【旅行記】特急ひだ&サンダーバードで行く北陸乗り鉄旅~和倉温泉から大阪へ特急「サンダーバード」を乗り通す~

希少な存在となった和倉温泉発着の特急「サンダーバード」

 北陸の旅も佳境へと突入し、残すは1本の特急列車で和倉温泉~大阪間を走破するだけとなった。5年ぶり2回目の訪問となった和倉温泉駅。前回はここから特急能登かがり火で、金沢まで向かったが、今回は金沢を通し越して大阪まで直行する。北陸新幹線開業前は、関西と北陸を結ぶ特急サンダーバード、名古屋と北陸を結ぶ特急しらさぎ、それに越後湯沢と北陸を結んでいた特急はくたかに和倉温泉発着の列車が設定され、和倉温泉から各方面へ向かう長距離列車も珍しくなかった。しかし、新幹線開業後はほとんどが特急能登かがり火となったため、希少な存在に。これから乗車する特急サンダーバード20号は、七尾線内から大阪へ直通する唯一の特急列車。現在は、大阪~和倉温泉間の特急列車は1往復のみの運転となっている。なお、この1往復についても、北陸新幹線延伸開業でサンダーバードの運転区間が大阪~敦賀間となることから姿を消すことが予想される。個人的に北陸~関西間で特急サンダーバードを乗り通すのはこれが初めて。和倉温泉からの所要時間は3時間台となっていて、北陸本線と湖西線での走りを楽しみながら大阪へと向かっていく。
 
 10時前の和倉温泉駅。特急サンダーバード20号は、和倉温泉10時14分発。和倉温泉に宿泊した場合、のんびりチェックアウトしてちょうどいい時間に設定されている。金沢に着くのもお昼前なので、この後金沢観光をしてから夕方関西方面へと帰る観光客も多いはず。駅には和倉温泉の旅館の車両やタクシーが続々と到着し、宿泊客を降ろしていた。あっという間に券売機には長蛇の列ができた。和倉温泉には指定席券売機も設置されているが、窓口は数年前に営業終了となっている。七尾線内では唯一えきねっと予約のきっぷも受け取りができる。
 
 列車は発車の20分ほど前に金沢からの特急能登かがり火1号として到着。すぐに折り返しのための清掃作業が行われる。現在七尾線内の特急列車は5往復となっていて、そのうちの2往復(サンダーバードとその折り返しの特急能登かがり火)が6両編成での運転。それ以外は3両編成での運転となっている。大阪発の特急サンダーバードは夕方にこの駅に到着し、和倉温泉にチェックインする乗客を運んでいる。
 
 反対側の貫通型を撮影しに隣のホームへ。この列車は和倉温泉~金沢間は6両編成での運転で、金沢で前方に3両を連結し、金沢から大阪間は9両編成で走っていく。サンダーバードの更新後の顔もいつの間にか見慣れてしまった。この列車は大阪までの間、2回のデッドセクションを通過する。一度目は津幡駅手前のデッドセクション。七尾線は直流電化なので、そこで交流へと変わる。2度目は敦賀駅の手前。ここで関西へ向けて再び直流へと変わる。デッドセクションを2回通過する列車も今となっては珍しいように思う。
 
 今回は4号車指定席を利用。6両編成のうち、1号車はグリーン車、2号車~4号車は指定席、5号車~6号車は自由席となっている。和倉温泉からの乗客は、始発駅でもあるので、自由席に座る乗客が多かった。e5489から早特で予約したが、サンダーバードは6両編成と9両編成の編成で号車の窓配置が異なっていて、予約者泣かせだった(間違えて一度払い戻した)。
 
乗車記録No.20
特急サンダーバード20号 大阪行
和倉温泉→大阪 683系
 
 和倉温泉を出た列車は、七尾、羽咋、津幡、金沢と停車していく。七尾の市街地を出ると、車窓は田園風景へと変わり、軽快な音を立てながら七尾線内を快走していく。前回乗車したときは反対側の車窓だったが、こちらの方が景色はいいかもしれない。ただ、午前中の走行だとちょっとまぶしい。羽咋に停車し、次の停車駅は津幡。一回目のデッドセクションを通過すると、列車は津幡駅へと到着した。
 
 津幡~金沢間はIRいしかわ鉄道線に入る。七尾線はJRとしては孤立路線のため、この区間は青春18きっぷも普通列車で通過する場合は追加料金なしで利用できるなどの特例がある。もちろん特急列車は利用不可だが。津幡駅では先行していた七尾線の七尾始発の普通列車を追待たせて先に発車する。車両基地が車窓に見えるとまもなく金沢駅。金沢駅では連結作業のため、駅ホーム手前で一旦停止。誘導信号に従って入線し、付属編成に連結。連結の衝撃が結構すごかった。
 
 金沢を出て再びJR西日本の路線へと戻った特急サンダーバード20号。金沢から先は、小松、福井、鯖江、敦賀、京都、新大阪と停車して、終点の大阪を目指す。特急サンダーバードは列車によって停車駅が異なり、最速達の列車は金沢、福井、京都、新大阪、大阪のみにしか止まらない列車がある一方、最も停車駅が多い列車は、湖西線の朝の通勤輸送も担っているため、金沢、松任、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、鯖江、武生、敦賀、近江今津、堅田、京都、新大阪、大阪と停車していく列車がある。日中の時間帯は、湖西線には一切停車しない停車型の列車のみが運行されていて、金沢、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、鯖江、武生、敦賀、京都と停車していく列車が多い。この列車に関しては、混雑を避けるためか、直前にもサンダーバードが走っており、そのサンダーバードが停車する加賀温泉、芦原温泉、武生には停車しない。半停車型の特急サンダーバードともいうべき列車である。金沢から北陸本線を進むが、車窓にはずっと北陸新幹線の高架橋が見える。1年後にはおそらくこの高架橋に乗客を乗せた新幹線が走っているはず。新幹線の速さにはかなわないまでも、特急サンダーバードは俊足で駆け抜けていく。
 
北陸新幹線は金沢から先、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井と駅が設置されていて、金沢~福井間は一部の列車が停車する松任以外は特急停車駅がそのまま新幹線駅となる。車窓にはいずれの駅でも真新しい新幹線の駅が見える。福井県へと走り、九頭竜川を渡るとまもなく福井駅。越美北線やえちぜん鉄道に乗った5年前を思い出していると、車窓にはえちぜん鉄道の車両基地が見える。一時期えちぜん鉄道が北陸新幹線の高架橋を間借りしていたが、今はそれぞれの高架橋が完成している。福井の次は鯖江に停車。メガネの生産が有名なので、沿線にもメガネ工場やメガネの広告が多い。福井と敦賀の間の新幹線駅は越前たけふ駅が現在の駅から離れた場所に建設中。武生駅の東側にあるので、鯖江は新幹線の開業とともに優等列車が来なくなる。駅前の駐車場は満車状態。新幹線開業後は新幹線駅まて車で移動し、さらに敦賀で乗り換えが必要になる。所要時間もおそらくさほど変わらないはずである。
 
 武生駅を通過すると、列車は本来は通過する今庄駅に停車。どうやら敦賀駅で飛来物があるらしく、その確認で10分ほど停車した。運転再開後、今庄駅を出てしばらくすると、列車は北陸トンネルへ入った。長さ約14kmの北陸トンネル。トンネルを出た先が交流から直流へのデッドセクションとなっていて、この列車2回目のデッドセクションを通る。すぐに車窓には巨大な建物が見えてくる。来年の春、北陸新幹線の終点となる敦賀駅。前回この駅に来た時には、まだ工事は全く行われていなかったので、その変貌ぶりに驚く。駅は上階が新幹線駅、下階が特急列車発着階となっている。西九州新幹線の武雄温泉のように対面での乗り換えとはいかないが、最低限の上下移動で乗り換えができるように配慮されている。こうした巨大な立体の駅を〇〇要塞と言ったりするが、まさに敦賀要塞だった。敦賀駅の南側には車両基地も建設中。車両基地へのアプローチ線から小浜方面へと向かう高架橋が途切れているのが見えた。ここから小浜、京都、松井山手を経由して大阪に乗り入れる予定の北陸新幹線。ただ、それも不透明な状況となっていて、いつ完成するのか、そもそもそのルートで完成するのかすら微妙な状況である。
 
 敦賀を出た大阪方面行の列車のお楽しみと言えば鳩原ループと呼ばれるループ線。敦賀方面の線路はまっすぐ敷かれているが、大阪方面の線路は急勾配を避けるためにループ線を走っていく。ループの途中で、一瞬敦賀市内が見れるのが、お楽しみポイント。すぐ下には小浜線が走っていて、奥には巨大な敦賀要塞が見えていた。近江塩津で北陸本線と別れる特急サンダーバード。北陸本線経由の特急しらさぎには5年前の旅で金沢~名古屋間の全区間での乗車を終えているが、湖西線の方へ進む特急列車はこれが初めて。前回湖西線を通ったのは新快速列車だった。和倉温泉では晴れていたのに大阪へ近づくにつれて雨が降ってきた。琵琵琶湖の車窓もどんよりしているが、霞んでいて逆に海のようだった。
 
 列車は湖西線を高速で駆け抜けていく。正直、敦賀~京都間は新幹線要らないんじゃないかくらいの快走ぶり。元から高速走行するつもりで作られた路線なので、乗り心地もいい。ただ唯一の難点と言えば風に弱いこと。この日も夜から運転見合わせの可能性が案内されていたが、湖西線は風でよく止まる。その時サンダーバードは米原経由で迂回するのが恒例となっている。列車は大津の街を抜け、山科から東海道本線へと入る。京都まで来ると九州から来たのに帰ってきた感がある。遅れていたのもあって、東海道本線内もビュンビュンと飛ばして新大阪に停車。北陸ロマンが流れると、まもなく列車は終点の大阪へと到着した。
 
 和倉温泉からずっと乗車してきた683系。無事に和倉温泉~大阪間の特急サンダーバードを乗り通すことができた。長距離特急はやっぱり楽しいし、何時間でも乗っていられる気がする。景色の変化も楽しくて約4時間の乗車時間もあっという間だった。名古屋駅からスタートした北陸の旅。特急サンダーバードで到着した大阪駅が旅のゴールとなった。
 

終わりに

名古屋を起点に富山、金沢、輪島、七尾と移動し、大阪がゴールとなった今回の旅。北陸への行き帰りは名古屋~富山間の特急「ひだ」、和倉温泉~大阪間の特急「サンダーバード」という長距離・長時間運転の特急列車の旅を楽しむことができた。春の高山本線は新緑が美しく、エメラルドグリーンに輝く飛騨川と宮川が強く印象に残っている。富山では富山地方鉄道、金沢では北陸鉄道という地方都市の交通を支える私鉄各線に乗車。富山地鉄では南北接続完了後の新しい路面電車の姿を見ることができたし、何より上滝線からの立山連峰は春の北陸を象徴する車窓だったと思う。輪島特急線に乗って初めて訪れた輪島。小さい街ながらも風情のある街並みや海岸が美しく、短時間の滞在だったが、今度はじっくり観光してみたいと思う都市だった。最終日に乗車したのと鉄道から臨む内浦は、今回の北陸の旅のハイライトとなる車窓を楽しめた。来年春には北陸新幹線が敦賀まで延伸開業予定。また一つ今の北陸の鉄道の姿が変わることになる。その時にはまた北陸を訪れて、今回の旅との変化を楽しみたいと思っている。
 
次旅