄路線として知られる瀬戸線に乗車する。