【旅行記】大阪の中小路線を巡る旅~特急らくラクやまとと南海高師浜線~
前話
大阪の中小路線を巡る旅の2日目。この日は奈良から特急「らくラクやまと」に乗車して新大阪へ。その後、南海難波駅へ移動した後、南海本線から枝分かれする形の南海高師浜線、水間鉄道水間線に乗車。さらにその後は、関西空港から初めてピーチ便に搭乗し、長崎空港へ。長崎市街を経由して西九州新幹線とリレーかもめで旅のゴールとなる博多へ向かった。
朝の奈良駅を発車する列車たち

少し早めにチェックアウトして、奈良駅へ。まだ6時台だが、大阪へ向かう通勤ラッシュは始まっており、通勤客が颯爽と改札を通り抜けていた。日中のこの駅は大阪方面へは大和路快速が、京都方面へはみやこ路快速が発着しているが、朝夕はこれら種別の運転はない。大阪環状線へは大和路快速に変わり、環状線内で各駅に停車する区間快速が運行されている。朝夕は環状線方面への快速列車にくわえ、JR難波発着の快速とおおさか東線への直通快速も運転されている。奈良駅では日中時間帯、JR難波、おおさか東線方面へ行く列車は運行されておらず、奈良駅では朝夕しか見ることができない。写真はおおさか東線を経由する大阪行の直通快速。最後尾車両の後部区画は、着席サービスであるうれシートが設定されていて、自由席部分の境界部は暖簾で仕切られていた。

一方、奈良線方面の列車はみやこ路快速の代わりに快速と区間快速の2種別が運転され、それに全時間帯で運転されている普通が加わる形。快速はみやこ路快速よりやや停車駅が多く、みやこ路快速の停車駅に加え、新田、JR小倉に停車。区間快速は宇治まで各駅停車に停車していく。写真は普通京都行の205系。今日も元気に奈良線の運行を支えている。なお、奈良線の列車は朝の一部列車のみJR難波を始発とする列車があり、一部はここ奈良で種別を変更する。

一方、こちらは万葉まほろば線の愛称が付けられている桜井線。日中は227系で運転される列車ばかりだが、朝には221系も加わりラッシュに対応している。221系で運転される列車の中には、桜井線周りの快速JR難波行きという珍しい列車もある。写真はその快速JR難波行き。ただ奈良の時点では誤乗を避けるため、普通王寺行と案内されていて、桜井線、和歌山線を経由して王寺から快速に化けることは、奈良の時点では隠されている。なお、桜井線を走る221系には一昨年の夏旅で乗車した。
今年新登場の特急「らくラクやまと」で奈良から大阪へ
さて、奈良駅から乗車する特急「らくラクやまと」は、今年3月のダイヤ改正から運行を開始した新しい特急列車である。平日ダイヤで1日1往復が奈良~新大阪間で運行されおり、平日ダイヤの定期列車という形で設定されている(土休日ダイヤでの設定はない)。奈良県を発着するJRの特急列車は、おおさか東線全線開業後、臨時列車という形で特急「まほろば」が奈良~新大阪間で運行されているが、奈良県を経由する定期の特急列車となると1967年に廃止された特急「あすか」まで遡り、以後運転がなかった。そのため、この特急らくラクやまとは57年ぶりに設定された奈良県発着の定期列車ということになる。
「らくラクやまと」は、近年JR西日本が各路線で運行を開始させている通勤特急の一つである。2019年に運行を開始し、現在は網干~京都間で運行されている「らくラクはりま」が「らくラク」通勤特急の第一号としてデビュー。さらに今年3月のダイヤ改正で、奈良~新大阪間の「らくラクやまと」と、「びわこエクスプレス」から名称変更となった大阪~草津・米原間の「らくラクびわこ」の2列車が追加。現在は全3列車が運転されている。
特急列車だが、通勤客輸送に特化した特急列車のため、JR西日本の案内では「通勤特急」と呼ばれている。ただし、JRの種別には通勤特急という種別は存在しないため、正式には特急であり、乗車には他の特急列車と同様に特急券が必要となる。今回は57年ぶりに復活した奈良県を走るJRの定期特急列車を乗り通してみる。

7時10分発の快速JR難波行が発車すると、まもなく乗車する特急らくラクやまと新大阪行が入線してきた。列車は特急くろしお用の287系3両編成で運転されている。3両はいずれも指定席で、自由席の設定はない。今回は最後尾の3号車に乗車した。
奈良~新大阪間のこの列車の特急券を券売機で購入すると、通常期の料金で1,730円かかる。通勤特急の料金としてはかなり高額になる。一つ手前の大阪までであれば1,290円である。たった一駅の大阪と新大阪の間で特急料金が跳ね上がるのは、奈良からの営業キロが大阪と新大阪の間でちょうど50キロを越えるから。奈良~新大阪間の営業キロは50.6kmである。このように通常料金で購入すれば、かなり高額になるが、チケットレス特急券を利用すれば半額かそれ以下の料金で乗車することができる。チケットレスでの料金は、奈良~大阪間で650円、奈良~新大阪間で750円となっていて通勤にも使いやすい価格設定である。一方、J-WEST会員であれば、貯まったWESTERポイントを利用して特急券を購入する方法もある。今回は、過去の旅行でのEX-IC利用分とICOCAチャージで獲得したポイントがあったので、「WESTERポイント特典チケットレス」を活用して特急券を購入し乗車した。

奈良駅では1両に数人程度が乗車した。この駅は当駅始発の列車が多く、ほぼ確実に座ることができる上、この列車の所要時間は一般の列車とほとんど変わらないので、特急列車を選ばない人が多いのは当然の話の話である。もちろん大阪市中心部に快適に通勤するなら、近鉄奈良駅から近鉄の特急列車に乗った方が安くて本数も多いので、最初からこちらを使っている人も多い。ホームでは既に後続の快速JR難波行を待つ列が形成されていた。奈良駅を出た列車は天王寺へ向けて、開成の奈良盆地を進んでいった。
乗車記録 No.22
特急らくラクやまと 新大阪行
奈良→新大阪 287系

この列車は特急列車だが、通勤特急という性質上、奈良側での停車駅が多く設定されている。天王寺までの停車駅は、大和路快速や快速と変わらず、奈良~王寺間は郡山、大和小泉、法隆寺、王寺と各駅に停車していく。これら3駅と王寺、久宝寺の計5駅は、らくラクやまと運行開始に伴い、新しく特急停車駅となった駅である。奈良駅も臨時特急が停車する駅から定期特急列車が停車する駅へランクアップした。らくラクやまとがターゲットにしているのは、大和路線の途中駅からの通勤需要のはず。確かに各駅から乗車があり、王寺では窓側座席の半分程度程は埋まったように見えた。最初はガラガラと言われていたが、見る限り乗車率も上がってきているらしい。車窓には奈良盆地の田園風景が広がる。通勤特急なので、パソコンを叩いている人や音楽を読んだり読書をしている人の方が多い。景色をぼんやりと眺めているのは自分くらいなものである。昨日登った信貴山や生駒山を車窓に列車は関西本線を走っていった。

王寺を出ると、次は久宝寺に停車する。先行列車が詰まっていたのか、王寺では信号待ちのため数分停車。その後は大和川の渓谷沿いを進み、大阪平野へと出ていく。この区間は1日目にも通った区間なので2日連続の利用となった。大和川を見ると、探偵ナイトスクープの大和川下り通勤の回を思い出す。王寺から大阪へ電車で通勤するより、川を下った方が早そうと思っている依頼者が、実際に川を下って確かめるというもので、結果10時間かかったという名作の一つ。自分が生まれる前に放送されたもので、再放送か名作選みたいなもので見たのだが、とても面白かったのを覚えている。途中の山間部区間ではボートが浸水してみたり、堰に行く手を阻まりたり、個人的にはこの依頼がナイトスクープで一番気に入っており、大和川を見ると、ナイトスクープを思い出す。

大阪平野へ出た列車は1日目に訪れた柏原や八尾を颯爽と通過し、久宝寺へ。途中の近鉄大阪線と並走する区間では、松阪始発の特急列車と並走した。あちらは6両くらいあるのに、こちらは短い3両編成。奈良は近鉄王国であることを印象付ける光景だった。大阪線でも奈良線でも朝ラッシュ時間帯には特急が多数運転されている。そこにJRが割って入ってもその牙城を崩すのは難しい。おおさか東線との接続駅である久宝寺駅は上下ホームとも多くの通勤通学客で混雑していた。大阪市中心部まであともう少しだが、この駅からも大阪へ向かう乗客が乗車してきた。その後、列車は百済貨物ターミナルを横目に走り、朝ラッシュ真っ只中の天王寺駅に到着した。

天王寺で下車する人もいたが、どちらかといえば大阪へ向かう人の方が多かった。天王寺を出ると次の新今宮駅との間で323系の普通と並走し、普通が新今宮に停車している間に乗車している特急が先行した。天王寺と今宮の区間は関西本線と大阪環状線が複々線を構成している。正式には天王寺-新今宮間は関西本線の複々線、新今宮~今宮間は関西本線と大阪環状線の重複区間で、それぞれが複線という状態である。山手線も正式な区間は一周していないが、大阪環状線もまた正式には一周していない。
その後は西九条まで大阪環状線を走っていく。朝の最ラッシュ時間帯であるため、間隔が詰まっているのか、終始ノロノロ運転で走っていく。この時間帯、特急を除けばすべての列車が各駅に停車している。途中で追い抜きもできないので、特急列車も後ろからノロノロとついていくしかない。

西九条を通過すると、その後は梅田貨物線へと入って大阪駅のうめきた地下ホームへと向かう。一部区間が地下化され、新しくなった梅田貨物線はこれが初めての乗車となった。この路線はかつて大阪駅の北側を走り、東海道本線と大阪環状線を短絡する路線だった。特急はるかやくろしおなどの京都・新大阪~関空・和歌山方面の列車と貨物列車が使用していたが、旅客列車は大阪駅を素通りする形になっていた。現在のうめきたエリアにあった梅田貨物駅が廃止され、その後このエリアの開発事業が進行。梅田貨物線は一部で地下を走ることになり、地下区間にはそれまで非経由だった大阪駅のホームが設けられた。これにより、それまで大阪駅を通過(実際には非経由)となっていた特急「はるか」や「くろしお」が新たに大阪駅に停車するようになり、新大阪駅発着だったおおさか東線の列車が大阪駅うめきた地下ホーム発着に改められていた。この貨物線は、東海道本線と桜島線の安治川口にある貨物ターミナルを繋ぐ路線でもあり、現在も貨物列車が走行している。大阪駅周辺の地下区間は、急勾配となることから、貨物列車は先頭と後方に機関車を2両つないだプッシュプルという方式で運転されている。

福島駅の真下にあるなにわ筋との踏切を通ると、地下区間に突入し、大阪に到着。ここで車内に残っていた乗客のほとんどが下車していった。停車した大阪駅のうめきた地下ホームは、改札内の連絡通路を介して、大阪環状線やJR神戸・京都線のホームと繋がっている。それならいっそのこと、JR東西線の北新地駅も連絡通路でつないで大阪駅に組み込んだらいいのではと思ってしまう。現在は関空、和歌山、奈良方面の特急列車と、おおさか東線の列車が使うこのホームだが、将来的には、なにわ筋線が繋がる予定。そうなるとと新今宮からここまで、JR難波を経由した別経路で行き来できるようになる。また、なにわ筋線は南海本線ともつながる予定で、現在は南海難波~関西空港間で走っている特急ラピートがこの駅にも乗り入れる計画となっている。
奥のホームには、奈良を11分前に発車したおおさか東線の直通快速が停車していた。直通快速は奈良を11分前に発車し、大阪には2分前に到着する。同じ方面に出ていった列車は、久宝寺で分かれ、大阪では面と向かう形で対面する。
大阪を出ると、次は約6分で終点の新大阪。御堂筋線の中津駅の北側で地上に顔を出すと、淀川を渡って、終点の新大阪に到着した。

今年3月に運行を開始した新しい通勤特急らくラクやまとに乗車し、奈良から新大阪まで移動してきた。運行開始から半年が経過し、徐々に認知度も上がってきているはず。今回の乗車では窓側7割程の利用だったが、JRとしてはもう少し乗車率を上げたいところだろうか。利用者的には、通勤通学客が最も多い時間帯に、空いた特急列車でゆったりと移動できるので、とても快適な列車だった。新大阪から新幹線で他地域へ移動する人も少なからずいると思うので、満員電車にスーツケースを持ち込むのは、気が引けるという人もこの列車なら気兼ねなく新大阪へ行ける。所要時間に関しては、区間快速と大差なく、おおさか東線経由の直通快速と比較すれば若干遅くなる。また、奈良~大阪市街地間で言えば近鉄の阪奈特急が朝夕時間帯には多数運行されていて、所要時間は長く、価格も高くなってしまうのが実情であり、途中駅からの利用客をどこまで取り込めるのがが一つのポイントになるのではないかと思った。
さて、時刻は8時20分。朝ラッシュでごった返す新大阪駅に降り立った。ここからは朝ラッシュのピークを迎えている御堂筋線に乗車して、難波へ向かった。
乗車記録 No.23
御堂筋線 天王寺行
新大阪→なんば
難波から空港急行に乗車して羽衣へ

2日目は南海難波駅から南海本線を下りながら、南海高師浜線と水間鉄道水間線という2つの未乗路線を巡った。これら2つの路線は南海本線の羽衣と貝塚という2つの駅から枝分かれする形になっている。この2駅は、難波と関西空港を結ぶ一般列車の最上位種別「空港急行」が停車する。今回は後ほど、関西空港から大阪を発つ予定である。そこでここからは、南海本線・空港線で空港急行を利用して、羽衣、貝塚で途中下車しながら、2路線に乗車していくことにした。空港急行途中下車の旅がスタートした。

これから乗車する空港急行は、南海本線の料金不要の列車としては、特急サザン(ただし一部車両は特別車両)、急行に次ぐ第三位の種別となっている。一般列車における難波-関西空港間の速達列車で、ほぼ全時間帯に渡って運転される。日中の南海本線の料金不要列車は、特急サザン、空港急行、普通の3種別が運行されていて、空港急行は15分間隔に1本が運転されている。大阪市街と関西空港を結ぶ役割を持つ列車たが、南海本線沿線と大阪市街を結ぶ速達列車でもある。南海本線内では、新今宮、天下茶屋、堺、岸和田、泉佐野といった主要駅に加え、羽衣、泉大津、春木、貝塚といった準主要駅に停車する。

空港急行は6両編成か8両編成で運転されているが、乗車した列車は8両だった。難波では、先頭から2両目に乗車。中央の改札口から離れているため、難波発車時は閑散としていたが、次の新今宮からたくさんの乗車があり、座席はほとんど埋まってしまった。利用客はキャリーケースを持っている訪日客と、沿線客が半々といった印象だった。
乗車記録 No.24
南海本線 空港急行 関西空港
難波→羽衣 8000系
高架工事の運休から3年ぶりに目覚めた南海高師浜線に乗車

難波からおよそ15分、空港急行を羽衣駅で下車した。羽衣駅は高石市の北部に位置するターミナル駅。当駅には特急を除くすべての種別が停車する。同市の南海本線には高石駅もあるが、こちらは普通と準急のみが停車する駅で、高石市内では羽衣の方が列車本数が多い。この駅からは今回のお目当てである高師浜線が枝分かれしている。一方、駅の北側で隣接する東羽衣駅からは阪和線の羽衣支線が鳳へ延びていて、2つの小さな路線が発着している場所になっている。
前日は阪堺電車に乗って、浜寺駅前・南海浜寺公園駅へ訪れたが、浜寺公園駅はここから難波方に1駅戻った場所にある。浜寺公園は南北に細長く、堺市と高石市にまたがっており、交通遊園がある南側の区域は高石市内に所在している。
この駅に来るのは、阪和線羽衣支線に乗車した2016年以来、約8年ぶりとなった。この時も空港急行で難波駅からこの駅までやってきて、阪和線羽衣支線に乗り換えている。この時、なぜ高師浜線にも乗車しなかったのかというのは、自分でもよく分からない。おそらく、路線図をよく見ておらず、高師浜線が存在すること自体よく分かっていなかったのだと思う。前回来た時は高架工事の真っ只中で、下りホームだけが高架化されていた。その後、高架工事が進み、2021年に上りホームも高架化されたことで、南海本線部分の高架化が完了している。駅に隣接する形でタワーマンションが建っている。2019年に完成したものなので、前回来た時には建っていなかったものである。かつては地上乗り換えだった羽衣駅-東羽衣駅間の乗り換えだが、現在このビルの下を通る形で連絡通路が通っていて、雨に濡れることなく乗り換えることが可能となった。

さて、この駅から乗車する高師浜線は、羽衣駅と高師浜駅を結ぶ全長1.4kmの小さな路線である。実はこの路線、2021年5月から今年4月までの約3年間に渡り、高架化工事のために計画的に運休していた。南海本線は運休させるわけにはいかないので、列車を運行させながら高架工事が行われたが、用地の都合もあって、高師浜線は数年の計画運休の間に高架化を行うという手法がとられた。運休中は南海バス運行の代行バスが運行されており、高架下の代行バスの発着所から乗車することが可能だった。今年の4月、高架化工事が完了し、約3年ぶりに高師浜線の列車に乗れるようになった。なお、似たような事例にJR東日本の陸羽西線があり、こちらも沿線の道路工事の影響で、2022年から計画的に運休している。

ホームへ行くと、ちょうど列車が高師浜線から到着したところだった。高師浜線は以前は専ら2200系で運転されていたが、今年から2000系が支線部で運用されるようになったため、運転再開後は2000系で運転される日が多いようだ。多奈川線や加太線、高野線の汐見橋-岸里玉出間でも同様に2000系の運用が開始されている。2200系などの旧型車両の後継として支線部の運行を支える新しい役割を担うことになった。
乗車記録 No.25
南海高師浜線 普通 高師浜行
羽衣→高師浜 2000系

羽衣駅を発車した列車は、真新しい高架橋を走り、その後南海本線と別れて右へカーブ。するとまもなく最初の伽羅橋駅に停車した。車内は2両で10人ほどが乗車していたが、この駅で何人かが下車していった。高師浜線は伽羅橋手前~高師浜間が以前から高架化されていて、羽衣駅側で地上へ下りる形となっていた。羽衣駅周辺が高架化されたことで、全区間が高架の支線となった。

伽羅橋を発車すると、府道204号線紀州街道を跨いで今度は左へカーブする。この府道204号線を北に2kmほど行くと、阪堺電車の浜寺駅前電停がある。カーブを曲がり終えるともう終点。列車は羽衣からわずか3分で終点の高師浜駅に到着した。

高師浜線の終点高師浜駅にやってきた。住宅街の一角に設けられたとても小さいだが、駅前には小さな広場が設けられてる。駅は高架工事の運休期間にリニューアルされた。広場には運転再開を祝う横断幕が掲げられているが、なぜか外国風の車両が描かれていた。終点の高師浜駅も高架駅なので、ホームへは階段、エレベーターで上る形になっている。駅前は住宅街が広がっていて、その小さな交差点の角に駅と広場が設けられていた。

駅前の広場の花壇には花が植えられていてとてもきれいだった。このあたり一体は日露戦争に捕虜を収容した浜寺俘虜収容所があった。日露間の講和の後、陸軍の官舎となり、後に宅地化されたことで、このあたり一帯は住宅が密集する地域となった。この住宅街への鉄道路線として高師浜線は1918年に羽衣-伽羅橋間が開通。翌年には高師浜までの全線で開通している。小さな支線だが、100年以上の歴史を持っている。駅前広場に掲出された付近の観光案内を見ると、やはり浜寺公園がその筆頭となっていた。歩いて15分ほどなので、十分歩いて行ける距離にある。ただ、高師浜駅へ来て、浜寺公園へ歩く人はあまりいないかもしれない。臨海部は工業地帯となっているため、工場夜景も美しいとのこと。駅の西側にある高石大橋の先の埋め立て地には、大阪ガスや三井化学の工場がある。

高師浜駅には20分ほど滞在し、羽衣まで行って帰ってきた列車に乗車して羽衣駅へ戻った。往路は下りの便だったので乗客も少なかったが、復路は高師浜、伽羅橋双方から10~15人の乗車があった。小さな支線だが、沿線と大阪市街を結ぶ上では欠かせない路線。羽衣駅では、難波、関西空港両方向の空港急行に接続しているので、スムーズに乗り換えることができるようになっている。羽衣駅に到着して、高師浜線の小さな旅はこれにて終了。少し速足で南海本線の下りホームへ行き、再び空港急行に乗車して、次なる未乗路線が走る貝塚へ向かった。
乗車記録 No.26
南海高師浜線 普通 羽衣行
高師浜→羽衣 2000系
乗車記録 No.27
南海本線線 空港急行 関西空港行
羽衣→貝塚 8000系

泉大津、春木、岸和田と停車した後、空港急行は羽衣から15分で貝塚に到着した。朝から強い日差しが降り注いでいたこの日、高師浜駅でも炎天下で駅前を歩いたせいで、ちょっと暑さにやられてしまった。熱中症になりかけていたので、冷房の入ったホームの待合室に入って一休み。思えば朝から水分をほとんど摂っていなかった。夏の旅行は水分補給が大事と分かっていながら、乗り換えなんかが多いと飲むのを忘れてしまっている。飲み物を飲んで20分ほど休憩したら回復してきたので旅を再開。ここからは今回の旅で巡る予定にしていた最後の未乗路線、水間鉄道水間線に乗車した。
次話