【旅行記】特急ひだ&サンダーバードで行く北陸乗り鉄旅~輪島特急線で金沢から一路輪島へ~

前話
 
 北陸鉄道石川線に乗車後、兼六園を見学して金沢駅へと戻ってきた。この日の宿泊地は同じ石川県内でも能登地方にある輪島市。金沢から能登半島の輪島や珠洲へのアクセスは鉄道を使うと穴水から先の鉄道路線がないため、バスを使うのが一般的。今回は往路でバスに乗車し、翌日の復路はバスと鉄道を使う。輪島まての往路は、金沢駅西口から発車する北陸鉄道の輪島特急線に乗車していく。
 

金沢と輪島を結ぶ北陸鉄道バス輪島特急線に乗車

 金沢駅から出る能登半島方面のバスは輪島へ向かう輪島特急線と、珠洲へと直行する珠洲特急線、宇出津を経由して珠洲へと向かう珠洲宇出津特急線の3種類が運転されている。珠洲へも足を延ばしてみたかったが、翌日に乗る特急サンダーバードとの時間の兼ね合いがあったので、今回は輪島へ行ってみることにした。発車の5分前になると、バス停に乗車するバスがやってきた。特急バスはトイレなしのハイデッカー車での運転で、北鉄金沢バスと北鉄奥能登バスの便があるが、今回は前者。車内精算でも乗降できるが、金沢駅からの乗車であれば、西口バスターミナルの券売機で乗車券を購入できる。なお、車内精算の場合は現金のみだが、券売機での購入の場合は全国相互利用ICカード各種が使える(金沢駅西口のみ)。
 
乗車記録No.16
北鉄金沢バス
輪島特急線 マリンタウン輪島行
金沢駅西口→マリンタウン輪島
 
 金沢駅西口を出たバスは、駅前のけやき大通りを直進して金沢港方面へと向かっていく。大通りの途中には、石川県立中央病院と石川県庁があり、それぞれ道向いで対面しているが、バスはどちらも構内へと入る。その後は県道8号線へと入り、内灘町方面へ。途中で朝に乗車した北陸鉄道浅野川線と、粟ケ島駅の南側の踏切でクロスする。その後は内灘町の住宅街へとを入る。このバスは輪島エリアへの新聞輸送の役割も担っているようで、向陽台バス停では新聞の積み込み作業も行われた。住宅街を過ぎると、バスは2軒目の病院となる金沢医科大学病院に立ち寄った。
 
 金沢医科大学を出たあとがこの路線の最大の見どころ区間。内灘ICからのと里山海道へと入ると、車窓には日本海が広がる。ここからしばらくは車窓に千里(ちり)浜として知られる長い砂浜を見ながらバスはひたすら北上する。
 
 途中の今浜IC~千里浜IC間はドライブコースとしても人気の千里浜なぎさドライブウェイと並走しながら走っていく。内灘から羽咋までは地図上で見ると結構な距離があるように見えるが、日本海を楽しめる区間なので、思った以上にあっという間に過ぎて行った。
 
 羽咋(はくい)の街を車窓の反対側に見ながら通り過ぎると、ここからは一転、山の中へと入り、クネクネと緩いカーブを曲がりながら、穴水方面へと向かっていく。のと里山海道と言う通り、この道路は前半は海道、そして後半は里山の景色を楽しめる。のどかな田園地帯の景色が眼下に広がった。
 
 バスは途中いくつかのサービスエリアに併設されたバス停にも停車していく。トイレなし車両での運行のため、途中1回のトイレ休憩が行われる。普段は志雄SAで休憩が行われるそうだが、工事中とのことで、今回は西山SAでトイレ休憩がとられた。ただ、高速バスのように15分間止まるわけではなく、乗客がトイレから帰ってきたら速やかに発車するスタイル。自販機の利用もご遠慮願いますとのことだった。トイレから戻りながらようやくバスの写真を1枚撮影した。
 
 のと里山海道は徳田大津JCTで七尾方面から来る能越自動車道と合流し、なおも穴水方面へと走る。能越自動車道は七尾市街で道路が途切れているため、現時点では直接氷見・高岡方面には行けない。徳田大津JCTから穴水方面は能越自動車との重複区間となっている。先にできたのはのと里山海道の方で、もともとは有料道路だった。現在は全線が無料化されている。穴水ICでのと里山海道を降りると、すぐに穴水此の木バス停に停車。輪島特急線は穴水駅前には立ち寄らない。その後は一般道を走り、能登半島の空の玄関口になっているのと里山空港に立ち寄る。ここでは金沢市街から乗車した乗客数名が下車した。ちょうど羽田行に接続する時間で、小松を使わず能登空港から羽田に向かう乗客も一定数いるらしい。次に能登に来た時にはのと里山空港から珠洲方面に向かってみたいと思っている。
 
 のと里山空港を経由したバスはその後、県道271号線・県道1号線へと入り、輪島へ向けてラストスパート。三井駅前や輪島駅前というバス停名が物語るように、以前は七尾線が輪島まで延びていた。バスの車窓にもその廃線跡がところどころ確認できる。しばらく里山の田園風景の景色を走ると、視界が開けてバスは輪島市街に到達。輪島の交通ターミナルである輪島駅前に到着した。
 
 輪島駅前で半分程度の乗客が下車。その後は市内を流れる河原田川沿いを経由しながら、輪島市街地を走り、終点輪島マリンタウンに到着。金沢駅からおよそ3時間で能登半島北部までやってきた。
 
 輪島マリンタウンで下車した理由は、宿泊するホテルの最寄りだから。バス停の後ろにそびえるのが、この日宿泊したホテルルートイン輪島。5年前の旅行では、穴水にのと鉄道で訪れる予定で断念したが、輪島まで足を延ばす予定はなかった。あの時台風で旅程が狂わなかったら、輪島に来るのももう少し後になっていただろうと思う。これも何かの縁。ホテルにチェックインするには少し早いので、輪島の街を散策してみることにした。
 

夕暮れの輪島の街を歩く

 バス停のある輪島マリンタウン。輪島キリコ会館や遊具がある遊び場、グラウンドなどがあり、輪島の臨海公園になっている。とりあえず日本海がよく見える場所まで歩いて行ってみた。
 
 キリコ会館の先には大型船用の岸壁がある。にっぽん丸やぱしふぃっくびぃなすなどの大型船が寄港することもある輪島港。その大型船が停泊するための岸壁だが、普段は釣りスポットとなっているようで、何人かの釣り人たちが釣りを楽しんでいた。穏やかな日本海。そして能登半島北部の海岸線が奥に続いている。反対側のサッカー場では中学生か高校生かがスポーツをしていたり、公園では子どもたちが遊んでいたり、犬の散歩をする人、ジョギングしてる人もいた。輪島の何気ない日常の様子を見ることができた。観光地も嫌いではないが、そこに住む人たちの暮らしを感じられるところの方が、たぶん自分は好きなのだと思う。乗り鉄や乗りバスが好きなのも、そこに住む人たちの日常を少しだけ味わえた気がするのがいい。
 
 海岸から今度は市街地の方へと入ってきた。ここは重蔵神社という神社。輪島と言えば朝市が有名だが、その朝市はこの重蔵神社境内で行われた物々交換の市が起源なのだそう。実際この神社から東西にまっすぐ進むと朝市の会場となり通りがある。物々交換の市は平安時代には行われたそうで、朝市の歴史は1000年以上の続くものなんだとか。重蔵神社から東西にまっすぐ続く道路を歩き、朝市会場となる方へ歩いていく。
 
 重蔵神社から振り向くと、わいち通りと呼ばれる通りがある重蔵神社の表参道の通りがある。輪島の商店街通りで、道はきれいなタイル張りになっていた。昔ながらの商店街らしく、飲食店、洋服屋、薬屋、化粧品屋が軒を連ねている。タイルで歩道と車道が色分けされていて、歩いていても窮屈さを感じない工夫がされていた。
 
 わいち通りから1本大きな通りを渡った先にあるのが、輪島の朝市会場となっている朝市通り、朝市は毎日朝8時~12時まで行われており、その時間帯は歩行者専用道になる。朝市開催時はお店の前にテントが張られ、日本海で採れた海鮮や輪島塗の漆器などが販売される。朝市終了後は毎度店がたたまれて、静かな通りへと変わる。朝市の時間帯以外は人の姿はまばらで空いている店も少ない。
 
 350mほど進むと交差点となり、重蔵神社からまっすぐ進んできたこの道も河原田川の手前で左右に分かれる。朝市会場は重蔵神社側から見て左の方に少しだけ続いており、河原田川に架かるいろは橋が終点。本当は翌朝朝市を見てから輪島を出発したかったが、ここが朝市会場に変わるときはどんな賑わいになるのだろうか。想像するのもちょっと楽しい。
 
 朝市通りから再び海岸の方へと歩いてくると、ちょうど夕暮れの時間。海に沈む夕日とはいかないが、日本海と夕暮れの空がとても美しい。洋上からは漁船が次々と漁を終えて、港へと戻ってきていた。釣りをする人は相変わらず穏やかな海で釣りを楽しんでいる。時間を忘れて釣りに没頭できる静かな環境がそこにはあった。
 
 消波ブロックが並べられた海岸線。漁船が遠くを走ると、その波が岸壁へと押し寄せて穏やかで音のない岸壁に並みの音が響く。静かで穏やかな海にしばらくうっとりとしてた。正直言うと、翌日の乗り鉄のための宿泊先として来た輪島だったが、想像以上に街の景観や海の景色が素晴らしかった。今度はじっくり輪島の街を楽しむためにここを訪れたい。
 
 2日目はこれで終了。最終日はここ輪島から路線バスと鉄道を乗り継いで、大阪を目指す。
 
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