【旅行記】北関東鉄道探訪録 後篇 ~新路線宇都宮ライトレールに乗車~
前話
わたらせ渓谷鐡道の沿線から日光市営バスと日光線を乗り継いで、宇都宮へと出てきた。今回宇都宮へ来たのは、2023年8月に開業した宇都宮ライトレールに乗車するため。今回は乗りつぶしを兼ねて全区間を往復しながら、新路線を体験していく。
2023年夏に開業した新路線、宇都宮ライトレールに乗車する

2023年8月26日に開業した宇都宮ライトレール。路線の区間延伸を除いて、国内の鉄道・軌道路線の中では2025年1月現在、最も新しい路線である。一般的に宇都宮ライトレールと呼ばれているこの路線だが、宇都宮ライトレールというのは会社名で、路線の正式な名前は宇都宮芳賀(はが)ライトレール線という。宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地間の全長14.6kmを結ぶ路線で、法律上は軌道(路面電車)に分類され、運行されている。路面電車路線の新しい路線というのは、富山県の万葉線が開業した1948年以降なく、この宇都宮芳賀ライトレール線は実に75年ぶりの新しい軌道路線となった。
モータリゼーションの進行で、各地で数を減らしていった路面電車。しかし、最近ではライトレールという新しい概念の元で再注目されている。各地で渋滞問題が報じられ、環境に配慮する交通形態が求められる中で、路面電車という存在意義も見直されてきた。ここ宇都宮は早くからライトレールの導入を検討し初めており、2023年8月の開業は、まさに30年越しの悲願の開業だった。
宇都宮市東部と隣接する芳賀町、高根沢町周辺に工業団地が開発され、大手企業をはじめとする多くの企業の工場がある。また、近年では工業団地に挟まれたエリアに新興住宅地が開発され、この周辺の人口も増加していた。このあたりは市街地から離れており、近くに鉄道は走っておらず、またバス路線が充実しているわけではなかったため、以前から渋滞が問題となっていた。宇都宮ではこの都市課題の改善へ向けて、1990年代以降、宇都宮市街地と市東部方面を結ぶ新たな交通機関の建設が模索されてきた。バス会社の反対や政治的な影響もあり、建設へ向けた合意形成には時間を要したが、2018年に着工し、2023年夏についに開業することとなった。開業前はライトレールの効果を疑問視する声も多かったが、蓋を開ければ大盛況。予想を上回る利用があり、現在はすっかりこの地域の足として定着している。

早速、JRの改札から東西自由通路を通って、宇都宮駅東口電停へ。以前は正直何もなく、前回宇都宮へ来た時には抜けれるとも気づいていなかった東口だが、現在はライトレールの工事と共に再開発が行われ、ヨークベニマルやコジマ×ビックカメラ、その他飲食店が入る宇都宮テラスとコンベンションセンターであるライトキューブ宇都宮が建設されている。市街地に面した西口とは対照的に、現代的な雰囲気の駅前の光景が広がる。宇都宮駅東口電停は、これら建物へ続く東西自由通路からエスカレータで直結している。
やがて黄色いライトレールの車両がカーブを曲がって入線してきた。ライトレールのコンセプトは「雷都を未来へ」だそうだが、再開発された東口エリアの景観とラストレールの組み合わせは、まさに新しい街や交通を象徴する光景だった。宇都宮は特に夏場によく雷が発生するので、雷都と呼ばれている。ライトレールの車両デザインはもちろん警戒色の意味合いもあるが、この雷がモチーフになっている。

電停横の広場でライトレールを撮影し、その後1本待って、芳賀・高根沢工業団地行に乗車した。日中のライトレールは12分間隔、1時間あたり5本が運転されている。到着後は乗客が下車した後一旦ドアを閉め、運転士が運転台を移動。その後再びドアが開いてから乗車できる。とりあえず一番眺めの良さそうな席へ座った。
宇都宮ライトレールで活躍するHU300形は、3両で1ユニットを組む。デザインは異なるが車体は福井鉄道のF100形に似ている。調べると、どちらも新潟トランシスが製造し、やはり車体はF100形をベースに作られているらしい。車内には4人掛けのボックスシートが並ぶ。乗降口付近は2人掛けのシート、車両連結部はロングシートになっていた。車両中央部と車端部には大きなディスプレイが設置されており、停留所の案内や広告が流れる。まだデビューから1年半ということで、車両は真新しかった。
路線にはこの車両の愛称と同じく「ライトライン」という愛称が設定されており、駅掲示のポスターや案内に関しては全てライトラインで統一されている。その一方で、開業以前から社名である「宇都宮ライトレール」と呼ばれることが多かったため、やはりこちらの呼び名の方が一般的かもしれない。
乗車記録 No.12
宇都宮ライトレール 各停 芳賀・高根沢工業団地行
宇都宮駅東口→芳賀・高根沢工業団地 HU300形

宇都宮駅東口を発車したLRTは、カーブを曲がり、鬼怒通りへと進んでいく。道路へ出る手前には宇都宮駅東口行きのLRTが信号待ちで待機していた。この路線は併用軌道と専用軌道が繰り返しながら終点へと向かっていく。宇都宮駅東口駅から宇都宮大学陽東キャンパス間は併用軌道、そこから清陵高校前までは専用軌道を走る。その先は終点まで基本的に併用軌道だが、途中のグリーンスタジアム前からゆいの杜西間では立体交差のため一部で専用軌道となっている。

日中の便だったが、宇都宮駅東口発車の時点では立ち客が多数出る混雑ぶりだった。宇都宮駅の東側も最初はホテルや会社のオフィスのビル、それに背の高いマンション立ち並んでいて、景色も都会的だった。道路側の信号機は路面電車との事故を避けるために青信号は出さずに直進、右左折いずれも矢印で示される。路面電車通過中は右折の表示が出ないので、路面電車との事故が未然に防止されている。信号機の制御についてはよく分からないが、この時間帯は信号待ちも少なく、割とスムーズに進んでいった。

宇都宮市街地側の併用軌道区間では、東宿郷、駅東公園前、峰、陽東3丁目、宇都宮大学陽東キャンパスの順に停車して行く。電停は交差点を挟んで互い違いに配置されており、写真の通りとても広々としていた。駅東公園前~峰間では国道4号線宇都宮バイパスとの立体交差を進んでいく。路面電車が道路の立体交差を走るのは珍しい気がする。市街地の端である宇都宮大学陽東キャンパスでは多くの乗客が下車。大学生の利用も多かったが、電停の近くには大きな商業施設があり、そこへ行く人達の利用も多かった。

国道4号線の宇都宮バイパスの上を通過したあたりから、景色もビル街から住宅街へと変わり、沿線の建物の背も低くなる。宇都宮大学陽東キャンパス電停付近が市街地の東の端。その先で道路と分かれて専用軌道へ入ったLRTは、並走してきた道路と立体交差して、次の平石電停へ向かっていく。車窓も一気にのどかになり、田畑が広がった。渋滞対策として導入された乗り物なので、道路との平面交差も極力避けられている。路面電車が高架橋を走るというのも、他ではあまり見ない光景だと思う。

専用軌道に入って最初の平石電停には、ライトレールの車両基地が併設されている。駅は2面4線で、車両基地への線路が分岐すると同時に、列車を待避できる構造になっている。ライトレールは各停の他に快速の運転も行われている。現在の快速は緩急接続を行っていないが、将来的には快速便と各停便が緩急接続するダイヤを構成できるような駅の配線になっている。このような2面4線になっているのは、こことこの先のグリーンスタジアム前の2ヵ所。線路は一部で舗装されているので、なんだかカーペットの上に広げたNケージのように見えた。駅にはパークアンドライドの駐車場も設けられていて、車を置いてLRTに乗車できるようになっている。これも市街地の渋滞対策とライトレールの利用促進に寄与している。
平石電停を出ると、国道4号線のもう一つのバイパスである宇都宮環状道路と交差し、平石小学校前に停車。専用軌道でも道路との交差部は交差点の扱いなので、小さな道路との交差部には道路の方に止まれの標識と接近表示灯が設置され、大きな道路との交差点には電車の接近と連動した信号機が設置されていた。平石小学校前を出ると再び高架橋へ進み、鬼怒川を渡った。

鬼怒川を渡り、飛山城跡に停車。そのまま高架橋を進み、台地の上へ進むと、清陵高校前に到着した。ここで専用軌道区間は終わりとなり、再び併用軌道区間へと入っていく。清陵高校前電停付近には、清陵高校の他に作新学院大学と短期大学もあり、学生の利用が多い。この先、併用軌道を進むが、しばらくは道路の端を走る形となる。清陵高校前を出ると、清原工業団地と呼ばれる一つ目の工業団地へと入っていく。沿線には住友電工、東洋紡、キヤノン、カルビー、久光製薬、長府製作所などの誰もが知っている企業の工場が並んでいる。ライトレールはこの工業団地の中を逆L字型に走っていく。清原地区市民センター前にはトランジットセンターと呼ばれるロータリーが接続されており、近隣へのバスと連絡している。また、この工業団地の中にあるグリーンスタジアム前電停が、2ヵ所目の緩急接続対応駅。こちらは互い違いに電停が配置されているので、電停全体がとても細長い形をしている。

グリーンスタジアム前を出た列車は、やがて緩やかな下り坂を走ると同時に専用軌道に入る。先ほど宇都宮市街で走った鬼怒通りと、清原工業団地を南北に走る国道408号線との交差点を横に見ながら、専用軌道を走り、カーブして道路と立体交差。その後、鬼怒通りから転じる芳賀バイパスの道の真ん中に”上陸”する。ここから先はしばらく、ゆいの杜と呼ばれるニュータウンの中を走っていく。沿道にはロードサイド店が並んでいて、道路の方も交通量が多い。あまりロードサイド店が立ち並ぶエリアを併用軌道として走る路面電車も国内にはないので、路面電車から見る車窓としてはとても新鮮だった。車内に残っていた乗客もこのニュータウン内の電停で下車していき、ニュータウンを出るころには残りの乗客もわずかとなっていた。

ゆいの杜東電停を出ると、景色はニュータウンから工業団地へと変わり、再び沿道には工場が広がりはじめる。芳賀台、芳賀町工業団地管理センター前と停車し、交差点を左折すると、坂を下って登り、台地と台地の間の谷間を走っていく。この区間の勾配は結構キツく、短区間ではあるが、碓氷峠の勾配に匹敵する。坂を登ると、かしの森公園前に到着。このあたりから車窓の右手にはホンダの大きな工場・研究所の建物が広がり始める。LRTはこれら施設の横を走り、終点の芳賀・高根沢工業団地に到着した。

宇都宮駅東口からおよそ45分で終点の芳賀・高根沢工業団地に到着。LRTはここで10分ほど停車したあと、折り返し宇都宮駅東口行として来た道を帰っていく。所要時間は長めだが、新しい路線ということで見どころも多く、楽しい乗車時間だった。ICカードで乗車した場合は、ドア横に設置されたICカードリーダーにタッチすることでどのドアからでも降車することができる。一方、現金の場合は一番前のドアからしか降車できないので、特に宇都宮市街地で降車する場合は乗車する位置は気を付けておかないといけない。
ホンダの工場・研究所最寄りの芳賀・高根沢工業団地で折り返す

終点の芳賀・高根沢工業団地は工業団地という名前ではあるものの、周辺にはホンダの工場・研究所しかなく、事実上この工場・研究所のための電停になっている。周辺に民家も少ないので、この電停を使う人はホンダの従業員か、鉄道ファンくらいなものだと思う。実際、同じLRTに乗り合わせていた人たちも、直後の列車で折り返したり、歩いてきた道を戻っていた。電停から横断歩道・歩行者で道を渡ると、すぐに研究所・工場の正門となる。朝夕の通勤時間は利用する人も多いはず。一方、道の反対側には従業員用の駐車場が広がっている。もちろん、駐車されているのは全てホンダ車だった。
芳賀・高根沢工業団地という駅名の通り、ここは芳賀町と高根沢町の町境付近に位置しいる。ホンダの工場・研究所の敷地は芳賀町と高根沢町に跨っており、敷地の真ん中あたりに町境がある。高根沢と聞くと行ったことない感じがするが、町の中心部は東北本線の宝積寺駅付近。宝積寺なら烏山線に乗りに行った時に降りたことがある。

宇都宮駅東口行として発車を待つHU300形。芳賀・高根沢工業団地は道路の交通量もなくないので、車両を撮影するには最適だった。時間はたっぷりあるので、この後は道の反対側で宇都宮駅東口からやって来る列車を2本撮影しながら時間を潰した。
ちなみにここ芳賀・高根沢工業団地にはお手洗いの設備はないので、途中下車せずに往復する場合は宇都宮駅で済ませてから乗車することをおススメする。この近くだと一つ手前のかしの森公園前電停に近くにはお手洗いが少し離れている。往復すると2時間弱かかるので注意が必要である。

芳賀・高根沢工業団地では30分弱滞在し、乗ってきた列車の2本後の列車で宇都宮駅東口へと戻った。帰りの列車は行きの列車よりも空いていたが、やはり宇都宮大学陽東キャンパスまでは空いていたが、その先宇都宮市街地で乗車する人が多く、宇都宮市街地内では混雑していた。学校終わりの時間になったので、宇都宮駅東口へ戻るとホームでは多くの人が列車を待っていた。
乗車記録 No.13
宇都宮ライトレール 各停 宇都宮駅東口行
芳賀・高根沢工業団地→宇都宮駅東口 HU300形

芳賀・高根沢工業団地から宇都宮駅東口に戻り、今回の宇都宮ライトレール訪問は終了となった。宇都宮に登場した新しい交通機関。すっかり沿線の足として定着し、沿線に必要不可欠な乗り物になっている。今回は各停便のみの利用だったが、気になるのは快速便の存在。平日朝下りに2本だけで乗車するのが難しい列車だが、宇都宮に宿泊する機会があれば、乗車してみたい。
なお、この路線は前提的に宇都宮駅東口からの路線となっているが、これは現在の開業区間を先行開業区間として先に建設したためであり、路線はここからJRの線路を跨いで、市街地の西側へと延びる予定である。延伸は2030年代が予定されており、市街地中心部へ乗り換えなしで行けるようになることで、さらなる利便性の向上が期待される。また延伸された時には、宇都宮を訪ねて、乗車するつもりである。
「やまびこ」と「あかぎ」を上野で乗り継ぎ宿泊地高崎へ

さて、宇都宮駅へと戻った後は、ここからこの日の宿泊地高崎へと移動を開始した。宇都宮から高崎へ行くなら、宇都宮線で小山まで行き、そこで両毛線に乗り換える方法が考えられる。しかし、両毛線には数か月前の前篇で全区間乗車しているので、他のルートで行くことにした。他プラントなると、基本大宮経由になるが、なんか中途半端でしっくりこない。いろいろ考えた結果、今回は東北新幹線で一旦都内へ戻り、上野から特急あかぎ5号に乗車して高崎へ行くことにした。
宇都宮では時間があったので、しばらくベンチに座って通過する新幹線を眺めていた。東北新幹線の通過シーンを目の前で見るタイミングは、九州の人間には限られている。1時間弱は休憩がてらに眺めていたと思うが、全然飽きなかった。
宇都宮からはやまびこ146号東京行きに乗車。上野まで乗車した。「やまびこ」に乗車するのはこれが初めて。いずれは東京から盛岡までの全区間で乗車してみたいと考えているが、今回の短区間利用が初乗車となった。
乗車記録 No.14
東北新幹線 やまびこ146号 東京行
宇都宮→上野 E5系

乗車したやまびこ146号は、宇都宮到着時点では空いているように見えたが、夕方の列車だったため、宇都宮ではビジネス客の多くの乗車があり、ここで指定席は満席となった。後ろには「つばさ」を連結しているが、おそらくこちらも満席だっただろう。高崎もそうだが宇都宮も都心との移動はほぼ新幹線が使われている。もちろんビジネス客は呑気に普通列車グリーン車でというわけにはいかない。列車は宇都宮を出ると、大宮、上野、東京に停車する。夕日を眺めて列車は進み、宇都宮から45分で上野に到着。ここで列車を下車した。

上野駅に到着。前日に東京駅を出発して以来、約1日半ぶりに都内へ戻ってきた。これで北関東の旅も終了…ではなく、またここから北関東へと戻っていく。あまり意識してなかったが、よく考えると、この旅は都内と北関東の間を2周するルートになっていた。
上野駅の新幹線ホームに来るのもこれが初めてだった。上野駅の新幹線ホームは地下4階に設置されていて、2面4線となっている。地下深くにあるとは聞いていたが、改札口までかなり遠かった。全国に新幹線の駅はたくさんあれど、地下にあるのは上野だけ。雰囲気は大宮駅の埼京線ホームに似ている。
まもなく区間短縮される特急あかぎ5号高崎行に乗車
上野での小休憩を挟んで、ここから再び北関東へと戻る。乗車したのは上野19時発の特急あかぎ5号高崎行き。宇都宮からなら大宮で乗り換えた方がもちろん安いが、初めて乗車する特急列車はどうしても始発から終点まで乗ってみたくなるのが、乗り鉄の性分。全区間を乗り通して高崎へ向かった。

特急あかぎは上野・新宿と鴻巣・本庄・高崎間で運転されている特急である。以前は東京と群馬を結ぶことが一つの大きな役割だった。しかし、最近は同区間の移動を新幹線利用へ誘導する狙いもあって、この役割は縮小傾向にある。一方、2014年にはそれまで近距離区間のライナー列車として運行されていた「ホームライナー鴻巣」を吸収する形で統合し、比較的近距離の利用を見込んだ通勤特急としての役割が濃くなった。この2014年3月のダイヤ改正では、平日の大半の列車について、現在の座席未指定券制度を先行的に導入した「スワローあかぎ」に名称を変更。特急「あかぎ」とは別の形態として運行された。この時、使用車両もその大半が185系からE651系へと変更されている。ホームライナー鴻巣を吸収したことで、特急あかぎの中に群馬県へ行かず、埼玉県内が始発・終点となる列車が誕生した。その後は高崎・前橋への列車が縮小される一方で、比較的近距離の鴻巣、本庄が始発・終点となる列車が増えていく。2021年3月のダイヤ改正では、ついに前橋発着の列車が廃止され、高崎止まりに。これにより、上越線・両毛線へ行く特急あかぎがなくなり、両毛線については特急列車自体が廃止となった。さらに2023年ダイヤ改正では、E651系が引退し、現在の使用車両であるE257系5500番台へ置き換えられた。座席未指定券のシステムが各線の特急列車に導入され、定着したことを受けて、スワローあかぎとあかぎで運行形態を統一。スワローあかぎの名称が廃止され、再び全列車が特急あかぎへと戻った。
現在は平日が上り4本(本庄-上野2本、高崎-上野1本、高崎-新宿1本)、下り5本(上野-鴻巣1本、上野-本庄2本、上野-高崎2本)、土休日が上り2本(高崎-上野2本)、下り2本(上野-高崎2本)の運転となっている。なお、2025年3月のダイヤ改正では、平日運行の列車のうち、上りの高崎-上野間の列車を鴻巣-上野間に、下りの上野-高崎間の列車を上野-本庄間に変更し、土休日については2往復の列車全てが廃止されることが決定している。群馬県のシンボル赤城山を由来とする列車だが、2021年には前橋発着の列車が消え、今年ついに高崎発着の列車も平日1日1往復だとなる予定である。
これから乗車する特急あかぎ5号は、その区間短縮列車に該当し、3月のダイヤ改正以降、本庄行へ変更される。この旅行の計画を立てたのは、11月だったので、乗車を決定した時点では発表されていなかったが、まもなく1往復のみになろうとしている上野-高崎間の特急あかぎへ乗車することとなった。
乗車記録 No.15
東北本線・高崎線 特急あかぎ5号 高崎行
上野→高崎 E257系5500番台

現在の特急あかぎは全列車ともに全車指定席。自由席やグリーン車の設定はない。全車指定席だが、座席未指定券を購入することで、空席に座ることができる。先述の通り、2014年~2023年3月のダイヤ改正までの期間は、特急あかぎとスワローあかぎで形態が異なっていた。特急あかぎの方はグリーン車、指定席、自由席が設定されており、ダイヤ改正で名称は全列車が特急あかぎとなったが、形態は全列車がスワローあかぎのものを引き継いだ形となった。
一方、高崎線では上野と長野原草津口駅を結ぶ特急草津・四万も運転されている。車両も同じE257系5500番台であり、運用は共通化されている。全車指定席というのは特急草津・四万もあかぎも変わらないが、特急草津・四万は座席未指定券のシステムがない。当日の特急あかぎの座席未指定券は、あかぎのみに有効で、特急草津・四万には乗車できない。そもそも特急あかぎと特急草津・四万は、特急料金体系が異なる。特急あかぎは他の座席未指定券採用の特急列車と同じく、独自の料金形態を採用している。一方、特急草津・四万はB特急料金が採用されている。例えば、上野-高崎間の指定席特急券(通常期)は特急あかぎが1,580円、特急草津・四万が1,890円になっていて、そもそもの特急料金が異なる。同じ車両で運転されるが、特急あかぎの方が料金が安く設定されている。
宇都宮にいる時にシートマップを覗いてみると、まだ各号車とも5席程度しか埋まっていなかった。しかし、上野に着いてから再度確認すると、窓側はほぼ全てが埋まり、通路側も半分程度が埋まっていた。帰宅特急という特性上、座席が埋まるのも発車の直前である。上野駅地平ホームのホーム上の指定席券売機も発車時間が近づくと、きっぷを買い求める人の姿が多くなった。券売機だけでなく、えきねっとではチケットレス特急券も発売されている。

上野を出た列車は赤羽、浦和、大宮、上尾、桶川、北本、鴻巣、熊谷、深谷、本庄、新町、高崎と停車して行く。特急草津・四万はこの間、赤羽、浦和、大宮、熊谷、高崎のみに停車するが、こちらは通勤特急であるために経由する各都市の代表駅に停車していくのが一つの特徴である。乗車していた号車は、赤羽で数人を乗せ、その後大宮まではほとんど動きがなかった。一方で、高崎線に入った後は、どんどん乗客の数が減って行き、熊谷に着くころにはかなりガラガラになっていた。その後も深谷、本庄で下車する人が多く、本庄を出るともはや車内は数人に。やはり近距離の利用が目立っていた。
列車は上野-高崎間を1時間27分で走る。途中で何本か普通列車を追い越したので、普通列車よりはもちろん早いが、都心-高崎間を高崎線で通勤している人も少なく、通勤も用務も観光も基本的には新幹線へ流れていて、確かにニーズは少なそうだった。上野駅をこの列車の2分前に発車する上越新幹線とき339号は、18時58分に上野を出て、19時48分に高崎に着く。数百円払えば40分早く着くなら、そりゃそちらを選ぶし、安く行きたいなら普通列車を使えばいいという話になる。そもそも、乗り換え案内アプリでは、新幹線利用で最速の検索だと3番目か4番目、最安検索では出ても来ない。もちろん、新幹線利用増を狙う会社側の思惑もあるが、乗り換え案内でヒットしにくい微妙な立ち位置というのも、この列車の区間短縮を助長しているように感じた。
同じ号車では自分以外に3人組の旅行帰りの人たちが高崎まで乗車していた。おそらく以前から特急あかぎを使って出かけている人だと思う。前橋発着が廃止になり4年、いよいよ高崎発着も1往復のみとなる。車両運用や乗務員の兼ね合いもあるので、今後のことはわからないが、もしかすると数年後には特急あかぎの全列車が埼玉県発着となるのかもしれない。

上野から特急あかぎに乗車して高崎に到着。夜間走行だったが、また一つ、JR東日本の定期特急列車に乗車することができた。JR東日本の特急列車もコツコツ乗車しているが、まだまだ乗車していない列車が多い。今後も各地へ出かけるタイミングで、まだ乗っていない特急列車に乗車してみたいと思っている。
朝に同じ群馬県内の桐生を出発し、日光、宇都宮、上野と経由して高崎へ。桐生から関東地方をぐるっとほぼ一周してきた。今回は高崎駅前のホテルに宿泊。群馬県もついこの前まで宿泊したことがなかったのに、前篇の新前橋、前日の桐生に続きこれが3泊目となった。明日も早朝から動きだす。最終日となる3日目は群馬県内を走る3路線を巡っていく。まずは高崎から上信電鉄上信線に乗車した。
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