【旅行記】特急ひだ&サンダーバードで行く北陸乗り鉄旅~富山地鉄不二越・上滝線に乗車~

前話
 
 富山駅から岩瀬浜、富山大学前を経由して、南富山駅前に到着。ここからは初めての富山地鉄の鉄道線に乗車していく。富山地鉄の鉄道線は大きく分けて3系統が運転されている。3系統のうち本線と立山線は、その先で黒部渓谷鉄道やアルペンルートがあるため、これらに乗車しに改めて訪れることにして、今回は地鉄の鉄道線の中でもマイナーな不二越線と上滝線に乗車する。この不二越線と上滝線は、電鉄富山駅の一つ隣の稲荷町駅から南富山駅までを結ぶ。一方の上滝線は南富山駅から立山線と合流する岩峅寺駅までを結んでいて、すべての列車が南富山駅を経由して、電鉄富山~岩峅寺間で運転されている。本線と立山線は観光客もよく利用する路線だが、この不二越・上滝線は途中に観光地もなく、専ら沿線住民の移動手段として利用されている。
 

立山連峰を眺めながら上滝線をゆく

 南富山駅は有人駅なので発車時刻の5分ほど前になると改札が開始され、構内へと入ることができる。この駅は改札口のすぐ後ろ側に路面電車の線路が走っていて、その奥が車両基地になっている。普段は線路側の遮断棒が閉じられていて、路面電車の入換作業の時のみ、ホームへの通路の遮断棒が降ろされて路面電車が出入りする仕組み。路面電車の線路と鉄道線の線路は一応つながっていて、路面電車車両が不二越線を事業用車両に牽引されて回送されることもあるらしい。やがて踏切が鳴ると、電鉄富山からの岩峅寺行電車が到着した。
 
乗車記録No.5
富山地鉄上滝線 普通 岩峅寺行
南富山→岩峅寺 10030形
 
 南富山駅を出た列車は北陸道と交差する布市駅付近までは富山市内の住宅街を走っていく。北陸道と交差後は沿線の景色も田園風景へと変わる。奥には立山連峰が聳えていて、ここから岩峅寺駅まではずっと立山連峰を車窓の前方に見ながら進んでいく。
 
 なかなかスマホのカメラでは遠くて撮れないが、おそらく画面中央に見える山が新幹線の名前にもなっている剱岳、その左側に見えるのが宇奈月温泉方面、右側が立山で山を越える黒部ダムがあるはず。今日は遠くに立山を見るだけだが、いつか必ずアルペンルートと黒部峡谷に行ってみたい。ま、鉄道全線を乗りつぶすうえではむしろ行かなくてはならないのだけれど。春の立山連峰は本当に美しい。
 
 列車はずっと富山市の郊外を走っていき、月岡、上滝などを経由する。当然乗客は降りる一方で、車内はどんどん閑散としていった。岩峅寺駅の手前で常願寺川を渡ると、初めて富山市から出て隣接する立山町に入る。車窓の左側から立山線の線路が近づくと、まもなく列車は終点の岩峅寺駅に到着した。
 
 乗車していたのは通称かぼちゃ電車とも呼ばれる10030形電車。もともとの京阪3000形を改造した車両で、富山地鉄の鉄道線では、大手私鉄各社から移籍して第二の人生を送る車両がたくさんいる。この10030形車両のうちの1編成は、京阪ではおなじみのダブルデッカー車両も付属した3両で運転されており、編成こそ短くなっているものの、カラーリングも京阪時代のものとなっていて、昔の京阪電車の趣きを保っている。
 

タイムスリップしたような雰囲気漂う岩峅寺駅

 塗装がボロボロの岩峅寺駅の駅名標。でもそれが逆にすごくいい味を出している。上滝線ホームは島式の1面2線、一方で立山線は相対式の1面2線となっていて、地鉄のターミナル駅の一つとなっている。両方の線路は立山方でつながっていて、一応立山線と上滝線で直通運転ができるようにはなっている。ただ、現在は直通運転する列車はなく、上滝線のすべての列車がここで電鉄富山方面へと折り返す。
 
 改札を出ようと思ったらちょうど立山線の電車の発車時間だった。左側は西武鉄道5000形「レッドアロー」の16010形電車。立山始発の特急電鉄富山行だった。反対側の車両は元東急8590系の17480形電車。ともに関東で活躍していた電車が富山で活躍している。ちなみにレッドアローはこの車両の光景であった西武10000系電車「ニューレッドアロー」も地鉄へと移籍して活躍中で、西武の特急列車親子の競演を見ることができる。
 
 帰りの列車まで40分近くあるので、一旦改札の外へと出てみた。岩峅寺の駅舎は戦前に建てられたもので、映画のロケでも使用されている。駅舎と言うよりは神社の社務所のような立派な門構えだった。駅の近くには立山を信仰する雄山神社の前立社檀がある。
 
 岩峅寺駅の立山方の踏切から立山方面の線路を見る。線路は緩やかな勾配となっていて、立山線はここから先、常願寺川に沿って標高を上げ、立山駅へと向かう。そこからケーブルカーやバス、トロリーバスなどを乗り継ぐのがアルペンルート。立山室堂の標高は2450mで、2000m以上の山登りが待っている。来年か再来年には計画して行ってみたい。
 

折り返し電鉄富山行普通列車で不二越線を完乗

 駅でしばし休憩をして、駅員から電鉄富山までのきっぷを購入。再び改札内へと入り、折り返しの普通電鉄富山行に乗車する。岩峅寺駅自体は周囲に人家は少ないので、ここから乗車する人は少ない。発車の5分前になると、立山線のホームに寺田駅経由で電鉄富山まで向かう普通列車が到着。立山線から上滝線へと乗り継ぐことができるようになっている。立山線の普通列車の方が先に発車していくが、調べてみると、上滝線の列車の方が先に電鉄富山に着くらしい。数分の差なので、乗り換える人はいなかった。
 
乗車記録No.6
富山地鉄上滝・不二越・本線 普通 電鉄富山行
岩峅寺→電鉄富山 10030形
 
 列車は岩峅寺から再び常願寺川を渡って南富山・電鉄富山駅方面へと走っていく。2両目はガラガラだったので、後面展望も楽しむことができた。上滝線の途中駅月岡駅は、映画「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」のエンディングのロケ地となっている。本編は見たことがないのだが、偶然テレビでやっていたこの映画のエンディング部分だけ見たことがあり、立山連峰に向かって列車が走り去っていく姿がとても印象に残っている。その撮影地こそ、まさにこの直線の線路で、映画でも実際でも、レールの彼方にそびえる立山連峰がとにかく美しい。
 
 列車は往路で乗車した南富山駅まで戻ってきた。ここからは不二越線へと入り、富山の繁華街の東側エリアを走っていく。沿線にはその名の通り不二越の工場を見ることができる。やはり富山の中心部に近づくと乗客の数も増えた。稲荷町駅は地鉄の鉄道線の車両基地となっていて、バリエーション豊かな車両を車窓に見ることができる。京阪カラーの3000系やニューレッドアローなどが留置されていた。稲荷町からは本線を一駅間だけ走行。列車は終点の電鉄富山駅に到着した。
 
 現在電鉄富山駅は、高架化工事が進行中でそれまで4線あったホームは、2線の縦列停車という珍しい配線の駅へと変わっている。縦列停車なので、先に入った列車はあとから入った列車が出て行かなければ発車することができない。車両運用も頭を使いそうな配線になっている。元京阪3000系の隣に停車するのは地鉄オリジナル車両である14760形の普通宇奈月温泉行。写真には写っていないが、この列車の手前には電鉄黒部行の列車が止まっていて、そちらが先発だった。ちなみに乗ってきた列車の後ろには先ほど岩峅寺駅で先に発車していった立山始発の普通列車が到着した。
 
 高架化工事は数年後に完成予定。地鉄の鉄道線が高架化すれば路面電車を除く富山駅へ乗り入れる各線の高架化が完了することになる。時刻は17時30分。この日は富山駅前で一泊予定だったので、夕食を買い込んでホテルへと向かった。今回宿泊したのは、ホテルJALシティ富山。富山空港にはJALは就航していないので、富山とJALというのは意外な組み合わせ。アルペンルートへの観光客が多く滞在するので、富山駅周辺にも新しいホテルが多数進出している。
 ホテルにチェックインして、とりあえず夕食。しばらくホテルで休憩後、もう少しだけ乗り鉄しようと思い、再度富山駅へと向かった。
 
乗車記録No.7
富山地鉄市内電車
3系統 環状線
富山駅→グランドプラザ前→富山駅 9000形(CENTRAM)
 
 乗るかどうかで迷ったが、1日乗車券もあることなので、以前乗車した環状線にも乗車しておくことにした。5年前に一日中に乗車しているので、今回は夜の列車に乗ってみる。日中は岩瀬浜発着と富山駅発着便が運転されている環状線系統。夜間は富山駅発着便だけとなり、運転間隔も減る。自分は最初から一周するつもりだったが、案外都心環状線単独区間の乗り降りは少なく、富山駅からなら南富山駅行に乗った方が早い西町あたりでの乗降が多かった。都心環状線単独区間の大手モール電停付近はいわゆるトランジットモールにもできるようになっていて、ヨーロッパのLRTにも似た、公共交通によるまちづくりの新しい形を提案している。富山駅から富山駅の一周はおよひ30分。夜の路面電車の小さな旅を楽しむことができた。
 1日目の富山の旅はこれで終了。2日目は金沢へと移動し、北陸鉄道へと乗車していく。
 
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