【旅行記】水戸・会津ぐるっと周遊旅~特急ときわで勝田へ~

筆者が初めて東北地方を旅したのは2019年6月のこと。訪ねたのは福島県の南側だけだったが、東北本線、磐越東線、常磐線と乗り継ぎ、初めて東北地方に足を踏み入れた(【過去旅回想】2019年6月 はじめての東北日帰り旅)。あれから6年が経過し、東北地方の乗りつぶしも佳境となる中で、今度は別ルートで周回する旅を計画した。題して「水戸・会津ぐるっと周遊旅」。今回は常磐線、水郡線、磐越西線、会津鉄道、野岩鉄道、東武鉄道と乗車しながら、北関東・南東北をぐるっと一周ながら旅していく。
6年前の旅は日帰りの弾丸旅行だったが、今回は2泊3日かけて、のんびりと旅を進める。1日目は水戸、2日目は会津若松に宿泊。茨城県、福島県ともに初めての宿泊だった。周回ルートの路線だけでなく、ひたちなか海浜鉄道など近くを走る路線もいくつか巡る。今年の旅は途中で観光する機会も多かったが、今回については観光要素少なめの純粋な乗り鉄旅となった。
東北地方の鉄道路線巡りはまだ道半ば。しかし、ローカル線という括りで考えると、工事のため長期運休している陸羽西線を除けば、今回の旅で巡る路線に乗車することで、その乗りつぶしも一区切りとなる。また、3日目に乗車する東武鬼怒川線は、旅行前時点で、筆者最後の大手私鉄の未乗路線となっていた。今回は東北地方の乗りつぶしを進めると共に、全国に16社ある大手私鉄の乗りつぶしも完了させる。全国の鉄道路線巡りも終盤を迎える中、ここ最近の旅は、毎回何かの区切りとなっているが、今回もまた、そういう点において、区切りの旅となった。
今回の旅の起点は品川駅。1日目は常磐線の特急ときわで茨城県へ駒を進め、水戸近傍を走る2つの未乗路線を巡った。
前旅
停車型の常磐線特急「ときわ」で勝田へ
今回もいつものように仕事終わりに最寄りの空港へ行き、羽田空港へひとっ飛び。いつもは羽田空港22時発の快特には間に合わないのだが、今回は飛行機が早着したおかげでスムーズに乗り継ぐことができ、22時20分には蒲田のいつものホテルに到着した。
京急蒲田近くのアーケードを歩くと、数年前こっちに住んでいた時期を思い出して懐かしくなる。最終便で東京へ行く(戻る)というのも、その時に覚えた小技。九州から東北や北海道へ朝から旅に出るとなると、どうしても移動に半日から1日かかるが、東京でワンクッション置くことで、旅行期間を最大限に活用することができる。九州から乗りつぶしをするにはこれも重要な戦略の一つになっている。空港に近い場所ではないながらも、仕事終わりから当日中に東京へ出れるこの国の交通網には感謝しかない。

翌朝は7時過ぎにホテルをチェックアウトし、京浜東北線で品川へ。今回は品川が旅の起点となった。前日は九州が雨。飛行機でその雨雲を追い越して東京へ来たが、夜中のうちに雨雲が再び追い越して行き、朝の東京は、すでに雨が上がっていた。低気圧の動きが早く、なんとか本降りの雨は回避することができた。
品川駅は現在、再開発工事の真っ最中。JRの駅ホームの上でも巨大な建造物を建設中である。数年後には京急の駅が移設され、周辺も大きく変貌を遂げることになる。この駅を起点に旅をスタートさせるのは、おそらく2022年秋の東北地方太平洋側を北上する旅以来だと思う。その時は特急「ひたち」を仙台まで乗り通したが、今回もまた常磐線特急にお世話になる。

さて、関東から東北、そして再び関東へぐるっと一周して巡る今回の旅。1日目は品川から茨城県を目指し、ひたちなか海浜鉄道湊線と水郡線の通称常陸太田支線の2つの路線に乗車しに行く。品川からは常磐線の特急ときわ53号勝田行きに乗車した。
常磐線特急に乗車するのは、これで3度目。これまで2回の乗車はいずれも特急「ひたち」だったが、今回目指す先は茨城県の勝田ということで、勝田が終点となる特急「ときわ」の方に乗車した。
特急「ひたち」、「ときわ」の2種類が運転されている常磐線特急。2つの列車の違いは東京寄りの区間の停車駅の数と運転区間である。「ひたち」は品川-いわき・仙台間で運転され、常磐線経由で茨城県を通り抜けて、福島県の浜通り、そして宮城県の仙台を目指す。日中時間帯の上野-水戸間ではノンストップ運行を行い、速達型に位置づけられている。
一方、「ときわ」は品川-土浦・勝田・高萩間で運転されている。都心と茨城県内を結ぶ役割を持ち、列車の多くは品川-勝田間での運転となっている。朝夕は高萩へ足を延ばすと共に、通勤特急として土浦発着の列車もある。こちらは上野-水戸間で柏・土浦、石岡、友部などに停車し、「ひたち」に比べれば停車駅が多く設定されている。なお、現在は高萩から先へ行く列車が存在しない「ときわ」だが、以前はいわき発着の列車も運転されていた。停車型に位置付けられ、水戸以南でもいくつかの駅に停車するのが、「ときわ」である。
いずれの列車もE657系10両編成で運転される。E657系はここ数年のうちに、E653系が纏っていた「フレッシュひたち」カラーになっている車両がいて、これに当たるかなと期待したが、やってきたのは残念ながらノーマル塗装の車両だった。

ちなみに乗車した特急ときわ53号は、今年3月のダイヤ改正まで上野始発で運転されていた。かつては当たり前だった常磐線特急の上野始発列車。しかし、上野東京ラインが開業すると品川発着が大多数を占めるようになり、わずかに残った上野発着も数を減らしていった。今年3月のダイヤ改正で、最後まで上野発着として残っていた特急ときわ53・54号が品川発着となり、これで上野発着の常磐線の定期特急は全滅となった。昨年秋の北関東鉄道探訪旅で立ち寄った上野駅で、「あゝ上野駅」の発車メロディーとともにこの列車が発車していくのを、常磐線ホームから見下ろしたのを思い出す。蒲田スタートの自分にとっては品川発着の方がありがたいので、ちょうどいいタイミングで始発駅が変わる形となった。
乗車記録 No.1
特急ときわ53号 勝田行
品川→勝田 E657系

以前特急「ひたち」で仙台へ行った時は、ちょうどJR東日本が鉄道150周年記念で発売していたJR東日本パスの通用日にあたり、この時間の列車もほぼ満席だったのを覚えている。筆者はそのきっぷが発売になると発表になる前からその旅を企画して、巻き込まれる形になったのだが、グリーン車に逃げて混雑を回避したのを思い出す。それ以来、朝の常磐線特急は下りも混むというイメージがあった。今回も混雑しているのだろうと思って東京へ来たが、その予想に反して、乗車した列車は空席が目立った。品川発車の時点で乗車した1号車に乗っていたのは、わずか3人だった。

品川を発車した列車は、高輪ゲートウェイ駅周辺に建設中のビルを車窓に、次の東京駅へ向けて走っていく。数年前には周辺に何もなく、閑散としていたこの駅周辺の様相も一変している。品川駅の再開発と合わせて、この周辺が新たな副都心になる日も近い。山手線、京浜東北線の列車とすれ違い、そして並走しながら進んで行く。東京では数人が乗車。ホームには割と多くの人がいたが、直後にやってくる普通・快速列車を待っているようだった。

東京を出た列車は、次に上野に停車する。ここでもまた数人が乗り込んできた。この先、柏に停車するものの、だいたいこれで乗客の数は決まったことになる。中間の車両はもう少し乗っていたのではないかと思うが、最後尾は8人くらいしか乗っておらず相変わらずガラガラだった。上野を出るとカーブを曲がり、日暮里から常磐線へと進んでいく。長い列車で1番後ろに乗りたくなるのは、比較的空いているからというのが最大の理由だが、カーブを曲がる時、1番前の車両が見えるのがちょっと面白いからというのも理由の一つである。

京成本線の列車と立体交差して、常磐線へと入った列車は、下町の景色の中をゆっくりと走っていく。やがて常磐貨物線が合流してきて、列車は三河島を通過した。この先、我孫子までは半年ぶりとなる。前回は成田行きの快速列車を上野から乗り通している。
車内では座席未指定の乗客と飛び乗りの乗客に対する検札が始まった。この車両にも飛び乗り客が数人いて、特急券を買い求めていた。「ひたち」、「ときわ」は全車指定席で、「あずさ」や「成田エクスプレス」などと同じく独自の特急料金体系を取っている。料金には事前料金と車内料金があり、普通列車グリーン車と同じく、車内料金は割高である。座席未指定券は事前料金だが、座席を指定した場合と同じ料金になっている。東京や上野ではホーム上に指定席券売機があるので、それで座席未指定券を買った方が安くなるが、来た列車に乗る派だったり、モバイルSuicaで払いたい派の場合、ちょっと高くても車掌から買った方が手っ取り早い。特急券の発券が完了すると、車掌が端末を操作して、座席を指定済みにする。しばらくすると座席上のランプが指定済みを示す緑色に変わった。

北千住を通過すると、東京メトロ千代田線と並走し、荒川を渡る。その先で東武伊勢崎線(スカイツリーライン)の複々線が頭上を越えていく。2日後はこの伊勢崎線を経由して、都心へと戻ってくることになる。ホームに停車する小田急4000系を横目に綾瀬を通過すると、千代田線の北綾瀬支線が離れていき、千代田線から転じた常磐線の緩行線が隣を走る形となる。この辺りの鉄道路線に乗車してから早いものでもう6年が経つ。金町で接続する京成金町線、松戸の先を走る流鉄などちょっと慌ただしく乗りつぶしたので、近いうちにまた乗りに行ってみたい。

やがて列車は上野を出てからの最初の停車駅、柏に到着した。常磐線の主要駅であるこの駅は、「ときわ」の全列車に加え、朝1本だけ「ひたち」も停車する。「ときわ」にも停車パターンが複数ある。ここから先はこの列車のように土浦、石岡、友部、水戸と停車していくのが基本だが、朝夕の通勤特急的な性質が強い列車は龍ケ崎市、牛久、ひたち野うしく、荒川沖、赤塚などにも停車し、列車によっては停車駅がかなり多くなる。
柏は東武野田線(アーバンパークライン)との接続駅。東武のホームには新型車両の80000系の姿があった。東武版の武蔵野線みたいな野田線。大宮から船橋まで乗り通すと結構遠い。

柏を出て、成田線我孫子支線が分岐する我孫子を通過すると、やがて利根川を渡り、列車は取手を通過した。常磐線の各駅停車と短距離を走る快速列車はこの駅まで。この先で常磐線は直流電化から交流電化へと変わる。車窓の景色もこの取手を境に一気にのんびりする。田植え直後の水田を車窓に、列車は快走した。

龍ヶ崎市や牛久の各駅を通過すると、列車は土浦に到着。常磐線の列車本数が一区切りとなる土浦駅は、この路線における15両運転の北限でもある。この駅では数人が下車していった。茨城県では筑波山を走るケーブルカーも未乗となっている。この路線に乗りに行くときは、土浦からバスで近くまで行き、その後つくばに抜けるつもりである。また、現在は秋葉原とつくばを結ぶつくばエクスプレスこと首都圏新都市鉄道常磐新線も、将来的にはこの駅までの延伸が計画されている。まだ降りたことのない駅だが、今後は降りる機会があるだろう。

土浦を発車すると景色はさらにのどかになる。この後は石岡と友部に停車して水戸へ向かっていく。この時間はまだ上りの普通列車も都心へ直通する列車が走っているが、数年前のダイヤ改正で日中は完全に系統が区切られ、土浦~勝田間も5両編成の列車が行き来するようになった。やがて列車は石岡に到着。この駅は茨城空港の最寄り駅で、ここから路線バスで35分ほどでアクセスできる。この時間は9時45分発のバスに乗車でき、そうすると茨城空港11時発の那覇便に搭乗できる。調べたところ価格には幅があるが、概ね2万円代で、安いと直前でも1万3千円で発売されている日もあった。この駅では割と多くの下車があり、キャリーケースを持った人の姿もあった。おそらく空港へ行くのだろう。

石岡を出た列車は、続いて友部に停車した。友部は水戸線との乗り換え駅。以前一度だけ下車したことがある思い出の駅でもある。この駅の手前で常磐線は東を向き、その後は東進して水戸を目指す。過去の旅行記でも書いたが、元々は水戸線の方が開業が先だったので、常磐線の方が合流する形になっている。友部を出ても水戸まではもう少し距離がある。引き続き、列車は田園風景の中を走行した。

やがて、日本三庭園の一つ偕楽園の横を通過すると、列車は水戸の市街地に到達した。常磐線の線路の横にある水郡線用の小さな車両基地の横を通って、水戸駅の構内へと入っていく。車両基地にはバラスト運搬車とそれを牽引するGV-E197系の姿があった。よくネットで見かける車両で、昨年から水郡線での運用を開始している。

水戸を出て、鹿島臨海鉄道の高架橋と別れ、その先で那珂川を渡ると、列車はまもなく終点の勝田に到着した。勝田駅に降り立つと、茨城県内の常磐線を支えるE657系、E531系、E501系の3並びを見ることができた。列車は数分停車の後、駅の北側にある車両センターへ回送されていった。
半年ぶりの訪問となったひたちなか市の勝田駅

約半年ぶりに訪ねる勝田駅。半年前は鹿島臨海鉄道に乗車後、宿泊地の小山へ行くのに、列車の始発駅だったこの駅まで来て、折り返した。今回は、ここ勝田が最初の目的地だった。この後は、前回来た時は乗車しなかった当駅発着の未乗路線、ひたちなか海浜鉄道湊線に乗車する。
世間一般に勝田の知名度がどれほどあるのかは知らない。しかし、鉄道ファンは九州や北海道在住のファンでも、大抵この駅のことを知っている、そんな駅がここ勝田である。水戸駅から一駅進んだこの駅の北側には、常磐線や水戸線などで活躍する車両が所属する勝田車両センターや、乗務員詰所があり、常磐線では水戸駅よりも拠点性の高い駅となっている。一部には高萩発着となる列車があるものの、都心の品川・上野発着の普通列車は、その多くがここ勝田を起終点とする。かつては日中も都心へ行く普通列車があったが、最近は朝夕だけに限定され、日中は土浦発着の列車も増えた。北側の高萩・いわきへの普通列車は、水戸発着で運転されているため、水戸-勝田間は普通列車の運転本数が他の区間に比べて多い。また昨年乗車した列車のように、常磐線から水戸線へ直通する列車の半数程度も、ここを起終点としている。

勝田駅はひたちなか市の代表駅。ひたちなか海浜公園で有名なひたちなか市。勝田は知らなくても、ひたちなかは知っているという人は多いのではないだろうか。ひたちなか市は勝田市と那珂湊市の2市が1994年に合併して誕生した市である。現在は人口約15万人で、茨城県では水戸市、つくば市、日立市に次ぐ第四位の人口を誇っている。勝田側の市街地には、日立製作所をはじめとする機械メーカーの工場が多く立地する一方、那珂川の河口部に位置する那珂湊は、漁業が盛んで港町の雰囲気が漂っている。駅前からは周辺各地への路線バスが発着している。日曜日だったこの日、行列ができていたのは、やはりひたちなか海浜公園へ行くバスののりばだった。ひたちなか海浜公園は、これから乗車するひたちなか海浜鉄道の終点阿字ヶ浦駅の近くにあるが、勝田からバスが出ているので、基本は皆こちらを使っている。
さて、勝田からはひたちなか海浜鉄道湊線に乗車。今回は終点の阿字ヶ浦まで行った後、那珂湊でも途中下車して、同線を往復した。
続く