【旅行記】釧網本線と根室本線で納沙布岬を目指す旅〜釧網本線の普通列車で流氷と湿原を眺め釧路へ〜

網走から釧網本線の普通列車を乗り通す

 網走駅スタートの2日目。ホテルをチェックアウトして外へ出ると、朝日が眩しく輝いていた。1日目の夕方もとても寒かったが、この日の朝はマイナス5度と一段と冷え込んだ。おそらくこのあたりでは序の口レベルの寒さだと思われるが、やはり九州の人間にとっては、1年に数回しか味わうことがない寒さである。徐々に寒さも落ち着き、春へ向かおうとしている道東。しかし、3月上旬はまだ厳しい寒さが続く。事前の情報でも3月の道東はドカ雪が降るとは聞いていたので、天気は気にかけていたが、残りの2日は概ね天気がよさそうである。旅行から1週間後、旅行記をまとめているところだが、北海道では大雪が降り、今回乗車した路線は軒並み運休となっている。一週間違えば身動きが全く取れないところだった。
 
 2日目がこの旅の肝。網走から釧網本線と根室本線(花咲線)という北海道屈指の絶景路線を乗り継いで、日本最東端の街、根室を目指していく。まずは釧網本線で釧路を目指した。
 釧網本線は文字通り、釧路と網走を結ぶ路線である。厳密には東釧路と網走間を結んでいて、列車は釧路~東釧路間だけ根室本線へと乗り入れている。旅行記の冒頭部分でも述べたが、この路線には2021年秋の初めての北海道旅で一度乗車している。しかし、日没が早い時期の乗車だったことに加え、当日の天気が良くなかったこともあって、その景色を存分に楽しむことができなかった。そのため、道東の旅を企画した際にはもう一度乗りたいと思っていた路線だった。前回は釧路から網走へ向かって乗車したが、今回は逆に網走から釧路へ向かって行く。
 
 前話で先述のとおり、網走駅は昨年から朝夕が無人となった。このため、この時間は改札が常時空いていて、改札開始の合図なくホームへ入ることができるようになった。まだ釧路行の列車は入線していなかったが、一足先に改札内へ入って列車を待った。
 駅舎前の1番線には、6時22分発の石北本線の普通西留辺蘂行が停車していた。堂々のH100形3両編成での運転。H100形も3両編成になると迫力がある。網走の時点ではまだ乗客の数も少ないが、おそらく北見に着く頃には混雑しているはずである。この列車はキハ40形で運転されている頃から伝統的に3両で運転されているらしい。北見側の先頭車は昨日遠軽で出会った車両だった。
 
 ホーム横の留置線にはH100形が1両で停車し、出発の準備を行っていた。どうやらあの車両が入換後に釧網本線の普通列車になるらしい。石北本線の普通列車が発車していくと、まもなく入換作業を開始。北見方で折り返して、ホームへ入線してきた。
 釧網本線は北海道でも屈指のローカル線。それゆえ鉄道ファンだけでなく、観光客にも人気の路線である。最近は国内旅行者だけでなくインバウンドも増加しており、本数は少ないながら、列車によっては混雑する。前回乗車したときは釧路を14時台に出る列車に乗車した。まだコロナ禍でインバウンド需要はなかったが、旅行支援キャンペーンが行われていた時期だったため、やや混雑していた。比較的混雑しているローカル線に乗車する際は、宿泊できる施設が少ない方の始発駅から、早朝の列車に乗ると空いている場合が多い。昨年乗車した只見線でもこの経験則からあえて小出に宿泊し、小出からの始発列車に乗車した。釧網本線の場合も釧路と網走では、網走の方が宿が少なく、網走発の方が事前の調査でもあまり混雑しないという情報を得ていた。流氷の時期でもあるため、念のためにと早くホームへ来たが、列車が入線してきた時点で待っていたのは3人ほどで、想像以上少なく、ちょっと拍子抜けしてしまった。
 
 早朝の列車ということもあって、発車間際に乗車する人が多く、停車時間に外に出て写真を撮ることもできた。最終的に10人ほどの乗客を乗せて、網走を発車した。
 釧網本線の普通列車のうち、全線通しで走る列車は1日4往復しかない。これら4往復のうち釧路を8時台、網走を10時台に発車する列車には「しれとこ摩周号」の愛称があるが、これから乗車するのは”ふつうの普通列車”である。一方、釧網本線では網走側、釧路側でそれぞれ区間列車も設定されている。網走側では知床周辺・緑発着、釧路側では川湯温泉・摩周発着の列車が1日1往復ある(※)。したがって、緑~川湯温泉間は1日4往復、緑~知床斜里、川湯温泉~摩周間は1日5往復、それ以外は1日6往復の運転となっている。なお、網走側では2月~3月の網走~知床間で、「流氷物語」が2往復、釧路側では通年に渡り、釧路~標茶間で「SL冬の湿原号」と「くしろ湿原ノロッコ」という臨時列車が運転されている。どちらも土休日のみの設定で、土休日は区間・時期により列車本数が増える。釧網本線の全長は166.2km。全線乗っていると3時間以上の時間がかかる。これから乗車する列車も網走~釧路間を3時間21分かけて走っていく。
 前回釧網本線に乗車した際にはキハ54形だったが、2024年3月のダイヤ改正でH100形へと置き換えられた。釧網本線の網走側は、旭川運転所に所属する車両と釧路運輸車両所に所属する車両のどちらも運用されている。旭川に所属する車両は、緑までの区間列車のみに使用されており、全線で運転される列車は釧路運輸車両所の所属である。H100形の方が窓が大きくて視界がいいのがメリットだが、やはり座席の座り心地と対面で相席になってしまうという点がデメリットだと思う。
 
※旅行日時点では、川湯温泉発釧路行が2本、釧路発川湯温泉行が1本、釧路発摩周行が1本の計2往復だったが、直後のダイヤ改正で川湯温泉発釧路行1本の川湯温泉~摩周間が廃止され、摩周発釧路行となった。
 
乗車記録 No.3
釧網本線 普通 釧路行
網走→釧路 H100形
 

オホーツク海に浮かぶ流氷と凍結した濤沸湖を眺めて知床斜里へ

 網走を発車した列車は、雪に埋もれた構内を出て、市街地を横目に街と崖の間を走っていく。まもなく桂台駅に到着。ここでは1人の乗車があった。桂台発車後はすぐにトンネルへ入り、このトンネルを抜けると、車窓左手にはオホーツク海が見え始めた。乗客はほとんどが観光客。皆カメラを海の方へ向ける。この先の車窓と日当たりを考慮して、進行方向右側に座った自分も、後部ドアの方へ移動して、しばらく海を眺めていた。雪が降っていた1日目とは打って変わって、この日は雲一つない快晴。オホーツク海も朝日に照らされ輝いていた。そして海には流氷が浮かんでいるのが見え、奥には知床の山々も見えた。
 
 列車は鱒浦、藻琴と停車していく。沿線はまだまだ雪がうず高く積もっている。朝日が雪に反射して、目を開けるのが痛いくらいに眩しかった。釧網本線はここから知床斜里の手前まで、しばらくの間オホーツク海に沿う形で進んでいく。はじめは国道244号線が線路と海の間を走るが、藻琴駅付近あたりで交差して、線路の方が海側へ来る。その先は車窓いっぱいにオホーツク海を見ながら進んでいく。
 
 列車は北浜駅へと到着した。釧網本線の中でも特に観光客に人気のこの駅。駅ホームの目前にはオホーツク海が広がり、列車と流氷を楽しめる駅として、旅行雑誌などにも必ずと言っていいほどに登場する。ここでは車内の半分くらいの人達が下車していった。どうやら網走のホテルにチェックインしたままここへ来て、折り返し列車までオホーツク海を眺めていく人たちらしい。どおりで長距離列車に乗るにしては軽装だなと思った。この時間は反対列車が来るまで1時間ほど滞在できる。網走に到着するのは8時13分なので、それからホテルに帰って朝食を摂ることもできるだろう。
 
 車内がさらにガラガラになったので、少しだけ海側の座席へ移動して、再び海を眺めた。海には流氷が浮かんでいて、とても幻想的な車窓が広がった。3月も遅い上旬の旅だったので、流氷はもう終わっているだろうなと思って来たので、まさかこんなにキレイな流氷を見れるとは正直思っていなかった。これこそが冬のオホーツク海の名物であり、釧網本線の車窓の名物である。
 
 一方、車窓の反対側には湖が広がっている。このあたりの釧網本線はオホーツク海と濤沸湖の間を走っていく。左側には流氷広がるオホーツク海、右側には凍結した濤沸湖が広がる。濤沸湖の後ろには斜里岳が見えていた。北浜駅を出た列車は浜小清水に停車する。この2つの駅の間には臨時駅の原生花園駅がある。この駅は春から秋にかけてのみ営業する臨時駅。冬場は全列車が通過する。
 
 浜小清水では知床斜里始発の北見行の普通列車とすれ違った。反対列車は通学客でやや混雑していて、乗車中の列車にも浜小清水と次の止別で数人の乗車があった。一旦海岸線から離れて、やや内陸を走るが、止別の先で再度海岸線目前を走る。再び流氷を眺めて走ると、列車は斜里川を渡り、斜里の市街地へ到着した。前回は日没後に通ったこの区間の景色を眺めることが、今回の釧網本線乗車の大きな目的だったが、流氷も見ることができ、冬の釧網本線を象徴する車窓を楽しむことができた。
 

通学客を乗せて、真っ白な斜里平野をゆく

 網走から40分ほどで列車は知床斜里に到着した。その名の通り、ここは鉄道における知床半島への玄関口である。街の背後には街を見守るように斜里岳と海別岳が聳えている。前回釧網本線に乗車して、この駅に着いたとき、時刻は16時30分頃だったと思うが、既に周囲は真っ暗になっていた。道東へ初めて来た時の一番の驚きは日没の早さだった。九州の人間からすれば、17時には暗くなる東京でもちょっとびっくりするが、16時に真っ暗というのはある意味衝撃的。いきなり道東へ引っ越してきて、仕事を始めたら定時なのに毎日残業している気分になりそうだなと思ったのを思い出す。
 知床斜里では数分停車して、緑始発の北見行普通列車と行き違った。反対側のホームには跨線橋まで続く長蛇の列。やがて列車が到着すると数十人が列車へと吸い込まれていった。おそらく乗客の多くは、網走へ通勤・通学する人たちで、この列車が釧網本線の網走側で一番混雑する列車なのだと思う。一方、こちらの列車にも地元客と高校生が乗車してきた。どうやらこの先清里町に高校があるようで、そこへ通う通学客のようだった。
 
 知床斜里を出ると、釧網本線は南に進路を変え、次の中斜里へと向かっていく。斜里の市街地を出ると、そこからしばらく斜里平野の中を走り抜けていく。斜里平野は航空写真で見るとよくわかるが、平野全体に格子状防風林が広がっている。線路は時々その防風林を横切るようにして走っていく。大きな製糖工場がある中斜里の手前で、今度は南西方向を向く。広い田園地帯はどこまでも真っ白。車窓の左手には雄大な斜里岳が見えていた。
 
 列車は清里町に到着。ここで知床斜里から乗車していた高校生たちと地元住民が下車していき、車内も再び閑散とした。清里町駅はその名の清里町という街の玄関口。この町は人口3600人ほどの街。釧網本線はこの駅から緑まで清里町内を走っていく。
 
 清里町からも引き続き、列車は広い大地の中を走る。雪を積もらせた大地はとても幻想的で美しかった。札弦を出ると、次第に山が近づいてきて、このあたりで斜里平野の車窓も終わりとなる。線路脇を眺めていると、ずっと動物の足跡が続いている。おそらくエゾシカが歩いた後だろうか。緑は先ほど知床斜里ですれ違った列車の始発駅。網走側の通学需要もこの駅まで。緑-川湯温泉間は釧網本線の中でも最も本数の少ない4往復ゾーンとなっている。

森とエゾシカを車窓に峠を越えて摩周エリアへ

 緑と川湯温泉の間は、駅間が14.5km離れていて、列車はこの間を15分ほどかけて走っていく。釧網本線は緑駅付近で斜里平野を出て、そこから峠を越え、摩周エリアへと入る。北海道の地域区分上でも、網走を中心とするオホーツク総合振興局管内から釧路を中心とする釧路総合振興局管内へと進む。ここは網走側と釧路側の境目である。峠から先は難読地名としても知られる弟子屈(てしかが)町へと入っていく。
 この間、列車はしばらく森の中を走っていく。森の中ではエゾシカの群れが走り去る列車を見ていた。
 
 列車は峠を越えて川湯温泉に到着した。このあたりの釧網本線は摩周湖と屈斜路湖の間を走っている。線路より湖の方が山の上にあるので、車窓に湖を見ることはもちろんできないが、北海道を代表する湖に囲まれた地帯に、線路は敷かれている。前回来た時はこの駅までははっきり車窓を眺めることができた。その時はここで列車を降りて宿泊先へ向かう人の姿があったのを思い出す。川湯温泉という名の通り、ここは温泉地。駅前から少し離れた場所に小さな街がある。ここでは乗車中の列車が網走を出たのとほぼ同時に釧路を発車した網走行の普通列車と交換した。反対列車は2両編成だったが、乗車している人が多く、座席は全て埋まっているように見えた。
 
 川湯温泉駅を出た列車は、駅の西側に聳えるアトサヌプリという山を車窓に見た後、その後もしばらくは森の中を走っていく。鹿の群れと何回もすれ違いながら列車は走る。川湯温泉の次は美留和に停車する。北海道によく見られる車掌車を転用した駅舎が特徴的な駅で、駅舎はタンチョウやクマなどが描かれている。
美留和を出ると、森の奥にはチラチラと雪を積もらせて輝く山々が見えはじめる。おそらくは阿寒富士をはじめとする阿寒湖周辺だろう。
 
 やがて市街地が広がり始め、列車は弟子屈町の中心地、摩周へと到着した。摩周駅は2面3線で比較的大きい。列車の運転本数は川湯温泉で1往復増え、さらにここで1往復が増える。摩周発着の1往復は夕方-夜間に設定されているが、川湯温泉発着の1往復は夜と朝の列車で往復する。川湯温泉には乗務員が寝泊まりする場所がないので、川湯温泉発着の車両と乗務員がここで寝泊まりしている。摩周は知床斜里以降久しぶりの有人駅。ここでは6人ほどが乗車してきて、少し車内はにぎやかになった。
 
 摩周駅を出た列車は次の街、標茶へ向けて再び広い大地が広がる中を走っていく。相変わらず大地に広がる雪が眩しい。2つの街は25kmほど離れている。摩周と次の磯分内の間にはかつて南弟子屈駅があったが、2020年に廃止された。そのため、途中には磯分内の1駅しかなく、駅間距離が非常に長い。列車の走りも軽快である。次の磯分内も駅前には小さな街が広がっている。ここでも数名の乗車があった。駅の近くには雪印メグミルクの工場がある。どこのスーパーでも売っているあの雪印バターを作っている工場の一つである。

標茶から冬の釧路湿原を眺めて釧路の市街地へ

 摩周から20分ほどで、列車は標茶駅に到着。磯分内の手前から列車は標茶町へ入った。ここはこの町の中心駅で、釧網本線の駅の中でも利用客が多い駅である。周辺には宿泊施設も多い。チェックアウトして釧路へ抜けるのにちょうどいい時間ということもあり、ここでは15人はどのまとまった乗車があった。網走からずっと対面の座席は空いていたが、ここで対面の座席にも乗客が現れ、釧路までは相席となった。標茶駅はかつてここから標津へ行く標津線が分岐していた。これから根室へ行こうとしているが、標津線は中標津から根室本線の厚床までの支線を持っていて、こちらからも根室へ向かうことができていた。標津線は1989年に廃止され、以降この駅は釧網本線の単独駅となった。
 
 標茶で釧路までの所要時間は、残り1時間ほどとなった。標茶を出た次の大きな街は釧路となる。北海道の街と街の間の距離感には毎回びっくりしてしまう。摩周以降の釧網本線は、ずっと釧路川沿いを進んでいく。初めのうちは見えないが、摩周駅を出た辺りからはこの川が車窓に見え始める。釧路川は釧路市街の北側で湿原を形成している。車窓もやがて田園風景から湿原へと移り変わる。ここから列車はしばらくの間、湿原を車窓に走っていく。
 
 標茶の次の茅沼はタンチョウが来る駅として有名で、駅の横にはタンチョウが飛来するエリアが設けられている。前回乗車した時は、数羽が羽を休めていたが、この日姿はなかった。列車はその先も広い湿原の脇を、クネクネと曲がりながら走っていく。冬の湿原は一面雪に覆われて、線路脇にはやはりエゾシカの群れの姿があった。
 しばらく湿原を眺めて走ったあと、列車は塘路に到着。ここでは8分ほど停車して、釧路を8時50分頃に発車する網走行の普通しれとこ摩周号と行き違った。
 
 その後も列車は、引き続き湿原を車窓に走る。次の停車駅である遠矢まで、20分ほど湿原の車窓が続く。塘路と遠矢の間には、細岡と釧路湿原という2つの駅が設置されている。細岡は冬季は全列車が通過し、釧路湿原は通年営業だが、一部の列車しか停車しない。この列車はどちらも通過となり、2駅を通過する。原生花園も通過したので、この列車は釧網本線内で3駅も通過駅が存在する。
 
 やがて湿原の車窓は終わり、釧路の市街地が近づく。釧網本線内最後の途中駅、遠矢駅のあたりならは車窓にも住宅が増えてきて、徐々に市街地の中へと入っていく。道東道の下をくぐると列車はカーブして根室本線と合流し、東釧路駅に到着した。東釧路で網走から166.2km続いた釧網本線は終わりとなり、ここから列車は一駅間だけ根室本線を走っていく。
 
 東釧路駅を出た列車は市街地の中を走る。やがて摩周あたりからずっと並走してきた釧路川を渡ると、釧路駅の構内へと入っていく。この釧路川の鉄橋は釧網本線と根室本線の列車の有名な撮影スポットとして知られる。ここを走るSLの写真は鉄道雑誌などでもよく見かける。鉄橋を渡った列車はゆっくりと釧路駅に到着。絶景の連続だった釧網本線の旅が幕を閉じた。

釧網本線2度目の完乗を果たして釧路に降り立つ

 網走から約3時間20分、列車は終点の釧路に到着。改札前の1番線に降り立つ。3時間以上座りっぱなしだったので少し疲れたが、降りる瞬間は満足感に満たされていた。前回乗車したときのどんよりとした天気とは対照的に、この日はこの上ない快晴に恵まれた。釧網本線の見どころである流氷や湿原を車窓に楽しむことができ、3時間の乗車もあっという間に過ぎて行った。北海道屈指の絶景路線の車窓の美しさには感動以外の言葉はない。何度も乗りたいローカル線というのが個人的にもいくつかあるが、釧網本線もその一つに加えたい。今度は季節を変え、夏の緑が美しい時期に乗車してみるのも、楽しいのではないかと思う。
 
 次の列車までは1時間15分ほど時間があるので、一旦外へ出た。遠軽から使用していた連続乗車券の連続1の券片はここまで。ここからは連続2の区間へと入っていく。
 網走同様、釧路へ来るのも約3年ぶりとなった。前回来た時は釧路で3時間ほど乗り継ぎの時間があったので、駅から少し離れた幣舞橋周辺まで歩いて行ったのを覚えている。駅も前回来た時とほとんど変わっていないようだった。釧路駅でも高架化が計画されているが、まだ具体的な話はない。国鉄時代の鉄道局があった頃からのこうした駅舎も各地で取り壊されているが、この駅ではまだまだ現役である。
 
 今回の釧路は乗り換えのために立ち寄った形。したがって、今回は街の方へは行かない。釧路は北海道で最初に訪れた地方都市。この街は北海道の地方都市の中でも比較的大きな街で駅前の通りもとても都会的である。前回訪ねたときに行った幣舞橋は、この通りの奥にある。
 
 この先も移動が続くので、このあたりで昼休憩をとることにした。コンビニで済まそうかと思っていたが、駅の売店で売られていた駅弁がおいしそうだったので、ちょっと奮発して駅弁を買った。購入したのは「かきべん」と呼ばれる駅弁。牡蠣のダシで炊いた炊き込みご飯の上牡蠣が載った牡蠣づくしな駅弁で、とてもおいしかった。
 さて、釧路駅からは根室本線(花咲線)の快速ノサップに乗車して、この旅の目的地である根室へと向かった。
 
次話