【旅行記】特急ひだ&サンダーバードで行く北陸乗り鉄旅~久しぶりの富山の路面電車~
前話
・南北接続後初めての富山駅

特急ひだを乗り通して到着した富山駅。ここからは5年ぶりに富山市内を走る路面電車に乗車していく。前回の記事でも書いたように、前回の訪問から富山駅は大きく変化している。前回来た時は在来線の一部がまだ地上ホームとなっていて、富山ライトレールと富山地鉄の路面電車が南北で分断されていた。2019年に在来線ホームが完全高架化となり、2020年に富山市が長年の悲願としていた南北接続工事が完成。それまで富山ライトレールとして運転されていた富山港線が、富山地方鉄道の路線へと生まれ変わり、富山港線と市内線の直通運転が開始された。
5年前に富山に来た際には、富山ライトレールと地鉄の環状線系統に乗車した。しかし、南北接続工事完成でそれまで富山港線の起点だった富山駅北電停が廃止され、地鉄の富山駅電停までほんの100mほど延伸されたため、この区間を乗りつぶす必要がある。一電停間だけ乗れば完乗できるのだが、せっかくなら富山地鉄へと変わった富山港線も楽しみたいので、終点の岩瀬浜まで久しぶりに行ってみることにした。

富山地鉄の路面電車を乗りつぶすためにまずはきっぷを手配。今回は「市内電車・バス1日フリーきっぷ」を利用した。地鉄の市内線と富山港線、それに鉄道線のうち本線・不二越線の電鉄富山~南富山間、指定区間のバスに1日乗り放題となる乗車券で、650円で発売されている。路面電車は1乗車が200円ほどなので、3~4回ほど乗れば元が取れる。きっぷは路面電車車内でも発売されているが、富山駅では地鉄の窓口か、駅正面のバス案内所で購入することができる。
ちょっとだけ延伸された富山港線を再履修

路面電車の富山駅。前回来た時は南側部分だけだったのが、真ん中に通路ができ、その先にもホームが延びている。新幹線・在来線の改札から30歩ほどまっすぐ歩けば目の前に路面電車ののりばがあるこの光景。できればこれを日本の交通機関の当たり前にしてほしいところ。雨に濡れる心配はもちろんないし、改札と路面電車の駅の間はイベントスペースになっていて、物販などに乗客が立ち寄って足を止めていた。
乗車記録No.2
富山地鉄富山港線 岩瀬浜行
富山駅→岩瀬浜 9000形(CENTRAM)

富山地方鉄道の路線となった富山港線。もともとはJRの路線だったが、末期には本数も減り、乗客も減りという負のスパイラルに陥っていた。その後富山ライトレールとして生まれ変わり、富山駅近辺の一部区間を路面電車化。途中駅を増やし、さらに本数も増やしてパターンダイヤ化するなど数々の施策を実施。その結果、全国の公共交通のなかでも先進的な事例として、国内外から高い注目を集める路線となった。日中も15分間隔の運転。富山駅発で0・15・30・45分発となっているので、とても分かりやすい。
やってきたのは、富山地鉄9000形「CENTRAM」。市内線の環状線系統用の車両で、5年前は専ら環状線に使用されていたが、南北接続以降は、環状線と富山港線の直通運転が開始されたことで、富山港線でもその姿を見られるようになった。さっそく5年前との違いを見ることができた。富山駅を出て、わずかな延伸区間を通過。その後しばらくは路面電車として車とともに走る。奥田中学校前までは軌道線。その先ではもともとJRの路線だった場所を鉄道路線として高速で駆け抜けていく。乗車した列車も、対向の列車も多くの乗客でにぎわっていて、公共交通利用がとても定着しているように見えた。

富山港線の日中ダイヤは1時間あたり4本だが、その4本で市内線のあらゆる方面へと行くことができる。4本のうち2本は、環状線へと直通し、岩瀬浜からグランドプラザ前を経由して、再び岩瀬浜へと帰ってくる。残りの2本は富山駅から東西へと進み、1本は南富山駅前、もう1本は富山大学前へと向かう。南北接続の効果を最大限発揮するダイヤ構成となっている。もちろん行きたい方面への列車がない場合は、富山駅などで乗り換えることができる。広島ほどではないが、他地域よりは路線が入り組んでいる富山の路面電車。それでもとてもわかりやすいダイヤが魅力的だと思う。

乗ってきた電車は、終点の岩瀬浜まで高齢者の利用が多かった。岩瀬浜で終点となる富山港線だが、終点の岩瀬浜では、フィーダーバスと接続する。フィーダーバスはこの駅発着便以外にも何便かあるが、この駅から発着するのは水橋地区まで行く路線。日本海の沿岸を東に進み、あいの風とやま鉄道水橋駅の北側まで走っている。平日は30分に1本、土休日は1時間に1本が運転されていて、富山港線の列車に接続しているので利便性が高い。このバスにも5人ほどが乗車していた。一方で西側へと進み海王丸パークへの観光客輸送を目的に走っていた、土休日のみ運転の射水市のコミュニティバスは2021年に廃止された。このバスを使うと岩瀬浜から万葉線の越ノ潟駅へのアクセスが簡単にできていた。今は富山駅からのバスと渡船を使ってアクセス可能らしい。
南北接続後に富山港線での運転を開始したT100形に乗車

しばらく岩瀬浜駅で休憩後、再び富山港線で富山駅方面へと戻る。次の電車は何が来るかなと思ったら、T100形がやってきた。南北接続でこの車両も富山港線での運用がスタートしている。やってきたときにはじめて知ったのでちょっと驚きだった。もともとは富山地鉄市内線のうち富山大学前と南富山駅前を結ぶ路線を中心に運用されていたT100形。現在は他の低床車と同じく都心環状線を含めた全線で運用されている。地鉄所属で唯一3連接車となるT100形をこの駅で見れるようになったのも5年前との大きな違いである。
乗車記録No.3
富山地鉄富山港線・市内電車
5系統 富山大学前行
岩瀬浜→富山大学前 T100形(SUNTRAM)
岩瀬浜からはこのT100形で運転される富山大学前行に乗車して終点の富山大学前まで向かう。岩瀬浜駅を出た直後の岩瀬運河を渡る鉄橋は、立山連峰と富山港線をセットで撮れる撮影地として有名。渡った先には競輪場があり、岩瀬浜よりこっちで乗り降りする人が多い。どうやら競輪場専用ICカードというものがあるらしく、競輪場内でそのICカードを発行してもらえば、競輪開催日は競輪場前までの市内電車の往復が無料になる面白い取り組みが行われている。

その後は富山港線を富山駅まで戻って、そこから富山大学前方面へ。乗客の大半は富山駅で入れ替わった。都心環状線が分岐する丸の内電停を過ぎて、しばらくすると富山大橋を渡る。ここも立山連峰と路面電車を一緒に撮影するスポットとして有名。この橋は比較的新しい橋で、それまであった富山大橋は橋の老朽化などもあって通行できる路面電車は1両の車両に限られていた。新しい橋が整備されたことで連接車の通行もできるようになり、T100形はその橋の開通と同時に富山駅-富山大学前間の運転を開始している。現在では各種連接車が全て乗り入れるようになった。列車は終点の富山大学前へと到着。若干遅れていたので、あっという間に折り返しの岩瀬浜行として富山駅方面へと帰っていった。

富山大学前電停は、その名の通り富山大学が近くにあり、学生の利用が多い。ただし駅前は運動公園となっていて、富山大学自体はその運動公園の先に設置されている。連接車などでは富山大学前と表示されるが、旧来からある1両の路面電車では大学前と表記されていることもある。他都市の路面電車の終点と違って、道路の真ん中にある電停も広々としていて使い勝手がいい。隣の運動公園では野球の試合が開催されていたようで、応援団の声援が響いていた。次はここから市内線のもう一つの終点である南富山駅前まで乗車していく。
老舗系統で富山大学前から南富山駅へ

富山都心環状線の開通や富山駅の南北接続事業の完了によって、富山地鉄の路面電車も様々な系統が運転されているが、昭和期に路面電車の路線が廃止された後、都心環状線ができるまでは富山大学前~南富山駅前間のみの運転だった。都心環状線と富山港線へと直通する列車は全ての列車が低床連接車で運転されているが、富山大学前~富山駅~南富山駅間の1・2系統は、連接車登場前の路面電車車両も多く活躍している。写真は8000形電車。1993年に登場した車両となっている。南富山駅前行は岩瀬浜行が発着する関係上、1時間あたりに1回が20分間隔となる10分間隔運転となっている。先を急ぐ必要はないので、この電車は見送って次の電車で南富山駅前まで行くことにした。
乗車記録No.4
富山地鉄市内電車
2系統 南富山駅前行
岩瀬浜→富山大学前 7000形

次に来たのは現役の路面電車の中でも最古参の7000形電車だった。さっきまでの低床車とは違った雰囲気が漂う車両。昔ながらの機械音が鳴り響く車両に終点の南富山駅前まで乗車する。富山大学前からもそれなりに乗車があり、その後も観光客の乗車もあって富山駅までは割と混雑した。富山駅ではスイッチバックするが、この電車は南富山駅前行なので、引き続き乗車することができる。しかし、富山駅を跨いで乗車したのは自分だけだった。富山駅からは一転閑散とした車内。進行方向が変わり、再び富山駅前の分岐点を通過すると、その後は富山市の繁華街である総曲輪を経由して、南富山駅へと走っていく。西町あたりで先行列車に追いついてしまったので、その後は誰も乗る人はおらず、終点へと到着した。

乗車していた7000形電車を南富山駅前で撮影。この列車は折り返し富山駅前行の列車として帰っていった。南富山駅前からは富山大学前発着便・岩瀬浜発着便に加えて富山駅前発着便も運転されていて、5分間隔の運転となっている。南富山駅前という名前の通り、地鉄不二越線・上滝線の南富山駅の正面玄関横にのりばがある。駅手前では鉄道線の踏切の手前で路面電車の線路が急カーブしていて、市街地方面に向かう車は踏切の直後に路面電車の線路も跨ぐことになる。そのため踏切には信号機が取り付けられていて、踏切が鳴っているときと路面電車が通行するときの両方で赤になるようになっている。5年前に富山都心環状線は乗車済みなので、これで地鉄市内電車の全線乗車を完了した。
さて、南富山駅からは地鉄の鉄道線に乗車していく。
次話