【旅行記】愛知静岡鉄道ぶらり旅~愛知県最後の未乗路線へ~

 昨年12月の乗り鉄旅では、珍しい鉄道が多く走っている愛知県を旅し、個性的な鉄道を楽しむことができた。これで愛知県の未乗路線は残り1つとなった。対して、通過したことは何度もあれど、ほとんど乗り鉄していないのが、お隣の静岡県。東海道新幹線で何度も通過し、東海道本線でも通ったことがある県だが、それら2路線と身延線の富士~富士宮間、飯田線を除いて全く乗り鉄できていない県となっている。東海道本線も最後に乗ったのはかなり前。今回は愛知県から静岡県にかけての東海道本線を再履修しつつ、静岡県内の東海道本線の沿線にいくつかの私鉄路線に乗車すべく静岡県をメインとした乗り鉄旅を企画した。
今回の旅のルートは次の通り。前日のうちに名古屋へと入り、翌朝名古屋駅から旅がスタートする。最初に東海道本線で豊橋駅へと向かい、愛知県最後の未乗路線である豊橋鉄道渥美線に乗車。その後、静岡県へと移動して、天竜浜名湖鉄道、遠州鉄道に乗車し、静岡で1日目を終える。2日目は東海道本線をもう少し東へと進んで、三島へ。三島から伊豆箱根鉄道の路線の一つである駿豆線に乗車。そこから折り返して、岳南鉄道、静岡鉄道に乗車しながら、新静岡へ向かう。新静岡からは空港バスで静岡空港へと移動し、静岡空港からフジドリームエアラインズを利用して九州へと帰る旅程で計画した。
 

新快速の始発列車で東海道本線を上る

 前々回の旅行(珍鉄道の宝庫あいち乗り鉄旅)以来2ヶ月ぶりにやってきた名古屋駅。今回はここから静岡県を目指して旅が始まる。静岡へ向かう前に、愛知県最後の未乗路線である豊橋鉄道渥美線に乗車するため、まずは豊橋まで列車で移動していく。名古屋と豊橋の間はJRと名鉄がライバルとなっているが、これまではほぼ名鉄を選んでいて、JRで豊橋へと向かうのはかなり久しぶりだった。
 
 乗車した新快速豊橋行。当日の上り豊橋方面の新快速列車の始発列車で、関ヶ原発として運転されている。現在、関ヶ原始発の列車は平日2本、土休日に1本が設定されており、この列車は休日では唯一関ヶ原始発として運転されている。関ヶ原始発の列車は通称垂井線と呼ばれる単線の線路を関ヶ原~垂井間で走り、あたかも下り線を逆走しているように見えることが、鉄道ファン界隈の鉄板ネタになっている。名古屋地区の新快速・特別快速は基本的に8両編成で運転されており、乗車したのは6両編成の313系5000番台。米原方に2両編成の車両を付けた8両編成として運用されていた。
 
乗車記録1
東海道本線 新快速 豊橋行
名古屋→豊橋 313系5000番台
 
 名古屋を出た列車は、金山、大府、刈谷と停車していく。休日朝の豊橋方面行きなので、乗客はまばら。日中はこの新快速と、大府に止まらない特別快速が交互に15分間隔で運転されているが、朝は新快速のみの運転。休日は早朝深夜を除いた全時間帯で新快速または特別快速が15分間隔で走っている。大府で分かれる武豊線、刈谷で接続する名鉄三河線、さらに岡崎で接続する愛知環状鉄道と2ヶ月前にお世話になった路線を見ながら走っていく。さらに蒲郡では名鉄蒲郡線が接続するが、こちらも数年前に蒲郡で名鉄からJRに乗り換えたのが懐かしい。他路線の乗りつぶしでちょこちょことお世話になっていた東海道本線だが、名古屋から豊橋までダイレクトに走るのはかなり久しぶりだった。写真は岡崎駅手前で渡る矢作川。この日は天気が下り坂だったためか、この先の区間では霧が立ち込めていた。
 
 名古屋からおよそ1時間で豊橋に到着。豊橋に来たのは3年ぶり。飯田線の長距離、長時間普通列車である豊橋発岡谷行に乗りに来て以来だった。JR改札の中に名鉄ののりばがある豊橋駅。飯田線のホームと東海道本線のホームの間に名鉄のホームがある。もともと飯田線は私鉄の路線。名鉄の前身が豊橋へと線路を伸ばした際、飯田線を運行していた会社と上下線を片持ちする形で所有して運行することになった。しかし、その後私鉄だった現在の飯田線が国有化されたことで、名鉄の電車が国鉄・JRの駅にやってくる異様な光景が見れるようになった。名鉄側には1時間あたり6本の本数制限があるため、特急や急行といった優等列車しか運転されていない。8番線まで設置されており、3番線のみが名鉄専用ホームとなっている。
 
 豊橋駅の外に出てきた。愛知県の東側、東三河と呼ばれるエリアの中心地である豊橋。駅にはカルミアと呼ばれる商業施設があり、この後向かう静岡県の浜松駅や静岡駅ほどではないが、日々多くの人が行きかっている。豊橋市自体の人口は37万人。名古屋側、浜松側両方に人の動きがある。
 
 豊橋は路面電車の街。これから乗車する渥美線と同じ豊橋鉄道が運行する路面電車が2系統運転されている。2系統とはいえ、路線が分岐するのは終点にほど近いごく一部だけ。運動公園の中を通って15分ほどで2つの終点を徒歩で行き来できる。路面電車には数年前に乗車したので、今回は乗車しないが、久しぶりに豊橋の路面電車を見て懐かしくなった。
 

渥美半島へ進む豊橋鉄道渥美線に乗車

 豊橋駅に隣接するもう一つの駅が豊橋鉄道の新豊橋駅。豊橋鉄道渥美線の起点となる駅で、渥美線はここから三河田原までの18kmを走っている。豊橋鉄道は名鉄グループの会社。名鉄の本体はJRの駅構内に入る関係上、新豊橋駅が名鉄の駅の代わりとしても機能しているらしい。確かに名鉄線の窓口こそ豊橋駅本体に設置されているが、名鉄が発行するクレジットカードのポイント交換機はこの駅の構内に置かれていた。manacaなどの全国交通系ICカードが利用可能だが、今回は渥美線1日乗車券を購入。1日乗車券は渥美線全線がフリーとなるもののほか、豊橋市内の鉄道線と路面電車、バスで使用可能なものなど、複数のバリエーションがあった。また、豊橋鉄道の終点三河田原からバスとフェリーを乗り継いで鳥羽へと向かう連絡きっぷなども販売されている。
 
豊橋鉄道で活躍するのは、名鉄のお下がり車両ではなく、東急7200系を改造した1800系。以前は名鉄からのお下がり車両も導入された時期があったが、現在は全ての列車がこの1800系で運転されている。各車両は椿、菜の花、桜、菖蒲などの花をモチーフにカラフルに塗装されていて、豊橋鉄道版カラフルトレインを楽しめる。渥美半島は花の生産が盛んな地域。夜に飛行機で渥美半島上空を通ると、電照菊の夜景が見える。
 
乗車記録2
豊橋鉄道渥美線 普通 三河田原行
新豊橋→三河田原 豊橋鉄道1800系椿編成
 
 日中も15分間隔で運転されている渥美線。行き違いの設備がある駅が多く、頻繁に対向列車とすれ違う。豊橋近郊と大清水での乗り降りが特に多かった。豊橋市街を出ると、徐々に景色はのんびりとしたものに変わり、渥美半島へと進んでいく。この渥美線が走るのは、渥美半島の1/3くらいの距離で、渥美半島はそこからまだ先に20kmほど続いている。いつか伊勢湾フェリーを使って渥美半島と鳥羽の間も旅してみたい。
 
 

終点の三河田原駅で愛知県の全線完乗を達成

 愛知県の鉄道・軌道全線の完乗を達成した。終点の三河田原駅は、2面4線と留置線1本を有する大きな駅。頭端式のホームになっていて、駅とロータリーは2013年に新しくなり、広々としている。
 
 形が特徴的な三河田原駅の駅舎。世界的な建築家として知られる安藤忠雄氏が設計した駅舎で、2013年から利用されている。豊橋鉄道の窓口や改札のほか、田原市のコミュニティスペースなどもある。駅の周辺には、立体駐車場も設置されており、運転本数も多いので、ここに車を停めて、豊橋や名古屋方面に出かけるのも利便性が高い。駅周辺は古くから続く城下町。東京の三宅坂の由来である三宅氏が江戸時代にはこの地を納めていた。戦後は臨海部の埋め立て地にトヨタをはじめとする工業地帯が形成され、花の生産がさかんな一方で工業もさかん。お笑い芸人の大久保佳代子(オアシズ)、金田哲(はんにゃ)や、プロ野球ヤクルトのライアンこと小川泰弘投手の出身地である。
 
 時刻はまだ9時前だが、これから先、夕方浜松に至るまで、昼食を取っている時間がないので、駅のベンチで朝ごはんをいただく。豊橋駅の壷屋で購入した「稲荷寿し」を食べた。購入したとはいえ、前日に宿泊したホテルで発行された地域クーポンを使用。この後は静岡県へと入り、愛知県へと戻る予定がないので、豊橋で消費する必要があった。豊橋の駅弁と言えばいなり寿しなんだそうで、食べてみたらびっくり。今まで食べたいなり寿しの中で一番おいしかった。いなりがとてもジューシーで具は全くないのに大満足。甘さとしょっぱさが絶妙で、また豊橋に行ったときには買おうと思う。
 
 帰りの電車は菜の花の黄色い列車。沿線にはところどころ菜の花が咲いていた。春まであともう少し。車窓に季節の移り変わりを感じる。当然ながら豊橋方面の上り列車の方が多少混雑。各駅から乗客を乗せて、新豊橋駅へと帰った。
 
乗車記録3
豊橋鉄道渥美線 普通 三河田原行
三河田原→新豊橋駅 豊橋鉄道1800系菜の花編成
 
 列車は新豊橋駅にと到着。愛知県の最後の未乗路線だった豊橋鉄道渥美線を乗りつぶして、新豊橋駅をあとにする。ほとんどの乗客は改札を出て、JRの改札へと向かう。日曜なので、ここからJRか名鉄を使って名古屋へ向かう人が多いはず。名古屋に10時過ぎに着ける時間帯なので、土日では一番混雑する時間だろう。
 
 JRの豊橋駅へと戻って改札内へ。乗る予定の列車の一本前にも間に合いそうだったので、ホームへ行くと313系が停車中。静岡地区で活躍する2500番台3両編成使用の浜松行だった。東海道本線は豊橋が名古屋地区と静岡地区の境となるが、これから乗車する豊橋~浜松間は名古屋側の大垣車と、静岡側の静岡車の両方が使用されており、転換クロスシートとロングシートの車両の運用が混在する。実際には大垣車での運用が多いらしい。この次の列車がどうやら転換クロスシートでの運転のようなので、この列車は見送って、次の列車で浜松へと向かうことにした。静岡車はこの駅から西へは行かないが、大垣車はわずかながら掛川や静岡まで向かう運用も持っている。
 豊橋からは東海道本線を再び東へ進み、一度浜松へ。そこから新所原へと戻って天竜浜名湖鉄道に乗車した。