【旅行記】秋田・岩手鉄道ぶらり旅~秋田新幹線「こまち」と羽後交通路線バスで本荘へ~

秋田・岩手の未乗路線を巡り、平泉・中尊寺を目指す
鉄道の乗りつぶしを趣味とする人間にとって、夏というのは気がかりな季節である。梅雨末期の大雨と台風は、鉄道路線に甚大な被害をもたらす。一度被害が発生すると、その影響は長期化する。特に日頃から利用者が少ない路線は、年単位で長期不通に追い込まれる路線も少なくない。
できることならば、もう少しゆっくり時間をかけて、一つ一つの路線を旅してみたいというのが本音である。しかし、被災で乗れなくなるリスクを考えると、そう悠長なことも言ってられない。今年もまた夏が近づいてきた。少し間隔を詰めて旅する形になっているが、乗ることができずに後悔なんてことにならないように、乗りたい路線には乗っておこうと思う。
今回旅するのは、北東北エリアの秋田県と岩手県を走る鉄道路線である。両県には2022年秋以降何度か訪れていて、ローカル線を中心に巡ってきた。今回の旅前の時点で、北上線、男鹿線、東北本線(一ノ関~花巻)、由利高原鉄道が未乗だった。そこで、今回はこれら4路線に乗車しながら、各地を訪ねる旅を企画してみた。4路線のうち、盛岡地区の東北本線に乗車した際には、同時に世界遺産である中尊寺へ行ってみたいと以前から考えていた。そこで、今回は4路線への乗車を完了させた後に、中尊寺を観光してから帰路に就くプランを組んだ。中尊寺が目的地ではないものの、今回はここを目指しながら、旅を進めていく形となった。春に北東北を旅するのはこれが初めて。どうやら北東北は桜が見ごろらしい。未乗にしていた4路線と春らしい景色を楽しみに、まずは東京駅から秋田行の新幹線に乗り込んだ。
久しぶりに秋田新幹線こまちを乗り通し、東京から秋田へ

今回もいつもと変わらず、前日のうちに羽田空港に到着し、蒲田駅のホテルに一泊した。蒲田駅前のホテルも、最近は価格の高騰が止まらない。今年はこれが3度目の宿泊で、何とか1万円以内に収まったが、次回の蒲田宿泊の際には、1万円を超える予定になっている。半年前に予約してこれなので、直前予約だとは2万円近くすると思う。土曜から日曜にかけての宿泊なので仕方がないが、そろそろ他の案も考えた方がいいのかなと思っている。
翌朝は6時30分頃から行動を開始し、東京駅へ向かった。いつもであれば蒲田から京浜東北線で直接行ける東京駅。しかし、この日は田町駅で線路の切り替え工事が行われていたため、山手線と京浜東北線は一部区間で運転休止となっていた。そのため、品川で乗り換えの必要があった。京浜東北線の品川行き、そして上野東京ラインの品川始発の上野行きという珍しい列車に乗車して、東京駅へ。いつも多くの列車とすれ違う品川~東京間だが、この日は列車とすれ違う回数がとても少なく、なんだか東京じゃないみたいだった。
この影響からか、いつもは人でごった返している朝の東京駅も、明らかに空いていた。翌週にゴールデンウィークを控えているというのもあるが、こんなに人の少ない東京駅を見たのは初めてかもしれない。いつもは人をかき分けて歩かないといけない東北新幹線の改札内もホームもガランとしていた。

さて、1日目は秋田県南部を走る由利高原鉄道に乗車しに行く。この鉄道の起点である羽後本荘駅へは、新幹線「こまち」で秋田へ行って羽越本線に乗り換えるとか、上越新幹線で新潟まで行って特急「いなほ」に乗り換えるとか、さらには新幹線ではなく飛行機で秋田へ飛ぶとかいろんな手段が考えられる。どれを選んでもよかったのだが、今回は新幹線と路線バスを使っていってみることにした。まずは東京から久しぶりに秋田新幹線「こまち」を乗り通し、秋田駅を目指した。
乗車したのは東京7時32分発のこまち3号秋田行。「こまち」を乗り通すのは、これが2度目。前回は、2022年秋の「ミニ新幹線と津軽地方ローカル線の旅」で全く同じ時間の列車で乗り通している。この時はこまち5号として運転されていたが、いつの間にか号数が変更され3号になっていた。どうやら併結する「はやぶさ」側の都合でそうなったらしい。定期列車では2本目となるが、この日は日曜日で6時台に臨時列車が運転されていた。そのため、この列車はこの日東京駅発3番目の秋田行きだった。

前回乗り通したときは、グリーン車を使ったが、今回は普通車指定席を利用した。2022年秋と言えば全国旅行支援が行われていて、宿泊費も安く、さらに夕食で使えるクーポンもついてきて、とてもお得に旅ができた。また、各地を周遊する旅行だったため、金券ショップで入手した株主優待券を活用できたのも大きかった。今は宿泊費も高騰し、物価高なので、ちょっと節約モードで旅をしないといけない。今回は東京発時点で最後尾から2両目となる12号車を指定した。
ところで、これから乗車する「こまち」は、昨年と今年3月上旬に「はやぶさ」との連結区間で、走行中に連結が分離する事故が発生し、3月には1週間近くに渡って「はやぶさ」と併結する列車の東京~盛岡間の運転が取りやめられた。実は今回の旅行は、当初その3月上旬に計画していた。しかし、別の旅で搭乗する飛行機の料金の都合から延期していた。当初の計画で進めていたら、「こまち」を乗り通せないところだったので、延期が功を奏する形になった。あとから思ったのだが、3月上旬といえば、平日限定で乗り放題になる「キュンパス」が発売されている時期である。この時期は各地のローカル線も割と混雑している。その点においても4月下旬に出かけて正解だった。
乗車記録 No.1
秋田新幹線 こまち3号 秋田行
東京→秋田 E6系

早朝の列車だったので、回送で入って来るのかと思いきや、那須塩原始発のなすの254号の折り返しだった。慌ただしく清掃作業が行われ、発車の数分前に列車へ乗り込んだ。田町駅の線路切替工事と、ゴールデンウィーク前の日曜日の早朝ということもあって、東京駅から乗車した人は少なく、乗車した12号車も乗り込んだのはわずかだった。E531系が並ぶ在来線ホームを横目に、東京から秋田へ4時間の旅がスタートした。陸路で向かう秋田は果てしなく遠い。でも地を這うからこそ、沿線の街を眺めて進む楽しみもある。ちなみに飛行機だとフライト時間はわずか45分ほど。秋田から羽田への便には搭乗したことがあるが、本当にあっという間に着く。
列車は丸の内のビル群を横目に、秋田へ歩み出した。まもなく列車は地下へ潜って上野に停車。やはりここで乗車する人がいつもより多く、車内は6割程度の座席が埋まった。

上野を出た列車は大宮へと進んでいく。この日の東京は曇り空。数か月前に「たにがわ」に乗車したときは、車窓からの富士山が美しかったが、今回はその姿を見ることはできなかった。列車は大宮でも多くの乗客を拾い、座席の9割近くが埋まった。自分が座った隣の座席は、前日の時点では埋まっていたようだったが、直前に変更があったのか、誰も乗ってこなかった。
大宮を発車した列車は、関東平野を北へ北へ進んでいく。大宮以北の東北新幹線に乗るのは久しぶりだよなと思っていたが、「たにがわ」に乗車した旅の途中で「やまびこ」に乗車したのをすっかり忘れていた。宇都宮までは数か月ぶりということになる。その宇都宮の手前から、列車は320km/h運転をスタートさせる。ここからはもうものすごい勢いで仙台へ向かう。宇都宮を通過して、ちょっとスマホに気を取られていると、あっという間に那須塩原を通過。やがて列車は栃木県と福島県との県境を跨いだ。

新白河を通過して、トンネルとトンネルの間から、のどかな風景眺め、列車は走っていく。やがて大きな街が広がり、列車は郡山を通過した。東北では仙台に次ぐ規模を誇る大きな街をもつ郡山。やはり新幹線の車窓から見ても都会だなと思う。ここには次回の旅で久しぶりに行く予定である。しかし、乗り換え時間が長すぎて、どう暇をつぶしていいものか悩んでいる。通過する郡山の街を眺めながら、乗り換え時間で何をしようかと考えているうちに、列車はあっという間に福島に差し掛かっていて、気が付いたらもう通過していた。

白石蔵王の辺りで一旦席を立って、お手洗いを利用するがてらに車内を少し見学しに行った。12号車の東京寄りには、車椅子の人でも使える広いお手洗いが設置されている。このため、この号車の座席数はやや少なめとなっている。
席に戻るとやがて街が広がり始め、仙台の街のシンボルでもある3つのテレビ塔が見えてくると、列車は広瀬川を渡り、仙台に到着した。同じ号車に乗車していた人たちも半分くらいがここで下車していき、乗客が入れ替わった。今回の旅は仙台空港から九州へ帰るので、仙台には最終日の午後に立ち寄ることになる。

仙台の次は盛岡に停車する。列車は加速しながら仙台の市街地を出た。東北本線と並走する区間では、建設が進む新たな仙台の貨物ターミナルが車窓に見えた。数年後には現在の宮城野駅からここへ移転してくる予定になっている。再び高速走行に復帰すると、古川、くりこま高原、一ノ関と通過していく。このあたりの東北新幹線は、一昨年秋の旅で盛岡-仙台間各駅停車の「はやぶさ」に乗車して以来となる。各駅停車の列車だと、結構時間がかかるこの区間も、ノンストップならあっという間である。何度か通ったことがあるとはいえ、まだまだ沿線の景色も見慣れてはいない。

やがて列車は盛岡に到着。「はやぶさ」との併結区間もここで終了となり、ここから列車は田沢湖線へと入っていく。仙台から乗車した乗客も大半は下車していったように見えた。代わりにここでも多くの乗車があり、再び乗客が入れ替わる形になった。盛岡を出ると、しばらく高架橋を走り、盛岡の市街地を西へ進む。やがて盛岡の市街地を抜けると、田園風景が広がった。10分程前まで320km/h運転をしていたのに、急にのんびりした走りになるこの盛岡界隈のギャップが好きである。ここから列車は奥羽山脈を越えて行く。この時間帯、田沢湖周辺には活発な雨雲がかかっていて、山が近づくにつれて雨が激しくなった。

雫石、赤渕などを通過し、山奥へと進んでいく列車。やがて仙岩トンネルへ入り、いよいよ岩手県から秋田県へと入った。トンネルを出た先にある志度内信号場では、反対列車の「こまち」を待ち合わせるために5分ほど停車。峠付近にはまだ雪が残っていて、寒々しかった。線路脇には滝が流れる場所もある田沢湖線。ローカル線の中でもかなり山深い場所を走る路線に、よく新幹線車両を走らせようと思ったよなといつも思う。

峠を越えて列車は田沢湖に到着。さらに進んで秋田内陸縦貫鉄道との乗り換え駅である角館に到着した。角館では車内のほぼ全員が下車していった。自分も一昨年の旅でここで下車したが、その時もここで多くの乗客が下車していたのを思い出す。やはり角館は観光客に人気らしい。訪日観光客に加えて、国内旅行者の姿も多かった。ちょうど桜が見ごろだったので、花見に訪れる人だろう。旅行者というよりかは軽装の人が多く、盛岡からちょっとしたおでかけで訪ねる人が多い感じに見えた。車内もここで一気に閑散とした。列車は横手盆地に出て、大曲に到着。ここで進行方向を変えると共に、田沢湖線から奥羽本線へ進んだ。大曲からしばらくは逆向きに通り過ぎて行くのどかな景色を眺める。県境付近で降っていた強い雨は上がったが、相変わらずもやがかかっていて、視界はあまりよくなかった。

東京を出て約4時間、列車は終点の秋田に到着した。久しぶりの秋田駅に降り立つ。秋田まで乗車する人ももう少しいるものと思っていたが、秋田近辺ではガラガラだったのには少し驚いた。東京を7時半と割と早朝に出てくる列車だが、秋田に着くころにはもう11時半になっている。仙台以降は4本目の列車となるので、仙台や盛岡から秋田を目指す人は、もう前の列車に乗車しているのである。そして、大型連休でもない日曜日の午前中に乗り通す人は少ない。考えてみると確かに、盛岡近辺に住んでいるか宿泊して、朝から角館に観光へ行く人くらいしかいなさそうである。
秋田駅周辺も早朝は土砂降りだったようだったが、この時間は既に雨のピークは越えていた。前日の九州は30℃近くまで気温が上がり、半袖で十分だったが、さすがに雨の秋田は肌寒い。念のために多少厚着で来たが、これで正解だった。
秋田駅で1時間30分の待ち合わせ

改札の窓口できっぷの持ち帰りを申告すると、新幹線の形にきっぷを切り取れるカッターで穴を開けて手渡された。切り絵のような形できっぷに新幹線が浮き出る仕組み。これは面白いなと思った。秋田駅の改札は新幹線と在来線が横並びになっていて、新幹線の側には窓口がない。きっぷをもらう時は、駅員に目を合わせつつ、ちゃんとそっちに行きますよというアイコンタクトを取らないといけない。
改札を出ると、いつもの秋田犬バルーンが鎮座していた。秋田に来る度に秋田犬のぬいぐるみでも買って帰ろうかなと思ってしまうが、最近猫派に寝返ったので、いつも自重している。秋田駅に来るのはこれが3回目。さすがにもう見慣れてしまった。

秋田駅では1時間30分の待ち合わせ。特にやることはないので、雨上がりの市街地を少し散策しに行った。この日である羽後本荘駅は、ここからは在来線に乗車すれば、40分ほどで着く。しかし、羽越本線にも一度乗車したことがあり、帰りに使うことになるので、今回は路線バスを使っていってみることにした。計画を立てた時点では、45分というちょうどいい感じの時間で乗り継げたのだが、4月1日に路線バス側の時刻が変わり、乗車予定の便の時刻が1時間後ろ倒しとなった。

駅前アーケードを進み、そこから千秋公園の方へ歩いた。千秋公園のお堀は遊歩道が設置されていて、お堀の先にある私立高校の校舎の前に植えられた満開の桜を近くから楽しむことができた。しかし、花見をするには天気が残念だった。この時間の秋田市街地は、雨がやみ、傘は必要なかったが、高層マンションの最上階が雲に隠れるほど雲が低く、周辺はも霞んでいた。近場の旅なら天気がいい日を選べるが、遠出の旅の天気は選べない。晴れる日もあれば雨の日も当然ある。
この遊歩道を通って、お堀を一周し、そこから西武百貨店の秋田店とフォンテAKITAという商業施設に行ってみた。県庁所在地の駅前だが、特にフォン手AKITAの方は寂れてしまっている。駅通路と直結する階には、ロフトが出店する一方、上の階では空き店舗が目立っていた。
羽越本線と並走する羽後交通の急行秋田-本荘線で羽後本荘駅へ

さて、秋田駅前からは羽後交通の急行本荘営業所行きに乗車した。秋田駅前を発着する路線バスは、その大半が秋田中央交通の路線だが、わずかに羽後交通の路線バスも発着している。羽後交通は秋田県南部の本荘、大曲、横手などで路線バスを走らせているバス事業者である。秋田市街にもこの秋田-本荘間の急行バスで乗り入れており、現在同社唯一の秋田市街地へのバス路線となっている。
この急行本荘-秋田線は主に国道7号線を経由して、秋田と本荘を結んでいる。一部でやや離れた場所を走る区間があるものの、基本的には羽越本線が並行して本荘まで向かう。秋田中央交通の路線バスが走る秋田市街地周辺では急行運転を行い、一部のバス停のみに停車する。1日の運行本数は平日1日7往復、土休日が6往復となっている。
羽越本線の普通列車も1時間~2時間の運転で、本数が多いわけではない。そこで秋田-本荘間の移動には、このバスも考慮に入れると利便性が高くなる。ただし、所要時間は羽越本線の普通列車が約40分である一方、こちらは約1時間15分とやや長め。運賃もJRが770円の一方、バスは940円と若干高くなっている。秋田駅前では一番端にある10番のりばから発車する。当路線の秋田側は、一部を除いて県立体育館前が起終点となっている。乗車するバスも秋田中央交通の路線バスに続く形で秋田駅前へと入ってきた。秋田駅では自分の他に4人が乗車した。
乗車記録 No.2
羽後交通 [急行] 本荘-秋田線 本荘営業所行
秋田駅前→本荘駅前

秋田駅前を出たバスは、先ほど歩いたお堀の横を通り、まずは市街地を東へ走っていく。先述の通り、このバスは県立体育館を始発なので、途中までは来た道を戻る形となる。その後、山王十字路交差点で左折し県道56号線へ入ると、本荘へ向けて南下を開始した。左折後まもなく長崎屋バスターミナルに停車。ここには中交ホリディスクエアという商業施設があり、現在はMEGAドンキ秋田店が営業している。長崎屋というのは、ドン・キホーテを運営する会社の名前で、もともとここは長崎屋秋田店として営業していた。バス停の名前はこれに由来する。商業施設名にあるように、建物は秋田中央交通が所有し、交通ターミナルとしての役割を持っている。ここでは家族連れを乗せた。

秋田市街地を南下し、雄物川を渡ると、バスは新屋地区へと入った。市街地中心部から川を挟んだこの地域にも、秋田市街地南側の住宅街が広がっている。羽越本線では新屋駅があり、秋田~新屋間では区間列車も運転されている。長崎屋バスターミナルから乗車した家族連れは、この新屋地区のバス停で下車していった。その後バスは秋田市の市街地を抜け、しばらく森の中を走行。その先で自動的に国道7号線と合流した。

やがて車窓の左側には奥羽本線が姿を現した。この先しばらくは線路と並走しながら南下する形になる。少しだけ国道7号線を走ったバスは、奥羽本線の桂根駅の先で旧道へ左折し、海沿いの集落を経由した。このあたりの国道7号線はバイパスが開通しており、集落の裏を走っている。再び国道7号線と合流すると、そこからしばらく国道を南下。道川駅前を通過後、岩城みなと駅の近くで1人が下車。その後さらに南下したバスは松ヶ崎という地区へ入った。ここでは一旦バイパスを離れ、地区内の隘路を進んだ。

並行して走る奥羽本線は、松ヶ崎の集落の近くにある羽前亀田駅から、しばらく内陸を走っていく。一方で、国道7号線はこの先も日本海沿岸を走る。松ヶ崎地区を抜けて、再び国道7号線に戻ると、その後はひたすら国道を経由して本荘へ走っていく。既に由利本荘市には入っているが、本荘市街地はかなり先である。

松ヶ崎を出てしばらくすると、車窓の目前には日本海が広がった。ここまでも海はチラチラ見えていたが、家や林が広がっていて、なかなか見辛かった。しかし、ここから本荘の市街地の手前までは、海を目の前に走っていく。天気が良ければ、風光明媚な車窓だろうが、この日はどんよりした空と海が広がっていた。反対側は断崖絶壁の崖になっている。昨年乗車した北海道の「ましけ号」が走る雄冬ほどではないが、荒々しい地形が続いている。

しばらく海を眺めて走ると、やがて奥の方に本荘港が見え始め、バスは徐々に本荘の市街地の中へと入った。最初はロードサイド店舗やカーディーラーが多く立ち並ぶエリアを走行し、やがて市内を流れる子吉川を渡ると市内中心部へ入っていく。川を渡った直後に左折すると、いよいよ羽後本荘駅が近づく。本荘の市街地まで乗車していた乗客は、由利地域振興局前で1人が下車、さらに本田仲町という駅にほど近いバス停で2人が下車し、駅に到着する前に車内の乗客は自分一人になった。秋田駅からおよそ1時間15分。バスは本荘駅前に到着。ここでバスを下車した。

東京を出て7時間。ようやく羽後本荘駅に到着した。もちろん素直に羽越本線の普通列車に乗車していれば、1時間ほど早く着くことができるということは書いておかないといけない。7時間もかかったのは、秋田で1時間半も道草していたからである。まぁ、この日の目的は、由利高原鉄道に乗車することだけなので、時間はゆったりある。
秋田市街では車両混雑がありやや遅れたものの、国道7号線の走りは快調で、ほぼ定刻での到着となった。羽後交通は現金のみ対応ということだったので、現金を用意していたが、車内にはPayPay、d払い、au PayのQRコードが掲出されていて、これらQRコード決済であれば、現金以外でも支払うことができた。年始に乗車した日光市営バス然り、現金を使わなくていいのは利用者側にとってはありがたい。
さて、羽後本荘駅からは由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗車した。いつもなら、先に街を見てから列車に乗車するところだが、今回は乗り換え時間が短いので、街を見るのは後回し。早速、由利高原鉄道に乗車しにいった。
続く