【旅行記】最後の特急かもめで行く西彼杵・長崎半島路線バスの旅~西彼を旅する その2~
西彼杵半島の北側エリアを通って再び板の浦へ
乗車記録7
さいかい交通
西海橋東口・横瀬桟橋・西海総合支所前経由 樫の浦行
大串→板の浦

板の浦から再び大串へ戻り、約20分ほどの待ち合わせで、再び板の浦方面に向かうバスへと乗り込む。直前に乗車したバスは西彼杵半島の東西を峠越えで直線的に結ぶバスだったが、次のバスは西海橋や佐世保方面への渡船が発着する横瀬桟橋などの半島の北側のエリアをまわって大瀬戸地区へと走るバスで所要時間は直前のバスの3倍の1時間30分ほどかかる。予想はしていたが、バスは直前と同じバスがやってきた。多少申し訳ない気持ちでバスに乗り込む。自分以外にもう一人の乗車があり、大串バス停を出発した。

大串を出ると大村湾を横に見ながら北上する。10分ほど走ると西海橋方面へ向かう道と半島の東側へと向かう道との分岐点に差し掛かるが、バスは一旦西海橋方面へと向かう。ここからバスは一度西海橋を渡り西海橋東口バス停まで往復する。西海橋東口では西肥バスの佐世保方面行きのバスと乗り換えることができ、以前は長崎から佐世保まで直通するバスも運転されていた。このバス路線はその名残の路線ともなっていて、大串と西海橋東口の間にはわずかに区間便も設定されている。大串から乗車した乗客は西海橋までの間に降りてしまい、早々にバスは貸し切りとなった。

西海橋は国道202号にかかる西海橋と西海パールラインにかかる新西海橋の2本がかかっていて、西海橋を渡った先はハウステンボスが所在する針尾島。内海となる大村湾はここ西海橋と針尾島の東側にある早岐瀬戸の2ヵ所でしか外海とつながっておらず、閉鎖的な海として知られている。西九州新幹線用の新型車両もこの西海橋の下を通って大村の車両基地へと搬入された。バスは西海橋東口でUターンしてきた道を戻り、西彼杵半島を西側へと走っていく。

国道を少し進むと、そこから畑下の集落に立ち寄るために国道から逸れる。車窓には針尾送信所の大きな無線塔を見ることができる。ここから先は国道と集落を行ったり来たりしながら西彼杵半島の北側を進む。次に立ち寄る横瀬は渡船発着所の前でUターンする。奥にはうっすらと佐世保の市街地が見える。ここがおおよそ西彼杵半島の一番北側にあたり、佐世保の市街地まではわずか8kmほどの距離にある。西海総合支所前バス停で再びUターンして黒口集落を通り、再び国道へと戻ると、外海に面する西海岸側へ出て視界も一気に開けた。

さらにしばらく走ると、対岸に大きな島が見えてくる。西彼杵半島の外海に浮かぶ大島で九州本土とは大島大橋という立派な橋でつながっており、ここを通って大島へと向かう路線バスもある。大島には造船所があり、巨大な船舶用のクレーンが対岸に見える。大島を出ると、大瀬戸はあと少し。結局、序盤で降りた1人以外乗客は誰も現れず、およそ3時間ぶりに板の浦へ。一周お世話になった運転士さんにお礼を告げてバスを降りた。

板の浦からは長崎新地ターミナル行のバスで終点の長崎新地ターミナルへ向かう。このバスへ長崎市内へと帰ると、西彼杵半島をくるっと一周したことになる。板の浦から出る長崎市内方面行は多くが途中の桜の里ターミナル行だが、時間帯によっては長崎市内まで直通するバスがある。東海岸の大串では長崎市内方面行は長崎バスが運行しているが、板の浦から出る長崎市内方面行はさいかい交通が担当し、長崎市内中心部にさいかい交通が顔を出す唯一の路線でもある。所要時間は1時間50分ほどでそれなりに時間がかかる。
乗車記録8
さいかい交通
桜の里ターミナル・寺川内経由 長崎新地ターミナル行
板の浦→長崎新地ターミナル

大瀬戸地区を出るとここから先は海岸線を進んでいく。バスは基本的に国道202号線を進むが、時折集落に立ち寄るために側道へと入る。このエリアに来るのは初めてだったが、思った以上にアップダウンが連続し、断崖絶壁の岩山が海岸線まで突き出ていて、外海の海岸線らしい荒々しい表情に驚かされた。特に道の駅夕陽ヶ丘そとめを通り過ぎた先で眼下にこれから走る黒崎地区が見えるのだが、その標高差にはびっくり。想像していた海岸線とはかなり印象が違う。

今年春に北海道の大別苅という地区をバスで訪れたが、なんとなくその時の景色にも似ている。個人的にあまり外海になじみがないので、穏やかな内海と違って、外海荒々しい地形や海は特に天気が悪い時には少し恐怖心がある。夕日の名所でもあるので、次このエリアを訪れた際には夕日を拝みに訪れてみたいものだ。

バスは立ち寄る集落で少ないながら乗客を乗せていく。何度も何度もアップダウンを越え、バスは長崎市の三重地区へと到着する。長崎市のベッドタウンが広がり、大きな漁港もあるエリアだが、その一角に長崎バス桜の里営業所が設置されている。山の斜面の一角に立体駐車場があり、そこにバスが駐車されている。他のエリアから来るとその光景に驚くが、長崎は平地が少ないため、こうしてバスの営業所も立体の駐車場となっているところが多い。桜の里営業所は屋上を含めて6階の建物で1回はバスターミナルが併設され、2階以上はバスの立体駐車場になっている。

長崎漁港のある京泊地区から先は各バス停から乗客が乗り込みバス車内も混雑し始めた。再び標高を上げて滑石トンネルへと進む。平地が少ないため、こうした山間部にも住宅街が広がっていて、長崎らしい光景が広がる。滑石トンネルを出ると長崎市街地の北側に当たる道ノ尾へ。ここで国道206号線へと出ると、長崎市内から時津へと向かったバスの経路に当たり、時津、大串、板の浦を経由して西彼杵半島の一周経路が完成した。残す区間は朝来た道を戻っていく。やはり道ノ尾と路面電車の始発点である赤迫で降車が目立ち、そこからは先行するバスが多数あることから乗車はわずか。1時間ほど前は荒々しい外海の海岸線を走っていたが、一気に車窓が都会になる。この景色のグラデーションが路線バス旅の楽しみの一つでもある。長崎駅前を経由して終点の長崎新地ターミナルへと到着。穏やかで閉鎖的な大村湾に面する東側と荒々しい外海に面する西側で、まったく表情の異なる西彼杵半島を楽しむことができた1日目だった。
この日は長崎市内に一泊。2日目は早朝から南下して長崎半島の南端に浮かぶ樺島方面の路線バスを旅する。