【旅行記】北東北の鉄道路線を巡る旅~快速リゾートしらかみ2号を乗り通す~
前話
八戸から青い森鉄道の普通列車で青森駅に到着した。ひたすら北東北の列車に乗ってきた今回の旅もいよいよ終わりが近づき、次に乗車する列車がこの旅で乗車する最後の列車となった。青森駅から乗車したのは、奥羽本線と五能線を走る快速「リゾートしらかみ」。美しい日本海を眺めながら走る観光列車として、国内だけでなく世界的にも有名なこの列車で、旅のゴールとなる秋田駅へと向かった。
快速リゾートしらかみに乗車して、昨年のリベンジを果たす
「リゾートしらかみ」は、秋田~弘前・青森間を奥羽本線、五能線経由で走る観光列車(JR東日本では、観光列車とは呼ばず乗ってたのしい列車と呼ばれている)で、国内に数多く走る観光列車の草分け的存在とも言える列車である。その名の通り、世界自然遺産に登録されている白神山地が広がる青森、秋田両県の日本海沿岸沿いを進み、北東北を代表する観光スポットの一つとして、鉄道ファンのみならず、旅行客にも人気の列車となっている。
実は昨年の旅でも「リゾートしらかみ」には少しだけ乗車しており、乗車するのはこれが2回目だった。本当は昨年の東北旅で青森駅から秋田駅まで全区間乗り通すつもりだったのだが、夏の大雨被害の影響で鰺ヶ沢~秋田間で運転を見合わせていたため、全区間での乗車を断念した。昨年の旅ではその代わりに津軽鉄道と弘南鉄道に乗車したが、五所川原から黒石へと移動する際に、この列車のお世話になった。昨年は残念ながら全区間で乗車することが叶わなかったので、今年こそは全区間で乗車したいと思っており、今回の旅の最終日にリゾートしらかみへの乗車を組み込んだ。

ホームへ行くとちょうど駅構内で入換を行った車両が入線したところだった。乗車するのは青森を8時9分に発車する快速リゾートしらかみ2号秋田行き。リゾートしらかみには先述の通り、「青池」「橅」「くまげら」の3つの編成があるが、今回も昨年の短距離乗車のときと同様に「青池」編成への乗車となった。今回はこの列車を終点秋田まで乗り通していく。所要時間は5時間15分。乗った人が皆よかったと口を揃える五能線。一体どんな景色が見れるのだろうか。天気もよく車窓も期待できそうなので、とてもワクワクしながら発車の時を待った。

ここで少し「リゾートしらかみ」の概要について書き留めておく。「リゾートしらかみ」は1997年に運行を開始した列車で、現在は臨時列車として秋田~弘前・青森間で1日最大3往復が運転されている。3往復のうち2往復は秋田~青森間、1往復は秋田~弘前間での運転となっており、秋田~青森間の2往復については、基本的に毎日運転となっている。この列車に使われる車両は全部で3編成あり、それぞれ「青池」、「橅」、「くまげら」という白神山地に由来した名前が付いている。以前は全編成がキハ40系を改造した車両だったが、2010年に青池編成が、2016年に橅編成がそれぞれ新型車両であるHB-E300系気動車へと置き換えられた。現在は比較的登場時期の遅かったくまげら編成だけがキハ40系改造車での運行となっている。どの列車にどの編成が使われるかは、JR東日本のホームページで発表されている。基本的には、2号・5号(青森-秋田-青森)が青池編成、1号・4号(秋田-青森-秋田)が橅編成、3号・5号(秋田-弘前-秋田)がくまげら編成で運行されているが、検査時などは車両の運用が変わることもある。全編成ともに4両編成で、全車指定席である(ただし特例により青森-新青森間は乗車券のみで乗車できる)。2号車はボックス席となっていて、海向きに半個室のボックスシートが並んでいる。それ以外の号車についても、シートピッチがかなり広く取られているのが特徴であり、2号車を除く各車両にはコモンスペースなども設けられている。列車によっては一部区間で、津軽三味線の演奏、語り部の話などの催し物も開催されている。

リゾートしらかみの座席はこんな感じである。シートピッチは恐らくグリーン車よりも広い。座席は通路よりも一段高くなっていて、窓が非常に大きい。座ったときに窓の下面が膝上くらいまである。窓は各座席で独立している。コモンスペースには乗車記念スタンプが置かれているほか、携帯充電用のコンセントがいくつかある(くまげら編成を除く)。
発車10分前になると徐々に座席が埋まり始めた。事前にシートマップを見ると、8割くらいは埋まっているようだったが、シートピッチがかなり広いので窮屈感はない。訪日観光客にも人気のようで、乗っていた車内の半数以上は海外からの観光客だった。
乗車記録 No.17
奥羽本線・五能線
快速リゾートしらかみ2号 秋田行
青森→秋田 HB-E300系「青池」
青森、新青森、弘前と乗客を拾い、折り返して川部へ

青森駅を発車した列車は青森駅南側のデルタ線をゆっくり走行し、次の新青森駅へと向かう。車内にはしらかみ3兄弟という曲をアレンジした車内チャイムが流れる。新青森でも多くの乗車があった。新青森を出ると次は弘前。特急つがるが停車する浪岡には停車しない。去年バスでも通った鶴ヶ島駅周辺を眺めて長いトンネルへと入り、大釈迦を通過すると、車窓には岩木山が見え始める。その後は浪岡を通過し、津軽平野の中を弘前へ向けて走っていく。この区間には2日前にも乗っているのだが、その時は夜間走行だったので、岩木山は見えなかった。
次第に岩木山が近づいてくると、沿線にはりんご畑が広がる。収穫期の真っ只中のリンゴの木には赤いリンゴが鈴なりに実っていた。岩木山は頂上まではっきりと見渡せる。岩手山はなかなかその姿を見せてくれないが、岩木山とは相性がいいらしい。
列車は五能線の分岐駅である川部駅を一旦通過する。川部駅の先には弘前駅がある。川部から直接五能線に入った場合、青森の3大都市の一つである弘前で乗降する乗客を取り逃してしまう。そのためリゾートしらかみは一旦分岐駅を通過して弘前駅まで行き、弘前で乗車客を拾った後、川部まで戻って五能線へと入る。分岐駅を通過する場合の特例により、青森・新青森から乗車して、川部より先の駅で下車する乗客の川部~弘前間の往復運賃は不要である。弘前に行く前と行った後の両方停車してしまうと、分岐駅を通過する列車に乗車する特例に引っかからないので、行く前は停車することができない。

一旦岩木山が車窓から遠ざかっていき、列車は弘前へと到着。ここでは何人かの乗客が乗車したが、乗車客が特段多いというわけではなかった。ここでは川部へ帰るため、進行方向が変わるが、逆向きになる時間が15分ほどと短いので、座席は回転しないという風になっている。車内放送でももう一度進行方向が変わりますと案内されていた。

弘前を逆向きに発車し川部へ戻る。今まで乗ってきた区間の途中の駅から五能線が分岐しているなんて知らないであろう海外からの観光客を中心に、車内は逆向きに走り出した列車に騒然とした。自分の座っていた席の前列の乗客も、座席を回転してほしいと話しかけて来たが、身振り手振りでこの先もう一回進行方向が変わると教えると、なるほどそういうことかという表情をしていた。こういう時、さっと英語で状況を伝えられるとかっこいいと思うが自分にはそんな英語力はない。英会話教室に通おうかと思った。リゾートしらかみはこの先、五能線の終点となる東能代でも、もう一度進行方向が変わる。全区間乗り通すと進行方向が3回も変わる珍しい列車である。現在運行している列車では最多回数だと思う。2回は岡山~徳島間の特急うずしおで見られる。2回も珍しいが、3回はなかなかお目にかかることはできない。
川部駅で再び進行方向を変え五能線へ

列車は川部に到着。ここで再度進行方向を変えて、東能代へ続く五能線へと入る。乗務員の運転台交換のために数分停車するとのことだったので、外へ出てみた。昨年の旅で五所川原からこの車両に乗り込み、路線バスに乗り換えた川部駅。まだ1年経っていないが、すでに変わった点がある。昨年まで使っていた駅舎が役目を終え新駅舎となり、駅員が配置されていた駅は無人化された。あの時はきっぷを記念に持ち帰るのに川部駅のスタンプを押してもらったが、今はもう押してもらうことはできない。旧駅舎はまだ残っていたが、撤去へ向けた作業が行われていた。

ここ川部駅にはかつてもう一つ分岐する路線があった。それが黒石まで走っていた国鉄黒石線である。川部駅の青森方で分岐し黒石駅まで結んでいた。1984年に弘南鉄道へと移管され、終点が国鉄黒石駅から弘南鉄道の黒石駅へと変更となる。しかし、その後も利用客の減少に歯止めがかかることはなく、1998年に廃止されている。昨年乗車した弘南バスの黒石-川部線は、この黒石線の廃止代替バスである。津軽鉄道から弘南鉄道を乗り継ぐにあたってはとても重宝した。
岩木山を車窓に広い津軽平野の中を走る

さて、列車は再び進行方向を変えて走り出し、奥羽本線から五能線へと入った。ここからは東能代まで全長147.2kmの五能線をおよそ3時間20分で走破していく。五能線に入るとすぐに線路の両側にはりんご畑が広がった。五所川原までは岩木山を進行方向の左側に見ながら、りんご畑の中を走っていく。五所川原までの間にも藤崎、板柳、陸奥鶴田と3つの停車駅があるが、見た限り乗り降りする人の姿はなかった。それぞれ藤崎町、板柳町、鶴田町と独立した町の中心駅なので停車しているのだと思う。進行方向の左手に見える岩木山はよく見ると、山の中腹だけ紅葉して赤くなっていて、山のてっぺんには少しだけ雪が積もっていた。山の麓は初秋、中腹は晩秋、山頂は初冬という感じだろうか。

列車は五所川原へと到着した。先述の通り、これまで走ってきた川部~五所川原間は昨年乗車済みだったので、ここからが五能線の未乗区間となる。駅を出たところで、昨年乗車した津軽鉄道の車両が見えた。昨年乗車した準急津軽中里行である。約11ヵ月前に五所川原に来た時と全く同じ時間にまた五所川原に来てしまった。昨年はあの津軽鉄道の車内から走り去るリゾートしらかみを見たが、今回はその逆をやっている。昨年は鯵ヶ沢行きだったので、4両で10人くらいしか乗客がいなかったが、今年はインバウンドも復活して賑わっている。津軽鉄道に乗り換える乗客も昨年より多いだろう。ちなみに12月になるとあの列車は津軽鉄道名物のストーブ列車となる。

五所川原駅を出た列車は、左へカーブして岩木川を渡る。その先は広い津軽半島の中を走っていく。五所川原から鰺ヶ沢間では、3号車コモンスペースで津軽三味線の演奏が実施された。他の号車にはスピーカーで演奏が披露され、車両に備え付けられたモニターに3号車の様子が映し出されるようになっていた。この間に停車する駅の到着放送は、車内自動放送が省略され、車掌の手短な放送のみになる。列車は駅舎が土偶になっている木造駅に到着。とはいえ駅の正面から見ないと土偶かどうかはわからない。津軽平野は本当に広い。海岸線に建っている風力発電の風車がとても遠くに見えた。

列車は鯵ヶ沢駅へと到着した。津軽平野の西の端に位置する鰺ヶ沢町の中心駅で、五能線の運行上の拠点駅の一つである。朝夕には弘前方面への普通列車が何本かここで折り返すので、ここから先は本数も減る。これまで広い平野を走ってきたが、鰺ヶ沢駅の直前から海が見え始める。ここからが五能線の絶景区間の始まりである。しかし、そう必死にカメラを構え続ける必要もない。2時間30分くらいはひたすら海の横を走り続けるからチャンスはいくらでもある。

鰺ヶ沢駅を発車してしばらくすると、いよいよ海を望む区間が始まる。ここから五能線はひたすらに日本海の海岸線に沿って走っていく。大きな窓には青い空と海が広がる。前日、龍飛崎へ行ったときは風も強くて海も荒れていたが、この日の日本海はとても穏やかだった。列車はどこまでも広がる青い海を車窓に、海岸線に沿って敷かれたレールの上をクネクネと曲がりながら走っていく。
15分の観光停車で千畳敷海岸を見学

鰺ヶ沢駅の次の停車駅は千畳敷駅である。この駅はその名の通り景勝地としても有名な千畳敷海岸に隣接する駅で、リゾートしらかみのお楽しみポイントの一つになっている。ここでは15分ほど停車時間が設けられているので、道を挟んで反対側に広がる千畳敷海岸を観光することができる。さっそく列車を一旦降りて海岸を見に行ってみた。

駅の前を走る道を横断して海岸へ行くと、そこには広大な岩場が広がっていた。千畳敷海岸の名前は、殿様が千畳の畳をここに広げて宴を開いたことに由来するそう。確かに千畳の畳が敷けそうなくらい平らな海岸である。しかし、実際に歩いてみると、まるで溶岩が広がったあとのような独特な模様と凹凸を作り出されていて、少し歩きにくい。長い年月をかけて岩場が海水に寝食されたのだろうか。自然が作り出した芸術とでも呼べそうな美しい光景だった。なんだか地球上ではなく、別の惑星にでも来たようなそんな感じがした。

その名の通り、岩場の面積は結構広いので、駅から海端まで歩いてくるには結構時間がかかった。天気が良くて、遠くには津軽半島の山の稜線も見えていた。15分しか滞在できないのがもったいないくらいの美しい景色。ここにござでも敷いて夕方までのんびり過ごしたい気分だった。春や秋の気候のいい日には朝の列車で来て夕方までぼーっとするのも楽しいだろう。

発車の3分前になると警笛が3回鳴らされ、これが発車の合図になる。千畳の畳が敷けるほど広いので、あまり遠くへ行っていると戻って来るのが大変なので注意しないといけない。海岸へ出ていた乗客が戻って来ると、列車は再び秋田駅へ向けて走り始めた。ここから先も車窓に日本海を見ながら進んでいく。
日本海の大海原を眺め、海岸線に寄り添いながら走る五能線

鰺ヶ沢駅から千畳敷駅の間で、列車は鰺ヶ沢町から深浦町へと入ってきた。深浦町は青森県の日本海沿岸で最も南に位置する町で、五能線はこれから秋田県との県境を越えるまで、この深浦町を走っていく。千畳敷駅を出てしばらくすると、線路と海岸の間を走っていた道路が線路の反対側へと移り、海岸が線路の目の前に広がった。この列車に乗車して、日本海を眺めることをずっと楽しみにしていたので、その念願がようやく叶った。五能線から見る日本海は想像の何倍も美しかった。

車窓を眺めているとなんだか泣けてくる。これまで海のそばを走る路線にはたくさん乗ってきたが、噂通り五能線から眺める日本海は群を抜いた美しさでだった。涙が出るほど美しい景色という表現に今までピンと来てなかったが、五能線のこの景色こそ、涙が出るほど美しい景色だとそう感じた。天気に恵まれたこと、計画通りに旅程を進められて、最終日のこの列車に計画通り乗車できること、そしてこの素晴らしい絶景に出会うことができたことに感謝せずにはいられない。むしろ、こうした景色に出会うと、心が勝手に感謝したくなる。こうした景色に巡りあえることこそが、鉄道の旅の醍醐味だと思う。

五能線の中間点とも言える深浦駅が近づいてきた。この駅に着く直前に車窓に広がる行合崎は、五能線の中でも特に景色がきれいな区間の一つとなっている。リゾートしらかみのチラシやポスターでもよく見かける海岸で、赤茶色の奇岩が美しい。列車もここではスビートを落として走るので、車窓からの景色を存分に楽しむことができた。

列車は深浦駅に到着した。鰺ヶ沢と同じく五能線の運行上の拠点駅の一つであり、ここから秋田県へと入った岩館駅までが五能線でも最も運行本数が少ない区間となっている。この駅では、秋田を朝に発車したリゾートしらかみ1号青森行とすれ違う。JR東日本のリゾートしらかみHPによれば、本来は橅編成で運転される列車だったが、この日は橅編成に車両故障が発生しており、急遽くまげら編成が運用に就いていた。この日のリゾートしらかみは3往復全てが運転される予定だったので、この列車の後を走るリゾートしらかみ3号は運休し、一般気動車による臨時快速が運転されていた。
世界遺産白神山地を車窓に青森県から秋田県へ

深浦駅を発車した列車は次にウェスパ椿山駅に停車する。現在は閉館した観光施設ウェスパ椿山が駅名の由来で、観光施設開業から5年ほど遅れて開業した駅である。当初はリゾートしらかみのみが停車する駅だったが、現在は普通列車も停車する駅になっている。近くには不老不死温泉という温泉があり、駅前にはそこへ行くシャトルバスが停車。何人かが乗り換えていた。
ウェスパ椿山を出た列車は次の停車駅である十二湖駅へ向けて走っていく。陸奥沢辺~陸奥岩崎駅間では、車窓に白神山地を望むことができた。この列車の名前にもなっている白神山地は、広大なブナの原生林が広がっており、1993年に屋久島と同時に世界自然遺産に登録されている。この区間は海側の車窓に白神山地を見れる貴重の区間である。次の十二湖駅はその白神山地の玄関口の一つとなっており、乗っている青池編成の由来となっている青池があるところでもある。十二湖駅の到着放送が流れると、車内の訪日観光客たちが降りる準備を始め、この駅で車内の大半の乗客が下車していった。この列車に乗ったインバウンドの乗客のお目当ては青池だったらしい。おそらくSNSで有名になっているのではないかと思う。日本人の自分でさえ、この旅行を企画するまで、知らなかった小さな駅で皆下車していく。ただの棒線の無人駅は到着した観光客であふれかえっていた。インバウンドが東京や京都といった定番観光地を巡るという旅行像は既に昔のものになっていていることを思い知らされた。

十二湖駅で多くの乗客が降りてガラガラになった列車は引き続き秋田へ向けて進んでいく。青森県内を走り続けて3時間30分あまりでようやく秋田県との県境に差し掛かった。この県境の手前がリゾートしらかみの車窓の中でも特に車窓が美しい区間として知られている。列車は海岸から少し高い場所を走っていく。ここは白神山地と日本海の境目であり、断崖絶壁の海岸線が続く。このあたりに来ると、車窓の先に男鹿半島も見えるようになった。晴れた日は写真のような絶景が広がる。荒天の日は恐らく高波と強風で荒れまくりだろう。海の隣を走る区間があれば、一段高い場所から海を望める区間もある。いろんな海の景色を楽しめるのも五能線の車窓の面白さの一つだと思う。

列車は秋田県へと入り、最初の停車駅である岩館駅に停車した。五能線の海が見える区間もあとわずかである。せっかくなので、コモンスペースへ移動し(と言ってもすぐ後ろだが)、海を眺めてみた。このスペースの窓は座席の窓より少し幅が広い。この大きな窓一杯に青い海が広がる。あきた白神駅に停車すると、まもなく五能線は海から離れ、能代駅へと向かう。鰺ヶ沢を出て以降は、平地がほとんどない海岸線を進んできたが、白神山地の南側へと到達すると平地も増える。海岸線には風力発電の風車が並んでいるのが見えた。
東能代で3度目の方向転換を行い、奥羽本線へ戻る

列車は能代駅を経て東能代駅へと到着。これで悲願だった五能線の全区間に乗車を果たすことができた。数時間前に青森~弘前~川部間で走行した奥羽本線と再び合流する。五能線は大館方面を向いて合流するので、ここでこの列車3回目の方向転換となる。東能代~秋田間はあと一歩のように見えるが、実は1時間近くかかる。弘前・川部と違って、ここでは座席の転換を行った。

今まで一番後ろだったのだが、東能代からは一番前の席になった。座席の前はコモンスペースなので、とても開放感があった。青森発車時に一番後ろになる席は、コモンスペースへの出入りはあれど、そこまで人の出入りが多くないので、個人的にはおすすめである。東能代からは森岳、八郎潟、追分と停車して秋田へ向かう。八郎潟周辺に広がる広大な田畑を見ながら奥羽本線を走っていった。

青森駅を発車して、5時間15分。列車は終点の秋田駅へと到着。リゾートしらかみを乗り通す旅が終わった。数年前から乗車できる日を楽しみにしていたリゾートしらかみ。五能線から望む日本海の車窓はとても美しく、鉄道旅の楽しさを改めて感じる5時間の乗車だった。今度は雪の季節や夕暮れの時間にも乗車してみるのも楽しいだろう。列車は再び青森へ向けて来た道を帰っていく。5時間かけて秋田駅までやってきたが、折り返してまた五能線の車窓を見たいと思うくらい美しい景色だった。

大館能代空港からスタートした今回の北東北の旅は、ここ秋田駅がゴールとなった。改札前では約1年ぶりに秋田犬の出迎えを受けた。昨年の旅でもゴールとなった秋田駅。毎回、この秋田犬に秋田の旅の満足度を聞かれている気がしてならない。昨年の旅も素晴らしかったが、昨年同様今年も100点、いや300点くらいあげたいくらい大満足な旅だった。
さて、秋田駅からは空港バスで秋田空港へ。秋田空港からはANAの羽田便で羽田空港へ向かい、そのまま乗り継いで九州へと戻った。全日程とも遅延等なく旅程を進めることができたことを感謝したいと思う。
終わりに
今回の旅は、北東北の未乗路線に乗車することが第一の目標だった。1日目の花輪線からスタートし、山田線、秋田内陸縦貫鉄道、津軽線、大湊線、青い森鉄道、五能線と北東北の各線を巡り、無事に予定していた全ての路線に乗車することができた。当初の計画で乗車予定も、運休で乗車することのできなかった青函トンネル記念館のケーブルカーは、現時点で来年以降の運行がどうなるかは決まっていないが、運行が再開された際には早めに乗車しに行くつもりである。また、代行バス乗車で暫定的に乗車扱いとした津軽線についても、今後の動向は注視したいと思っており、状況は厳しいが鉄道での再開が決まれば、再度乗車しに行く。東北には次回の旅でも訪れるので、さらに未乗路線の乗りつぶしに挑んでいく。一方、道中では、奥津軽いまべつ駅や快速しもきた、リゾートしらかみなど、鉄道ネタとしても定番とも言える駅や列車を楽しむことができた。ネット上では利用者の少なさばかりが誇張されている奥津軽いまべつ駅は、確かに利用客が少なかったが、小さいながらも奥津軽エリアの玄関口としての役割を果たしている様子をうかがい知ることができたし、何より龍飛崎から20分ほどの場所に新幹線の駅があるというのは使ってみてとても便利だった。
今回の旅は自分の旅にしては珍しく割と観光要素が多い旅だった。秋田犬を間近に見ることができた大館、武家屋敷が立ち並ぶ街並みが美しかった角館、さらには津軽海峡・冬景色でおなじみの龍飛崎など、北東北の定番とも言える観光地をいくつか巡ることができ、乗りつぶしだけでなく、観光という面でも充実した4日間の日程だった。東北地方の鉄道路線の乗りつぶしはまだまだ道半ば。次回も観光要素は少なめだが、再び東北へと赴く。
・今回初めて乗車した路線
【鉄道路線】
JR東日本 花輪線 大館-好摩
IGRいわて銀河鉄道 いわて銀河鉄道線 好摩-盛岡
JR東日本 山田線 宮古-盛岡
秋田内陸縦貫鉄道 秋田内陸線 角館-鷹巣
JR東日本 津軽線 青森-三厩(蟹田-三厩間バスによる代行輸送)
JR東日本 大湊線 野辺地-大湊
青い森鉄道 青い森鉄道線 八戸-青森
JR東日本 五能線 五所川原-東能代
【バス路線】
秋北タクシー 大館能代空港リムジンバス 大館能代空港-大館駅前
岩手県北バス 106特急 盛岡駅東口-宮古駅前
【航空路線】
ANA 羽田空港-大館能代空港
ANA 秋田空港-羽田空港
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