【旅行記】函館本線と道南鉄道路線乗りつぶし旅~函館本線山線を俱知安へ~

およそ30分に1本が発着している新千歳空港行の快速エアポート。乗ってきた列車の次の列車は733系だった。札幌方面にはこのほか岩見沢・江別・苫小牧方面の普通列車も走っていて、合計すると1時間あたり4本の運転となっている。快速エアポートからは多くの乗客が吐き出され、すぐに札幌方面に向かう多くの乗客が吸い込まれていく。さて、幹線路線としての函館本線とはここでお別れして、ここからはローカル線としての函館本線の様子を見に行くことにする。
日常利用とスキー客で混雑していた俱知安行普通列車

次に乗車するのは普通列車倶知安行き。発車の20分ほど前には留置線から入線してきた。山線と呼ばれるこの先の区間は、余市、倶知安、ニセコなどを経由して太平洋側の長万部へと進んでいく。最初の記事でも書いた通り、ここから長万部までの区間は、北海道新幹線の開業に伴い、すでに廃止されることがほぼ確定している。もともとはキハ40形やキハ150形で運転されていたこの区間だが、数年前に新型車両のH100形に置き換えられ、現在は一部の列車を除いてこの車両で運転されている。小樽から倶知安方面は倶知安行が多いか、途中駅の余市・然別発着便もあり、長万部まで直通する列車も上り1本、下りは3本運転されている。発車の数分前に対面で快速エアポートと接続。車内は座席が全部埋まり、通路にも立ち客が多数の状態で発車した。ただ、ピーク時に比べるとそれほどの混雑ではないようだった。
乗車記録 No.3
函館本線 普通 俱知安行
H100形 2両

この列車は俱知安での接続列車がない関係上、鉄道ファンよりもスキー客の姿が目立った。3月に入ってもなおスキーシーズンは続いている。ローカル線と言えど、この先の余市まではそれなりの輸送密度となっていて、日常利用の乗客も多い。そうした背景もあって、余市~小樽間の廃止は物議を醸した。この路線が廃止になったあとは路線バスがこの区間の輸送を担うことになるが、その路線バスも現時点で混雑するらしい。小樽駅を出ると山の斜面に広がる郊外の住宅街を見ながら、徐々に標高を上げていく。

余市駅までの区間は海に近い場所を走るため、車窓にはところどころで海が見える。小樽の次の塩谷駅では早速小樽方面の列車とすれ違った。対向の列車も多くの乗客が乗車しているのが見えた。山の斜面を縫うように走ったあと余市に到着。余市駅に到着すると車内の乗客の半分以上が下車。日常利用の乗客の多くが下車していった。余市駅の1日あたりの乗降客数は1200人ほどで、決して多いとは言わないが、ローカル線の駅としては多い方に入ると思う。余市町自体も17000人の人口を有するが、札幌から続く高速道路がここまで延びていて、車だと1時間ほどで札幌まで行けるらしい。

小樽からおよそ西へと進んできた列車は、余市駅の手前で南に進行方向を変える。然別駅の手前までは少し開けた場所を走っていく。車窓は雪景色。一部の列車が折り返す然別駅から先は倶知安までの峠越え区間。然別はまだうず高く雪が積もっていた。

列車は余市川を渡る。西日本の雪の少ないエリアに住んでいる身からすれば、冬の川と言えば干からびるレベルに水量が少ない川をイメージするが、雪国の川は雪解け水が流れ出すので水量も多い。列車内は暖房が効いて暖かいが、外の気温は5度前後。多分3月の日中でこの気温は体感したことがないと思う。

倶知安へ進めば進むほど雪深くなっていく。線路脇にはラッセル車が積み上げたであろう雪が人の背より高く積もっている。北海道の人なら見慣れた光景なのだろうが、九州から来た観光客にとってみればなかなか見る機会のない光景だった。人家もほとんどないエリアを進んでいく普通列車。このあたりの駅間距離は長く、次の駅まで15分というのがもはや普通である。倶知安駅の一つ手前小沢駅は岩内へと向かう岩内線が分岐していたが1985年に廃止されている。しばらく山の中を走ると、車窓には羊蹄山がチラリと見える。小樽駅から約1時間10分。列車は終点の倶知安へと到着した。

倶知安駅に到着した普通列車。折り返し小樽行きとして戻っていくため、すでにホームには多くの人が並んでいた。倶知安駅は一昨年に新ホームが供用を開始している。駅舎から少し離れた場所にホームと車庫が造られた。北海道新幹線はここ俱知安駅にも駅ができる予定で、ホーム移設は新幹線開業への準備工事の一つとして行われものである。ホームの隣には車庫もあり、列車の折り返しや夜間停泊が行われている。なお、このホームが使われるのは長くても新幹線が開業する10年後まで。駅舎とこのホームとの間に新幹線の駅が建設される。ホームは小樽方面からのみ入線できる行き止まりの1線と長万部方面に繋がる1線の1面2線配置。長万部方面の列車は、現在、ここでは行き違うことができなくなっている。

まだ2本の普通列車にしか乗っていないが、この日の乗り鉄はここまで。この日は俱知安に一泊して、翌日函館本線の旅を再開する。
雪が多く残る俱知安町。完璧な晴れとはいかないが、羊蹄山が建物の間からきれいに見えている。まだ時刻は15時過ぎなので、羊蹄山がきれいに見える場所を探しながら、俱知安町内を散策することにした。
北海道新幹線の駅に生まれ変わる俱知安駅

倶知安駅の駅舎。北海道の駅舎と言えばこんな形の駅舎が多い。前に訪れた深川駅にも似ている。駅前は俱知安の繁華街に面していて、小さいながらも商店や飲食店が軒を連ねている。羊蹄山は駅舎の反対側にそびえており、駅舎と羊蹄山を一緒に撮影することはできない。一方、駅舎の裏側にはニセコアンヌプリがそびえている。

駅舎の入口にはキハ40と羊蹄山の写真があった。現在は函館本線の単独駅となっている俱知安駅だが、以前は伊達紋別駅まで続く胆振線がこの駅から分岐していた。胆振線が廃止された後も昨年までは道南バスによって廃止代替バスが運行されていたが、残念ながら一部区間が廃止になり、ここから伊達紋別駅まではいけなくなってしまった。胆振線が走っていたころは、札幌から俱知安、伊達紋別を経由して札幌へと戻る列車も運転されていたらしい。
10年後にはこの駅舎も見納めとなり、この駅には東京駅からの直通新幹線がやって来る。また、札幌駅からも30分ほどで来れるようになる。ホームの移設工事は行われているが、まだ新幹線の本体工事自体は行われていないので、実感は全く沸かない。
羊蹄山を望む倶知安の街

駅から10分ほど歩いて、駅の裏手の方にやってきた。駅の裏手には尻別川の支流である俱登山(くとさん)川が流れている。この川は写真の右手で尻別川と合流してニセコ・蘭越方面へと流れ、蘭越から海に注ぐ。俱知安~蘭越間の函館本線は、この尻別川とずっと並走して走っていく。
そして、俱知安の街の背後にそびえるのが蝦夷富士とも称される羊蹄山。標高は1898mで、活火山に指定される山である。とても美しい円錐形をしていて、寒いがしばらくの間見入ってしまった。

道路脇にはまだ雪が多く残る俱知安町内。雪が数cm積もっただけでも大混乱になる九州から来た人間からすれば、この雪の高さはもはや都市機能が麻痺する災害レベル。北海道ではこれはまだ序の口に過ぎないだろう。町専用雪捨場というものが設置されていて、北海道ならでは、豪雪地帯ならではの光景を見ることができた。3月ではあるものの、まだ積雪深度は130mを越え、日によってはまだ雪が降る日がある。ピークは訪れた日の数週間前の2月末。今年は最大230cmの雪が積もったらしい。倶知安は北海道の中でも指折りの豪雪地帯である。

俱知安の街中へと歩いてきた。小さいながら飲食店や飲み屋が立ち並んでいる。スキーを楽しむ外国人観光客が多いこともあって、飲食店の入口には大きく「SUSHI」とか「SUKIYAKI」と書かれている。道路脇には雪が残り、空き家となっている建物はもはや雪に埋もれてしまっていた。
この日は駅前のホテルに一泊。客室からは俱知安駅とその背後にそびえるニセコアンヌプリが見えた。山の斜面ではスキー場の灯かりが夜までともっていたのが印象的だった。
羽田空港から飛行機と2列車を乗り継いでやってきた俱知安。北海道新幹線開通後は、東京駅から1本で来れるようになる予定である。新幹線だと所要時間がやや長くなるものの、航空機で発生する待ち時間を考えれば、倶知安までの所要時間の差は小さい。東京から鉄道でアクセスする人も増えるのではないかと思う。
さて、1日目はこれで終了。2日目は倶知安から再び函館本線で長万部へと向かっていく。