【旅行記】JR東海未乗路線と箱根エリアの鉄道路線を巡る旅~御殿場線と東海道本線をゆく~

前話
 
 新宿から特急ふじさんに乗車して終点の御殿場駅で下車した。特急ふじさんは御殿場線の中間部分の松田~御殿場間を走る。両端に未乗区間を残しているので、ここからは一旦起点の国府津へ行き、そこで折り返して沼津へ向かった。

箱根、富士山両エリアの観光拠点の一つ御殿場駅

 御殿場線は御殿場を境に運転本数が異なる。御殿場から沼津間は日中でも1時間に2本の普通列車が設定されているが、国府津方面は1時間に1本となっている。ちょうど特急ふじさんがこの駅に着いた時にすれ違う形で国府津行きの列車が出ていったので、御殿場駅では次の列車まで約1時間の待ち合わせとなった。
 御殿場駅は富士山がある北西方向の出口を富士山口、反対側の箱根側の出口を箱根乙女口といい、両方にロータリーが設置されている。繁華街側となるのは富士山口。道を挟んで向かい側にはホテルや飲食店が立ち並んでいる。こちらのロータリーはとても手狭で、バスのりばは主に富士急グループのバスが使い、河口湖駅、三島駅、駿河小山駅などへの路線バスと市内循環バス、富士急と共同運行会社が運行する高速バスが発着している。一方、箱根乙女口はその名の通り箱根側に位置し、箱根方面へ向かう小田急グループの路線バスと、小田急と共同運行会社が運行する東京方面への高速バスが発着する。ただし、時間帯によっては箱根へ向かうバスは富士山口から出ているほか、富士急グループの路線バスも路線によっては箱根乙女口側から発車するので、のりばがどこかはバスに乗車する前にしっかり確かめておいたほうがよさそうだった。
 
 駅前には居酒屋やカラオケ店になどが立ち並んでいる。通りの奥には富士山が見えた。ちょっと写真では表現しきれなかったが、奥のマンションの横の白い雲のようなものは富士山である。富士山の頂上付近から箱根の外輪山までが市域となる御殿場市。したがって富士山の見えている部分もまた御殿場市の一部となっている。
 

普通列車で御殿場線の起点国府津駅へ

 御殿場駅からは沼津から到着した国府津行きの普通列車に乗車し、国府津へ向かった。沼津からやってきたのは313系N編成3両編成。静岡ではおなじみのロングシートの313系である。御殿場線では313系と211系が活躍している。このうち313系は3両編成のロングシート車と2両編成のセミクロス(ボックス配置)車が運行されている。3両編成の場合は車掌が乗務する一方、2両編成の場合はワンマン運転となる。ボックスシートの方が景色を楽しむことができるが、御殿場線は利用者が少ない路線ではなく、相席となって窮屈になる可能性の方が高いので、ロングシートの方がいいかもしれない。なお、今年3月のダイヤ改正以降は、転換クロスシートの2両編成が神領車両区から静岡に移籍となったそうで、この車両による運用も増えているらしい。
 
乗車記録 No.2
御殿場線 普通 国府津行
313系 御殿場→国府津
 
 御殿場を発車した列車は、御殿場の市街地をあとにして、山間の景色の中を進んでいく。特急ふじさんでは北側の車窓を眺めたので、今度は南側の車窓を眺めてみた。並行する川は御殿場線の北側を通る区間が長いので、山間部区間ではそちらの方が眺めはいい。谷峨駅を出ると、次の山北駅との間で酒匂川を2回渡る。
 
 山北駅を出ると、足柄平野を一段高い場所から眺めて走る。奥に見えるのは箱根の外輪山。車窓左手の奥側が小田原方向で、この外輪山の麓には伊豆箱根鉄道の大雄山線が走っている。列車は松田駅に到着。ここでは車内の半分くらいの乗客が降りていき、すれ違った反対列車には多くの乗客が乗り込んでいた。普通列車で移動する場合も、基本この駅で小田急と御殿場線とを乗り継ぐ人が多いようだ。松田駅を出て川音川を渡ると、その先は国府津駅の手前まで、ほぼ直線的にレールが敷かれている。下曽我駅を出ると、車窓の右手にはJR東日本の国府津車両センターが見える。東海道線だけでなく、湘南新宿ラインや上野東京ラインを介して、高崎線、宇都宮線で運行される車両が所属する大きな車両基地である。留置されている車両の中には、鶴見線で活躍していた205系の姿もあった。新型車両E131系に置き換えられて、この場所に留置されているのだろうか。この車両基地の横を通り抜け、車両基地への回送線と合流すると、最後に東海道本線の上り線の線路を越えて国府津駅へと到着する。駅到着直前には、湘南の大海原を車窓に見ることができた。
 

東海道線東京口の運行拠点、国府津駅で折り返し

 国府津駅に到着。ここが御殿場線の起点駅である。乗ってきた列車でそのまま折り返すが、折り返し時間が30分ほどあるので一旦駅の外へ出てきた。国府津駅は3面5線の大きな駅。このうち3番線を御殿場線が使い、それ以外を東海道本線の列車が使う。国府津車両センターがあるため、東海道本線の列車にはこの駅が始発・終着となる列車も多数設定されている。国府津駅は小田原市の駅で最も東に位置する駅である。
 実はこの日の宿泊地は小田原駅前。したがって、今現在宿泊地である小田原市に既に到着している。しかし、まだ御殿場線を完乗するという目的は果たされていないので、ホテルには向かえない。それどころか、ここからもう一度静岡県を経由して、小田原へ向かうことになる。御殿場線、東海道線経由の国府津→小田原の乗車券を改札機に投入して再び御殿場線ホームへ戻る。同じ小田原市内の2つの駅間は、純粋に直行するならたった200円。しかし、沼津を経由すると1980円になる。ここからは箱根の外輪山の外側をぐるっと一周し、100km以上先の近くて遠い小田原駅を目指していく。
 

御殿場線の普通列車を始発から終点まで乗り通す

 再び、御殿場から乗車してきた車両にお世話になり、折り返しの普通列車沼津行きに乗車。今度は終点の沼津まで乗り通す。国府津駅では御殿場線経由のほか、東海道本線でも沼津行きが運転されている。国府津~沼津間の所要時間は東海道線経由が約50分に対し、御殿場線経由は1時間30分かかる。東海道本線は日中熱海で乗り換えとなるが、いくら1本で行けるからと言っても、この駅からわざわざ御殿場線を選択して静岡方面に向かう人は少ないだろう。御殿場線の列車の中には沼津から先、東海道本線に直通する列車が存在する。多数派は沼津で折り返して三島へ向かう列車で、朝夕を中心に複数本設定がある。一方、早朝の1本だけは富士・静岡方面に直通する列車も存在している。この駅を6時35分に発車する普通静岡行きは、神奈川県内から静岡駅を1本で結ぶ唯一の存在となっている。
 発車時間が近づいてきたので、列車に乗車し発車を待つ。東海道線は10分に1本前後の本数があって慌ただしいが、こちらはとてものんびりしている。発車の10分ほど前にやってきた列車は1番線発着だったが、数分で接続する列車は2番線に入線し、対面での接続となった。時刻表を見ると、接続の東海道線と乗車中の御殿場線列車は同時刻の発車。東海道線からの乗り換え客が乗り込むと、東海道線の列車とほぼ同時に発車。東海道線の長い車両が小田原方面へ走っていくのを眺めながら、列車は沼津へ走り始めた。
 
乗車記録 No.3
御殿場線 普通 沼津行
313系 国府津→沼津
 
 国府津から御殿場間は来た道を帰る。松田~御殿場間はこの日3回目の乗車となった。3回も乗車すれば景色もだいぶ覚える。松田では小田急からの乗客を拾い、再び山間の景色の中を走って御殿場へ戻った。
 
 国府津から50分ほどで御殿場に到着。国府津や松田から乗車した乗客の大半はこの駅で下車して行き、ほとんどの乗客が御殿場で入れ替わった。ここからは未乗区間へ突入する。御殿場から先の御殿場線は終始下り坂となる。車窓の左手には箱根の外輪山を、右手にはしばしば富士山を眺めて走る。御殿場と沼津との間には裾野市があるほか、沼津に着く手前では、三島市に隣接し市街地が連続している長泉町を通過する。最初は田畑が広がる景色の中を走る区間も多いが、裾野駅付近からは住宅が立ち並ぶ中を走っていく区間が増えていった。
 
 長泉なめり駅から長泉町に入った列車は、その次に下土狩駅に停車する。この駅から三島駅は徒歩20分ほどと近い。三島始発で運転される御殿場線列車をあえて三島で乗り逃して、走って下土狩で追いつく下土狩ダッシュにチャレンジしていたYouTuberがいたのを思い出す。三島駅の新幹線口からだと駅前の交差点を左折し、あとはまっすぐ歩くだけで下土狩に着くことができる。この駅から沼津までは東海道本線と付かず離れずの場所を走っていく。長泉町と沼津市の境を流れる黄瀬川にかかる鉄橋付近では東海道本線の線路が目と鼻の先に見える。大岡駅を発車すると、やがて沼津駅の構内へと入り、留置線の脇を通って終点の沼津へ到着した。
 
 御殿場線の終点沼津駅に到着し、ようやく御殿場線の完乗を果たすことができた。これで残すJR東海の未乗路線は身延線の1路線となった。
 沼津駅は昨年の静岡乗り鉄旅で訪れて以来約1年ぶりの訪問。この昔ながらの駅の雰囲気がとても好きなのだが、高架化が計画されており、完成はしばらく先になる見込みだが、いずれは地上駅ではなくなる予定となっている。

211系を2本乗り継いで熱海へ

 さて、1日目の宿泊地は小田原である。ここからは東海道本線で小田原駅へ向かう。わざわざ国府津で折り返し、大回りで小田原へ向かうルートにしたのは、東海道本線にも乗車したかったから。東海道本線は最初に乗車してから結構な年月が経っており、乗りつぶしという趣味を本格化させて以降、もう一度乗車するというのを課題にしていた。これまでの旅で、西からは三島まで、東からは小田原まで再履修が済んでいて、三島-小田原間が残っている。1日目の最後は、東海道本線の最後の再履修区間を走行して宿泊地の小田原へと向かった。
 
 沼津からは熱海行きがバンバン発着している。しかし、御殿場線の列車の隣に魅力的な列車が停車していたので、先発の熱海行きがあるのをあえて見送って、その列車に乗車した。乗車したのは沼津発三島行の普通列車。一駅区間のみ運行される普通列車だった。
 沼津と三島の間は、この区間だけで運行される区間列車が何本か運転されている。この列車はそのうちの1本。使用されていたのは313系と211系の6両編成。熱海行きが15分に1本ほど走っている中、その間を縫って走っているので、当然利用客はほとんどおらず、快適に三島へ移動することができた。
 
乗車記録 No.4
東海道本線 普通 三島行
313系+211系 沼津→三島
 
 三島駅に到着。10分ほどでやってくる後続の熱海行きの普通列車を待つ。沼津駅で御殿場線から東海道本線の熱海行に乗り換える場合は、基本階段を使ったホーム間の移動が発生するが、対面で待ち受けていた沼津発三島行きを使うと三島駅で熱海行きと対面で乗り換えられるので、結局階段を一度も使わずに御殿場線から熱海行きへ乗り換えられた。三島駅はJR東海のほかに伊豆箱根鉄道駿豆線が乗り入れている。駿豆線には昨年の旅で乗車しており、約1年ぶりの再会だった。
 
乗車記録 No.5
東海道本線 普通 熱海行
313系+211系 三島→熱海
 
 三島からは普通列車熱海行きに終点の熱海まで乗車した。沼津から211系を2本乗り継いで熱海までやってきた。現在、東海道本線の静岡地区では、315系の導入が予定されている。この315系によって211系が順次置き換えられていく予定となっている。近い将来にはJR東海で最後まで211系が残った静岡地区からも姿を消すことになる。もしかしたら、次静岡に来た時にはもうその姿はないかもしない。後悔しないためにも乗れる時に乗っておきたい。
 

初めて降り立った熱海駅

 関東近傍の温泉地、そして別荘地としても知られる熱海に到着。実は熱海駅に降り立ったのはこれが初めて。かなり前にこのあたりの東海道本線に乗車したときはこの駅を経由して東京方面に向かう列車に乗車したので、乗り換えを含めて初めて下車した。東海道本線においてはJR東日本と東海の境界に位置するこの駅。在来線では東海道本線の他に伊東線も乗り入れており、伊東でつながる伊豆急行の車両もこの駅までやってくる。東海道本線の東京方面発着の列車は、朝夕を中心に沼津・伊東の両方向にそのまま直通している。在来線部分はJR東日本の駅であり、静岡感は211系や313系の姿がある以外にほとんどない。一方、この駅には東海道新幹線も乗り入れている。東海道新幹線部分はJR東海の駅だが、新幹線口が存在しないため、JR東日本の改札から入り、その先で新幹線改札口を通らないと新幹線ホームにたどり着けない特殊な構造をしている。同一会社であれば福山駅などでも見れる構造だが、在来線と新幹線が別会社の駅としてはとても珍しい。
 
 日曜の夕方ということもあって、駅はとても賑わっていて、これから東京へ帰る人たちでごった返していた。ここから東京駅までの所要時間は新幹線で45分。普通列車だと1時間40分ほと。都内から近すぎず、遠すぎず、小旅行として訪れるのにちょうどいい。山の斜面に市街地が形成されている熱海の街。駅周辺も背後には山が迫っている。せっかくだし、駅の周辺を散策して観光気分を味わってから小田原へ向かうことにした。
 

熱海の街をちょっとだけ散策

 熱海駅の西側には、仲見世商店街と平和通名店街という2つのアーケードがある。まもなく日が沈むこの時間も2つのアーケードはたくさんの観光客で賑わっている。その先には温泉旅館が軒を連ねている。いかにも温泉のある街の繁華街という雰囲気だった。
 
 本当は駅前だけ見て駅に戻るつもりだったが、坂を下っていたら、いつの間にか海岸までやってきてしまった。夕暮れの熱海の海岸線。海が見えると見に行きたくなってしまう。ここは熱海サンビーチと呼ばれる海岸。その端にある歩道橋の上からは熱海の街が一望できた。奥の山の上には熱海城が見える。砂浜では観光客が思い思いの時間を過ごしている。夏になると海水浴客でにぎわうらしい。
 
 沖合を見ると2つの島が見えた。左側に見えるのは熱海から10kmほど沖合に浮かぶ初島という島である。静岡県は海に面していながら、島がほとんどない県である。この初島は静岡県で唯一の有人島として知られ、200人ほどが暮らしている。手前を行く船は初島へ向かう定期船である。
 一方、右側の遠方に見えるのは、伊豆大島である。熱海からは大体40km離れている。伊豆諸島の一番北に位置する島で、本州では伊豆半島が最も近いが、東京都に属する島である。九州から東京へ行くときは、この島を飛行機の機窓に眺めることが多い。伊豆大島にも空港があるが、羽田空港からではなく、調布飛行場からの飛行機が就航している。
 行きが下り坂ということは帰りは駅まで上り坂となる。いつもであればここまで来たことを帰りの上り坂で深く後悔することになるが、今回はそんなことはない。海岸線に沿って走る道路は熱海駅へ向かうバスがたくさん通っている。お宮の松バス停から東海バスの熱海駅行きへ乗り込んで、バスの力を借りて上り坂を登り、熱海駅へと戻った。
 

熱海から普通列車で宿泊地の小田原へ 

 熱海からは東海道線の普通列車で宿泊地の小田原へ、東海道本線の最後の再履修区間を進んでいく。残念ながら熱海駅を出たところで夕暮れとなり、海の景色はほとんど見えなかった。しかし、この区間には翌日もまた乗車するので問題はない。熱海駅にもまた明日訪れる。乗車した列車は高崎線直通の前橋行だった。前橋までの所要時間は4時間20分。目の前にロングラン列車を見ると、終点まで行ってみたくなってしまうが、それは今後の宿題にとっておく。
 
乗車記録 No.6
東海道本線 普通 前橋行
E231系 熱海→小田原
 
 熱海駅から20分で小田原に到着。5年以上に渡って続けてきた東海道本線の再履修もこれでひと段落となった。1日目の行程はここで終了。ここから電車で8分の国府津を出発したのは4時間前の話。他県を経由して同じ市内の駅間を移動する旅。いろんな景色が楽しめて面白かった。
 1日目は箱根駅伝スタート地点の見学から始まり、特急ふじさんへの乗車、御殿場線の乗りつぶし、そして東海道本線の三島~小田原間の再履修と、密度の濃い1日を過ごすことができた。この日は小田原駅前のホテルに一泊。今回がはじめての神奈川県内宿泊となった。2日目はJR東海の未乗路線を乗りつぶす旅は一旦お休みして箱根へ。登山電車をはじめとする箱根エリアの乗りものに乗車しにいった。
 
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