【旅行記】室戸まわりで阿佐海岸鉄道を再訪する旅~路線バスを乗り継ぎ四国東海岸を北上する~
安芸-室戸線の終点、室戸世界ジオパークセンターへ

1時間15分ほど室戸岬を観光したあと、ここから路線バスの乗り継ぎの旅を再開させた。室戸岬は安芸-室戸線の途中のバス停なので、この先もあと少しだけ続きがある。この後は一旦室戸市街地へ戻るが、まずはこの路線の終点である室戸世界ジオパークセンターへ行くことにした。
バスは定刻通りにやってきた。先ほど乗車したバスは中型のバスだったが、今度は小型のポンチョだった。室戸岬から終点の室戸世界ジオパークセンターまでは約15分で到着する。
乗車記録 No.10
高知東部交通 安芸-室戸線 室戸世界ジオパークセンター行
室戸岬→室戸世界ジオパークセンター

室戸岬で自分ともう一人の乗客を乗せ発車したバスは、岬周辺で向きを変えて北へと進んでいく。最初は写真のような海が車窓に楽しめるが、その後は漁港や住宅、工場などが道路と海岸との間にあるため、終点まで海が見える区間は少なかった。バスは途中でシレストむろとという施設の敷地内へ入り、玄関前のバス停に停車した。ここは海洋深層水を活用したプールや露天風呂、サウナなどがあるらしい。沿道に建つ工場も海洋深層水を用いた飲料水の生産や養殖業を行う会社のものらしい。

室戸岬から15分ほどで終点の室戸世界ジオパークセンターに到着。安芸からの路線はここで途切れていて、ここから先の甲浦方面はここで乗り換えとなる。接続便がある時間だと、数分の接続で乗り換えられるが、この便には接続のバスはなく、次の甲浦行のバスまでは1時間ほど時間があった。
ここはかつての中学校を活用した博物館で、室戸ジオパークの情報発信基地になっている。今回はバスの時間の都合上、かなり急ぎ足で見た形になったが、中には室戸周辺の地質に関する展示があった。室戸岬を訪れる前に立ち寄るとより室戸岬について地質的な観点から楽しめるのではないかと思う。ここジオパークセンターの敷地内には、南海トラフ周辺の地震や津波を検知するために太平洋上に張り巡らされた観測網の地上局も併設されている。地上局はここと宮崎県の串間市に設置されており、串間からここまで観測用のケーブルが海底に張り巡らされている。

ジオパークセンターの目の前に広がる海もとてもきれいだったので、海岸まで歩いて行ってみた。写真はジオパークセンターから徳島県、紀伊水道方面を眺めている。奥に見える山の稜線は徳島県の牟岐や日和佐あたりだろうか。おそらく山の稜線の先端は阿南の蒲生田岬なのだと思う。尖った室戸半島の先端近くにいることが、ここからだとよく分かった。
一旦来た道を戻り次のバスの始発地、室戸営業所へ

室戸世界ジオパークセンターからは直接甲浦行のバスに乗り換えるのではなく、一旦室戸市街地へ戻る。というのも、室戸と甲浦を結ぶ路線は、世界ジオパークセンターが始発ではなく、室戸岬より少し室戸市街地側へ戻った室戸営業所が始発のバス停になっている。室戸岬-室戸世界ジオパークセンター間は、安芸-室戸線が室戸岬をまわって行く一方で、室戸-甲浦線は室戸市街地からショートカットする形で走っている。このため両者で走るルートが微妙に異なっている。ここで待っていても、一旦室戸営業所まで行っても結局乗るバスは同じバスになる。せっかくなので、室戸半島をショートカットする区間にも乗ってみることにした。
室戸世界ジオパークセンターからは一旦、来た道を戻る安芸駅行のバスに乗車。予想はしていたが、乗車したのは先ほど室戸岬から乗車したのと同じバスだった。
乗車記録 No.10
高知東部交通 安芸-室戸線 安芸営業所行
室戸世界ジオパークセンター→室戸営業所

バスは来た道を戻る形で、ついさっきまで滞在していた室戸岬を通過。約40分ぶりに岬の景色を再び眺める。道路は左側通行なので、当然ながら室戸から安芸へ向かう方が海が近く見える。バスは窓一杯に広がる室戸岬の景色を眺めながら進んでいく。このように本当は徳島→高知と旅した方が、海をより目前に楽しめるのだが、このルートだと晴れた日は、基本的に一日中眩しい。それが難点である。

室戸世界ジオパークセンターから乗車したバスを室戸営業所で下車。室戸世界ジオパークセンターからここまで一人だったが、自分が降りて一人が乗車したので、相変わらず乗客は一人のまま発車していった。ここにはその名の通り、高知東部交通の室戸営業所がある。敷地内には何台かのバスが止まっていた。ここには窓口が設置されており、定期券のほか、徳島バスが運行する大阪行きの高速バスの乗車券も販売されている。高速バスの始発である室戸(海の駅とろむ)は、ここから歩いて7・8分のところにある。ここでは再び20分の待ち合わせ。近くの街並みを見に行ったりしながらのんびりとバスを待った(写真は敷地外から撮影)。
室戸-甲浦線で高知東海岸をひた走り、東洋町の甲浦へ

室戸営業所からはここ始発の甲浦岸壁行に乗車した。高知県の東海岸を走るこの路線は平日7往復、土休日6往復が運転されている。先述の通り、安芸-室戸線が室戸市街地から室戸岬をまわって室戸世界ジオパークセンターへ向かう一方で、このバスは室戸営業所から北へ進んで、室戸市街地を抜け、その後トンネルで東海岸へショートカットして、室戸世界ジオパークセンター向かう。その後は東海岸をひた走って高知県東部の端、東洋町へと走っていく。
どこでバスを待っていればいいのかよくわからなかったので、とりあえずバス停の標柱の前で立っていると、運転士さんから「甲浦?」と声をかけられ、そうですと答えると「乗ってええで!」とバスに案内してもらえた。四国の東側は関西のイントネーションに似ている。気さくな運転士さんで助かった。
乗車記録 No.11
高知東部交通 室戸-甲浦線 甲浦岸壁行
室戸営業所→海の駅東洋町

室戸営業所を発車したバスは、狭い通りを室戸市街地方面に走った後、国道55号線との交差点を左折して一旦南下。海の駅とろむのバス停に立ち寄った。ここには高速バスターミナルと書かれた建物があり、大阪へ向かう徳島バスの高速バスの始発・終点になっている。路線バスも乗車中の室戸-甲浦線と、阿佐海岸鉄道DMVの土休日1往復乗り入れていて、一応ターミナルの役割を果たしている。周辺は道の駅と同等の役割を担っていたようだが、現在は飲食店が営業しているだけで、あまり人気がなかった。
海の駅とろむでUターンすると、バスは国道55号線を北上。その後、室津交差点を右折した。その後はさっき安芸-室戸線でも通った高校前までの通りを走っていく。室戸高校前のロータリーをまわると、その後は三津浜トンネルを抜けて東海岸へショートカット。先ほど立ち寄った室戸世界ジオパークセンターに到着した。

室戸世界ジオパークセンターでは1人が乗車。このバスには、この後1人も乗ってくることはなく、結局乗客は2人だけだった。室戸世界ジオパークセンターを出ると、そこから先は国道55号線をひた走り、高知県の東海岸を北上していく。車窓には再び青い海が広がった。東海岸は断崖絶壁の崖になっていて、山と海の間の狭い海岸線をバスは快調に走っていく。

このバスは東洋町の甲浦まで、ほぼひたすらに国道55号線を走っていくが、途中2ヵ所で国道を離れる場所がある。一か所目は室戸市の椎名地区にあるむろと廃校水族館。先ほど行った室戸世界ジオパークセンターは、閉校した中学校を活用したものだったが、こちらは廃校となった椎名小学校を活用した水族館で、室戸市の観光名所の一つになっている。廃校になった学校は各地でいろんな形で活用されているが、水族館として活用するなんて斬新なアイデアだなと思う。バスは玄関前でUターン。ここにあるむろと廃校水族館バス停に停車した。ちなみにこの次のバス停はむろと廃校水族館前という似た名前になっていて、国道上に設置されている。朝夕など営業時間帯外は、敷地内へは入らず、国道をそのまま走っていく。

水族館から国道へ復帰したバスは、再び国道55号を快走して、次の集落へ進んでいく。断崖絶壁の海岸線が続くため、このあたりは隣の集落までかなりの距離がある。数か月前に乗った北海道の沿岸バスにも似ているが、やはり北海道のそれは街の離れ方のスケールが違う。途中に信号もないので、バスはどんどん室戸の市街地から離れていく。やがて佐喜浜地区へ到着。ここは比較的大きな集落で、佐喜浜バス停で時間調整のためしばらく停車した。

佐喜浜を出ると再びバスは海岸線を進む。バスが次に通過する野根という集落までは15kmほど離れていて、そこまでバスはひたすらに写真のような海岸線を進んでいく。しばらくするとバスは室戸市を出て、東洋町へ入った。バスの車窓に望む空と海の青は本当に美しかった。

淀ヶ磯と呼ばれる海岸線を進んだバスは、野根川を渡り、東洋町の野根地区に入った。ここから先、バスは東洋町内で野根、生見、甲浦という3つの地区を走っていく。それぞれの地区の間は小さな峠になっていて、国道もアップダウンを繰り返しながら山を越えていく。生見地区では一旦国道55号を離れて、東洋町の町役場へ立ち寄った。東洋町は合併時に、どこに町役場を建てるかで相当揉めたらしい。最初は野根と甲浦で数年おきに町役場を移動した時期もあったのだとか。最終的には中間の生見地区に建てられることになったらしい。生見地区を出て、再び小さな峠を越えると、バスは甲浦地区に到着。ここにある海の駅東洋町バス停でバスを下車した。
道の駅東洋町でカツオのたたきを堪能

海の駅東洋町に到着。ここは以前は道の駅ではなかったのだが、数年前に道の駅に登録され、現在は道の駅東洋町となっている。バス停については名称が変更されておらず、海の駅東洋町のままになっているので少し紛らわしい。阿佐海岸鉄道の甲浦駅(現在は正式にはバス停)は、ここから10分ほど歩いた場所にある。DMVが運行を開始する以前は、乗車した室戸方面からのバスも甲浦駅に乗り入れていた。しかし、DMVの運行開始とともに運行ルートが再編され、甲浦駅は非経由となっている。ここからは一度来たことがあるエリアに入っていく。しかし、前回来た時は甲浦駅周辺を少し歩いただけだったので、街自体への訪問は初めてと言っていいかもしれない。
数分の接続ですぐに阿佐海岸鉄道のDMVがやってくるので、乗り継ぐことも可能だが、DMVはここではなく隣の徳島県海陽町にある道の駅宍喰温泉が始発。どうせなら始発から終点まで乗ってみたいので、ここから宍喰まで、あともう少しだけ路線バスの旅を続けていく。ここから宍喰温泉へのバスまでは50分ほど時間があるので、ここでお昼休憩を取ることにした。

道の駅東洋町には物産館があり、地元産の鮮魚がたくさん販売されていた。さらに食堂も営業していて、高知名物のカツオのたたきの他、この地域で多く水揚げされるというマグロの刺身定食などが味わえる。また物産ブースで販売されている魚を捌いてもらって食べることも可能なんだとか。今回は久しぶりの高知ということでカツオのたたき定食を注文した。
ブザーを渡され取りに行くフードコートスタイルの食堂だが、取りに行ってカツオの大きさに驚く。刺身定食とかだと、刺身の量とご飯の量が釣り合っていないことも多々あるが、これはむしろご飯が足りないレベル。ポン酢のほかに塩とニンニクも添えられていて、このニンニクとの愛称が抜群だった。今回は少し寒かったので店内で食べたが、外にもテラス席が用意されていて、外で食べることもできる。目の前に広がる海を眺めながら、最高の昼食となった。

食堂でお腹を満たした後は、道の駅周辺をしばらく散策。ここには白浜海水浴場が広がっている。名前の通り、白い砂浜が特徴的な海岸。アーチ状の海岸線がとても美しい場所だった。この時間は干潮の時間だったのか、かなり水が引いていた。海岸まで歩いて行ってみようかと思ったが、砂浜を歩いたら靴が大変なことになるので、遠目から眺めるだけにしておいた。

道の駅には津波避難タワーが設置されていた。今いる高知県東部は近い将来発生すると言われている南海トラフ地震で、津波が襲来し、大きな被害が出ることが予測されている。ここ東洋町周辺は津波の被害が予測されるエリアの中でも、地震発生から津波の襲来までの時間が短いというシミュレーションがある。いつかはやって来ると言われている南海トラフ地震。起こるにしてもその被害が最小限になることを願っている。
徳島バス南部の牟岐行で道の駅宍喰温泉へ

さて、海の駅東洋町からは阿佐海岸鉄道の始発停留所である道の駅宍喰温泉まであと少しだけ北上を続ける。ここから道の駅宍喰温泉までは、DMVだけでなく、徳島バス南部の路線バス、徳島バスの大阪行の高速バスも利用できる。今回は時間的に徳島バス南部の路線バスが都合がよかったので、これに乗車してみた。
徳島バス南部は、徳島バスグループの一員として、徳島県南部の那賀郡と海部郡で路線バスを運行している。車体に書かれているように一般的には南部バスと呼ばれているらしい。高知県へも県境を跨いだ先の海の駅東洋町まで乗り入れていて、路線は牟岐とここを結んでいる。この間のバスは1日13往復が設定されており、経由地が異なる系統が複数用意されている。このあたりの地域利用はDMVよりこのバスを使う方が公共交通としてはメインである。
乗車記録 No.12
徳島バス南部 牟岐線(28系統) 牟岐行
海の駅東洋町-宍喰温泉前

海の駅東洋町から道の駅宍喰温泉へはまっすぐ行けば5分ほどで行くことができるが、このバスは途中で2ヵ所に寄り道して走るので、所要時間は20分とかなり長めになっている。甲浦では港を経由する便もあるが、この便は国道経由で非経由だった。その一方で、県境を越え徳島県へ入った直後に右折して一旦国道を離れ、竹ヶ島という島との間を往復した。竹ヶ島は徳島県最南端の地。四国本土とは小さな橋で結ばれていて、バスはその橋の先にあるバス停でUターンした。国道へ戻ると、すぐにトンネルを通過し、宍喰の街へと進んでいった。

宍喰へ入ると、街の入口で再び国道から離れた。道の駅宍喰温泉はもう目と鼻の先だが、バスはここから宍喰駅と宍喰の街中を経由していく。竹ヶ島も一部は通過するが、ここ宍喰駅も経由する便は限られている。運行ルートの関係上、宍喰漁港前~宍喰駅前間は阿佐海岸鉄道の車両基地の近くを通る形での往復となり、やや遠回りを強いられる。宍喰駅前でUターンしたバスは、来た道を宍喰漁港前付近まで戻り、そこからは市街地の狭い通りを進んだ。その後、宍喰温泉の裏手から国道へ出て、ようやく宍喰温泉前に到着。ここでバスを下車した。

高知県から徳島県へ入り、道の駅宍喰温泉に到着。ここ道の駅宍喰温泉が、阿佐海岸鉄道DMVの始発地。先ほどまでいた海の駅東洋町からも乗車できるが、せっかくなら始発地から乗りたいということで、わざわざここまでやってきた。乗車した徳島バス南部では宍喰温泉というバス停名になっているが、阿佐海岸鉄道DMVの道の駅宍喰温泉と同じ場所にバス停がある。ここは道の駅宍喰温泉と温泉・宿泊施設「リビエラししくい」がある。道の駅の中はDMV一色といった感じで、DMVが走るジオラマが展示されており、DMVのグッズがたくさん売られていた。

この道の駅の最大の見どころは目の前に広がる海ではないかと思う。とにかく目の前に広がる海が美しい。先ほどまでいた海の駅東洋町も海が見渡せたが、あちらはやや狭い入り江になっていた。一方、こちらは目の前に広々とした海が広がっている。今年の夏に台風が来た時、偶然テレビを付けたらここから中継をやっていた。数か月後にここに行くんだよなぁと思いながらテレビを見ていたのを思い出す。中継映像の海は灰色でどんよりしていたが、晴れていたらこんなに美しいのかとしばらく見とれてしまった。素朴な海の景色だが、本当に美しかった。
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