【過去旅】九州本土最南端バス停を目指す旅 ~2日目~(2022年1月)

2日目。朝は夜明けが見たかったので少し早めに起床した。海を眺めると遠くに船が航行するのが見える。それと同時にその横の方で小さく灯台の灯りが見えた。おそらく種子島の喜志鹿崎灯台だろう。天気は昨日よりは幾分マシのようだ。明るくなってくると遠くに種子島のシルエットが浮かんで見えた。昨日よりも波は少し穏やか。晴れとまではいかなかったが、穏やかな湾内の海をが昨日よりも青く見えた。海のある暮らしもいいなと思いながら朝の支度をした。
・最南端バス停一日1本の上りのバスに乗車

7時50分にはチェックアウトして、九州本土最南端のバス停でバスを待つ。遠くからエンジン音が近づくると、バスが到着。この日このバス停から出る唯一の上りのバスに乗車して、ここから大隅半島を一路垂水まで北上していく。

佐多で数人の地元客を乗せたバスはその後はひたすらに北上していく。昨日は霞んで見えなかった対岸の薩摩半島の景色が今日は見える。知林ヶ島と指宿、そして奥には開聞岳を望む。バスは途中の集落でも高齢者を乗せて北上を続けたが、根占で乗客のほとんどの人が入れ替わった。根占、大根占と薩摩半島を望みながら進んでいく。

晴れていれば正面には桜島が見れるはずだが今日は曇っていて見えない。浜田から昨日通ってきたルートから外れて海岸線をゆく。浜田と古江の間にある高須地区を通り、古江で旧大隅線を跨ぐと後は志布志-垂水線と同じルートを辿る。バスは垂水港に到着。ホテル佐多岬からちょうど2時間が経過していた。バスはこのまま垂水市街へ進み垂水中央病院で終点となるが、この次の便は垂水港から国分駅へ向かう路線だという。朝から佐多岬から国分まで錦江湾をひたすら北上して帰っていく仕業なんだとか。博多考えると熊本くらいまで移動している。
・大隅半島の玄関口の一つ垂水港

バスは垂水市の中心部にある垂水中央病院まで運行されるが、 垂水港で下車した。垂水港は鹿児島市の鴨池港とを結ぶフェリーが発着していて、45分ほどで鹿児島市内に向かうことができる。そのため大隅半島の玄関口としての役割を持つ。鹿屋と鹿児島市内を結ぶバスも、高速道路を経由すると錦江湾沿いを大きく迂回する必要があるので、ここからバスごとフェリーに乗船して鹿児島市へと向かう。フェリーごとバスに乗る路線は以前は各地にあったそうだが、現在はここだけの光景となり、テレビのナニコレ珍百景でも取り上げられていた。ここからは昨日志布志-鹿屋間で乗車した垂水-志布志のバス路線も発着していて、フェリーからこのバス路線に自力で乗り継ぐことも可能である。
・1日ぶりに鹿屋へ戻る

垂水港からは再度鹿屋へ向かう。乗車したバスは昨日鹿児島空港から乗車したバスと同じだった。来た道を古江まで戻り、そこから標高を上げて白水、西原と辿って鹿屋へ。鹿屋なんて感染症禍になるまで1度しか来たことなかったが、この1年で3回も来てしまった。鹿屋も身近な土地になりつつある。
・貴重な一般道経由の空港バスに乗車
1日ぶりに鹿屋へと戻ってきた。ここからは本当はバスを乗り継いで宮崎駅まで行こうと考えていたのだが、感染症禍の影響で、途中で乗り継ぐバスが区間運休となっていたため、やむを得ず行先を変更して、旅の起点となっていた鹿児島空港に一旦帰ることにした。鹿屋から空港へと向かうバスは東九州自動車道を経由する高速道路経由と、ひたすら一般道を走るバスが存在。どちらのバスも感染症禍の影響で大減便されていたが、一般道経由のバスはほとんどが減便されていて、乗車困難となっていた。この時は年明けだったので、お正月からしばらくの間、日中の便が運行されていて、それに乗車することができた。この数日後から再び減便される予定となっていたので、運が良かった。

鹿屋から国道504号を北上し、高隈山地の裏を抜け、高隈、百引(輝北)、牧之原、国分と経由して鹿児島空港まで向かう。バスは東笠之原発着で、鹿屋までの間に1人が乗車していた。このバスは空港特急との建前上、空港と霧島市役所以外の停留所で降りることができない。この人数であれば他のバス停で降車させても良い気がする。特に百引から牧之原へと抜ける区間は路線バスの本数も少ない。鹿屋のバス停は全便が南側を向いて発着するため、発車すると右折を繰り返して北上する。鹿屋の平地はすぐに終わり、バスは高隈山地の山道に入っていく。

しばらく走ると高隈に立ち寄り、大隈湖の横を通って快調に走る。30分ほど行けば輝北地区の中心部百引へ。ここまでは路線バスもそれなりにある。バスはさらに北上して牧之原の手前へ。ここで車窓の左手に錦江湾を望める。運良くこの時だけ晴れていて、後ほど通る福山の海岸線や亀割峠を見ることができた。それにしてもこんなに高いところを走っていたのかと驚くほど標高が高い。牧之原から先は前日に志布志行きで乗った道とほぼ同じ道を辿るが、特急バスのため国分市街地でのルートが若干異なっている。ソニーや京セラの工場の前を通るがほとんど乗客はおらず、京セラホテルで1人乗車。空港バイパスの坂を登って鹿児島空港へ戻ってきた。
佐多岬からひたすらバスに乗って鹿児島空港へと帰ってきた。佐多岬からちょっと南下したところにある種子島には飛行機で40分。それに対して大泊からはまっすぐ向かったとしても4時間以上はかかる。大隅半島の南北がいかに長いかを身をもって実感できた。
・桜島を目指して
時刻は14時を回ったところ。まだ帰るのはちょっと早いので、鹿児島空港からもう一周旅する。目指すは桜島。まずは空港から鹿児島市内へと向かう空港バスに乗車する。鹿児島市内方面へ向かう空港バスはほとんどのバスが鹿児島ICを経由するノンストップ便だが、一部に薩摩吉田ICを経由し、吉野地区を経由して鹿児島市内へと向かうバスがある。今回は時間もぴったり合って吉野経由便に初乗車することができた。溝辺鹿児島空港ICから九州道へと入ったバスは、薩摩吉田ICで一般道に入り、吉野地区を通り、滝之神のループ下って、鹿児島市内へと入り、鹿児島中央駅まで走る。以前は鴨池港行きだったが、感染症禍の影響で区間短縮されている。終点の鹿児島中央まで行きたかったが、時間の都合上、金生町で下車した。
金生町からは徒歩で鹿児島港の桜島フェリーのりばへ。すぐに桜島へと渡る。桜島フェリーは24時間運航のフェリーとして知られ、日々多くの乗客や車が行きかう。今回はSUNQパスを使用した旅だが、桜島フェリーはこのSUNQパスで乗船できる。
・鹿児島市営バスが運行する桜島の東回り路線
鹿児島港から15分で到着する桜島港フェリーターミナル。ここは桜島の各方面に向かう路線バスのターミナルでもある。桜島の南回りの路線バスは鹿児島交通(以前はJR九州バスの運行だった)が運行しているが、北回りは鹿児島市営バスが運行している。ここからは桜島を北回りで半周して、大隅半島と桜島がくっついた地点にある黒神口バス停へと向かう。

黒神口までは最低一度の乗り換えが必要で、60番線と70番線の2系統がを乗り継ぐ。60番線は主に桜島港から東白浜までを結ぶ。運行本数も1時間1〜2本が運行。一方70番線は東白浜から先の区間で運転され、北側最後の集落である塩屋ヶ元まではある程度の本数があるが、黒神口まで行くのは3往復のみとなっている。

桜島港では高齢者を中心に8名程度が乗車。すぐに海岸線を走り出すが、結構近場の地区で大半の乗客が降りた。桜島支所には結構なアップダウンで立ち寄る。ここで自分一人に。バスは対岸の竜ヶ水あたりを車窓に進み、あっという間に東白浜に到着した。
・東白浜で乗り換え

東白浜からは70番線で黒神口まで向かう。バスは一回り小さくなってポンチョに。基本的に桜島の北側を周る県道26号を進むが、途中の高免地区と浦之前地区には道から外れて立ち寄った。

生憎の天気で桜島の火口は見えないが、こうした集落へ向かう道からも桜島の険しさをうかがい知れる。塩屋ヶ元地区を通ると景色は林に変わる。ここから先は大正噴火で直接溶岩が流れ込んだ地域だ。噴火の以前にあった集落は溶岩や火山灰に埋没し消滅している。終点の黒神口まで人家は一軒もなく、途中のバス停もない。夕方の便だが乗り継ぎ客もおらず、終点まで貸切だった。
・黒神口と桜島口

桜島と大隅半島がくっついたちょうどその地点に桜島港から続く北回りルートと南回りルートのゴールがある。鹿児島交通は桜島口、鹿児島市営バスは黒神口を名乗るがどちらもほぼ同じ場所に位置する。約100年前、島と半島がくっ付いた場所に立っている。黒神という地名がいかにも怖いのだが、入口には桜島の噴火警戒レベルが記されている。3と聞くと結構な事態に思えるが、桜島はこれが日常である。噴火以前、この地点には戸瀨という集落があったという。しかし、今やその集落は跡形もなく、鬱蒼とした森が広がっている。

鹿児島交通側の桜島口バス停から垂水港始発の国分駅行に乗車。終点の国分駅まで乗車する。鹿児島空港まで1本で行ける便もあるが、この便は国分市街止まり。鹿児島空港へ向かうには国分で乗り換える必要がある。桜島口を出てしばらくすると日も完全に暮れてしまった。桜島が作ったカルデラ湖である錦江湾の淵をひたすら進んで国分へ。国分で30分ほど待ち合わせて鹿児島空港へと戻ったのだった。
●この旅で乗車した路線
【バス路線】
鹿児島交通 [急行]鹿児島交通-志布志駅前 全区間
鹿児島交通 垂水中央病院-志布志港入口 区間:志布志駅前→鹿屋、垂水港→鹿屋
鹿児島交通 鹿屋-大泊 全区間
鹿児島交通 ホテル佐多岬-垂水中央病院 区間:ホテル佐多岬→垂水港
鹿児島交通 空港連絡バス 牧之原・百引・鹿屋線 区間:鹿屋→鹿児島空港
鹿児島交通 空港連絡バス 鹿児島市内線(吉野経由) 区間:鹿児島空港→金生町
鹿児島市営バス [60]桜島病院前→東白浜 区間:桜島港→東白浜
鹿児島市営バス [70]東白浜→黒神口 区間:東白浜→黒神口
鹿児島交通 垂水港-国分駅前 区間:桜島口→国分駅前
【船舶路線】
鹿児島市 桜島フェリー