【旅行記】北東北の鉄道路線を巡る旅~青い森鉄道で八戸から青森へ~

前旅
 
 羽田空港から大館能代空港へアクセスし、北東北の鉄道路線を巡ってきた旅もいよいよ最終日を迎えた。最終日となる4日目は、八戸を早朝に出発して、青い森鉄道に青森駅まで乗車。青森駅からは五能線を走る快速リゾートしらかみを全区間乗り通し、秋田から帰路につく。
 

E721系の派生形式、青い森鉄道の703系に乗車

 八戸から乗車したのは当駅始発の普通青森行き。青い森鉄道は、前日にも快速しもきたで八戸~野辺地間をはじめて乗車したが、今回は青い森鉄道の列車に揺られて青森駅まで向かった。青い森鉄道の車両はこれまでも青森駅や八戸駅で見かけてきたが、乗車するのは初めてだった。
 青い森鉄道は東北本線の青森県区間となる目時~青森間を運行している。旧東北本線の青森県区間は、線路などの設備を青森県が保有し、運行を青い森鉄道が行う上下分離方式が採用されている。そのため青い森鉄道が第二種鉄道事業者、青森県が第三種鉄道事業者という形式をとっている。列車の運行系統は基本的に八戸駅で分かれており、八戸を介した両側で跨って運転される列車は少ない。平日朝の三戸発青森行1本のみである。
 青い森鉄道は701系と703系の2形式の車両を保有している。今回乗車したのは2編成のみが活躍する703系だった。703系はJR東日本のE721系を青い森鉄道仕様にした派生形式。E721系はおもに仙台・福島エリアの路線に投入された近郊型電車だが、仙台空港鉄道、青い森鉄道、阿武隈急行の3社がこの車両をベースとした車両を投入している。青い森鉄道の703系は、E721系シリーズの車両でもっとも北を走る車両であり、他の2社がJRへの直通運用がある一方で、703系は定期運用ではJRを一切走行しない。北東北エリアで電車に乗るとどうしても701系ばかりになってしまうので、ここでの703系に乗れるというのは嬉しかった。
 
 青い森鉄道の車体には同社のイメージキャラクターであるモーリーが描かれている。こういうキャラクターには弱いので、ついつい写真を撮ってしまった。車内はセミクロスシートで3つのドアの間には2ブロックのボックスシートが並んでいる。この列車は青森駅に7時30分ごろに到着するので、途中の野辺地あたりから通勤通学のラッシュに突入する列車である。しかし、八戸を出るのは6時過ぎと早く、八戸発車時点での乗客は5人もいないように見えた。新幹線では20分ほどの八戸と青森の間も在来線で行こうとすると1時間30分近くかかる。在来線は野辺地や浅虫温泉を経由して大きくカーブを描いて線路が敷かれているので、直線的に敷かれた新幹線との所要時間の差が大きくなる。新幹線が八戸から新青森まで延伸されたのは2010年。それまでは青森、函館、弘前へ向かう特急列車が多数走行していた。特急列車での八戸~青森間の所要時間は約1時間だった。
 
乗車記録 No.16
青い森鉄道 普通 青森行
八戸→青森 703系
 
 一応、日の出の時間を調べて出発の時間を決めているので当たり前だが、八戸駅を出る頃には空が明るくなり、三沢駅に着くころには日が上っていた。特に秋冬の東日本は日が落ちるのが早いので、日の出の直前から動くことが効率的な乗り鉄につながる。八戸~野辺地間は前日にも乗車した区間。前日はキハ100系の唸るエンジン音がひたすらに響き渡っていたが、電車だと余裕ある走りに見える。列車は三沢基地と小川原湖の脇を通って走っていくが、車窓にそれらはほとんど見えない。乗車列車は普通列車なので、快速しもきたが通過した各駅にも停車しながら走っていく。
 
 列車は上北町駅を出て七戸川を渡る。七戸川はこの先にある小川原湖の流入河川の一つである。小川原湖の流出河川は高瀬川という名前だが、実は写真の川も高瀬川の一部である。高瀬川という川の名前は、一般的に小川原湖のから海までの区間のことを指し、小川原湖よりも上流は七戸川と呼ぶことが多いらしい。七戸川にかかるこの橋は天間川橋梁という名前のコンクリート橋で、調べてみると2006年頃完成し、土木学会などで受賞されている橋である。
 
 列車は野辺地駅に到着。奥のホームには昨日乗車した大湊線の列車が停車していた。大湊線下りの始発の普通大湊行きで、この列車が接続列車となっていたようだ。大湊線の野辺地始発の列車は、最も駅舎側に位置するホームを使っている。
 野辺地を発車すると、大湊線の線路がカーブしていく。昨日近くまで行った釜臥山が陸奥湾のはるか先に見えた。昨日は八戸とあそこを5時間余りで往復したが、九州からやって来て、距離感がわかってないからこそできたようなものだと思った。八戸と大湊を往復するのは九州で距離的に考えれば、博多から熊本まで往復したのとほとんど変わらない。九州にいても、夕方から博多-熊本間を在来線で往復しようなどとは決して思わない。もちろん所要時間の差はあれど、それと同じことを昨日はやっていた。遠目から日本地図を眺めても八戸と大湊の位置は遠く離れているし、野辺地から見ても大湊は地平線の先である。
 野辺地から先しばらくは、ところどころ陸奥湾を見ながら走るが、その後は陸奥湾に突き出た夏泊半島を横切るので海は一旦見えなくなる。この夏泊半島に位置するのが平内町という町である。小湊という駅が平内町の中心駅でここからは車内も一気に混雑した。
 
 夏泊半島を横切ると再び海が見える。ここまでくると青森駅まではもう少しである。青森市へと入り最初に停車するのは、温泉地として知られる浅虫温泉駅である。青い森鉄道の青森市街の輸送の一端でもあり、朝夕は青森駅側からこの駅までの区間列車が運行されている。車窓の陸奥湾の対岸には昨日旅した津軽半島が見えており、その山の稜線からは一際高い山がひょっこりと顔を出していた。津軽を代表する岩木山。青森と弘前を隔てる山はそこまで高くないので、浅虫温泉からも岩木山が見える。列車は浅虫温泉を出てしばらくすると青森の市街地へと入っていった。各駅での乗り降りも多くなる。貨物の駅がある東青森、そして青い森鉄道移管後に開業した筒井を経て、列車は終点の青森へと到着した。
 
 八戸から青森まで普通列車を乗り通して、なんだか青い森鉄道を全線完乗した気分になる。しかし、実際にはまだ目時~八戸間が残っているので全線完乗ではない。未乗区間にはまた次回の旅で乗車する。八戸より南側の車窓も楽しみである。朝ラッシュの青森駅は、通勤通学客で混雑していた。乗車した列車は折り返し普通浅虫温泉行となったが、こちらの列車にも割と多くの乗客が乗り込んでいた。こうした各駅の日常の光景を見るのもまた旅の楽しみである。
 
 前日は早朝から龍飛崎へ向けて出発した青森駅に26時間ぶりに帰ってきた。駅前にはなにやら大行列ができていて、バスターミナルの建物を一周している。八甲田山の紅葉が見ごろでそこへ行く観光客だった。バス1台だととても運べない人数だと思う。続行便が出るのだろうか。数日前は今年一番の冷え込みとなった。日本一の積雪量を誇る酸ヶ湯温泉も、この数日前には積雪があったそう。もう北東北の山は冬を迎えていた。
 さて、4日間に渡って北東北エリアを巡ってきた今回の旅もいよいよ佳境。ここからは旅のゴールとなる秋田駅へ観光列車快速リゾートしらかみを乗り通し、五能線の車窓を満喫した。
 
次話