【旅行記】特急宗谷と日本海オロロンライン路線バスで行く道北・稚内旅~稚内駅周辺とノシャップ岬を観光~

前話
 
 稚内駅前に宿泊して迎えた3日目。この日は朝から稚内駅周辺とノシャップ岬を観光し、稚内駅から普通列車で豊富へ。その後は日本海オロロンラインを進む沿岸バスの路線に乗車し、留萌へ向かった。

北防波堤ドームと稚内港周辺を散策

 前日は特急宗谷でお昼過ぎに稚内に到着し、その後宗谷岬まで行って帰ってきたが、この日は10時半の普通列車で稚内を発つまで、稚内港周辺とノシャップ岬を観光していくことにした。
 7時過ぎにホテルをチェックアウトして、まずはホテルの客室からも見えていた海岸線へ。今は稚内港の北の端にいるが、市街地自体はまだこの先もノシャップ岬の手前まで続いている。ここは一段高くなっていて、ノシャップ岬方面へ続く街並みと、宗谷湾を一望することができた。この道は周辺に住む稚内市民には散歩コースとなっているようで、ジョギングや犬の散歩をする人の姿があった。観光地巡りももちろん大好きだが、そこに住む人たちの何気ない日常を感じながら旅するのも楽しい。
 
 稚内で有名な観光スポットに稚内港北防波堤ドームがある。泊まったホテルのすぐ横にあり、客室からも見えていた。稚内市街のシンボル的な存在の建造物である。日露戦争後の1905年に締結されたポーツマス条約では、樺太のうち、北緯50度より南側が日本の領土となった。その後、稚内と樺太・大泊(現在のコルサコフ)の間は、稚泊連絡船で結ばれた。ここはその連絡船が発着していた場所だった。
 稚内港一番北に位置するこの場所は、日本海が目前に広がっている。ドームができる前は防波堤の設備が十分でなく、高波の被害を受けていらしい。連絡船ののりばを高波から守り、安全に連絡船に乗船できるようにすべく、1936年に完成したのが、この北防波堤ドームである。
 
 北防波堤ドームの全長は427メートル。当時、コンクリート製の建築物というものは日本では普及しておらず、とても画期的だったそう。ギリシャの神殿を思わせる柱が並ぶ姿は圧巻である。稚泊連絡船が発着していた頃は、このドームの横に稚内駅から線路が延びていて、直接列車から船へ乗り継げるようになっていたらしい。日本は戦後、樺太の領有権を放棄したが、稚泊航路も戦後直後になくなった。ドームがこの航路を守ったのは、10年ほどだったが、それ以後も稚内のシンボルとして大切に保存されている。
 
 北防波堤ドームから稚内港のターミナルの方へ歩いてきた。稚内港は現在も利尻島、礼文島へのフェリーが発着している。利尻島は鴛泊港、礼文島は香深港発着でどちらも1日2〜3往復が運航の運航である。一方、利尻島、礼文島へのフェリーが発着するターミナルの奥には国際旅客ターミナルがある。以前はここからサハリンのコルサコフ港までの国際航路が就航していた。しかし、現在は国際情勢の影響から休止していて、再開の目処は立っていない。
 
 稚内駅を通りすぎて、駅の南側へ歩いてきた。ここには何の変哲もない大通り踏切という踏切がある。この踏切は稚内駅を出て数百メートルの場所にある。すなわち、宗谷本線で一番北に位置する日本最北端の踏切である。写真を撮っていたら突然踏切が鳴り出した。ちょうど音威子府始発の普通列車の到着時刻だったようで、運良く列車が通過するシーンを撮影することができた。キハ54形1両編成の列車がゆっくりと踏切を通過していき、稚内駅へ入っていった。
 
 踏切から駅へ戻る途中、国道から一歩入った場所には、商店街の通りがあった。もちろん今も営業している店はあったが、半数かそれ以上は閉まっているようだった。かつては賑わっていたのだろう。現在は南稚内駅周辺に多くのロードサイド店舗があり、こちらの方が賑わっている。どこへ行っても中心となる駅の周辺は旧市街と化している。この通りの西側には、もう一つ大きな通りがある。稚内市役所や郵便局がある通りで、路線バスも稚内市内で完結する路線の多くはこちらを経由していく。
 
 商店街を通って、稚内駅へ。稚内駅前の交差点は、道路としても一つの重要なポイントになっている。ここは旭川から続く国道40号線の終点であり、留萌へ続く国道232号線の起点である。2つの国道は、ここから幌延町まで重複区間となっていて、その先で国道40号線は宗谷本線・天塩川に沿って内陸向かい、国道232号線は日本海の海岸線へ出て南へ進む。この稚内駅前の交差点は最北端の国道の起終点となる交差点である。
 

稚内にあるもう一つの岬、ノシャップ岬を観光

 稚内駅前をぐるっと見て回った後は、路線バスに乗車して、ノシャップ岬を訪れた。稚内には2つの岬がある。一つが昨日訪れた宗谷岬。こちらは市街地からかなり離れた場所にあった。一方、もう一つの岬であるノシャップ岬は、市街地がある側の先端で、こちらは路線バスで駅から15分ほどしかかからず気軽に行ける。市街地を走るバスの起終点になっているので、バスの本数も充実している。
 
 稚内駅前からバスに乗車してノシャップへ。途中は概ね住宅街が広がっていて、団地や学校の横を通っていった。ノシャップの手前には、自衛隊の稚内分屯地がある。ここは陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の分屯地が集約された場所。こうした分屯地は珍しいらしい。山の上にはレーダーがたくさん設置されていて、北の方を監視し続けている。
 
乗車記録 No.14
宗谷バス 稚内市内線 ノシャップ行
稚内駅前ターミナル→ノシャップ
 
 ノシャップでバスを下車した。バス停からノシャップ岬までは歩いて10分弱かかる。写真の奥に見える紅白の塔がノシャップ岬の灯台で、あの付近まで歩くことになる。ここは稚内市街地を走るバスの折り返し地点。ここから先へ行くバスもあるが、多くのバスがここで折り返し、稚内駅方面へ戻っていく。市街地の端であるため、宗谷岬に比べれば、果て感はないが、第二の北海道の北の果てとしてやはり訪問しておこうと思う。
 
 バス停から10分ほど歩いてノシャップ岬に到着。稚内の市街地は曇っていたのに、ノシャップ岬は青空が広がっていた。岬には小さな公園が整備されていて、中央にはイルカの時計台が置かれている。その奥には日本海の大海原が波を立てていた。
 
 今度は公園から北東方向を眺めてみる。岬の東側には、稚内灯台がある。前日見た宗谷岬の宗谷岬灯台と同じく、日本の灯台50選に選ばれている灯台で、北海道の灯台の中では一番塔の高さが高いらしい。その横には稚内市立ノシャップ寒流水族館と、青少年科学館がある。寒流水族館も稚内の有名な観光スポットだが、今回は営業時間ではなかったので、立ち寄らなかった。
 奥に広がるのは宗谷湾で、サハリン方面を見ている。ノシャップ岬からサハリンは遠すぎてさすがに見えないようだが、おそらく水平線の奥で雲の色が濃くなっているあたりがサハリンなんだろうと思う。
 
 ノシャップ岬と書かれた看板の後ろには、利尻島が見えた。この日の利尻富士は山頂に雲がかかっていたが、それでも富士山のような円錐形の山の形を見ることができた。気象のことは分からないが、利尻富士が雲を生み出していて、それで稚内が曇っているようだった。ノシャップ岬の看板の下の方には礼文島の山の稜線が見えていた。
 
 帰りは灯台の前を通り、海岸沿いを歩いてバス停に戻った。ノシャップバス停からは再び、稚内市街地方面行きのバスに乗車し、稚内駅へ。これで今回予定していた稚内の観光スポット巡りは終了。24時間にも満たない滞在だったが、2つの岬を訪れることができ、とても充実した時間だった。稚内には他にも観光スポットがいくつかある。2度目は鉄道で来るか、飛行機で来るかは分からないが、また来たいと思う。この地を再び訪れることができたなら、今回行かなかった観光地も巡ってみたいと思う。
 
乗車記録 No.15
宗谷バス 稚内市内線 潮見5丁目行
ノシャップ→稚内駅前ターミナル
 
 さて、稚内駅へ戻った後は、札幌への復路の旅をスタートさせる。往路は特急宗谷1本で稚内まで来たが、帰りは宗谷本線の普通列車と日本海オロロンラインをゆく2本のバスを乗り継ぎ、留萌で宿泊しながら帰る。稚内からは10時28分発の普通列車名寄行に乗車し、バスの始発地である豊富へ。また来ることを心の中で誓いつつ、稚内の市街地を後にした。