【旅行記】愛知静岡鉄道ぶらり旅~岳南電車の小さな旅~

 
 三島駅から普通列車静岡行に乗車して3駅移動し、吉原駅で下車。ここからは富士市を走る岳南電車に乗車する。このエリアのJRの拠点駅は一つ隣の富士駅。身延線の起点駅で富士市を代表する駅となっている。吉原という地名は岳南電車の存在を知ったときに知ったのだが、富士市はもとからあった富士市と吉原市などが合併して誕生した市なのだそうで、岳南鉄道は旧吉原市内を走っている。
 

富士山を望む吉原駅

 JRのホームから北の方角に目をやると、富士山が見える。少し雲がかかっているが、冬晴れで山頂付近が真っ白、そして中腹は青く見える富士山が一番美しい。これから乗車する岳南鉄道は、全駅から富士山が見える鉄道というキャッチコピーが付けらていて、美しい富士山を楽しめる鉄道として知られている。
 
 JRの吉原駅と岳南鉄道の吉原駅は100mほど離れた場所にある。JRのホームから直接岳南電車の吉原駅に行ける跨線橋も設置されているが、修善寺から使っていた乗車券を記念にもらいたかったので、窓口のあるJR側へ。JRの吉原駅は橋上駅舎となっているが、駅舎というよりはJRの運転区や車掌区のような感じがする。それもそのはずで、この駅は10年ほど前まで貨物列車が発着していて、この建物にはJR貨物の事務所が併設されていた。隣には2層式の駐輪場があるので、ぱっと見は駅に見えない。JRの駅の前の道を富士駅方面に少し歩くと岳南電車の駅があった。
 
 岳南電車の駅に着いたとたんに時代がタイムスリップしたような感覚に陥る。おそらく開業当時から使用されている駅舎だと思うが、相当年季が入っている。今回は1日乗車券で一往復してみることにした。窓口で1日乗車券の購入を告げると、硬券の一日乗車券が発行された。岳南電車の終点の岳南江尾駅は、東海道本線の三島側の一つ手前の駅である東田子の浦駅から北に約30分ほど歩いた場所にある。歩くことも考えたが、結構な距離で、道路も歩道がない道だったので、歩くのはあきらめた。いずれにしても復路は同じ電車になるので、どうせなら鉄道を楽しんでみようと思う。
 
 ホームに入るとまもなく1両の可愛い電車が到着。何もかもが味のある情景で、隣を走っていく211系さえ新しく見える。ホームの屋根の形状が独特で、これがまたノスタルジックな雰囲気を醸し出していた。途中駅の本吉原駅も同じ形状をした屋根を持つホームがあり、この駅については国指定の登録有形文化財に指定されている。
 
 乗車する車両は7000形。元京王3000形で、1両編成への改造が行われて、岳南電車で活躍している。全国各地で見られる京王3000形の改造車両。一部鉄道会社では置き換えも進められているが、岳南電車ではこの車両が主力車両として活躍を続けている。ここまで岳南電車と表記しているが、岳南電車は岳南鉄道を分社化したもの。もともと貨物事業を行っていた岳南鉄道の旅客部門として運営されていたが、貨物事業から撤退した際に旅客部門だけが分社化され岳南電車として経営されている。親会社の岳南鉄道は現在不動産事業が主力となっているが、この路線の路線名は岳南鉄道線のままになっていて、なんだかややこしい。
 
乗車記録16
岳南電車 普通 岳南江尾行
吉原→岳南江尾 7000形
 
 岳南電車は富士山が全駅から見える鉄道で、それも一つの売りだが、もう一つ有名な売りがある。もともと貨物列車が主力事業だったことが物語るように、沿線は工業地帯が形成されていて、製紙工場などの大規模な工場が立ち並び、時に線路の上を跨いでいる。昨今ブームとなった工場夜景が楽しめる鉄道として有名で、夜間に照明を消して夜景を楽しむ夜景電車もこのエリアの観光名所の一つになりつつある。貨物列車の運行がなくなったからこそ、様々なアイデアで集客への取り組みがなされている。吉原駅でJRから乗り換えたのは数人だったが、旧吉原市街の各駅からは高齢者を中心とし通院・買い物帰りの乗客が乗車して車内は少しだけにぎやかに。所要時間20分のかわいい鉄道だからこそ、市民から親しまれている。中には電車に乗りに来た子供連れの姿もあった。
 
 終点の岳南江尾駅に到着。遠く離れた伯備線には江尾(えび)駅があるが、こちらは江尾と書いてえのおと読む。初めて見たときはえお駅かと思ったが、そんな単純ではなかった。富士市と沼津市の境に近く、あの富士山と新幹線が一緒に撮影できる超有名撮影スポットにも近い。ザ・日本でも言うべき写真の舞台となる場所である。
 
 駅は無人駅で、小さな待合スペースが設置されている。伝言板には近くの小学校の児童が書いたであろうメッセージが書かれているが、楽しみます。と一言。主語がないので、何を楽しんだのかはよくわからないが、ローカルな雰囲気が漂っていた。
 
 駅の目の前には、東海道新幹線の高架橋が横切っていて、数分間隔で新幹線が颯爽と通過していく。せわしなく通過していく新幹線。片やこちらはガタゴトと音を立ててのんびり走る小さな鉄道。鉄道と一言で表すにもこんなに幅があり、この時間軸のギャップが楽しい。
 
 終点の小駅で並ぶ7000形と8000形。左の8000形は2両編成で、主に朝夕のラッシュ時間帯に使用されている。昼間はこの駅でお昼寝中のようだった。しばらくこの駅でのんびりと写真を撮ったりした後、再び7000形に乗車して吉原駅へ戻った。
 
乗車記録17
岳南電車 普通 吉原行
岳南江尾→吉原 7000形
 
 吉原駅からはこの旅最後の初乗車路線に乗車すべく清水駅へ。ここでようやく静岡地区の313系に乗車。行きは名古屋から沼津までロングシートを避けてきたが、ロングシートの313系こそ静岡の象徴みたいなイメージがある。ロングシートなので車窓が楽しめないのがもったいないが、この列車に揺られて清水駅まで向かった。
 
乗車記録18
岳南電車 普通 静岡行
吉原→清水 313系