【旅行記】天草絶景路線バスの旅~山の浦から牛深港へ出た後、本渡へ戻る~

下平-牛深市民病院線に乗車して山の浦から牛深港へ

 本渡バスセンターから乗車したバスで終点山の浦に到着して15分あまり。漁港を見てバス停に戻ると、遠くからエンジン音が近づき、次に乗るバスが現れた。牛深までの第二走者は下平始発の牛深市民病院行き。途中の牛深港まで乗車する。運行本数は本渡バスセンター-山の浦線よりも若干多く、平日が1日4往復、土休日が1日3往復となっている。乗車するバスは牛深市街方面行の最終バスで、乗り逃すと本渡へも牛深へも出ることはできない。
 
乗車記録3
産交バス 牛深産交・牛深港経由 牛深市民病院行
山の浦→牛深港
 
 先ほどまでのバスに引き続き、相変わらず峠越え、海岸線、集落の繰り返しだが、ここまでくると八代海の南端に近づき、東シナ海が見渡せるようになる。遠くには鹿児島県の甑島も見ることができた。断崖絶壁の海岸線に沿ってバスは走る。バスの前面から側面へと続く青い空と海。まさに絶景の路線バス路線だった。
 
 東海岸を辿る路線バス旅もいよいよ終盤戦。牛深の市街に入る手前で大きな峠を一つ越えてバスは国道266号線に出る。国道に出ると謎の安心感に包まれる。かれこれ2時間近く海岸線の隘路を走ってきたが、2路線ともとても乗りごたえのある路線だった。
 
 牛深市街の入口でバスは牛深産交に立ち寄る。本渡にある天草営業所と並び天草に所在する産交バスの営業所の一つで、さきほど本渡から山の浦まで乗ってきたバスはここで休憩していた。山の浦で回送になったバスはそのまま先を進んで牛深産交まで向かっていたようだ。牛深産交の反対側は久玉浦と呼ばれる湾になっていて、その湾の奥に港がある。
 
 牛深市街を走り、牛深港で下車。牛深港は鹿児島方面からの天草の玄関口となっていて、長と牛深を結ぶ三和フェリーが発着している。長島の蔵之元港からは九州新幹線も停車する出水駅までを結ぶバスも運行されていて、牛深へのアクセスとなると、バスを乗り継ぐよりも新幹線を経由して海を渡った方が早い。以前天草に来た時にはこのルートで牛深に到着し、そこから下田温泉などを経由して本渡へと向かった。それ以来の牛深だった。
 

牛深港でのんびり小休憩

牛深港は観光の拠点にもなっていて、物産館やレストランが併設され、バスやフェリーを待つのには苦労しない。港の上には牛深ハイヤ大橋が架かっていて、道が狭い牛深の街を海の上でつなぐバイパスとなっているほか、橋の途中に交差点があり、そこで曲がってループを降りると下須島へ行くこともできる。この牛深ハイヤ大橋は、土木学会の第一回デザイン賞で最優秀賞を受賞しており、昔ながらの牛深の街に溶け込む美しさを持っている。
 
 本当は1時間もしないうちに牛深を発つ予定だったが、あまりに景色が美しいくて心地よいので、バスを一本見送って2時間ほど牛深港で海を眺めて休憩。その間にも三和フェリーが鹿児島の蔵之元港との間を行ったりきたりしていた。
 
 遠く九州本土の上空には立派な積乱雲。当日は鹿児島県の北部あたりでかなりの大雨が降ったらしい。2時間の間にみるみるうちに発達した。ゲリラ豪雨が降るときの上空はこんなにも雲が高く発達しているのかと驚いた。
 

下島の中央部の山間を走る本渡-牛深線に乗車

 牛深港で景色を眺めて黄昏た(?)あとは今日の宿泊地である本渡へと戻る。帰りのバスは天草の路線バスの中でも幹線路線となっている本渡-牛深線。国道266号線を北上して本渡バスセンターへと帰る。
 
乗車記録4
産交バス 河浦病院・一丁田中央経由本渡バスセンター行
牛深港→本渡バスセンター
 
 先ほどの東海岸を進んできた路線バスと違って、基本的には山間部を進んでいく。海が見えるのは牛深から峠を越えた先の河浦町の一部区間のみ。残りの区間は山の中の国道をひたすら走っていく。河浦町の中心部である一丁田は国道から少し離れているので、ここは国道から一旦逸れて立ち寄る形をとる。一丁田には産交バスの河浦車庫があり、ここから崎津などを経由して下田温泉に行くバスが発着している。天草地方の民家の多くは玄関に一年中しめ縄が飾られている。これはキリスト教が禁教とされていた時代から伝わる風習で、しめ縄を飾ることでキリシタンであることを疑われないようにしていたその名残り。今も多くの民家がその風習を受け継いでいることがバスの車窓からわかる。
 
 再び国道266号線に戻ると、さらに山間部へ進み宮地浦地区を通過。その先で下田温泉方面から来る県道24号線と合流すると、本渡市街はあともう少し。最後に亀川ダムのダム湖が見え、ダムを過ぎると徐々に本渡市街へと入る。市街地のはずれにイオン本渡店と天草地域医療センターがあり、バスはそれぞれに立ち寄る。イオンから先はロードサイド店が立ち並ぶ。国道266号は直進すると天草瀬戸大橋を渡り上島方面に向かうが、バスは天草瀬戸大橋の手前で右折して本渡の中心部へと入る。本渡の中心部側から見ると天草瀬戸大橋のループの途中に牛深方面に向かう分岐があるような構造となっている。牛深を出ておよそ1時間30分、バスは終点の本渡バスセンターへ。5時間半あまりで本渡バスセンターへと戻ってきた。
 1日目の行程はこれで終了。この日は本渡バスセンターの道向かいにあるビジネスホテルに宿泊。2日目は上島の路線バスを旅する。
 
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