【旅行記】大阪の中小路線を巡る旅~信貴山と谷町線と特急ひのとり~

前話
 
 河内山本駅から近鉄信貴線、西信貴ケーブル、近鉄バス信貴山上線を乗り継いで、信貴山に到着した。ここからは信貴山朝護孫子寺に立ち寄った後、奈良交通の路線バスで山を下りる。その後は、再び大阪府内へ戻り、Osaka Metro谷町線に乗車。大阪難波駅から阪奈特急で運行されている特急ひのとりに乗車して、宿泊地の奈良駅へ向かった。

寅のお寺として知られる信貴山朝護孫子寺に立ち寄る

 信貴山朝護孫子寺は、聖徳太子が毘沙門天を自ら彫り、創建したと伝わるお寺である。聖徳太子がこの山を訪れた際、寅の年、寅の日、寅の刻に毘沙門天が現れたと伝わるため、寅のお寺としても知られている。朝護孫子寺があるこの山を信貴山と名付けたのも聖徳太子と言われており、毘沙門天が現れたこの山を信じるに貴ぶべき山と呼んだことから信貴山と呼ばれるようになった。
 開運橋を渡って、境内へ入っていく。今回は信貴山門バス停から開運橋を通ってきたが、開運橋を渡るとお寺の入り口の手前で東側から道が合流する。この道を進むと、かつて賑わっていたであろう参道を通って、信貴山下からのケーブルカーの駅だった旧信貴山駅(現信貴山バス停)方面へ参道が続いている。
 
 境内へ入ると、大きな寅のオブジェが姿を現した。世界一福寅と呼ばれる大きな寅のオブジェで、信貴山の見どころの一つになっている。この世界一福寅はなんと顔の部分が動く。事前に信貴山について調べた際に写真でこのオブジェがあることは知っていたが、動くことは知らなかったのでちょっとびっくり。なかなかの迫力だった。世界一福寅の背後の山の上には、朝護孫子寺の本堂が見えていた。境内の中を歩いて、本堂へと歩いていく。
 
 世界一福寅の先で赤門をくぐると、その先で道は二手に分かれている。下り坂へ方へ進むと、塔頭寺院の一つである千手院がある。信貴山は朝護孫子寺の本堂を取り囲む形で、塔頭寺院が並んでいる。まっすぐ進むと、同じく塔頭寺院の一つである成福院が正面に見えた。曲がり角あるポストも寅の模様になっていた。
 
 成福院の前で右へ曲がって、階段を登ると、朝護孫子寺の本堂へ到着した。朝護孫子寺は信貴山真言宗の総本山となっている。この信貴山真言宗は、信貴山は1950年代に高野山真言宗から独立した宗派。毘沙門天が最初に現れた場所である信貴山は毘沙門天信仰の中心地である。本堂は見晴らしのいい場所に建てられていて、奈良盆地を一望することができた。本堂参拝後は、千手院前を経由して、信貴山門バス停へ戻った。

東信貴ケーブルの面影を辿りながらバスで王寺駅へ

 信貴山へは大阪側から登ってきたが、帰りは奈良側へと下山する。奈良側から信貴山へは奈良交通の路線バスが王寺駅・信貴山下駅発着で運行されている。朝夕は信貴山バス停発着で運行されるが、日中の便は信貴山門発着となっていて、高安山からの近鉄バスからそのまま乗り継ぐことができる。乗車したバスは42系統の王寺駅行き。信貴山門と王寺駅間を走るバスには42系統と43系統の2つの系統がある。43系統は信貴山から信貴山下駅間で城山台というニュータウンを経由するが、42系統は経由せずにそのまま信貴山下駅へ向かう。城山台を経由しない42系統は一部区間で、かつて信貴山下駅と信貴山駅を結んでいたケーブルカーの廃線跡を転用した道路を走っていく。奈良交通のバスにはこれが初乗車となった。
 
乗車記録 No.14 奈良交通 [42] 王寺駅行 信貴山門→王寺駅
 
 信貴山門バス停を発車すると、開運橋から見えていた信貴大橋を渡って、信貴大橋バス停に停車。朝護孫子寺へはここが最も近いバス停である。その先にある信貴山バス停は、ロータリーが設置されていて、待合所の建物のある。この信貴山バス停は、かつて東信貴ケーブル終点、信貴山駅だった場所。駅舎はそのままバスの待合室として転用されている。朝夕の路線バスはここ発着で運転されていて、信貴山門まで行かない。奈良側の路線バスは朝夕も多数の運行があり、近鉄バスの信貴山上線とは異なり、地域住民の利用が多い。
 信貴山バス停を出ると、下り坂となり、山を下りていく。生駒山地の山麓に開発されたニュータウンが広がる。近鉄生駒線沿線にも広大なニュータウンが開発されていて、戸建ての住宅が立ち並んでいる。バスは毘沙門橋という陸橋を通り、くるっとまわって、イーストヒルズ勢野西バス停に停車した。
 
 奈良県立西和清陵高校の前で左折すると、万葉荘園バス停に停車。その後バスは一直線に坂道を下り、信貴山下駅へ到着した。信貴山下駅は近鉄生駒線が発着する駅。信貴山発着のバスも朝夕はこの駅を起終点として運行されている。ロータリーの端には、かつて東信貴鋼索線で使用されていたケーブルカーが展示されていた。このバスが万葉荘園から信貴山下駅間で通った道こそ、かつて東信貴ケーブルの線路が敷かれていたところ。バスはこの線路跡が転用された道路を走ってきた。ちなみに、高校がある場所から信貴山バス停までの区間には、千本桜並木道という遊歩道が一直線に通っている。これも以前のケーブルカーの廃線跡を利用したものである。信貴山下駅を出ると、三郷町の役場前を通り、大和川を渡って終点の王寺駅に到着した。
 
 信貴山門バス停から30分ほどで王寺駅に到着。大阪側から奈良側へ信貴山を越えて移動してきた。過去に信貴山へ延びいた鉄道の面影も含めて、信貴山と信貴山へアクセスする交通機関を楽しむことができた。
 今年もまた王寺駅にやってきた。王寺駅には3年連続の訪問となった。一昨年はここで近鉄田原本線とJR大和路線を、昨年はJR和歌山線と近鉄生駒線を乗り継いだ。今回は路線バスとJR大和路線を乗り継ぐ。朝護孫子寺の本堂から奈良盆地を見ると、真っ暗で雷が鳴っていたが、やはり奈良市街や天理方面ではかなり激しい雨が降っていたようで、桜井線は運転を見合わせていた。大和路線の運行状況を心配していたが、こちらは平常通り動いていて、一安心。この日の宿泊地は奈良駅前。ここから大和路線で15分もあれば着くが、まだ旅は続いていく。

王寺駅から八尾駅を経由して八尾南駅へ

 王寺駅からは当駅始発の普通JR難波行に乗車して、八尾駅へ向かった。
 日中の大和路線は、加茂・奈良から大阪環状線への大和路快速と王寺-JR難波間の普通の2種別が運行されている。大和路線快速は天王寺までの途中、久宝寺にしか停車しないので、その他の各駅へは普通を利用することになる。大和路快速の王寺-天王寺間の所要時間は約20分、一方で普通は35分かかる。普通は久宝寺で後続の大和路快速に1度抜かれるので、王寺駅からは普通が先発でも後続の大和路快速に乗車した方が早い。ただ、大和路快速は混んでいることが多いので、天王寺へ行く場合も、普通に乗車すると当駅始発なので確実に座ることかできる。
 
乗車記録 No.15 大和路線 普通 JR難波行 王寺→八尾 221系
 
 大和川沿いを進み、信貴山へ行く前に近鉄道明寺線で下車した柏原を経由して、八尾駅で下車した。ここで路線バスに乗り換える。JR八尾駅周辺は住宅街が広がっている。八尾駅の隣に位置するのが、快速の停車駅であり、おおさか東線との乗り換え駅である久宝寺駅。この駅も八尾市内に所在しており、八尾市内のJRの駅としてはこちらの方がメジャーかもしれない。八尾市内にはJR大和路線と共に近鉄大阪線が幹線路線として走っている。ここから北に1.5kmほどの場所にある近鉄の八尾駅前は、駅の近くに大きな商業施設がある。そのためどちらかといえば近鉄八尾駅の方が栄えている。信貴山へ向かう前に立ち寄った河内山本駅も八尾市に所在する駅。さらに近鉄信貴線や西信貴鋼索線は全線が八尾市内を走る鉄道路線である。八尾と言えば八尾空港のイメージが個人的には強い。八尾空港はJR八尾駅から南に2kmほどの場所にあり、これから向かう八尾南駅はその滑走路端の近くに駅がある。
 
 JR八尾駅からは近鉄バスの70系統藤井寺行に乗車して、八尾南駅へと向かった。乗車したバスは近鉄八尾駅を起点にJR八尾駅、八尾南駅を経由して八尾市内を南北に走り、その後大和川を渡って、近鉄南大阪線の藤井寺駅へ向かう路線だった。このあたりOsaka Metroの路線の終点は他の路線と接続していない駅が複数ある。2年前、千日前線に乗車したときには、JR平野駅から南巽駅まで歩いたが、八尾南駅は他路線の駅からとても距離があり、遠すぎて歩けない。このバス路線のおかげで効率よく旅することができた。
 
乗車記録 No.16 近鉄バス [70] 藤井寺駅行 JR八尾駅前→八尾南駅前
 
 JR八尾駅からバスに乗車し、およそ20分ほどで八尾南駅に到着。八尾南駅は地下鉄の駅には見えない大きな建物で、どこか雰囲気が博多駅の筑紫口に似ていた。駅周辺は他にもビルがあるが、八尾空港の滑走路が近いため高い建物が少ない。そのため、駅舎は写真でみるより大きく見えた。 
 ここからはOsaka Metro最後の未乗路線である谷町線に乗車していく。谷町線はOsaka Metroの路線で2路線ある起点と終点が大阪市街に位置する路線のうちの一つである。谷町線の起点大日駅は守口市にあり、終点の八尾南駅は八尾市にある。もう一つは御堂筋線で起点の江坂駅は吹田市に、終点のなかもず駅は堺市に駅がある。このほか片方の駅が大阪市街にある路線としては長堀鶴見緑地線(門真南駅が門真市に)、中央線(永田駅が東大阪市に)があり、実は駅が大阪市街にあること自体は珍しいわけではない。
 
 八尾南駅は谷町線唯一の地上駅。しかし、地上区間はほんのわずかで、駅を発車するとすぐにトンネルに入り、その後は大日駅までずっとトンネルの中を走っていく。駅には谷町線の車両基地である八尾車庫が併設されている。谷町線の終点がここになったのは、車両基地の用地の都合なんだそう。大阪市内には車両基地が作れる土地がなく、車両基地が作れる広さの土地があった八尾市内のこの場所に駅が造られた。

Osaka Metro最後の未乗路線、谷町線に乗車

 八尾南駅からは写真の22系で終点の大日駅まで谷町線を乗り通した。実は谷町線に乗るのは初めてではなく、過去に大阪に観光で訪れた際、谷町四丁目から東梅田間で乗車している。もう10年以上前の話なので本当に久しぶりの乗車となった。
 谷町線はOsaka Metroでは最も長い路線でもあり、全線乗り通した際の所要時間は52分である。八尾市内を走るのは八尾南駅構内の一部だけ。トンネルに入る手前で大阪市へ入る。路線は天王寺より南側では何度も直角に折れ曲がるような形をしている。最初は平野区内を走行し、長原、出戸、難読地名として有名な喜連瓜破、そして平野と停車し、大阪市中心部へ向かう乗客を拾っていく。平野を出ると、駒川中野、田辺、文の里と停車していく。谷町線はこれらの駅付近で、近鉄南大阪線、JR阪和線、御堂筋線と交差するが、それぞれの路線の駅とは少し離れていて、直接は乗り換えることができない。最初に他路線と乗り換えられるのは、天王寺駅の一駅手前の阿倍野駅。ここで阪堺電気軌道上町線に乗り換えることができる。
 
乗車記録 No.17 Osaka Metro 谷町線 大日行 八尾南→大日 22系
 
 天王寺では、文の里駅付近で交差した御堂筋線と再度クロスし、その後は路線名の由来である谷町筋を南北に走っていく。千日前線、長堀鶴見緑地線、中央線、京阪本線といった東西を走る路線とクロスするため、大阪市街では乗客の入れ替わりも激しかった。天満橋駅までは一直線に北上するが、その先では一旦梅田に立ち寄るため西に向きを変える。国道1号線の地下でJR東西線と並走すると、国道1号線の終点である梅田新道交差点付近で北へ向きを変えて東梅田駅へ。東梅田では乗客の多くが入れ替わった。東梅田駅発車後は、都島通の地下を進み、天神橋筋六丁目で堺筋線と再度クロス。その後はおよそ北東に進み、都島、今里筋線と交差する太子橋今市、守口を経由して終点の大日に到着した。
 
 地下を走っている間に外はすっかり夜になっていた。駅前にはイオンモール大日があって、背後にはタワーマンションが数棟建っていた。大日駅は谷町線のほかに大阪モノレールも乗り入れている。大阪モノレールには前回の旅で乗車したので、このあたりの景色はその時車窓で眺めた。余所者からすると知名度は高くない場所だが、谷町線と大阪モノレールが乗り入れることから、守口市内の交通ターミナルとなっている。
 八尾南駅から谷町線の全線に乗車したことで、Osaka Metroの路線はこれで全路線完乗となった。1路線を完乗したのは、2016年の御堂筋線が初。そこから8年かけてようやく全ての路線に乗車することができた。これでOsaka Metroの乗りつぶしもひと段落と行きたいところだが、そうはいかない。あと半年もしないうちに、大阪万博へ備えて中央線が延伸開業する予定となっており、28年春には同じく中央線で現在の車両基地への回送線を活用した森ノ宮~森ノ宮新駅間の延伸が予定されている。したがって、Osaka Metroの乗りつぶしはこれからも続いていくことになる。また、こうした折に触れて、中央線以外の各線にも再び乗車しに行きたいと思っている。

大日駅から天六、日本橋経由で難波へ

 さて、この日の宿は奈良に取っていた。翌日も大阪府内の未乗路線を巡るのに宿は奈良に取ったのには理由があって、それは翌日朝に奈良発の特急らくラクやまとに乗車するため。ということで、ここからは宿泊地の奈良へ向けて移動を開始した。
 この旅行の初案では、大日駅から東梅田駅へ戻り、大阪駅からおおさか東線の直通快速で奈良へ向かう予定にしていた。しかし、旅行の10日程前に日程の再確認をしていたところ、JRの時刻表を見間違って平日の時刻表を見ていたことが判明。この時間、すでに直通快速の運転はなかった。はてさてどうやって奈良へ行こうか、と思ったが、ちょうどいい時間に難波から奈良へ特急ひのとりの運転があったので、それに乗車することにした。大日からは谷町線で天神橋筋六丁目へ向かい、そこで堺筋線に乗り換え。その後、日本橋で千日前線に乗車。この日朝から活用していたエンジョイエコカードを最後まで活用して、難波まで移動した。
 
乗車記録 No.18 Osaka Metro 谷町線 八尾南行 大日→天神橋筋六丁目 32系
 
 大日駅からなんば駅までへ行く方法はいろいろある。当初は谷町線を谷町九丁目まで戻り、そこで千日前線に乗車しようと考えていたが、天神橋筋六丁目で堺筋線に乗り換えて、その後日本橋で千日前線に乗り換えた方が早いことに気づいた。谷町線は天神橋筋六丁目から先、一旦南北に走る堺筋線とクロスする。東梅田駅へ立ち寄ると、南森町で再度堺筋線とクロスして谷町筋を走っていく。したがって、天神橋筋六丁目で堺筋線にスムーズに乗り換えられれば、谷町九丁目で谷町線から千日前線に乗り換えるよりも早くなんば駅に辿り着くことができる。目論んだ通り、天神橋筋六丁目ではスムーズに始発の天下茶屋行に乗車することができ、日本橋駅で千日前線に乗り換えて、予定よりも早くなんばに到着することができた。
 
乗車記録 No.19 Osaka Metro 堺筋線 普通 天下茶屋行 天神橋筋六丁目→日本橋 66系
 
乗車記録 No.20 Osaka Metro 千日前線 野田阪神行 日本橋→なんば 25系

阪奈特急ひのとりで難波から奈良へ

 1日目の最後は宿泊先の奈良へ近鉄特急に乗車した。大阪難波と近鉄奈良を結ぶ阪奈特急は、朝夕を主体に運転されている。運行時間は30分ほどで、近鉄特急の中でも運行時間・距離が短い特区間だが、多彩な顔ぶれを楽しめることでも知られ、サニーカーやAceなどの汎用特急列車だけでなく、アーバンライナー、伊勢志摩ライナー、さらにはひのとりといった車両も合間運用の形で、阪奈特急として運行されている。近鉄奈良線沿線から大阪への通勤特急として、また奈良観光に便利な列車として一定の需要がある一方、鉄道会社側から見ると、名阪間や阪伊間で運用されている車両を車両基地へ回送したり、難波へ送り込む役割を兼ねている。
 この阪奈特急には、昨年の京都を旅した際にも、国際会館から近鉄奈良まで急行に乗車した後、近鉄奈良から大阪難波まで乗車している。その時は汎用特急車両のサニーカーでの運転だった。この阪奈間の区間にいろんな車両が使用されていることを知っていたので、少し物足りない気がしていたのだが、今回は阪奈特急に使用される車両で一番豪華な特急ひのとりを利用してみた。ひのとりは6両または8両編成の車両のうち、先頭車両がプレミアムシートとなっている。もちろん阪奈間の特急ひのとりでもプレミアムシートに座ることができる。午前中に近鉄大阪阿部野橋駅へ行った際に特急券は購入しておいた。今回はお試し乗車という形で、阪奈間の特急ひのとりのプレミアムシートを体験した。
 
 日曜夜の大阪難波駅はショッピングや旅行から帰宅する人たちで賑わっていた。時刻は20時半になろうとしていたが、まだ名古屋行の特急列車は何本か残っている。ちょうどホームへ下りると、20時30分発のアーバンライナーが停車しており、窓側座席は大体埋まっていた。名古屋行の特急は21時30分が最終。かなり遅い時間まで運行されている。名古屋行きのアーバンライナーが発車すると、1番線には区間準急と快速急行が入線。特急ひのとりの直前に発車する快速急行は、終点まで先着する。しかも所要時間は特急ひのとりより短い。快速急行発車後、特急ひのとりは桜川方からゆっくりと入線してきた。停車時間はわずか。早速、指定した最後尾の6号車に乗車。停車時間数分で、列車は大阪難波を発車した。
 
乗車記録 No.21 近鉄奈良線 特急ひのとり 近鉄奈良行 大阪難波→近鉄奈良 80000系
 
 楽しみにしていたプレミアムシートに早速座ってみる。特急ひのとりのプレミアムシート車両である先頭車は、ハイデッカーとなっていて、車内には1+2列のプレミアムシートが並んでいる。進行方向の一番前の席であれば、前面展望を眺めながら移動することもできる。もちろん、人気があって競争率は高い。乗車した列車も一番前の席は埋まっていたようだった。各座席はバックシェルが装備された電動リクライニングシートで、シートを最大で倒しても後ろの乗客に迷惑をかけることがなく、ゆったりとくつろぐことができように配慮されている。もちろんコンセントも装備されており、バッテリーが少なくなっている夜間の移動にはとても重宝した。各座席の窓枠上の座席番号横には指定状況を表すランプが点灯していた。阪奈間ではこの車両に特急料金にプラス300円するだけで乗れてしまう。乗らない手はない。
 この座席は名阪間をよく移動する友人も絶対に乗った方がいいと太鼓判だったので、とても楽しみにしていたが、もうこの車両に宿泊したいと思うくらいに快適だった。名阪間は新幹線と近鉄特急がシェアを争う形だが、近鉄特急は新幹線には所要時間で勝てない分、快適性で勝負している。この座席なら、2時間の名阪間の移動もとても快適だと思う。
 
 先頭車の乗降ドア付近には、お菓子やコーヒーが買える自販機のあるカフェスペースが設置されている。コーヒーはマシンで豆を挽くタイプで、ブレンドコーヒーなどを購入できる。紙コップは保温性の高い容器で、ひのとりのロゴが入っていた。朝からほぼ休む間もなく移動してきたが、ここへ来てコーヒーを飲みながらまったりとした時間を過ごすことができた。コーヒーを飲みながら、夜の近鉄奈良線の車窓を楽しむ。生駒トンネルを経由して本日二度目の奈良県へ。生駒、学園前、大和西大寺と停車し、あっという間に終点の近鉄奈良に到着。特急ひのとりへのお試し乗車はあっという間に幕を閉じた。
 
 今回はお試し乗車という形で、通常は名阪間で走っている特急ひのとりの阪奈運用に乗車した。プレミアムシートの快適さを体感することができたので、次回は名阪特急としての特急ひのとりにも乗車してみたいと思っている。実はこのひのとりが走る大阪線は一部区間ではじめて乗車してから15年以上が経過しており、もう一度再履修する路線と決めている。近々大阪線を再履修する時は、この特急ひのとりに乗車するつもりである。今回は夜間の乗車で、車窓は楽しめなかったが、名阪間で乗車する際には日中の列車で、大阪線・名古屋線の車窓を楽しみながら乗車してみたい。
 
 近鉄奈良駅到着後は、ホテルがあるJR奈良駅へ路線バスで移動し、1日目の旅はこれで終了となった。この日は奈良県内に宿泊。翌日はJR奈良駅から今年3月のダイヤ改正で運行スタートとなった特急らくラクやまとに乗車して大阪へ戻る予定。奈良県に57年ぶりに復活した定期特急列車ということで、こちらへの乗車も楽しみに1日目を終えた。
 
 さて、2日目も大阪府の未乗路線を2つ巡っていく。翌朝は特急らくラクやまとで大阪へ戻った後、南海高師浜線と水間鉄道水間線という2つの路線を巡り、関西空港から関西をあとにした。
 
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