【旅行記】釧網本線と根室本線で納沙布岬を目指す旅〜最初で最後の特急大雪で網走へ〜
石北本線のスイッチバック駅遠軽と行き交う列車たち
羽田空港から紋別空港へ飛び、その後無料送迎バスで遠軽までやってきた。ここからは列車に乗車して、この日の宿泊先である網走へ向かっていく。バスは紋別空港から40分ほどで遠軽に到着。飛行機は20分ほど遅れたが、バスでその遅れは相殺され、遠軽にはほぼ定刻での到着となった。遠軽から乗車する列車までは1時間ほどの待ち合わせ。それまで少し休憩時間となった。

新旭川駅と網走駅を結ぶ石北本線のおよそ中間地点に位置する遠軽駅。この駅はもともと北見と湧別を結んでいた路線の途中駅として開業し、石北本線(当時は石北線)が開業したことで、北見~遠軽間が石北本線、遠軽から先が名寄本線に組み込まれた。こうした経緯から、メインルートである途中駅である石北本線の側がスイッチバックする構造となっていて、1989年に名寄本線が廃止されて以降は、石北本線がただスイッチバックする駅となった。旭川・網走両方向の列車は、南側から進入し、ここで折り返す。特急列車ではここで座席を転換するのが恒例行事となっている。
駅は市街地から一段高い場所にある。このため市街地側からは階段を上って駅舎へ入る形となっている。構造上、バリアフリーでないが、駅舎向かって左手に町の交流プラザがあり、こちらの方からであれば水平移動で駅舎へ入ることができる。先ほどバスで降り立った遠軽ターミナルからは徒歩2分ほどと近いので、バスは駅のロータリーには乗り入れていない。

遠軽駅の階段から遠軽に市街地を望む。紋別・湧別・留辺蘂などと書かれた道路標識がある交差点が国道242号線との交差点。その左手に見える緑の屋根の建物が、北海道北見バスの遠軽ターミナルである。遠軽町の人口はおよそ17,000人。紋別市が19,000人ほどなので、それに匹敵する人口を有する。道内の町村の中でも人口の多い町のようで、確かに実際に行ってみた感じも大きな街だなと感じた。

えきねっとで購入した特急券は朝に蒲田駅で発券済みだったが、これから使う乗車券をまだ購入していなかったので、みどりの窓口で購入した。今回はここから網走、釧路を経由して根室までが鉄道の旅となる。しかし、遠軽~根室の乗車券を買うと、釧網本線と根室本線を東釧路で乗り換えなければならず、釧路へ行けなくなる。もちろん遠軽~釧路、釧路~根室と別々に購入してもいいが、こういう時に役に立つのが連続乗車券。釧路を経由して根室まで連続乗車券でと駅員に伝えると、スムーズに発券してもらえた。連続乗車券は2026年3月をもって廃止されることが既に発表されている。これまでも何度か旅の中で使ってきたが、使える時に使っておく。遠軽駅にはみどりの窓口の他、オペレーターと通話可能な指定席券売機も1台設置されている。みどりの窓口も以前は7時15分から19時まで営業していたが、昨年15時までに短縮された。

まもなく旭川行の特急大雪4号がやって来るようだったので、交流センター横から発着する様子を見ていくことにした。この日の時点ではこの駅には、札幌と網走を結ぶ特急オホーツクと、旭川~網走を結ぶ特急大雪の2つの特急列車が発着していた。詳しくは後述するが、このうち特急大雪は、数日後のダイヤ改正で特別快速へ格下げされる予定となっており、特急としての運行日は、残り1週間を切っていた。やがて網走方面からキハ283系3両編成の特急大雪4号が入線してきた。遠軽では数分停車して、進行方向を変えて、旭川へ向けて駅を出ていく。
この日はダイヤ改正前最後の週末ということもあり、自分以外にも何人かが近くから列車を見送っていた。列車が去ると初老の男性に話しかけられた。九州から来たと言ったら驚かれた。

駅舎へ戻りしばらくすると、乗車する特急大雪1号網走行の改札が開始され、ホームへ入ることができた。遠軽駅は2面3線である。特急列車に関しては遅れが生じているとき以外は、駅舎前のホームからの発着となるように配慮されており、原則この駅では特急列車同士ですれ違うことはない。1番線ホームと2・3番線ホームの間にはホームのない発着線が1本ある。石北本線では旭川方面から北見まで、季節限定で貨物列車が運行されている。この発着線は主にこの貨物列車が使っている。
やがて2番線ホームには、当駅止まりの普通列車が入線してきた。網走を12時14分に発車する普通列車でおよそ2時間30分かけてようやく遠軽へ到着した。このあたりの石北本線は普通列車の本数がとても少ない。ここから北見方面への普通列車は1日4往復、白滝方面はたった3往復である。普通列車は遠軽で完全に系統が分離されていて、ここを跨いで走る列車はいない。ここから旭川方面は白滝~上川間が普通列車が1日1往復のみとなっているので、普通列車だけで移動するのは非常に難しい区間となる。北見や旭川へ近づけば普通列車の本数も多くなるが、その中間部に位置するこのあたりの鉄道利用はそのほとんどが都市間の移動となっている。

到着した普通列車は、その後しばらく運用がないため、留置のため引き上げていった。この駅の北側は行き止まりだが、入換が行われるため、北側にもすこしだけ線路が続いている。おそらく名寄本線が現役だった頃はこんな感じで列車が発車していたはず。ここと名寄がレールで結ばれていたというのは今ではあまりピンとこないが、今もバスを乗り継げば行くことができる。
残り数日で姿を消す特急大雪1号で網走へ

さて、網走からの普通列車到着後、しばらくして旭川方面から特急大雪1号が入線してきた。遠軽からはこの列車に終点り網走まで乗車していく。
特急大雪は旭川と網走を結ぶ特急列車である。かつての石北本線の特急オホーツクは、4往復の全てが札幌~網走間で運転されていた。しかし、2017年3月のダイヤ改正では、このうちの日中の2往復が旭川~網走間に区間短縮され、特急大雪になった。特急大雪は旭川で札幌~旭川間の電車特急と接続し、乗り継ぐ場合は特急料金が通算システムになっている。「大雪」は1992年まで石北本線を走っていた急行列車に使われていた愛称で、2017年のダイヤ改正で実に25年ぶりに特急列車の形で復活している。
先ほど特急大雪は旭川と網走を特急列車であると書いたが、この記事の投稿日の時点では、「特急列車だった」と書く方が正しい。特急大雪は旅行日の直後に行われた今年のダイヤ改正で廃止され、一般気動車を使った特別快速へと格下げされた。ダイヤ改正以降の石北本線の速達列車は、特急オホーツクと特別快速大雪が2往復、特別快速から格下げとなった快速きたみが1往復の設定となった。特別快速大雪のうち1往復は、特急大雪1号・2号のダイヤを踏襲。一方、もう1往復は特急オホーツクの運行時間を早めて、改正前にオホーツク3号・4号が走っていた時間に近いダイヤで運転される。したがって、ダイヤ改正後のこの時間の遠軽駅には、キハ283系の姿はなく、H100形へと置き換わっている。
キハ283系は2021年秋の初めての北海道旅行以来、約4年半ぶりの乗車となった。前回は特急おおぞらで乗車。既に特急おおぞらからの撤退が発表されていたので、この車両が使われる便を選んで乗車したのを思い出す。2022年のダイヤ改正で、一旦営業運転から退いた後、1年後の2023年ダイヤ改正で、キハ183系を置き換える形で、石北本線系統の特急列車としてデビューした。
乗車記録 No.2
石北本線 特急大雪1号 網走行
遠軽→網走 キハ283系

この列車は方向転換のため、この駅では3分ほど停車する。早く乗ったところで車内では座席転換が行われているので、写真を撮ってのんびり乗車。今回は1号車指定席へ座った。日曜日の午後の便であり、そしてこの列車のラストラン前最後の休日ということもあってか、窓側は大体埋まり、通路側も半分程度が埋まっていた。
遠軽を出た列車は、生田原、留辺蘂、北見、美幌、女満別、網走と停車して行く。遠軽の時点で既に旭川を出て2時間以上が経過しているが、遠軽から網走までもさらに1時間45分程かかる。北海道の列車で2時間未満の乗車だととても短く感じてしまう。遠軽を発車すると、列車は湧別川を渡って遠軽の街と別れ、ここからしばらく南へ進んでいく。車窓はひたすら雪に覆われた田園・牧場地帯の景色が続く。沿線ではカメラを構えた人の姿も多かった。

生田原に停車すると、ここから列車は常紋峠へと進んでいく。石北本線は途中にいくつかの峠を越えるが、その中でも険しいのが、上川~白滝間の石北峠と生田原~西留辺蘂間の常紋峠である。徐々に森の中へ入り、標高を上げていくと、列車は常紋トンネルへと入り、峠を越える。この常紋トンネルは建設時、非常に過酷な労働環境が強いられ、多くの人が亡くなったことで知られる。トンネルを抜けるとすぐに、常紋信号場跡を通過する。かつて蒸気機関車で運行されていた時代は、スイッチバック構造の信号場があった。今もその設備が残っている。この信号場跡を通過すると、今度は一転下り坂となり、列車は留辺蘂へ向けて標高を下げていく。

数年前に廃駅となり、信号場へと格下げになった金華信号場を通過すると、やがて視界が開けてきて、列車は留辺蘂の街に到達した。このあたりでは一瞬だけ天気が回復し、車窓にも青空が広がった。留辺蘂は現在北見市に所在する。ここから先は北見の都市圏へと入っていく。このあたりを走る普通列車は、西留辺蘂・留辺蘂で折り返す列車が複数設定されている。そのため、留辺蘂から北見方面へは列車本数も多くなる。峠を越える区間というのは、どこの地域でも普通列車の利用客が減る。遠軽は石北峠と常紋峠に挟まれており、旭川、北見それぞれの都市圏の間に位置しているため、普通列車の本数が少ない。ちなみに西留辺蘂で折り返す列車は、信号設備の関係上、一旦金華信号場まで回送されて折り返している。この駅は高校の最寄り駅で通学者の利用が多い。

列車は留辺蘂(るべしべ)に到着した。留辺蘂はなかなか初見では読めない。自分も4年半前、特急オホーツクに乗車したときに初めてその読み方を知った。留辺蘂を出ると列車は峠を下りたところで一度渡った無加川を再度渡り、その後は国道39号線と並走して、北見の市街地へと向かっていく。しばらくは線路も道路もまっすぐ続いている。列車も快調に飛ばして走っていく。列車も結構スビートが出ていたが、並走する国道を走る車も結構スビートが出ていた。計測していないのでわからないが、列車と並ぶくらいのスビートということは、パトカーが隠れていたらおそらく切符が切られていただろう。

相内駅を通過し、その次の東相内駅付近からは北見市の市街地が広がり始める。最初は郊外らしく運送会社の倉庫が広がるが、次第に住宅地へと景色が移り変わっていく。このあたりで少し早いが北見の到着放送が流れ、下車する客が下りる支度を始めた。しばらく進むと列車は北見トンネルへと入る。このトンネルは北見市街地の地下に設けられていて、石北本線は市街地をトンネルで貫いていく。トンネルを出る前に列車はスピードを落とし、ゆっくりと北見に到着した。

旭川を除けば、石北本線沿線で最大の都市となる北見市。全国的な認知度で言えばおそらく網走の方が上だが、周辺の中核的な都市として、人口11万人を有している。駅前も商業施設やホテルチェーンが多数あり、とても栄えている。思えば、羽田を出て、久しぶりに見る大きな街である。この列車の乗客も、この駅で半数程度が下車していき。車内もかなり空いた。石北本線は北見と旭川・札幌を結ぶためにあると言っても過言ではないが、札幌からは4時間30分以上、旭川からも3時間かかる。旭川までは鉄道利用が主体だが、札幌へとなると、女満別空港へ行って航空機で丘珠へというのが基本になる。

北見駅の直前はトンネルで連続立体交差化されているが、駅の網走側は、逆に高架橋で連続立体交差化されている。沿線にも市街地が広がり、先ほどまでの広い大地とは対照的に都会的な景色の中を走っていく。車窓は次第にのどかな景色へと変わる。柏陽駅を通過すると、その先で高架から地上へ戻った。

端野駅の辺りで北見の中心部から国道39号線沿いに続いていた市街地も途切れる。やがて列車は常呂川を渡って、しばらくこの川と並走するようにして走っていく。留辺蘂では晴れていたが、北見では吹雪いていた。吹雪はだんだんと強くなり、このあたりが一番激しく吹雪いていた。
列車は緋牛内を通過する。この駅の近くにある網走水産というお店は、よく通販でお世話になる。年末年始にカニ鍋をするときはいつもこカニを購入している。住所を見たとき、九州から遠く北見を思うのだが、今はその遠い北見を走っている。ネットで頼めば、ここからカニが列島を縦断して、九州まで運ばれてくる。冷凍されたカニにとっては(?)、果てしない道のり。今年の年末にまた注文して、カニが届いたときには、長旅お疲れ様と言ってあげたくなった。

緋牛内を通過した列車は、再びしばらく森の中を走り、次の停車駅である美幌へ向かっていく。北見と美幌の間にも小さな峠があり、これを越える。美幌が近づくと、列車は網走川を渡る。網走市街地の西側にある網走湖へ流れ込む川。いよいよ網走が近づく。少し大きな工場を車窓に列車は美幌に到着。ここでは数人が列車を降りていった。工場はてん菜から砂糖を作る工場らしい。美幌を出ると列車はいよいよ網走へ向けて北東へ進む。ここからは網走川、網走湖に沿う形で走っていく。

こちら側の車窓には見えないが、列車は女満別空港の横を通過。鉄道でアクセスする人などほぼ皆無だが、通過する西女満別駅から女満別空港は徒歩10分ほどの場所にある。某鉄道系YouTuberに最適な空港だなと思って調べてみたら、もうすでに投稿されていた。女満別空港は北側の道東では最大の空港である。今回は紋別空港を利用したが、計画の段階では女満別空港へ飛んで網走を観光するプランも考えていた。網走や北見、さらには知床周辺もこの空港を使う。女満別自体の街は空港の北側にあり、街も駅もわりとこじんまりとしている。

女満別を出ると、次はいよいよ終点の網走となる。やがて車窓には、網走湖が見え始める。女満別~網走間は、ほぼこの湖畔を進んでいく。前回来た時はやって明るくなってきたかなくらいの時間帯で、窓に手をやり車内の光を遮ってかろうじて見えた記憶がある。3月の網走湖はまだ完全に凍っていた。何気に完全に凍結した湖を間近に見るのは初めてだと思う。湖上にはワカサギ釣りと思われるテントが張られていた。テレビでやっているのを見ると、面白そうなので、人生で一回ぐらいは挑戦してみたいなと思う。
やがて湖は川へと変わり、その先で網走の市街地が広がり始める。「終着網走です」という放送がかかると、車内も安堵と開放の雰囲気に包まれた。遠軽からはおよそ1時間45分。列車の始発駅である旭川からは3時間57分で列車は終点の網走に到着した。

列車は終点の網走に到着。駅のホームはプチ撮影会の様相を呈し、この列車に乗ってきた人たち残り数日となった特急大雪を記録していた。自分も、もう特急オホーツクに変わっていたが、人波が去ってから列車を撮影した。旭川から到着した列車は、この後17時27分発の特急オホーツク4号札幌行として、来た道を帰っていく。札幌に着くのは22時51分。一度全区間で乗車しているので知っているが、札幌まで果てしない道のりである。ちなみに先述のとおり、この特急オホーツク4号は、ダイヤ改正後、網走を14時36分発に改められた。特急大雪が格下げとなってからのキハ283系は、特急オホーツクだけの運用となる。オホーツク1号で来た列車は4号としてその日のうちに札幌へ戻り、3号として来た列車は網走で一泊して、翌朝2号で札幌へ戻るらしい。特急大雪のダイヤがそのまま特別快速大雪になっているのではなく、一部列車は特別快速大雪と特急オホーツクでダイヤが入れ替えられている。
はじめて明るい時間に降り立った網走駅

この日の移動は網走まで。前回ここへ来た時は、日が沈んだ後の到着、夜の明ける前の出発だったため、明るい時間にこの駅へ来たのはこれが初めてだった。網走駅は石北本線と釧網本線の両方の終点駅となっている。特急列車の運行はここまでで、ここから先知床斜里方面へ行く列車はないが、普通列車に関しては一部列車がこの駅を跨いで、知床斜里方面~北見方面の通しで運行されている。以前は終日有人駅だったが、昨年から朝夕が無人駅となった。みどりの窓口は7時35分~12時50分、13時50分~16時30分の営業である。遠軽駅同様、それ以外の時間はオペレーター通話機能付きの指定席券売機で特急券や各種割引適用のきっぷも購入できる。朝夕は改札も行われず、他の無人駅同様にワンマン列車は前乗・前降となっている。

時刻は17時になろうとしていた。この日は、前回ここに宿を取った際にも利用した駅前の東横INNに宿泊した。流氷時期の網走の宿は高いイメージだったが、もう流氷時期も終わりかけなので、6000円未満で宿泊することができた。あまり早くチェックインしてもその後が暇になるので、夕食の買い物がてらに少し網走の街を歩いてみることにした。
とりあえず、駅前の道を市街地の方へ向けて歩いてみた。歩道には除雪した雪が壁のように積もっている。九州からの旅行者にとっては初めて見る光景だった。歩道には雪がしっかり積もっていて、ところどころシャーベット状に凍っている。靴底の平なスニーカーを履いてきてしまったので、まるでペンギンのようなよちよち歩きで歩くしかなかった。

駅から一番近いセイコーマートに立ち寄って、夕食を調達。雪が強まってきたので、そのままホテルへ向かおうかとも思ったが、せっかくなので少し遠回りしてい帰ることに。網走ビールの本社前を通り、交差点を左へ曲がって、中央橋という網走川に架かる橋を渡った。この中央橋あたりが網走市の中心部である。川を挟んだ両側に市街地が広がっている。

橋を渡った後は、網走川の川沿いの道を歩き、網走駅方面へ。河川敷は遊歩道が整備されているが、この時期は完全に雪に埋もれていた。段々暗くなってきて、一段と寒さが増した。初めて明るい時間に訪問した網走市だが、今回も観光はしない。やはり網走といえば、流氷と網走監獄。今回は紋別空港を使ったが、いずれ女満別空港も使ってみたいと思っているので、その時には1日設けて純粋に観光してみたい。新橋を渡って、駅の方面へ向かい、遠回りして東横INNに到着。少し早いがこの日の日程を終えた。
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