【旅行記】天草絶景路線バスの旅~土休日1日1本のバスに乗車し、本渡から山の浦へ~

土休日1日1本だけの本渡-山の浦線で下島東海岸をゆく

 桜町バスターミナルから快速あまくさ号で本渡バスセンターに到着。1日目の午後は下島の路線バスで牛深との間を往復する。本渡バスセンターは天草の路線バスの拠点で、上島・下島の各方面へ向かう路線バスが発着している。牛深方面へは牛深市民病行きのバスが1時間~2時間に1本発着しており、下島の中央部の山間を走っていく。この路線には帰りに乗るとして、まずは下島の東海岸を辿る裏ルートで牛深へ向かう。乗車するのは山の浦行きのバス。この日は日曜日で、運行本数はなんと1本だけ。平日でもたった2本しか走っていないバス路線となっている。この山の浦行きのバスに乗ると、終点の山の浦で後ろからやってくる牛深行きのバスに乗り換えることができ、天草の東海岸を通って牛深まで抜けることができる。上下の便を合わせても、バスがうまく接続するのはこの13時10分発の1本のみで、残りは接続するバスがない。
 
乗車記録2
産交バス
楠浦・中田港・上平経由 山の浦行
本渡バスセンター→山の浦
 
 バスは車庫から回送されてやってきた。乗り込んだ乗客は自分一人だけ。天草市はいくつかの市と町が合併してできた市で、このバスは旧本渡市だった本渡バスセンターから旧新和町(現在の天草市新和町)や旧河浦町宮野河内、旧牛深市の深海などへ経由して山の浦へと向かう。本渡と新和町の間は下大多尾行きのバスも発着しているので、本数が極端に減るのはそこから先の区間となっている。
 
 本渡バスセンターを出ると天草瀬戸大橋方面に向けて走るが、瀬戸大橋方面には行かずに直進する。その後すぐに県道から逸れると、県道の旧道であろう住宅が立ち並ぶ狭い道を走っていく。楠浦地区を過ぎると峠を越えて県道へと戻り、車窓には海が見えるようになる。海岸線に沿ってしばらく走ると、新和町へ入り、町の中心部を走り抜ける。
 
 新和町の中心部の小宮地地区を出ると一旦海からは離れて峠を越える。峠を越えると再び海岸線が近づいてきて、中田地区に入る。中田は天草と鹿児島県の獅子島を結ぶ天長フェリーが発着する中田港があり、ちょうど獅子島から到着したフェリーが奥から近づいてきているのが見えた。この中田港を過ぎてからがこのバス路線の最大の見どころ。海岸線に沿って敷かれた普通車でも交換するのが難しい隘路の県道をバスはクネクネと走っていく。
 
 車窓には八代海が広がり、遠くには熊本県の芦北や水俣あたりの山々が見え、その手前には鹿児島県の獅子島や諸浦島などが見える。西海岸は外海で開けた海が見えるが、こちらは八代海の穏やかな海が広がっている。肥薩おれんじ鉄道の車窓を逆から見ているような形というとわかりやすいかもしれない。海岸線に沿って進む区間もあれば、峠越えで山を越えていくところもあり、集落→海岸線→峠越え→集落・・・が幾重にも繰り返される。
 
 中田から宮野河内、上平と漁港のある集落を通り過ぎると、下平地区へ。この下平は牛深へ向かうバスの折り返し地点となっていて、ここから山の浦までは本渡・牛深のどちらにも1本で出ることができる。下平の先にある深海地区はこの路線が経由する集落の中では大きな集落で、海側には2車線のバイパスが開通しているが、バスはバイパスは経由せず、両側に家が立ち並ぶ旧道を進んでいく。
 
 集落を越えると峠越えとなり、険しい山道が続く。一応改良工事が行われている区間があるものの、ほとんどが未整備でトンネルで峠を貫くような場所は一個もない。天草の路線バスは海岸線を進む区間も多いが、こうした狭い峠越えの区間も数多くある。
 
 深海地区の隣の浅海地区を過ぎると終点山の浦はもうすごそこ。海岸線を辿って唐突に終点の山の浦に到着した。終始乗客は自分一人だけ。バスはそのまま走り去って行った。決して観光客は来ないであろう小さな集落に降り立つ。バス停の前には小さな商店が一軒ある以外は住宅が何軒かと漁港がある小さな集落。幸い乗り換えるバスは15分後にはやってくるのが救いで、1時間待ちと言われたらたぶんやっていない。
 
 バス停から少し歩くと山ノ浦地区の漁港がある。内海の漁港なので波もなく穏やか。人気はなく猫が数匹昼寝していてのんびりした雰囲気が漂う。旅をしなければ一生訪れることのなかった街や集落を見て回ることができるのも、鉄道旅行やバス旅行の一つの楽しみだと思う。
 次のバスの時間が近づいてきたので、バス停に戻り、引き続き牛深の市街地へと向かっていく。
 
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