【旅行記】兵庫・神戸エリアの未乗路線を巡る旅~能勢電鉄妙見ケーブル編~
阪急宝塚線と能勢電鉄妙見線を乗り継いで妙見口へ

ほとんは1時間くらいゆっくりしておきたいのだが、今回の旅の目的は兵庫県の完乗。再び駅へと戻って、乗りつぶしの旅を再開する。ここまではJRで来たが、ここからで阪急へと乗り換え。阪急宝塚線で川西能勢口へと向かった。
乗車記録17
阪急宝塚線 急行 大阪梅田行
宝塚→川西能勢口

宝塚から15分、急行電車を川西能勢口で下車した。ここで阪急宝塚線から能勢電鉄へと乗り換える。能勢電鉄沿線に訪れるのは、これで3度目。川西能勢口のこの光景も見慣れている。ただ、前回来た時から変わった点がいくつかある。その一つがダイヤ構成。以前は妙見口行と日生中央行の交互発着となっていたが、川西能勢口へやって来るほとんどの列車が日生中央発着へと変わった。妙見口方面へは原則山下駅で乗り換えが必要となった。したがって、妙見ケーブルへ乗りに行くには、妙見口駅までの直通列車は今はないので、とりあえず日生中央行に乗り込んで、乗り換え駅の山下へと向かう。
乗車記録18
能勢電鉄妙見線 普通 日生中央行
川西能勢口駅→山下 5100系

川西能勢口から山下まで乗車したのは、5100系電車。阪急5100系を改造した車両で、2015年から能勢電鉄で活躍している。この車両が能勢電鉄に移籍することになった際、阪神尼崎駅に隣接する工場で改造工事が行われることとなり、阪急マルーンを纏った車両が阪神線を走った。その光景が鉄道ファンの間でとても話題になったのを覚えている。回送された時点で、車両は能勢電鉄に譲渡されていたそうなので、厳密には阪急の車両ではなく、能勢電鉄の車両が阪神線を走ったことになるのだが、それにしても、その昔熾烈なシェア争いをしていた阪急カラーの電車が阪神線を走る姿に、とても感動したのを覚えている。
能勢電鉄の車窓は、里山とニュータウンの景色が繰り返される。川西能勢口を出てしばらくすると、車窓は渓谷の景色へと変わる。その先では、再び開発されたニュータウンが広がる。山と街の対比的な車窓の中を列車は走っていった。
乗車記録19
能勢電鉄妙見線 普通 妙見口行
山下→妙見口 5100系

山下駅では慌ただしく妙見口行に乗り換える。余談だが、この駅は以前、妙見口行の列車に対して、日生中央行の列車が対面で接続を取り、その後入換作業を行って、再度日生中央方面のホームに入線するという面白い接続方法を取っていた。しかし、日生中央行の列車がほとんどになった現在では、その取扱いもなくなっている。今回は日生中央行から妙見口行への乗り換えである。これについては、今も昔も一度階段を降りる形で変わりはない。山の中を走っている妙見線だが、線路から一段上がったところにはニュータウンが広がっていて、決して過疎地帯を走っているわけではない。終点の妙見口駅周辺だけは、ニュータウンの開発が行われておらず、日本の原風景的な里山の景色が広がっている。沿線は田植えの季節。車窓からの景色もとても美しかった。

山下から乗車したのは、2両編成の5100系。能勢電鉄では、末端部の普通列車用として、2両編成の車両も活躍している。この車両は、過去に能勢電鉄で走っていた1500系の営業開始当時のカラーリングを復刻した車両。ブックマークトレインとして、沿線の写真がたくさん飾られていた。なお、つい先日この5100系2両編成の特別塗装車は、効率化を目的にマルーン色へと塗り替えられることが発表されている。

川西能勢口から続く妙見線の終点妙見口駅に到着。今は日生中央へ向かう方が実質的なメインルートとなっている能勢電鉄だが、もともとは妙見山への参拝路線として計画された路線なので、本来はこっちの方がメインルートだった。妙見口周辺は人家も少ないが、光風台やときわ台周辺は大きなニュータウンがあるので、妙見口方面も日生中央行に接続する形で10分間隔が維持されている。時刻は16時になろうかというところ。もちろんこんな時間に妙見口駅へたどり着くのは、地元の乗客しかおらず、降りたのは数人だけ。一方で妙見山や妙見の森から帰る乗客がたくさん列車に乗り込んでいた。
県境を越える"1バス停で終点路線バス"に乗車

妙見口からケーブルカーが発着するケーブル黒川駅までは、徒歩20分ほどかかるが、日中は路線バスも運行されている。曜日によって運転される時間が変わる。平日は妙見口または箕面森町地区センター発着で、能勢町まで行く路線バスが2つの停留所を経由する一方、休日は妙見口~ケーブル黒川駅間の区間便がシャトルバスとしておよそ30分間隔で発着している。土曜日はバスの運行がなく、秋には休日に運転される区間便がもう少し先にある黒川ダリヤ園まで延長して運転される。運休期間もあるため、曜日と日付に気を付けて乗る必要がある。休日に運転されるシャトル便は、日中時間帯に運転され、およそ5分で妙見口~ケーブル黒川駅を結んでいる。
妙見口駅は大阪府豊能郡豊能町にあり、ケーブル黒川駅は兵庫県川西市にある。実はこの路線バス、1バス停で終点ながら、府県境を跨ぐ珍しい路線バスにもなっている。
阪急バスは恐らくこれが初めての乗車となった。平日であれば箕面森町地区センターで乗り継いで、バスだけで千里中央千里中央まで向かうこともできるので、いつの日か挑戦してみたい。
乗車記録20
阪急バス 妙見口能勢線[5] ケーブル黒川駅行
妙見口駅→ケーブル黒川駅
妙見山へと登る妙見ケーブルに乗車

バスに揺られてわずか5分。終点のケーブル黒川駅バス停へと到着した。当然こんな時間から妙見山に登る人などいないので、バスは貸切だった。バスの転回場から住宅を何軒か通りすぎた先にケーブル黒川駅がある。駅の裏側からは山上へとケーブルカーの線路がまっすぐにのびいてた。

駅舎に入ると、ちょうど下りのケーブルカーが降りて来た。どうやら下山する人たちでケーブルカーが混雑しているらしく、時刻表にはないものの、すぐに折り返しの便が出るとのこと。ケーブルカーは、両方のケーブルカーの自重を使って運転される仕組みなので、上りだけとか下りだけということはできない。下りの臨時便を出すための上りの臨時便に一人で乗せてもらった。
乗車記録21
能勢電鉄鋼索線 ケーブル山上行
ケーブル黒川→ケーブル山上

発車すると急勾配を一気に駆け上がる。黒川駅がどんどん小さくなっていくと同時に、視界も開けてきて、遠くの山々の稜線も見えるようになった。沿線の木々は桜の木。桜が満開になる季節はケーブルカーの車窓に桜が咲き乱れるそう。桜は数か月前に散ってしまっているが、今の季節は新緑がきれい。そして秋になると紅葉が楽しめる。四季折々の景色を楽しめるのが、このケーブルカーの魅力となっている。

約5分ほどで妙見ケーブル線を完乗し、ケーブル山上駅へ到着。これでようやく能勢電鉄の全路線を制覇したしたことになった。ケーブル山上駅には足湯が設置されていて、足湯に浸かってのんびり過ごすこともできる。ここから駅前に続く坂道を登っていくと、妙見の森ふれあい広場がある。能勢妙見山へはそこでリフトへと乗り換えて、さらに山の上へと登っていく。今回は妙見山へは行かないが、せっかくなので、妙見の森で休憩してから帰ることにした。

妙見の森はハイキングコースであると同時に、バーベキューテラスが設置されていたレジャー施設となっている。もう17時前なので、人の姿は少なかったが、それでも何組かが妙見の森でのバーベキュー後の談笑を楽しんでいた。リフトからは次々とハイキング客が降りてきて、ケーブルカーへと歩いて向かっていた。リフトのりばの脇からは、遠くの山の稜線が見える。正午ごろに乗り鉄していた三田市方面の山々だそう。この地点でも標高500mほどあるようなので、かなり高いところまで上ってきていたようだ。この日は、日差しはあれど暑くなく、そよ風も吹いていたので、最高のレジャー日和だった。

妙見の森のベンチで1時間ほどのんびりと過ごして、再度ケーブルカーで下山。行きの車両はオレンジ色の「ときめき号」という名前の車両だったが、帰りは水色の「ほほえみ号」だった。
乗車記録22
能勢電鉄鋼索線 ケーブル黒川行
ケーブル山上→ケーブル黒川
・補足
さて、この記事を書き終えて、公開しようと思っていたところ、ニュースが入ってきた。今回乗車した能勢電鉄の妙見ケーブルは、2024年6月までに廃止されるとのこと。能勢電鉄は2023年6月23日に、同社の鋼索線(妙見ケーブル)の鉄道事業の廃止を近畿運輸局に届け出たと発表した。また、妙見の森のバーベキューテラスや、能勢妙見山へ向かうリフトについても営業を終了するとしている。旅行当日は日曜だったこともあり、バーベキューやレジャーを楽しむ乗客が一定数いたが、平日はレジャー客も少ないのが実情だろう。関西はケーブルカーが多く走っているところだが、そのうちの一つが廃止されることとなった。

行きは妙見口からバスに乗ってケーブル黒川駅まで向かったが、帰りは既にバスが終わっているので、のんびりと歩きながら妙見口駅へ向かう。ケーブル黒川駅から5分ほど歩いたところで、兵庫県と大阪府の境を越えた。街中にある県境を徒歩で越えることはあっても、山の中の県境を歩いて越えることはなかなかない気がする。その後は押しボタン信号を渡って、細い道へ走り坂を下りていく。田植えが終わった水田がとても美しかった。自分は観光地よりもその地域の街や自然と言った素朴な景色を見る方が好きだ。
妙見口からもう一つの終点日生中央へ

ケーブル黒川駅から徒歩20分ほどで妙見口駅に到着。里山の景色を楽しみながら歩くことができて、とてもいい散歩コースだった。駅のベンチに座って、あたらめて駅周辺の景色を眺める。とても10分間隔で列車が走っているとは思えないような駅周辺の景色。鳥のさえずりだったり虫の声が響いていた。空を見上げると無数の飛行機雲が横切っている。東日本と福岡や広島、熊本、長崎を結ぶ飛行機がひっきりなしに飛んでいく。こののんびりとした光景、梅田から1時間以内とはとても思えない。

先に来た列車は往路と同じ車両だったので、一本見送って次の電車で山下駅へ行くことにした。山下~妙見口間は2編成で運用しているようで、もう片方は4両編成の1700系だった。あとあと調べて分かったのだが、この区間は5100系の2両編成2編成を使うのが基本で、区間便に4両編成の車両が使われるのは珍しいらしい。折り返し時間はわずかで、4両編成では運転士が両端を移動する時間もない。そのため、山下方、妙見口方にそれぞれ1人ずつ乗り込んで、運転する方式だった。コスパは全くよくない。
乗車記録23
能勢電鉄妙見線 普通 山下行
妙見口→山下 1700系

妙見ケーブルに乗るという目的は果たされたので、もう帰ってもいいのだが、せっかくここまで来たので、もう一つの終点である日生中央駅にも行ってみることにした。山下駅で日生中央行の列車を待つ。妙見口方面から日生中央方面へ向かうときは、列車が到着したときに列車が出ていくダイヤになっているので、基本的に10分待ちになる。山下駅の住所は兵庫県川西市。光風台駅から笹部駅の間で大阪府と兵庫県の境を越えて再び兵庫県へと戻っている。
乗車記録24
能勢電鉄日生線 普通 日生中央行
山下→日生中央 1700系

山下駅から日生中央行に乗り込んで日生中央へ。阪急日生ニュータウンの拠点で日生とは日本生命の略である。計画人口は3万人だが、現時点ではさらに人口は8千人ほどとなっている。1970年代に開発されたニュータウンなので、高齢化も進行している。朝夕には阪急宝塚線中通の特急「日生エクスプレス」が発着する駅なので、2両編成が主体となった妙見線の妙見口方面に対し、こちらは最大8両編成が日常的に発着する。日生エクスプレスは一度は乗ってみたい列車だが、平日の朝の上り、夕の下り運転のみなので、余所者にはちょっと難易度が高い。

駅周辺には商業施設が立ち並ぶが、やはり駅前も少し歳を取っている感が否めない。日曜の18時だが、人の姿もまばらだった。駅前の飲食店にもほとんど人がいない。日曜だからなのか、それとも基本的にそんなものなのかはよくわからなかったが、ウッディタウン中央にしても、もう少し賑わいが欲しい。駅舎内にはツバメがたくさん巣をつくっていた。ツバメの球団のファンなので、ツバメを見ると親近感が湧く。
能勢電鉄の新型車両7200系に乗車後、宿泊地の神戸へ

日生中央からの帰りの便は、乗りたかった7200系がやってきた。もともとは阪急神戸線で活躍していた7000系先頭車2両に、宝塚線で活躍していた6000系中間車2両を組み込んだ4両編成。能勢電鉄に移籍した際に、マルーンとアイボリーの間に金色のラインが加えられた。1300系が活躍していた時代からすれば時代が変わった感がすごい。能勢電鉄に移籍した際にVVVFインバーター制御化されたので、能勢電鉄で初めてVVVFインバーター制御を導入した形式でもある。この列車に乗って、川西能勢口へと向かった。
乗車記録25
能勢電鉄日生・妙見線 普通 川西能勢口行
日生中央→川西能勢口 7200系
乗車記録26
阪急宝塚線 急行 大阪梅田行
川西能勢口→大阪梅田 1000系

川西能勢口で宝塚線の急行へと乗り換えて大阪梅田へ。能勢電鉄では7200系が運行を開始している一方、阪急側では1000系の姿が来る度に増えているような気がする。梅田駅で撮影した並びも1000・1300系、9000系・9300系がずらっと並ぶ。もちろん7000系や8000系の活躍も続いているが、10年前とは比率がだいぶ変わってきていて、時代の変化を感じる。
乗車記録27
阪急神戸・神戸高速線 特急 新開地行
大阪梅田→新開地

梅田からは神戸線の特急で泊地の神戸へと戻る。神戸線の特急は何度乗っても楽しい。闇夜を切り裂くような高速走行で阪神間を駆け抜ける。あっという間に神戸へとたどり着く。早朝の神戸市営地下鉄海岸線からスタートして30本あまりの列車とバスに乗った1日目はこれで終了となった。
兵庫県の完乗までもう少し。2日目も神戸エリアの未乗路線に乗車していく。
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