【旅行記】JR東海未乗路線と箱根エリアの鉄道路線を巡る旅~国道1号線を走る路線バスで小田原から三島へ~
前話
十国峠でケーブルカーに乗車した後、バスと列車を乗り継いで、この日のスタート地点となった小田原に約9時間ぶりに帰ってきた。ここからは、この日の宿泊地である静岡へ向けて移動していく。
箱根駅伝5区、6区と同じルートを走るバスで元箱根へ
2日目の前半は、箱根ゴールデンコースを辿っていた。その後、元箱根港で一旦このコースを離脱したが、ここからは再度ゴールデンコースに復帰する。と言ってもさきほどと向きは逆向きとなる。小田原駅から元箱根港まで路線バスに乗車すれば、きれいな一周ではないものの、ゴールデンコースの全ての乗りものに乗車したことになる。ぐるっと一周するルートにしなかったのは、十国峠へ向かうバスの本数との兼ね合いが主な理由。加えて、夕方にあえて山を登るルートとすることで、都心へ帰る混雑や渋滞を回避する作戦だった。元箱根に到着し、ゴールデンコースを踏破した後は、バスを乗り継いで三島へ向かう。小田原から国道1号線を経由して、東海道最大の難所と言われた箱根越えを体験してみる。箱根でバスを乗り継ぐこのルートはいつかやってみたいと思っていたので、今回の箱根の旅に無理やり組み込んだ。

小田原駅から乗車したのは、箱根登山バスの箱根町線箱根町港行き(写真は元箱根で撮影した乗車バス)。国道1号線を経由し、箱根駅伝の5区・6区と同じルートを走っていくバスである。今回の旅は1日目の最初に大手町で、箱根駅伝のスタート地点を見学。この日も箱根町港でゴール地点を見て、箱根駅伝ミュージアムを見学するなど、箱根駅伝にまつわる場所を巡っている。やはり箱根駅伝と言えば、箱根の山に挑む5区・6区が見どころ。ランナーがどんなところを走っているのかというのは、交通マニアとしてずっと気になっていた。さすがに同じコースを走るわけにはいかないので、同じルートを走る路線バスに乗車して、箱根の山登りを体験してみる。
小田原駅から箱根方面へは箱根登山バスと伊豆箱根バスの2社が路線バスを運行している。このルートのバスがゴールデンコースの一翼を担っているということもあり、箱根では一番メジャーな路線なのではないかと思う。小田原駅からはこのほか、仙石原、桃源台、大涌谷、箱根園など、箱根エリア各地への路線バスが多数発着しており、箱根湯本と同じく箱根の玄関口の役割を担う。ただし、箱根湯本が起終点駅となる箱根新道、旧街道経由の路線もあるので、すべてのバスが小田原までやって来るわけではない。箱根は路線バスがたくさん走っているエリア。数日使って箱根の路線バスに乗車しに行くだけの旅なんていうのも楽しそうである。
乗車記録 No.19
箱根登山バス [H]箱根町港行
小田原駅東口→元箱根港

小田原駅でバスを待っていると、乗客の何人かがバス停に配置された係員に声をかけていた。皆、隣のバス停のバスとどちらが早いかを質問していた。箱根へ向かうバスは、箱根登山バスと伊豆箱根バスの2社が運行しているが、会社によって、また路線によってものりばが異なる。小田原駅を発着する箱根方面の路線バスは、小涌園あたりまではどれも同じところを通っていく。そのため、近距離利用の乗客は、どこののりばのバスが一番早いのかを尋ねていた。箱根だからこその光景かもしれない。
小田原駅では座席の半分くらいが埋まる状態で発車。自分と同じ観光客の姿もあったが、多くは沿線住民のようだった。小田原駅を発車すると小田原駅前の道を直進し、市街地を通り抜けて箱根方面へ。途中で国道1号線が国府津方面から合流して来ると、その後は国道1号線をひたすら走っていく。早川と合流し、反対側の車窓には、朝通った箱根登山鉄道の線路を見ながら走る。風祭駅前のかまぼこ店周辺が、箱根駅伝において4区から5区、そして6区から7区のランナーへ襷がつながる小田原中継所である。正月のテレビに映る箱根登山鉄道モハ1形の展示車両が、バスの車窓からも見えた。その後は箱根新道との分岐点を経由し、箱根湯本駅へ到着した。途中で車が単独事故で大破していたが、大丈夫だっただろうか...。

夕方の箱根湯本駅は、これからロマンスカーで都心へ帰る人たちで賑わっていた。朝、この駅前を歩いたときは、ほとんど人がおらず、観光地の賑わいを感じることができなかったので、バスの車窓から箱根湯本の街のにぎわいを眺める。観光地で混雑に飲まれるのは好きではないが、賑わっている様子を見るのはとても好きである。
箱根湯本は日常的に渋滞が発生する場所である。この道に面して、お土産屋やカフェ、飲食店が立ち並んでいて、横断歩道が多数設けられている。観光客が多い時間帯は、横断歩道を渡る人が多く、車の流れが悪くなる。もちろん歩行者優先なので、車は譲らなければならない。ただ、この渋滞の長さを見るに、横断歩道より押しボタン式信号とか歩道橋の方がいいような気がするのだが、設置できない事情があるのだろうか。

箱根方面の下り線も箱根湯本の手前から渋滞していたが、箱根湯本の街を出るとすぐに解消し、ここからバスは本格的な箱根の山登りに挑んでいく。一方、上り線は箱根湯本を先頭に延々と渋滞しており、大平台のヘアピンカーブのあたりまでつながっていた。時刻は16時過ぎで、これから車で横浜や東京方面に帰るには最適な時間。この時間は、路線バスも各方面から多数運行されていて、30台に1台はくらいはバスなんじゃないかというくらいによくすれ違った。
写真の場所は、もともと函嶺洞門という洞門を国道1号線が潜っていた場所。2014年にそれを迂回するバイパスが完成したため、現在洞門は使用されていない。箱根駅伝のルートも2014年の大会まで洞門を経由していたが、2015年以降はバイパスを経由するルートに変わった。函嶺洞門は2015年に重要文化財に指定され、現在まで保存されている。車窓の反対側には、洞門を見ることができた。

坂道をひたすら登り続けるバス。塔ノ沢の先では、登山鉄道の早川橋梁の下を通り、その先大平台では、箱根駅伝でもおなじみのヘアピンカーブを曲がって、どんどん標高を上げていく。バスもエンジンを唸らせて走っていくこの道を、5区のランナーは走って登って行く。テレビ中継ではどれくらい登っているのかというのが、あまりよく分からないが、実際にこの道を通ってみると、いかに過酷な区間なのかということがよく分かる。普段全く運動しない自分からすれば、もちろんいい意味で、同じ人間だと思えない。それと同時にこの区間を走ることに憧れるランナーの気持ちが分かる気がした。この山を制したときの達成感というのは、格別のものだろうと思う。
バスは大平台を経由し、宮の下に到達。箱根駅伝でも定点映像で登場する宮の下の旅館街。お正月、沿道に詰めかけたたくさんの観客の声援を受けて、ランナーが走り抜ける光景が目に浮かんだ。

宮の下を通過すると、強羅・仙石原・御殿場方面に向かう国道138号線が別れていく。その先で国道1号線は蛇骨橋という橋を渡る。車窓の左手の山の斜面には箱根登山鉄道が走っていて、急な斜面を橋でかわしているのが見える。箱根登山鉄道は、2019年に関東で猛威を振るった台風19号で被災した。その際にこのあたりでは大規模な土砂崩れが発生して、長期間の運休を余儀なくされた。箱根に欠かせない足である箱根登山鉄道の運休は、この地域の観光にとっても大きな痛手。そのため、橋の建設は急ピッチで進められ、当初1年とされていた運休期間を大幅に短縮し、被災から9か月後に運行を再開している。
この橋の先で国道1号線は箱根登山鉄道とクロスし、小涌谷踏切を渡る。午前中はこの踏切を電車に乗車して通ったが、今回はバスで通る。箱根駅伝の名物であるこの踏切。京急蒲田駅が高架化され、踏切が廃止されて以降は、箱根駅伝コースにおける唯一の踏切になっている。

バスは小涌谷を進んで、小涌園に到着。ここは箱根の一大リゾート施設として有名な小涌園がバス停周辺にあり、ホテル・旅館・レジャー施設が広がっている。バス停が停車するこの場所は、箱根駅伝でもとても有名な場所。5区の定点の一つで、定点カメラが走り抜けるランナーたちを映し出す。沿道の応援も賑わう場所で、このあたりのマスコットたちも応援に駆け付ける場所である。
このバス停がある交差点では県道734号線が分岐している。この国道は早雲山を経由して、大涌谷方面へ向かう県道である。伊豆箱根バスの大涌谷・箱根園方面のバスはここから県道の方へ進んでいく。また、小涌園内を始発に仙石原や御殿場へ向かう箱根登山バスの路線もあり、バスの乗り継ぎ点にもなっている。
小涌園を通過してもなお、国道一号線は上り坂が続く。ここまでは塔ノ沢、大平台、宮の下、小涌谷と温泉旅館が立ち並ぶエリアを通ってきたが、ここから先、芦之湯までは温泉街と呼べる場所はなく、ひたすら山道を登って行く形になる。芦之湯で一旦下り坂となり、その先で再び山を登ると、そこが国道1号線の最高地点。標高は874mで、800m以上の山登りも、ついにここで終わる。その先は一転、芦ノ湖へ向けた下り坂になる。5区の山登り区間は案外この山下りの部分が肝になるんだとか。登りと下りでは走り方が変わるので、下り坂にも対応できないとこの区間は走れないらしい。
坂を下るとやがて、芦ノ湖が見え、元箱根に到着。5区のゴールは箱根町だが、ゴール地点は午前中に既に見学済みなので、次のバスの始発点となる元箱根港でバスを下車した。箱根駅伝を走るランナーのすごさを感じたそんなバス旅だった。
数時間ぶりに再びやってきた元箱根でバスを乗り継ぐ

本日2度目の元箱根港に到着。時刻は17時前で、海賊船の運行は終了済み。道向かいのバスターミナルには、これから箱根湯本や小田原へ帰る観光客の長蛇の列ができていた。元箱根港は今乗ってきた経路で走るバスと、箱根新道を経由するバスの2つのバスが発着している。やはり所要時間の短い降車の方が人気のようで、多くの乗客がバスに乗り込んでいた。ここまですれ違うバスの多くで立ち客が発生していて、各バス停でも多くの人がバスを待っていた。乗車したバスは終始5割ほどの乗車率。夕方にあえて山を登り、混雑を回避する作戦は成功だった。

芦ノ湖を眺めつつ、次のバスを待つ。日中は晴れていた芦ノ湖周辺も、この時間には雲が湧いてきていた。風も出てきて穏やかだった湖も波立っていた。元箱根港のバス停はかなり手狭。ここを始発とするバスは、駐車場にバックで入って来るが、前の道路から直接バックしないといけないので、交通整理が大変そうだった。やはり箱根湯本・小田原駅方面のバスだけが極端に混雑しているので、夕方から都心へ帰るなら、別の作戦を考えた方がよさそう。フリーパスを持っているなら、箱根町線の始発の箱根町港へ移動して、そちらで折り返した方が確実に座れるだろうし、伊豆箱根バスを使うのも手だと思う。
東海バスの三島行きで静岡側へ山を下りる

元箱根からはバスを乗り継ぎ、東海バスの三島駅前行きで三島へと向かった。引き続き国道1号線を経由して、今度は山を下りていく。箱根湯本・小田原方面、そして御殿場方面のバスが満員に近い状態で発車していく中、このバスに乗車したのはたったの5人ほど。この時間にここにいる人の多くは、都心に帰る人たちか、箱根エリアに宿泊する人たちということになる。訪日観光客も三島へ抜ける人はほとんどいないので、穴場な路線になっている。新幹線代はかかるが、三島から新幹線で都心へ帰るというのも、箱根観光で混雑を回避する手の一つかもしれない。東海バスは小田急グループで、三島・沼津、熱海のほか伊豆半島周辺で路線バスを運行している。小田急グループのバス会社なので、三島-箱根線に限って、箱根フリーパスが使用できる。小田原から三島へ抜けるのにフリーパスの提示だけで行けてしまう。箱根フリーパスはなんて便利なのだろうか。
乗車記録 No.20
東海バス 三島駅行
元箱根港→三島駅

元箱根を出たバスは、箱根町を経由して、昼間に乗車した熱海行きの伊豆箱根バス同様箱根峠へ向かう。観光客でにぎわっていた箱根町も既に閑散としていて、乗車する人の姿はなかった。熱海行のバスは、箱根峠から県道へと入ったが、三島行きのバスは引き続き国道1号線を走る。峠を越えて後は、奥に三島や沼津の街を眺めながら、急な下り坂を下っていった。バスはずっとバイパスを走っていくのではなく、何度か交差点を曲がって、旧道を走っていく。路線バスならではの光景と言える。三島の観光地の一つである三島スカイウォークでは、何人かが乗車。おそらくここで働く人たちだろうと思う。その後はしばらくバイパスから離れ、昔からの東海道を走っていく。沿線からは何人かが乗車し、三島市街地で下車していった。車窓の右手には時折富士山が顔を覗かせた。

三島の市街地に到達したことには完全に日が暮れた。三島の繁華街を経由したバスは終点の三島駅に到着。いろんな移動の仕方がある神奈川-静岡間の移動。今回は路線バスを乗り継いで、東海道、そして国道1号線が走る箱根越えを体験してみたが、箱根の山の険しさと、なにより箱根駅伝のランナーのすごさを感じることができた。箱根周辺には多くのバス路線がある。次回、箱根に来るときには、今回乗車しなかった路線バスにも乗車してみたい。12時間近くかけて様々な乗り物に乗車した今回の箱根の旅はこれにて終了となった。
東海道線の普通列車で静岡へ

三島からは東海道本線の普通列車で、この日の宿泊地の静岡駅へ向かった。直通列車もあるが、ちょうど東京方面からの沼津行きがやって来る時間だったので、まずはそれに乗車した。昨年2月にこのあたりへ来た際に目撃したJR東日本からの直通列車。今回が初めての乗車だった。
乗車記録 No.21
東海道本線 普通 沼津行
三島→沼津 E231系
JR東日本から沼津への直通列車は、3月16日のダイヤ改正で運行形態が変わった。東京方面からの直通列車は縮小され、その代わり、国府津~沼津間の5両編成での列車が誕生し、JR東日本の車両による沼津-熱海間の普通列車の運転も始まっている。これまで夜間も何本か東京方面へ向かう列車の設定があった沼津駅だが、ダイヤ改正以降は、上りの東京方面の列車がなくなり、熱海から先へ進む列車は、21時台の国府津行のみとなった。今回はたった一駅間のみの乗車だったが、いつまで残るかわからないので、早めに乗りに行きたいと思っている。

沼津ではこの駅始発の普通列車浜松行きに乗り換えた。この時間の沼津駅は接続がなんだか不思議なことになっていた。まず熱海始発の普通列車が到着。ここでしばらく停車して、後続のJR東日本からの普通列車を待ち合わせ、接続を取って発車する。そのさらに数分後には普通列車の浜松行きが続行する形になっている。東京方面からの普通列車に接続するのが、この駅始発の列車なのかと思ったらそうではないようだ。先に走っていた列車が後続の列車と接続してしまうので、浜松行きには接続列車がない。熱海からの列車は結構混雑していたが、乗車した列車は静岡まで終始空いていた。
乗車記録 No.22
東海道本線 普通 浜松行
沼津→静岡 313系

沼津からおよそ1時間で終点の静岡に到着。2日目の行程も順調に終え、この日は静岡駅前のホテルに一泊した。明日はここから特急ふじかわに乗車して、JR東海の最後の未乗路線、身延線を乗りつぶす。1日目と2日目は晴天だったが、3日目は雨の予報。明日の天気が若干気がかりだが、身延線の景色を楽しみにしつつ、箱根の乗りものを楽しんだ2日目の旅を終えた。
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