【旅行記】大阪の中小路線を巡る旅~水間鉄道に乗車してピーチ関空-長崎線に搭乗~

前話
 
 2日目は宿泊先の奈良から新大阪まで特急らくラクやまとに乗車後、南海難波駅から空港急行で南下しながら、未乗路線を巡っている。羽衣駅から南海高師浜線を往復後、再び空港急行に乗車し、貝塚駅で下車した。

貝塚市内を東西に走る水間鉄道水間線に乗車

 貝塚市の中心駅である貝塚駅。貝塚市は岸和田市と泉佐野市の間にある。南海本線と阪和線が南北に走っており、南海本線は貝塚駅と二色浜駅が貝塚市内に所在する。一方、阪和線は東貝塚と和泉橋本が貝塚市内にある。一方で、貝塚市内には市内の東西を結ぶ鉄道路線も存在している。それがこれから乗車する水間鉄道水間線ある。
 水間鉄道水間線は南海本線貝塚駅に隣接する貝塚駅から水間観音駅までを結んでいる。終点の水間観音駅の近くには水間寺があり、ここへのアクセス路線として建設された。現在では、貝塚市内を東西に走る鉄道路線として、地域の足を支えている。
 水間線を運行する水間鉄道はイオンモールなどで飲食チェーン杵屋を展開するグルメ杵屋の完全子会社である。水間鉄道は2005年に一度経営破綻しているが、グルメ杵屋が再建支援に名乗りを上げ、2006年に同社の子会社となった。鉄道路線だけでなく、路線バスの運行も行っており、貝塚駅から二色浜方面へのバスと貝塚市のコミュニティバスを運行している。
 
 水間線の駅は貝塚南海貝塚駅の東口側にある。水間線は全線単線だが、貝塚駅と水間観音駅は1面2線であり、加えて途中の名越駅で行き違いができる。日中は30分間隔の運転となっているが、朝夕は少し間隔が短くなり、20分に1本の運転となっている。水間線は全国相互利用のICカードが利用可能である。貝塚駅と水間観音駅の2駅は駅員が常駐しており、この駅では改札口で運賃を支払う。一方、それ以外の途中駅は全て無人で、ワンマン運転のため、運転席横に備え付けられた運賃箱で運賃を支払う方式が取られている。
 
 駅のホームへ入ってしばらくすると、列車が入線してきた。どこかで見覚えのある色の帯を纏った車両だなぁと思ったら、やはり青森県を走る弘南鉄道とのコラボ車両だった。水間鉄道と弘南鉄道は共に東急7000系の中古車両を導入している。そのコラボ企画として水間鉄道では弘南鉄道カラーの車両が2017年にデビューし、現在も運行を続けている。運転席の横には弘南鉄道のロゴも描かれていた。東急7000形の中古車両であるこの車両は、水間鉄道でもかつては7000形を名乗っていたが、現在は1000形として活躍している。
 
乗車記録 No.28 水間鉄道水間線 水間観音行 貝塚→水間観音 1000形
 
 平日午前中の下り便ということもあって、利用客は多くはなかった。途中駅での出口は運転席横のドアとなるため、乗客は前の車両に集中しがち。1両目は10人くらい乗っていたが、2両目に乗車したのは3人だった。ワンマン運転をする路線は、乗車する際には1両目の後部ドアから乗車するのが普通だが、水間鉄道では中間ドアから乗車するようになっていて、整理券発行機やICカードリーダーも中間ドアに設置されている。これは少し珍しいような気がする。
 
 貝塚駅を発車した列車は、すぐにカーブして南海本線と別れ、その後は貝塚市役所前、近義の里と停車し、貝塚市の市街地を走っていく。近義の里駅を出ると、その先で阪和線の線路とクロスした。阪和線の東貝塚と和泉橋本駅のちょうど中間地点付近でクロスしており交差部に駅はない。石才、清児と停車すると、次の名越で反対列車とすれ違う。このあたりまで来ると、車窓も田畑が増え始めて、のどかな雰囲気になってきた。一駅一駅下車があり、車内の乗客も残りわずかとなった。その後は森、三ツ松、三ヶ山口と停車。貝塚駅から15分で終点の水間観音駅に到着した。
 
 全長5.5kmの短い路線を15分ほどで走破して、終点の水間観音駅に到着。駅舎はお寺の二重塔のようなデザインになっている。もちろん駅名の由来となった水間寺をイメージしている。この駅舎は1926年の開業以来使われているそうで、登録有形文化財にも登録されているらしい。水間寺は駅前の道を15分くらい歩いたところにある。駅周辺は病院や郵便局はあるが、スーパーやコンビニなどは見当たらなかった。
 計画では水間寺にも歩いて行ってみようと考えていたが、天気が良すぎて日差しが強いのに加え、前日信貴山で結構歩いて疲れていたので断念。このあと飛行機にも搭乗しないといけないので、無理はしないことにした。
 
 駅のホームの横には、かつて水間鉄道で活躍していた501形電車が展示されていた。この車両は、南海電鉄1201形として製造された車両で、南海で活躍後水間鉄道に移籍。水間鉄道では501形を名乗り、1970年代~80年代にかけて活躍した。現在運行されている1000形に置き換えられる形で引退した後、1両が駅構内に保存されている。かつて水間線を走った先代車両は今日も水間線の列車の運行を見守っていた。
 
水間観音では貝塚から乗ってきた列車の折り返しではなく、30分後に発車する一本後の列車で、貝塚駅へ戻った。この日日中に運用されていたもう一つの編成は赤帯を纏う編成だった。水間鉄道はいろんな色の帯を纏った車両が活躍している。青、赤の他に、緑、オレンジを纏う車両もいる。さっきの弘南鉄道とのコラボ車両は、あれはあれで懐かしかったが、やはり水間鉄道カラーの車両にも乗車しておきたい。
 
乗車記録 No.29 水間鉄道水間線 貝塚行 水間観音→貝塚 1000形
 

空港急行で貝塚から関西空港へ

 水間観音駅から貝塚駅へと戻り、今回予定していた未乗路線は全て巡り終えた。この後は、関西空港から航空機を使って、関西地方をあとにする。貝塚駅からは再び空港急行に乗車。泉佐野、りんくうタウンを経て関西空港へ向かった。
 
乗車記録 No.30 南海本線 空港急行 関西行 貝塚→関西空港 8000系
 
 貝塚から関西空港までの所要時間は15分ほど。りんくうタウンを出ると、連絡橋を渡る。天気が良かったこの日、連絡橋からの眺めはとてもきれいだった。8年ぶりに連絡橋を渡って、終点の関西空港に到着。難波から羽衣、そして貝塚で途中下車しながら、空港急行で巡る未乗路線の旅、そして、今回の大阪の中小路線を巡る旅の本題はここで終了となった。
 
 今回の旅の旅程も順調に進み、訪れる予定にしていた全ての路線に乗車することができた。今回の旅を終えて、残す関西地方の未乗路線は、南海高野線中百舌鳥~極楽橋間、鋼索線(高野山ケーブルカー)、近鉄長野線の3路線となった。来年1月には、万博を直前に控え、Osaka Metro中央線のコスモスクエア~夢洲間が延伸開業する。したがって、この区間を含めると、残りは4路線となる。次回、関西へ来た際には、これら4路線と共に高野山を観光し、はじめて乗車して15年以上が経過している近鉄大阪線にも乗車したいと考えている。今年の夏も関西を楽しむことができ、充実した1日半の旅となった。

ピーチをはじめて利用して長崎空港へ

 さて、大阪の中小路線を巡る旅を終え、ここからは九州へと帰る。しかし、時刻はまだ13時過ぎとまっすぐ帰るには早すぎる。せっかくなら、帰りも乗車・搭乗したことのない交通機関を利用してみようということで、関西空港からは初めてのピーチを利用し、これまたはじめて長崎空港を利用してみようと思う。
 最近は航空路線もいろいろな路線に搭乗するようになった。国内線の路線だけでもとんでもない数が存在するので、鉄道のように全路線の完乗というのは目指していない。しかし、旅行の行き帰りでいろんな空港を利用してみたいと思っている。九州から離れた東北や北海道、沖縄の離島の空港は、これから先も旅行などで利用することがあるかもしれない。一方で、意外と使う機会がないのが、九州の普段使わない空港や航空機で移動するほどでもない距離の(例えば中国・四国地方)空港である。こうした空港は使うことを目的にしないとなかなか利用する機会がない。そこで今回ように旅の帰り道で時間に余裕があるときに積極的に利用してみようと思う。今回はその一つとして、長崎空港を選択した。
 
 ピーチは第二ターミナル発着だが、時間があったので、第一ターミナルを見学。8年前、関西空港へ来た時は、飛行機にあまり興味がなく、駅の写真を撮っただけですぐに列車に乗って帰ってしまった。
 
  • 関西空港とPeach Aviationについて
 大阪の世界からの玄関口となっている関西国際空港。近隣の韓国、中国からは主要都市だけでなく、日本人にはマイナーな都市からの直行便も多数運航されている。比重としては東アジアや東南アジアなどの近中距離路線が多いが、北米やヨーロッパ、オーストラリアなど、世界各地へ向かう便が就航している。国際線が主体の空港としては成田空港に次ぐ規模を誇る。一方、国内線はANA、JAL、スターフライヤーが羽田空港との間で就航している。伊丹空港の運用時間が短いため、第二の空港として使われており、早朝・夜間の羽田便は多数設定されている。羽田以外ではANAは新千歳、那覇、石垣、宮古便を、JALは新千歳便を、JTAは那覇、石垣、宮古便を運航している。石垣、宮古と関西への直行便は、伊丹発着では運航されておらず、関西発着便しかない。
 一方、国内線LCCとしては、ピーチとジェットスタージャパンの2社が就航しており、このうちピーチはここ関西空港を最大のターミナルとする。ジェットスターはANAやJALと同じ第一ターミナルを利用し、成田便のみが就航する一方、ピーチは第二ターミナル発着で、沖縄から北海道まで、季節運航路線を含めて13路線を運航している。第二ターミナルを利用する国内線はピーチのみである。
 
 ピーチは2011年に設立されたANA系のLCC。関西空港を最大の拠点とし、成田、新千歳、福岡、那覇などを中核的な空港とする形で、国内線、国際線路線を運航している。かつてANA系のLCCにはバニラエアもあったが、2019年にピーチが吸収する形で統合した。関西空港から九州へのビーチ便は、福岡、長崎、鹿児島、宮崎と離島の奄美の5空港間で運航されている。いずれも関西空港からの直行便はピーチ便が唯一の存在だが、伊丹空港へはANAまたはJALの便(奄美はJAL便のみ)がある。これらの空港のうち、今回利用する長崎と鹿児島は、伊丹便のほか、スカイマークが神戸便を運航している。そのため、関西の3空港である伊丹、関空、神戸の全てからの便が設定されている。(写真は福岡空港で撮影した Peach Aviation Airbus A321LR)
 先述の通り、ピーチは第二ターミナル発着で、このターミナルへは、第一ターミナルから駅を挟んだ先にあるアクセスプラザから連絡バスに乗車し、10分ほどバスでの移動が必要となる。簡易的な造りの第二ターミナルは、座る場所もあまりないので、早々と保安検査を通り、待合室で搭乗開始を待った。
 
 待合室でのんびりしていると、出発時刻の25分前には搭乗開始のアナウンスが流れた。改札は外へ出る直前にあり、それまでの通路は他の飛行機へ搭乗する乗客と同じ経路を歩いていく。ちょうど鹿児島便も最終の搭乗案内中だった。
 Peachは現在、Airbus A320とA321の2機材を運用している。最新機材はA321の方。こちらは航続距離が長いLRタイプであり、現在は国際線メインで運航されていて、国内線で見かける機会は少ない。搭乗したのはAirbus A320ceoのJA826Pだった。搭乗率はというと、平日の昼下がりの便だったが、この日はほぼ満席だった。かなり早く搭乗が開始されたおかげで、定刻より少し早く出発。滑走路まで地上走行が始まった。
 余談だが、PeachのA320は国内線・国際線共通で運用されている。搭乗した機材も、長崎を往復した後は関西から韓国・仁川へ飛び、仁川と羽田を往復して、翌朝、関西に戻って来るという運用になっていた。Peachは国際線のみ羽田空港に就航しているが、国内線路線はないため、必ず海外経由で羽田へやって来る。また深夜便のみの設定となっているため、羽田では基本夜にしかお目にかかることができない。
 
乗車(搭乗)記録 No.31 Peach Aviation 175便 関西国際空港→長崎空港 Airbus A320ceo
 
 第二ターミナルを出発した飛行機は、第1ターミナル側へ移動し、滑走路24Lの途中からインターセクションデパーチャーで離陸した。第1ターミナルにはアジア各国の飛行機が並んでいて、眺めているだけでも楽しかった。離陸すると大阪湾を飛行して淡路島方面へ。機窓には昨年の旅で訪れた南海多奈川線の終点である多奈川駅周辺が見えた。主翼の下に見える海に面した広い更地は、かつて関西電力の多奈川第二火力発電所があった場所。昨年の旅では多奈川駅周辺の山から関西空港に着陸しようとしている飛行機を眺めたのを思い出す。紀伊山地を挟んだ奥には和歌山市街地や紀ノ川も見えていた。
 
 その後は淡路島から小豆島の上空を飛行して西へ。岡山県、広島県の上空を飛行していく。このルートは羽田や中部、伊丹などから福岡、熊本へ向かう飛行機も経由するルートなので、かなり頻繁に通っているのだが、夜間のフライトばかりで昼間の便の乗る機会は少ない。岡山県の上空へ差し掛かると、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋が見えた。瀬戸大橋の手前側の街は児島市と水島コンビナートがある倉敷市の水島地区がある。夜の機窓から眺める時も島を伝う1本の線がとても美しいのだが、昼間はまた地形がはっきりと見えて位置関係が分かりやすい。
 
 広島県の上空を通過して山口県へと進んでいく飛行機。広島市のほぼ真上を通っていくので、広島市街地はほとんど見えないが広島市を通り過ぎたあたりで、山口県の岩国市が見えてきた。米軍の岩国基地が臨海部にある岩国市は、飛行機の上からも見つけやすい。錦川にかかる錦帯橋も確認できる。錦帯橋には3年前のコロナ禍真っ只中に行った錦川鉄道、岩徳線に乗車する旅で訪れた。あの時は宿泊旅行すらままならない世の中の状況だったのを思い出す。
 
 岩徳線の沿線を機窓に進むと、徳山駅がある山口県周南市とその周辺が見え始める。山陽新幹線の線路が市街地周辺で大きくカーブしているのが、空からだとよく分かる。熊本や大分、佐賀へ向かう飛行機は、岩国を出たあたりで南西へ針路を変え、大分市方面へ飛んでいく。豊後水道を隔てた反対側には大分県の国東半島が見えていた。国東半島の竹田津から徳山間にはフェリーが運行されている。こう見ると国東半島と徳山はかなり近いことがわかる。国東半島の沖合には姫島が浮かんでいる。姫島への渡船が発着する伊美港には国東半島外周を路線バスで旅した際に立ち寄ったことがある。確かに伊美港からも山口県側の山の稜線が見えていた。
 
 福岡空港へ着陸する飛行機は広島を通り過ぎたあたりで降下を開始し、混雑状況によっては日本海側の益田市側へ出て、下関市から北九州市の沖合を進んでいくことが多い。一方、長崎空港への飛行機が降下を開始するのはもう少し先で、直線的に飛行して、北九州市、直方市、福岡市の上空を飛行していく。ほぼ山陽新幹線コースで飛んでいく。機窓には行橋市、田川市、飯塚市が見えていた。その後、福岡市の上空へ到達すると、福岡空港のほぼ真上を通る。福岡空港の展望デッキで空を見上げると、長崎行の飛行機が飛んでいるのが見えるが、今はその飛行機に搭乗している形。写真は福岡市南部を写したもので、新幹線の博多総合車両所が画面中央あたりに小さく見えていた。
 
 通常であれば福岡からは筑紫山地を斜めに横断し、佐賀平野へ出るが、この日は発達した雲を避けながら飛行していたので、唐津付近から南に向きを変えて佐賀平野へ出た。佐賀平野まで来ると、いよいよ着陸態勢に入り、長崎空港まではもう少しとなる。その後は長崎本線の真上を飛行する形で、長崎、佐賀の県境に聳える多良山の周りをぐるっとまわる。諫早干拓地や雲仙を眺めて、諫早市街を眺めて降下。大村湾の南側から長崎空港へ着陸した。
 
 定刻よりも少し早く出発したので、長崎空港には10分ほど早く到着。はじめて長崎空港に降り立った。今回は初めてPeach Aviationを使い、関西空港から長崎空港へ飛んだ。天気がいい日の日中のフライトということもあって、機窓の景色を存分に楽しむことができたフライトだった。昨年秋のジェットスタージャパン搭乗以来、1年ぶりに初めての航空会社を利用した。国内線のLCCは残りスプリングジャパンのみとなった。これからもいろんな航空会社を利用して、いろんな空港を使ってみようと思っている。

はじめての長崎空港

 長崎県大村市にある長崎空港。大村湾に浮かぶ空港島に空港があり、世界初の本格的な海上空港として1975年に開港した。空港の滑走路の背後には小さな山があるが、これはもともと大村湾に浮かんでいた箕島という小島の名残。この小さな島の周辺を埋め立てる形で空港は造られている。
 国内線では、ANA、JAL、スカイマーク、ソラシドエア、ピーチ、ジェットスターと当空港を拠点とするオリエンタルブリッジの計7社が就航している。ANA、JAL、ソラシドエアの3社が羽田便、JALとANAが伊丹便、ANAが中部便、ピーチが関空便、ジェットスターが成田便、スカイマークが神戸便で就航し、オリエンタルエアブリッジは、長崎県内離島の壱岐、対馬、福江を結んでいる。一方、国際線路線も就航しており、大韓航空のソウル(仁川)便と、中国東方航空の上海(浦東)便の2路線がある。その他、以前は香港エクスプレス、ジンエア、エアソウルなども就航していたが、撤退もしくはコロナ禍による運休からの復便に至っていない。国内の空港では14番目に利用者数の多い空港だが、九州では上位に福岡、鹿児島、熊本、宮崎空港がいて5番目である。
 
 長崎空港からは空港バスで長崎駅へ行く。バスの発車時刻まで少し時間があったので、展望デッキへ。夕方の時間帯の展望デッキは逆行になるので、あまり撮影に適した環境ではないが、ちょうど離陸していく飛行機があったので、持っていたカメラで撮影してみた。
 写真はオリエンタルエアブリッジのATR-42-600。先に書いたように、長崎空港はオリエンタルエアブリッジ(ORC)の本社所在地であり拠点となる空港である。ORCは長崎の離島である壱岐、対馬、五島などを結ぶ航空会社として設立された航空会社で、現在も長崎空港は県本土と離島を結ぶ便が多く発着している。同社は2022年にATR42-600を受領し、現在は2機を運用している。現在、このATR42は長崎空港発着路線でのみ運用されていて、九州本土でも普段は長崎空港でしか見ることができない。一方、ORCはANAウイングスのDASH-8-400を共同事業機として、この機材で運航している自社路線もある。対馬・福江-福岡線だけでなく、福岡-宮崎、宮崎-中部、中部-秋田線にも就航している。ORCが路線を拡大したというより、ANAの中小路線を実質的に引き受ける形になっていて、ANAがその分便数を減らし、ORCへのコードシェアで対応している。
 
 一方、スカイマークのBoeing 737-800も神戸へ向けて出発しようとしていた。長崎空港はスカイマークが就航しており、神戸便が1日3往復運航されている。九州の空港でスカイマークが就航しているのは、ここと福岡、鹿児島、それに奄美の4空港である。このうち九州本土の3空港についてみると、福岡、鹿児島は複数都市へ就航しているが、長崎空港は神戸便の運航である。実はつい最近まで羽田便も運航されていた。というのもこの神戸便、以前は神戸経由の羽田便として運航されており、季節運行の久米島-那覇経由-羽田便以外では国内唯一の経由便となっていた。長崎-神戸間の運賃の他、長崎-羽田間の運賃も別に設定されていて、1便で2路線を構成していた。2022年の冬ダイヤ以降は、経由便ではなく、乗り継ぎという形態に代わり、長崎-羽田間の運賃に代わり、乗り継ぎ運賃が設定されている。
 この日は展望デッキにいた時間に着陸してくるはずの大阪便と羽田便の両方が遅れていて、結局この2便しか見ることができなかった。

長崎空港から長崎市街を経由して博多へ

 さて、バスの時間が近づいてきたので、バスのりばへ。長崎空港から長崎市街へは、空港バスに乗車する方法のほか、時津で船と路線バスを乗り継ぐ方法があるが、今回は空港バスに乗車して長崎駅へ向かった。長崎空港と長崎市街を結ぶ空港バスは、長崎県営バスと長崎バスの2社の共同運行となっている。長崎多良見ICから長崎バイパスを経由し、昭和町、大浦駅前を経由する系統と、長崎道、出島道路を経由する系統の2つがあるが、今回は後者を利用した。昭和町経由は以前九州内の高速バス旅を頻繁にしていた頃に飽きるほど乗った。出島道路を経由するバスに乗るのは、この道を経由して、博多と長崎を直行する九州号以来だった。
 
乗車記録 No.32 長崎県営バス 空港リムジンバス 出島道路経由ココウォーク茂里町行 長崎空港→長崎駅前
 
 飛行機の遅れの影響で、搭乗していたピーチ便が着陸して以降、1時間近く着陸する便がなかったため、乗車したのは自分を含めてたった2人だった。バスは新大村駅の近くを通り、大村ICから長崎道へ入る。別に路線バスが運行されている諫早には停車せず、長崎道長崎ICから出島道路へ入った。オランダ坂トンネルを抜けると、いきなり長崎市街地が広がるのが、このルートの面白いところ。すぐに長崎バスのターミナルとなっている新地中華街に停車し、市街地を通り抜けて、終点の長崎駅前に到着した。
 長崎空港から45分ほどで長崎駅前に到着した。長崎駅に来るのは、西九州新幹線開業の2ヶ月後に新幹線目当てに来て以来、およそ1年半ぶりだった。
 
 1年半来ない間に、長崎駅前は大きな変貌を遂げていた。前回来た時はまだ鉄の骨組みだった新長崎駅ビルが開業している。駅の背後の山の斜面に広がる街並みは、以前来た時から変わっていないのに、駅の周辺だけまるで別の駅になったかのように変わっている。初めて長崎駅に来た時は、車両基地がある地上駅だったが、あの頃からすると、もはや何もかもが変わっていて、かつての面影を残すものも少なくなっている。以前からある駅ビルの建物はその頃から変わっていないが、別の場所に移動したのではないかとすら思ってしまう。現在もロータリー部分は一部で工事が続いている。最終的な完成は来年になる予定である。
 
 長崎駅からは西九州新幹線と特急リレーかもめで今回の旅のゴールとなる博多駅へ。大阪旅行なのに西から博多へ帰るなんて、ちょっと不思議な気分になる。今回が3回目の乗車となる西九州新幹線かもめに乗車して、夕暮れの長崎の街をあとにした。
 
乗車記録 No.33 西九州新幹線 かもめ54号 武雄温泉行 長崎→武雄温泉 N700S
 
 乗車した列車は、諫早、新大村に停車し、嬉野温泉を通過するタイプの列車だった。長崎から武雄温泉間の所要時間はわずか28分。諫早を出ると、車窓には大村湾が広がり、先ほどまでいた長崎空港も見えた。ちょうどオリエンタルエアブリッジの対馬行が離陸し、大空へ消えて行った。飛んでいったのは、さっき展望デッキで見送った福江行きに使われていたのと同じJA20RCだった。長崎市街との間を往復してる間に、飛行機は離島の福江まで行って帰ってきて、対馬に行こうとしている。飛行機ってすごいななんて考えていると、嬉野温泉を通過する頃には、まもなく武雄温泉ですという車内放送が流れ、あっという間に武雄温泉に到着した。
 
乗車記録 No.34 特急リレーかもめ54号 博多行 武雄温泉→博多 787系
 
 武雄温泉では対面接続の特急リレーかもめ54号博多行きに乗車して博多へ。787系の車内の薄暗い雰囲気は、どこかホッとする。武雄温泉から博多間の所要時間は1時間ほど。小腹が空いたので、長崎駅のコンビニで軽食を買ったのはいいが、新幹線では所要時間が短くて食べられず、ここでようやく開封。夜の787系の走りを楽しみながら、佐世保線、長崎本線、鹿児島本線と辿り、数時間前に上空を通過した福岡市街に到達。長崎駅から約1時間30分で終点の博多に到着した。大阪から長崎を経由したこの旅行もここが終点。2日目間電車、バス、飛行機にひたすら乗り続けた旅もここで幕を下ろした。

おわりに

 今回はあと少しとなった関西の未乗路線のうち、大阪府内を走る中小路線と地下鉄線を巡った。1日目はOsaka Metro今里筋線、谷町線、阪堺電車、近鉄道明寺線、信貴線、西信貴ケーブルに、2日目は南海高師浜線と水間鉄道水間線に乗車。比較的マイナーな路線ばかりで渋い旅ではあったものの、その分これまであまり訪れて来なかった河内エリアをはじめとする各地を訪れることができた。また、信貴線と西信貴ケーブルに乗車して訪れた信貴山では、かつて走っていた鉄道路線の面影を随所に楽しむことができた。宿泊した奈良への行き帰りには、近鉄特急ひのとりとJRのらくラクやまとを利用した。特急ひのとりは新型の名阪特急として2020年にデビューし、いろんな情報で評判を聞いていたが、大阪-奈良間の移動には逆にもったいないくらいにいい車両・座席だった。名阪特急としても乗車する計画なので、この時には大阪-名古屋間の車窓をゆったりとくつろぎながら楽しむつもり。また乗車できる日を楽しみにしたい。
 関西地方の未乗路線は、来年開業予定のOsaka Metro中央線の延伸区間を含めて4路線となった。来年は万博が開催される予定となっているので、なんとか万博開催前までには全ての路線に乗り終えたいと考えている。
 

関西地方のその他旅行記

 

今回はじめて乗車した路線

【鉄道路線】
大阪市高速電気軌道 今里筋線 井高野-今里間
阪堺電気軌道 上町線 天王寺駅前-住吉間
阪堺電気軌道 阪堺線 恵比須町-浜寺駅前間
近畿日本鉄道 道明寺線 道明寺-柏原間
近畿日本鉄道 信貴線 河内山本-信貴山口
近畿日本鉄道 西信貴鋼索線 信貴山口-高安山
大阪市高速電気軌道 谷町線 八尾南-大日間
南海電鉄 高師浜線 羽衣-高師浜
水間鉄道 水間線 貝塚-水間観音間
 
【バス路線】
大阪シティバス [37]大阪駅前-井高野車庫前
大阪市高速電気軌道 いまざとライナー(あべの橋ルート) 地下鉄今里-あべの橋間
近鉄バス 信貴山上線 高安山-信貴山門間
奈良交通[42]信貴山門-王寺駅間
長崎県営バス 空港リムジンバス(出島道路経由) 長崎空港-長崎駅間
 
【航空路線】
Peach Aviation 関西空港-長崎空港
 
※長崎県内区間は省略